津軽海峡フェリーのブルールミナスが次期PFI船舶になるらしい、ということで話題になっていた。
(28)⺠間船舶の運航・管理事業(PFI船舶)経費 (pdf) (財務省)
ここに令和8年度からの大型旅客船(カーフェリーのこと)として、
「はまなす(仮称)、ブルールミナス(仮称))」とかかれている。
はまなす は新日本海フェリーの舞鶴~小樽航路に入っている船で、
現在代替となる船が造られており、すでに「けやき」が進水している。
そして ブルールミナス は青森~函館航路に2020年から入っている船で、けっこう新しいんですよね。
「仮称」というのはPFI船になったあと改名するかもしれないという意味だろう。
そもそもPFI船舶とは一体なんなのだろうか。
単純に言えば自衛隊が利用できるように借り上げている商船である。
自衛隊が中古のカーフェリーを買って利用しているのに近いが、
国が直接買うのではなく、高速マリン・トランスポート という会社を介している。
この会社は自衛隊が必要とするときに船を提供する契約を結び、
中古フェリーを買い上げ、船の維持管理、船員の雇用を行っている。
(後で紹介するが、これらの実務はさらに委託先の会社が行っている)
この事業が始まる以前から自衛隊が民間企業の船を利用することはあった。
新日本海フェリーは2012年に敦賀~苫小牧航路を去った先代「すずらん」を、
自衛隊に貸し出すことを目的として「はくほう」と改名して残していた。
また、津軽海峡フェリーの高速フェリー、ナッチャンWorldも、
燃費などの問題で利用されなくなっていたため、2012年以降、自衛隊に貸し出されていた。
ところが有事に利用するとなれば日本海員組合の意向などで船員が乗れない可能性があった。
そんなわけでPFI事業という名目で専門の会社を設立することになった。
このような経緯から 高速マリン・トランスポート は、
新日本海フェリーと津軽海峡フェリーとその関連企業が主な構成員となっている。
「はくほう」は兵庫県の相生港を拠点に ゆたかシッピング が運航実務を担い、
「ナッチャンWorld」は函館港を拠点に 東洋マリーンサービス が運航実務を担っている。
実はこの2つの会社、自衛隊員の再就職先という側面がある。
有事に利用するとなれば船員が確保できない可能性があると書いたが、
このような体制なのでよっぽどでなければ大丈夫なはず。
10年の契約期間を終えた後、いずれも老朽化の問題があるわけで、
代替船も新日本海フェリーと津軽海峡フェリーが供出することとなった。
そこで津軽海峡フェリーは比較的新しいブルールミナスを供出すると決めたわけである。
なんで? と思うわけだが、そもそもブルールミナスはPFI船舶を念頭に作られた船ではという話があった。
当時、すでに津軽海峡フェリーはPFI船舶事業に参画していた。
そのような背景もあってかこのような特徴がかかれている。
<災害時多目的船>
有事の際には要請があれば被災地への支援物資、自衛隊、警察、消防などの要員や車輌の緊急輸送が可能であり、ストレッチャーの搬入が可能な「エレベーター」や「清水供給」、「電力供給」などの設備を保有しています。
おそらく、ナッチャンWorldには後付けでこのような改造がされたのだろうが、
これは最初から作り込まれているわけである。
そして、PFI船舶は自衛隊以外でも使えるのである。
さっきのPFI船舶の予算資料を見てみるとこういう記載がある。
契約事業者は、当該船舶を⾃衛隊の⽤に供していない期間は、⺠間収益事業に活⽤できることとなっており、利益の⼀部を国庫に納付することとなっている。
すなわち自衛隊が使わない時は他の用途に使ってくれると予算の節約になると。
とはいえ、これは極めて低調である。
なぜならば防衛省から要請があれば72時間以内に母港から出港できなければならないルールがあるからである。
結果として母港からそう離れることができないのである。
このルールの見直しが必要ですねということも書かれている。
でも、これがほぼ問題ない使い方もありますよね。
それが函館港を拠点とする船を青森~函館航路に使うという方法である。
要請があれば急きょ欠航となる可能性はあるし、常に借りられる保証はないが。
すなわち、津軽海峡フェリーはブルールミナスをPFI船舶に供出しても、
繁忙期やドックのときにブルールミナスを借りることができる。
PFI事業に参画する企業として国の予算節減にも寄与できた方がよい。
このような目論見もあるのではないか。
自衛隊が有事の輸送能力を得る方法としては自衛隊自身が輸送艦を持つ方法もあるが、
自衛隊が防衛のための最小限度の実力保持という名目もあり、
輸送艦を多く保有すると外に向けて攻める能力があるとみなされ周辺国との衝突の懸念もあったそう。
とはいえ、日本国内の輸送で海路が有効なのは明らかである。
災害時の物資・人員輸送や被災者の救護などに船が活躍する場面も増え、
いざというとき使えるカーフェリーを確保しておくことの意義も説明しやすくなった。
実際、はくほう は能登半島地震の後、七尾港で入浴・食事など被災者の休息のため活用された。
ちょっと気になるのは はまなす は全長224.5mの巨大船ということですよね。
日本海航路を前提に作られたフェリーで速力29.5ktと高速なのはよいが、
全長200m以上で瀬戸内海などの航行に制約を受ける船なんですよね。
現在の はくほう の役目を引き継ぐなら相生港が母港なんでしょうけど、
それは面倒そうだなと思ったが、明石海峡経由で太平洋に出るならそこまで大きな制約はないのかな。
(夜間航行禁止などの制約はあるが備讃瀬戸・来島海峡・関門海峡なども通過可能ではある)
一方のブルールミナスは速力20ktの普通のフェリーである。
従来は高速フェリーという名目はあったが、その要件が外れることになる。
それはそれで悪くないとは思うんですが、自衛隊のシビアな用途では気になる?
沖縄方面の長距離輸送の可能性が高い西日本配備の方が速いならそれはそれでいいのかな。