TPPにイギリスが加盟することが正式に決まったという。
英国のTPP加盟を正式決定 当初参加国以外で初、次の焦点は中国 (朝日新聞デジタル)
このTPPというのはTPP11とかCPTPPと呼ばれるアメリカ抜きのTPPのことである。
イギリスが加わると11ではなくなるのでCPTPPと呼ぶべきかもしれない。
CPTPPは Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership ということで、
環太平洋と入っているのに太平洋に面しているとは思えないイギリスが加盟するという。
言葉からすると意味がわからないのだが、構成国としては納得感が高かったようである。
というのもCPTPPの加盟国を見てみると、カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・マレーシア・シンガポール・ブルネイ と元イギリス領なのである。
CPTPPの11ヶ国中6ヶ国だから、数の上では過半数となる。
日本とラテンアメリカの4ヶ国にとっては事情は違うのだが、
少なくとも日本にとってみればイギリスとの関係には納得感がある。
これはイギリスのEU離脱(Brexit)が背景にあるとされている、
当然、EUとの関係は今後も重要で、イギリスとEUではTCAという協定を結んでいる。
関税は引き続き無関税なのだが、独自の法規制や通商政策をとることができるようになり、これに伴い通関検査なども必要になる。
従来よりEU他国との関係はやや弱まるが、その代わり独自の通商政策が取れる。
そこで考えたのがCPTPPに加盟するイギリス連邦各国との連携強化だったという。
というわけで、TPPはまさかのイギリス連邦の連携強化という役目を持つことになった。
僕が小中学校に通っていた頃の教科書だと、EUとNAFTAとASEANの3つが地域別の経済統合として書かれていた。
当初のTPPは北アメリカ3ヶ国のNAFTAの地域拡張だと思っていた。
ところがアメリカがお国の事情により離脱。
その後、NAFTAも見直しがかかり、現在はUSMCAに改められた。
一般にはNAFTAより自由貿易の面では後退した内容だと考えられている。
で、実はASEANの地域拡張というべき協定がRCEPだったりする。
ASEAN10ヶ国とこれらと関係の深い日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの計15ヶ国による協定である。
ASEANと関係が深いという点ではインドも考えられたが離脱している。
RCEPは地域的なつながりがとても重視された協定である。
TPPと比較すると各国の事情を反映して合意しやすくしている
成熟度の差などあるけど、その中でも自由貿易の拡大やルール整備を進めていきましょうということですね。
このことは関税撤廃率の差にも表れていて、TPPは95%、RCEPは81~88%(いずれも品目数ベース)となっている。
なお、日本とEUの間では2019年にEPAが発効している。
EUとCPTPP加盟国の多くはこのような協定を結んでるため、
CPTPPとEUの間でも自由貿易の拡大やルール整備が進むことになろうと思う。
TPPはRCEPと比べても高いレベルの自由貿易やルール整備が期待されるので、
EUとCPTPP加盟各国がこのあたりをリードする考えがあるのではないか。
そんなわけで意外な方向に進み始めたCPTPPだが、
冒頭の記事でも書かれているが次の加盟国は? というのが論点。
まず東アジアとしては中国と台湾がそれぞれ申し入れしていると書かれている。
ただ、中華人民共和国と中華民国が同じ協定に加わるのはおおよそ考えられない。
成熟度やRCEPでカバーできない点からは台湾(中華民国)の方がよいと思うのだが……
なお、韓国もCPTPPへの参加に向けて動き出したという。
ラテンアメリカではエクアドル、コスタリカ、ウルグアイが申し入れしている。
それ以外の地域ではウクライナ、イギリスの先例があるとは言えどうかね?
そんなこんなで地理性とは少し離れた方向に向かったCPTPPだが、
これと似たような話がありましたね。
中国への警戒感示すNATO 東京事務所開設にはマクロン氏が反対 (朝日新聞デジタル)
NATOが東京事務所を開設する話があったが、見送りになったという話。
NATOは北大西洋地域の軍事同盟で、日本はその区域外である。
しかし北大西洋地域とロシアや中国を挟んだ反対が日本という側面もあり、
この点がNATOが日本と連携を深める理由にもなっている。
北大西洋地域ではないが組める相手なので組んだ方がよいと。
このあたりはCPTPPへのイギリス加盟と類似する面もあると思う。
こちらは結局実現しなかったんだけど。
なお、TPPを離脱し、NAFTAを概ね後退させたアメリカだが、
昨年、IPEF(Indo-Pacific Economic Framework)を設立した。
これは関税の引き下げではなく、ルール作りに力点を置いた取り組みである。
自由貿易には消極的だが、ルール作りは先導したいというアメリカの意図があるんだと思うが。
ただ、それではあまり実利がないというので何だかなぁと。
だから日本はTPPに戻ってこいとずっと言っているのだけど……