そんなところに貨物線あったの?

JR東日本が羽田空港アクセス線の鉄道事業許可を受けたそうで。

羽田空港アクセス線(仮称)の鉄道事業許可について (pdf) (JR東日本)

今回許可を受けた区間は東京貨物ターミナル駅~羽田空港の区間。

羽田空港は第1・第2ターミナルだけかな。


当たり前ですが、東京貨物ターミナル駅は貨物駅ですから、これだけで旅客列車が走らせられるわけではない。

「事業区間位置図」には東京貨物ターミナルから都心方面に破線が示されている。

これなに? と思って調べたら浜松町~東京貨物ターミナル間の東海道貨物線だそうで。

なるほど、これとくっつけて使うんだな。


それにしてもこんな区間に貨物線があったのか。どんな列車が走ってるんだろ?

と調べたところ、1998年以来、この区間は休止されているらしい。

休止の直接の原因は地下鉄大江戸線の工事のためだそう。浜松町駅付近の工事にあたって休止した方が工事が容易だったからとか。

でも、実はその以前から貨物線としてはほとんど役目を果たしていなかったらしい。

というのも、もともとこの先に汐留駅という貨物駅があって、現在は ゆりかもめ と 大江戸線 の駅名として残っているが、

国鉄の貨物駅としては1986年に廃止されており、この時点でも東京貨物ターミナル~浜松町の貨物線の役割はほぼなくなっていた。

汐留駅自体は歴史の長い貨物駅なのだが、1973年の東海道貨物線開通時にできた東京貨物ターミナル駅に役目を譲っていたそうである。


結果的に見れば、この東京貨物ターミナル~汐留の線路は貨物線としては短命に終わった。

ちなみに東海道貨物線というのは、それ以前の貨物線を横須賀線の線路に転用するために建設されたもので、

そのルートは小田原~東戸塚は東海道線に併設、東戸塚~鶴見は山間部の別ルートを走り、この途中に横浜羽沢駅(貨物駅)がある。

相鉄・JRの直通運転では横浜羽沢駅に併設された羽沢横浜国大駅から貨物線に入り、鶴見までこの線路を走る。(cf. 相鉄直通列車のJRでの扱いはどうなってる)

鶴見~八丁畷はまた東海道線に併設、八丁畷~浜川崎は南武支線を走り、浜川崎~浜松町(~汐留)は臨海部を走るというルート。

この間には既設の浜川崎駅・川崎貨物駅、新設の東京貨物ターミナル駅と3つの貨物駅がある。


おそらく当初から汐留駅の役目を東京貨物ターミナル駅などが引き継ぐことを想定してはいたんだと思うが、

この路線ができた当初は今ほどコンテナ貨物が普及してなくて、なにしろ汐留駅廃止の頃まで築地市場に貨車が乗り入れていたのだという。

今からすればいろいろな意味で信じられないことだけど、とりあえず都心の貨物線の役割も残っていたのはそう。

結果的に言えば開通後13年で本来の役目を失ってしまったが、それを予期していたわけではなかったということである。


ただ、その後も1998年の休止まで走る列車自体は残っていて、それがカートレインだったらしい。

1985年に汐留駅発着で九州への便が運行されたが、まもなく汐留駅は廃止に。

そこで恵比寿駅発着に変更して、北海道への便も追加、後に浜松町駅発着になったという。

1990年代に入って利用も低迷していたようだけど、一応最後にトドメを刺したのは大江戸線の工事だったらしい。

カートレインは人間が乗車する寝台客車と車を積み込む有蓋貨車をセットにした列車で、

一応は旅客列車の一種だと思うが、車をパレットに乗せて出し入れする都合もあり、貨物駅としての設備が必要である。

そこら辺、考慮して都合が取れる駅というのが当初は汐留駅だったということらしい。短命だったが。


そんなわけで、結果的には短命に終わった貨物線を羽田空港へのアクセス路線に転用するということですね。

浜松町駅で東海道線に合流し、上野・大宮方面への直通運転を想定しているわけだが、

現状はそういう線路のつながり方になっていないので、この部分の改築が必要になる。

運行を継続しながら改築するということでけっこう大変そうな気はするが。


なお、東京貨物ターミナル駅は貨物駅だが、隣接地にはりんかい線の車庫がある。

あと、東海道新幹線の車庫も隣接地にあって、東京駅までの回送線に平行して東海道貨物線を引いたという経緯があるらしい。

で、りんかい線の車庫があるということは、ここからりんかい線の線路につなげることができるということを意味していて、

天王洲アイル~東京テレポート間で車庫~新木場方面を移動できるように作ってあるらしい。

これをそのまま使えば、羽田空港~新木場、さらには新木場駅で京葉線に入って千葉県方面へ向かうこともできる。

それは首都高速湾岸線を走るバスでよいのでは? という感じはあるけど、一応そういう構想ルートもある。

あと、りんかい線の車庫から大崎方面へ合流するルートを作れば、埼京線で新宿・池袋方面へ行くことができる。

新設区間が長いのが難点だが、既存のアクセスルートが使いにくいところにアプローチできるので、大本命かもしれない。


とりあえずは既存線を活用できる部分が多い、東海道貨物線経由のルートをやってみるかという感じなのかな。

しかし、こういう形で上野東京ラインが役立つとはあまり考えてなかったなぁ。

というのも、これがなければ東海道貨物線から東海道線に合流しても東京駅までしか行けなかった。

これが、上野東京ライン開通で上野・大宮方面、あるいは常磐線方面との直通運転が可能となるわけ。

浅草線~京急ルートと近接するといえばそうだけど、なんやかんや言っても東京駅は大ターミナルだし、

上野・大宮といったところから直通というのはメリットも大きいんじゃないか。


ところで、東京モノレールは現在JR東日本の子会社となっていて、これとの競合が気になるという話もあるが、

現在の東京モノレールは通勤・通学・レジャーでの利用が多いので、空港利用者が減ることはむしろ歓迎なんじゃないか。

羽田空港にしても第3ターミナルにはとりあえずJRは入らないし(将来的な乗り入れ計画はある)、

羽田空港の旅客ターミナル以外の施設に通勤する場合は、モノレール駅での通勤が便利なところが多いので、

そういうところでなんやかんやとすみ分けはできそうな感じはしますね。