自賠責共済証明書の電子保存

自賠責共済証明書を受け取って「この証明書本紙を必ず自動車に備え付けておいてください」と書いてある。

あのバイクに備え付ける必要があるのか? と思ったが、罰則規定があるらしい。

しかも規定上は30万円以下の罰金というけっこうな内容である。

実態としてどうなのかというのは疑問はあるけど。


特定原付の制度が出来る前から電動キックボードなどは自賠責証明書を備え付ける場所がないことは気づいていて、

それで検討した結果、e-文書法により、スマートフォンなどにスキャンデータを保存することを備え付けとするルールが作られた。

このルールは 自動車損害賠償保障法 だけ見ていても気付くことが出来ない。


e-文書法は法令で文書の保存が定められているところを、省令で定めたものは電子データでの保存を認めるという法律である。

法律自体は変更しなくても、省令だけで電子データでの保存が認められるという法律である。

一見すると自賠責保険証明書の備え付けとは全然関係がなさそうなのだが、

保存の定義は「保存し、保管し、管理し、備え、備え置き、備え付け、又は常備すること」なので、

自賠責保険証明書を車に備え付けることを電子データで行うこともこの法律で可能と考えたわけだ。


そのための省令が昨年6月から施行されている。特定原付の制度が施行される1ヶ月前である。

自動車損害賠償保障法に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則 (e-Gov)

「民間事業者等」という言葉が出てくるが、役所以外という意味で捉えればよい。

だから、車を保有する個人も「民間事業者等」である。

「証明書の保存が構造上困難」な場合に証明書の電子保存が認められること。

スキャナで読み取ったデータをコンピュータにファイルとして保存して、

データは直ちに表示できるようにしておくことが求められていることがある。

「磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法」とかいう表記もあるが、

運転時に直ちに表示できるようにと考えれば、スマートフォンへの保存でなければ要件は満たせないだろう。


ただし、このルールを適用するためには「証明書の保存が構造上困難」でなければならない。

その条件というのはA5サイズ以上の密閉容器がないことである。

従来、座席の下にヘルメットなど格納できるバイクが多かったので、

そのような場合は自賠責保険証明書を格納する密閉容器があるので、証明書の原本を備え付ける必要がある。

一方で電動キックボードや折りたたみ自転車形のバイクは容器がないことが多い。

そのような場合に限り、電子保管が認められるというルールである。

特に原付に限るというルールはないが、密閉容器がないという条件や、

原付(125cc以下)・小特以外は自動車検査証などの備え付け義務があることを考えれば、

おおよそ原付以外への適用は考えられない制度と言える。


というわけで電子保存をやってみましょう。

スキャナで自賠責共済証明書、ついでに標識交付証明書をスキャンしてPDFを作る。

そして、これをmicroSDに保存する。スマートフォンで開いて読めればOKである。

乗車時にスマートフォンを携行することで、自賠責共済証明書の備え付けとなる。

この方法は詳しく説明されているところは少ないが、一部の保険会社のFAQに記載されている。

【自賠責保険】バイクの構造上、自賠責証明書をバイクに備え付けることができないが、携行する必要はありますか? (東京海上日動)


さて、冒頭にも書いたのだが、自賠責保険証明書の備え付け義務に違反すると、

かなり高額の罰金が科せられる可能性はあるのだが、実際そうかは疑問がある。

交通反則通告制度の対象の場合、反則金を払えば起訴されないというのがある。

反則金を払わず起訴された場合は反則金の金額が罰金の相場と言われている。

ただ、自賠責保険証明書を備え付けないのは反則金の設定がない。

無保険運行ならともかく、証明書を備え付けてないのをいちいち起訴するのか? というのはかなり疑わしい


あと、元々バイクはこれらの書類の備え付け義務を履行していない車が多いらしい。

というのもバイクは盗難の懸念があり、重要書類の原本を備え付けると、

それを使って名義変更をされてしまうというリスクがあると。

車自体に置きっぱなしにせず、乗車時に書類を持っていればよいのだが、

実務的にそういうのは難しいので必要事項が確認出来るコピーを持っていればよいだろうと。

そういう判断はわりと一般的に行われているようである。

そのような事情もあるため、バイクの書類の備え付け義務について起訴するのは難しいと思われる。


だからよいという話ではないのだが。

ただ、特定原付については電子保存が適用できるケースが多いと思われるので、

スキャナやカメラで撮影したデータをスマートフォンに入れておけばよい。

ただ、それを実際使うかというとよくわからない話である。

事故を起こしたら必要そうだが、実際には自賠責共済と別にマイカー共済があって、

共済金を請求するときにはまとめて請求手続きをするわけである。

そのあたりの必要事項は電話で聞けば教えてくれるはず。

自賠責の加入状況の確認で抜き打ちチェックもあり得ないとは言えないが、

期限の確認だけならステッカーで済むわけで、そこまでするかどうか。

もちろんルールはルール、やっておくべきことではあるのだが。