QUOカードが使える店って

株主優待を取り入れている会社は多い。

株主優待として、自社店舗の金券とか、自社製品というのはいかにも王道だが、消費者に近い会社でないとやりにくい。

実際のところ、消費者から遠い会社にとって株主優待といえば、ギフトカードの類か、特産品か。

その中でも、特に多いのがQUOカードである。


QUOカードが使える店といえば、なんといっても ファミリーマート、ローソン、セブンイレブン といったコンビニである。

コンビニという身近な店で、1円単位で使えるので、普段の買い物でちょっとずつ使って行くこともできる。

株主優待にQUOカードを選ぶ会社が多いのも、このような利便性を考えてのことだろう。


株式への投資を始めて、銘柄数も増えて、保有期間が長くなってくると、株主優待で届く物も増えてくる。

3月~6月の間に届いたQUOカードを整理すると、けっこうな金額になっていたことに気づいた。

今まではコンビニでの消費ペースよりも、QUOカードが届くペースの方が遅かったが、

今回届いた金額からすると、コンビニでの消費ペースを上回っているように思われた。

そこでコンビニ以外でのQUOカード消費方法を考えることにした。

どうしょうもなかったら、金券屋に売るというのも考えられるが、まずは自分で消費する方法を考えるのだ。


そうやって調べてみると、QUOカードが使える店って意外と少ないなと気づく。

やっぱり専用の装置をおかないといけないのが難点なんですかね。

コンビニは3大チェーンを網羅してるけど、他に普段買い物する店だとジュンク堂書店ぐらいだが、書店では図書カードを使うことが多い。

うーん、と思って見ていたら、マツモトキヨシがあることに気づいた。

そうか、マツモトキヨシなら医薬品・日用品を買うのにQUOカードが使える。

でも、近くにあったっけ? と調べてみると、市内にもあって、自転車で行けばそう遠くないことがわかった。


ちょうど、キッチンペーパーが切れそうだったので、マツモトキヨシに買い物に行くことにした。

キッチンペーパー以外にも、日用消耗品をあれこれとまとめ買いした。

普段、紙製品のようなかさばるものは、運搬の都合を考えて、近くの小さなスーパーで買うことが多かった。

今回は自転車で買いに行くということで、後ろの荷台にくくりつける紐を持って出かけた。

やはりコンビニで買い物するよりもはるかに多くのQUOカードを消費できた。


かさばる紙製品は近くのスーパーで買っていたというが、金額で言えば圧倒的にイトーヨーカドーでの購入分が多い。

食料品の買い物と一緒に済ませられて、品揃えがよいですからね。

イトーヨーカドーでの日用消耗品の購入の大半をマツモトキヨシに乗り換えれば、QUOカードの消費は確実に安定するだろう。

ということで、QUOカードの自家消費のために工夫していこうと思う。

うちも大阪と付ける

阪急と阪神が駅名変更を発表した。

「梅田」「河原町」「石橋」の駅名を10月1日に変更します (阪急電鉄) (pdf)

10月1日から「梅田」と「鳴尾」の駅名を変更します (阪神電車)

梅田駅を大阪梅田駅へ、河原町駅を京都河原町駅に改名するというのが大きな話で、

あと2つは近接する学校の名前を駅名に付け足すという話。


予兆はいろいろあったけど、やっぱりわかりやすいのが三宮駅の神戸三宮駅への改名。

三宮駅は明らかに神戸市の玄関口であるが、そのことがわかりにくいという話があった。

そこで2014年、両社ともに神戸三宮駅に改名した。

三宮にはJR・市営地下鉄・ポートライナーの駅があるが、神戸市としては全てを「神戸三宮駅」に揃えたいと考えているよう。

その割には市営地下鉄・ポートライナーの駅名は放ったらかしだけど、JRの行方を見守っている状況かなと。


阪急は放送ではすでに「大阪梅田行き」「京都河原町行き」という案内をしている。

京都河原町駅への改名を商店街などと協議していることはだいぶ前にニュースになっていた。(cf. 四条通の下を走るからいいと思ってた)

西山天王山駅の開業と同時の改名も目指していたようだし、烏丸・大宮の改名も考えていたようだ。

阪神にとっては、もう1つの大阪のターミナルは大阪難波駅とすでに都市名が付いている。

大阪難波駅は、阪神なんば線開通時に近鉄難波駅を改名したもので、この駅名は近鉄の意向で決まったものだろう。

その後、神戸側のターミナルが神戸三宮駅に改名され、残すは梅田だけとなっていた。


ところで「大阪」と付く駅名はいくつあるだろうか?

数えてみたんだけど、なんと13駅もある。

そのうち、大阪、新大阪、大阪上本町、大阪難波、大阪阿部野橋 の5駅は大阪を代表する駅の名前として、

大阪港、大阪空港、大阪天満宮、大阪城公園、大阪城北詰、大阪ビジネスパーク、大阪教育大前 の7駅は施設名として、

大阪狭山市 は広域地名として大阪が使われている。

かつてはこれに加えて、大阪ドーム前千代崎(命名権導入時に ドーム前千代崎 に改名) があった。

これほど都市名の付いた駅名が多いのは他にない。

東京と付く駅は 東京、東京テレポート、とうきょうスカイツリー、東京ディズニーランド・ステーション、東京ディズニーシー・ステーション の5つである。

最後2つはディズニーリゾートラインの駅なので、一般の鉄道駅という感じでもないし、そもそも浦安市だし。


大阪の玄関口に大阪と付けたのが、一番古くは大阪駅(1874年)である。

この周辺では初めて開業した駅だが、地名から「梅田すてんしょ」と呼ばれることもあったし、

後に近くにできた駅は梅田という地名から命名されている。

その次は1923年に開業した、大阪鉄道(→近鉄南大阪線)のターミナル、大阪天王寺駅である。翌年 大阪阿部野橋駅 に改名されている。

もしかして、この「大阪」って大阪鉄道のことを表してたのかな? でも、近鉄になってもずっと引き継がれていた。

1964年に大阪の新幹線駅として新大阪駅が開業、将来の西への延伸を考えて淀川の北側に作られた。

そこからずいぶん飛んで、2011年に近鉄が難波・上本町の両駅を 大阪難波・大阪上本町 に改名した。

これにより近鉄の大阪側の終着駅には全て大阪と付くことになった。


今のJRは梅田に「大阪駅」を作ったわけだけど、他社はそれぞれ地名を付けていた。二子新地

各社ターミナルを置く場所がバラバラなので地名を付けるのがよいだろうと考えたのだろう。

もともと関西の私鉄は路面電車スタイルで開業したところも多かったし。

ただ、それでは他の地域の人にとってはわかりにくいという問題があった。

それが真っ先に顕在化したのが近鉄だったのかな。名古屋周辺ではだいぶ前から「大阪難波行き」という案内をしていたそうなので。

阪急・阪神・京阪も世界各地からやってくる観光客への対応も考えて、都市名を付けた案内にシフトしていった。

京阪は正式な駅名は変えていないが、大阪市内(淀屋橋・中之島)と京都市内(出町柳・三条)の行き先にそれぞれ [大阪]、[京都]と付けて案内するようになっている。

今回、阪急と阪神の駅名変更が行われると、大阪のターミナルに大阪と付けていないのは南海だけになる。

南海は大阪方面のことを表すのは「なんば」で一貫しているので、全くそんな気配もないけど。


でも、それって東京もそうじゃないの? と思うんだけどね。

都心を突き抜けての直通運転が多いので、終着駅にこだわってもあまり意味は無いと言う考えもあるのかもしれない。

都市間路線としては、東急東横線はけっこうハードル高いよね。

横浜側の終点はみなとみらい線の元町・中華街駅、東京側は副都心線直通で、西武池袋線に入って飯能だったり、東武東上線に入って川越市だったりいろいろ。

横浜方面は横浜駅があるから横浜って文字が出てくるけど、東京方面には東京って文字は出てこないよね。


基本的によいと思うが、他の地域ではあまり見ない改名ではあるよね。

あと、阪急・阪神の駅が改名されても、近くにある他の駅との対応関係がわかりやすくなるわけではない。

梅田ではJRの大阪駅、河原町では京阪の祇園四条駅が近く、乗換駅として利用されている。

合わせる気がないといえばそうだけど、それぞれ事情があっての命名なのでなんともしがたい。

製油所で大量の水素が消費される

昨日、水素の国内シェアの50%以上をイワタニが握っていると書いたが、厳密には正しくないようだ。

水素で聖火を灯す?

確かにイワタニは販売される水素の50%以上を握っているのはその通りらしいのだけど、

はるかに大量の水素を製造する工場が世の中にはある。しかし、その水素の大半は工場内で使ってしまう。

何だそれは? と思ったかも知れないが、水素を大量に作り、大量に消費する工場というのは製油所である。

なんと日本国内の水素消費の7割は石油精製に使われているという。そして、その水素は自家製造しているという。

産業用ガスとしての水素はごくわずかなのだ。


何に水素を使うのかというと、水素化精製と水素化分解という処理で使うようだ。

原油を精製して作られる石油製品というのは、基本的には炭化水素、炭素と水素が結びついたものである。

原油の中には硫黄や窒素も含まれているが、これはあまりありがたくない。

特に硫黄を含んだ燃料を燃焼させると、硫黄酸化物(SOx)を発生し、酸性雨の原因となるなど問題が多い。

そのため、現在販売されている ガソリン・灯油・軽油 は硫黄分を低減している。

原油に含まれる硫黄や窒素を、水素と結合させて、硫化水素やアンモニアの形で取り出すのが、水素化精製だそうだ。


水素化分解というのは、分子量の大きい炭化水素に水素を加えて、分子量の小さい炭化水素に分解すること。

水素化精製にしてもそうだけど、水素ってのはハサミみたいなもんだね。

石油製品で高く売れるのが、ガソリン・灯油・軽油、逆に重油というのは安くしか売れない。

そこで重油となってしまう分子量の大きな炭化水素を、ガソリン・灯油・軽油の材料によい炭化水素に作り替えるわけだ。

重油分の多い原油から、いかにガソリン・灯油・軽油をたくさん作るかというのが、石油精製という商売のキーポイントらしい。

他に重油分を熱分解して、ガソリン・灯油・軽油の原料に適した炭化水素 と 炭素(石油コークス) に分解する方法があるそう。

重油分に水素を足すか、炭素を余らせるか、このどちらかのアプローチで重油分を減らしているということである。


逆に石油精製の中では、水素が発生するところがあって、それがガソリンの製造。

というのも、ガソリンエンジンの効率を高めるためには、圧縮比を高くするのが効果的だが、

発火点が低いと、所望の圧縮比に到達する前に爆発してしまうという問題がある。

発火しにくさを表す指標としてオクタン価というのがあるが、オクタン価を高めるための処理で水素が発生するんだそうだ。

オクタン価を高めるためには、炭化水素の結合を増やすとよいらしく、結合をくっつけると水素が余ると。

水素を足したり引いたり複雑だが、有用な石油製品を作るにはそういう工夫が必要だと。


ただ、これだけでは全ての水素をまかなえないので、軽質ナフサの水蒸気分解も併用しているとのこと。

ガソリンの原料よりもさらに分子数の小さな炭化水素だが、そこに水蒸気を加えて、二酸化炭素と水素を作るということ。

さっきまで分子量が大きい炭化水素を分解するという話を書いてたが、分子量が小さすぎるのもそれはそれで価値が低いようだ。

こうやって、製油所は大量の水素を作り、自家消費しているということだ。


重油の用途として大きいのが船舶燃料だが、2020年以降、全世界で船の燃料の硫黄分を0.5%以下にすることが決まっている。

硫黄分の少ない燃料として、すでに広く活用されているのが 軽油(A重油) 、取扱も便利ですからね。その代わり高くなるけど。

あるいは天然ガスなど、安価で硫黄分を含まない燃料に移行することも考えられているようだ。

重油(C重油)を低硫黄化したものも用意されるようだが、供給能力や品質に不安があるようである。

重油ほど硫黄分を低下させるのが大変で、それが実現できたとしても、大量の水素が必要になる。

それなら、SOxを除去する装置を船に取り付けて、従来の硫黄分のC重油を使おうという考えもあるが、できる船とできない船があるだろう。

いずれにせよ、石油精製の余り物を重油として売ろうにも、需要がなくなって売れなくなる時代がやってきつつあるようだ。

重油を軽油などに作り替えるにせよ、低硫黄の燃料を作るにせよ、精油所で作る水素はなおさら重要になっているようだ。

水素で聖火を灯す?

来年には東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。

この聖火の燃料に水素を使うということがにわかに話題になっていたが、

今さら出てきた話ではなくて、だいぶ前から考えられてきたことらしい。

東京の聖火は水素で、トヨタめざす 近く点火実験 (朝日新聞)

こういう記事が2017年に出ているぐらいなので。


ただ、水素というのは炎がとても見えにくい。

かつて照明によく使われていた ろうそく はススを出しながら燃えるので、炭素の発光により明るく光る。

都市ガスやLPガスであっても、完全燃焼しているときは、青い炎になり、けっこう見えにくい。

一般に炭素分が少なくなるほど、炎というのは見えにくくなる。

そして、炭素を一切含まない水素の炎は、ほとんど見えない。

それは聖火としては致命的な問題だが、解決策として炎色反応というのが考えられていて、先の記事でも、

見栄えするよう、水素の炎にさまざまな色をつける演出も考えている。

と書かれているが、これは炎色反応を起こす物質を炎に加えることで、炎を見えるようにするということ。

ナトリウムなら黄色、カルシウムなら橙色、カリウムなら紫色、コスト面からすればこの辺ですかね。


このような提案がなされた背景には、水素が燃えるときに二酸化炭素を発生しないということがある。

聖火の燃料としては都市ガス(天然ガス)やLPガスが一般的で、1998年の長野では都市ガスが使われている。

天然ガスは一般的には環境にやさしい燃料として認識されているが、石炭ほどではないにせよ二酸化炭素を発生するのも確か。

水素を燃やすのならば、燃やすことによって二酸化炭素が発生することはない。

確かにそれはその通りだ。でも、その水素はどうやって作るのだろう?


日本での水素製造の大半を担うのが岩谷産業(イワタニ)である。

イワタニといえば、家庭用のカセットボンベで有名で、LPガス関係の事業が占める割合が高いのは確かだが、

それと並んで存在感があるのが産業ガスの事業だ。

イワタニが手がけている産業ガスとしては、酸素・窒素・アルゴン・ヘリウム、そして水素がある。

酸素・窒素・アルゴンは材料が空気ということもあって手がける会社は多いが、水素とヘリウムはそうもいかず、

水素とヘリウムはそれぞれ国内50%以上のシェアを占め、特に液化水素は国内唯一のメーカーとして大きな存在感を持っている。

液化水素はロケット燃料としての利用が先行したが、現在は水素の輸送手段としても活用されている。


イワタニのWebサイトには水素事業について充実した紹介ページがある。

水素とイワタニ

水素エネルギーハンドブックには現在のイワタニの水素の製造方法が記載されている。

ハイドロエッジ(堺市)での製造方法は天然ガスから水素を作って精製していると書かれている。

同工場では空気を冷却して液化窒素・液化酸素・液化アルゴンの製造を行っているが、この冷却にLNGの気化熱を活用している。

すなわち、イワタニはLNGを購入して、気化したLNGから水素を、気化熱で空気分離ガスを製造するという工夫をしている。

ただ、この方法では天然ガスから水素を取り出した残りとして二酸化炭素が発生する。

岩谷瓦斯千葉工場と山口リキッドハイドロジェンでは、隣接する他社の食塩電解工場から水素を買って、これを精製して製造している。

隣接する食塩電解工場が大量の電気エネルギを投じた副産物を買っていると言うことで、合理的ではある。

ただ、食塩電解というのは、苛性ソーダや塩素の需要次第で動くもので、水素製造の都合で動くものでもないだろう。


水素の製造方法は、基本的には化石燃料を使う方法か、電気分解による方法か、この2つである。

バイオマスの発酵により水素を得る方法もあるが、これは例外的なものだろう。

電気分解というのも電気エネルギーを何で得るかと考えると、今はほとんどが化石燃料の燃焼である。

食塩電解のように他の目的を持って電気分解をするなら、合理的ではあるけど、水素製造のためだけに電気エネルギーを使うのは無駄である。

ただ、最近では季節・時間帯によっては太陽光発電のエネルギーが余剰になるなどの事態も発生している。

このような再生可能エネルギーの余剰分を使って電気分解するならば、電気分解による水素製造も正当化できる。


よく語られるストーリーは再生可能エネルギーでの電気分解による水素製造だが、

それではとても賄えず、本命は化石燃料からの水素エネルギー製造のようである。

オーストラリアで低品位の褐炭を使った水素製造に向けた動きがあるようだ。

褐炭は石炭ではあるが、水分が多く運搬が難しく、その場で燃やすぐらいしか使い道がなかった。

そこで、その場で褐炭を不完全燃焼させる。これにより一酸化炭素、メタン、水素などができる。

一酸化炭素は水蒸気と反応させて、二酸化炭素と水素を作ることができるので、実質的に水素の原料である。

こうやってできた水素を液化して、日本に輸出するということである。


エネルギーの有効利用としてはよいアイデアだが、結局は石炭を燃やしただけの二酸化炭素が発生するんだよね。

そこで、二酸化炭素を地下に封じ込めるCCS技術との併用が前提となっているようだ。

水素製造のためには二酸化炭素を分離する必要があるので、その点ではCCSとの組み合わせは相性が良い。

近くにある油田に二酸化炭素を注入し、これで石油を押し出すことと、二酸化炭素を地下に貯留することを目指しているようだ。

こうやって製造された水素は「CO2フリー水素」として取り扱われるそうである。


そこまでして水素を使うことに意味があるかという話だけど、やっぱり燃料電池でしょうね。

関空にイワタニが水素ステーションを設置して、フォークリフトなどの燃料に使っているわけだけど、

実はもともとフォークリフトの動力源には蓄電池ががよく使われていた。蓄電池なら排ガスは出ないはずだが……

ところが蓄電池にとっての問題は充電時間、そのため軽油を燃料とするフォークリフトを併用したりしていた。

これが水素を燃料とすることで充填時間が短縮され、燃料電池は水以外のガスを出さず、環境負荷が低い。


それに比べれば、たかが炎のために水素を使うのは、そこまで意味はないような気がするけど、

炎を出すためには、何らかの可燃性ガスが必要で、その中では水素が理想的にはもっともよいという言い方はできる。

現状なら天然ガスを燃やすのが、もっとも合理的なのは疑う余地はない。

ただ、来たるべき水素社会においては、これが理想というのは必ずしもおかしな話ではない。

といっても、石炭や石油ならともかく、天然ガスを直接燃やさなくなる時代なんて、なかなか想像できませんけどね。

中小企業を襲ったガソリン火災

先週、燃料油のことを書いたが、この話には続きがある。

燃料油の選び方

今月18日、京都アニメーション の社屋にガソリンを撒いて放火されるという事件が起きた。

京アニ放火、吹き抜け構造で一気に燃焼か 4人なお重篤 (朝日新聞)

今日時点で死者35人、その他30人以上の負傷者を出している。

殺人事件という観点では「津山三十人殺し」こと津山事件(1938年) や オウム真理教事件(1988~1995年・死者計29人)を超えるもので、

ビル火災という観点では、防火設備の不備で大きな被害を出した歌舞伎町ビル火災(2001年・死者44人)や 千日デパート火災(1972年・死者118人)に次ぐものである。

なお、この事件においては、防火設備の不備はなかったとされている。


このニュースを聞いたとき「ガソリンで放火!?」と思ったのだが、過去にもガソリン火災は大きな被害を出しているそうだ。

先の記事で書いたが、ガソリンは引火点が低く、容易に爆発的な火災を起こす。

爆発的な火災により、周辺の可燃物へ一気に延焼し、室内であれば、不完全燃焼により大量のススや一酸化炭素を発生させる。

さらに、ガソリン火災は消火が難しいと言われているが、これは水での消火が難しいということである。

水での消火は水の窒息効果と冷却効果に期待しているが、ガソリンは水より軽いので水では窒息できず、引火点が-40℃なので冷却しても無意味ということ。

粉末消火器は比較的効くようだが、これほどの火災となればそもそも初期消火どころのことではないだろう。


というわけで、このような場合は逃げるが勝ちなのだが、逃げるのも大変だったようだ。

まず、室内にらせん階段があったため、そこを通じて建物内全体への火のまわりが早かったこと。

らせん階段には必要な防火対策はなされていたのだが、ガソリン火災では十分な効果がなかった。

ガソリン火災の場合、一般的な防火設備では不十分であったり、爆発的な火災で破壊されて効果を発揮しないことがある。

大量のススにより視界が遮られ、さらに一酸化炭素中毒で避難中に意識を失った人も多かったようだ。

せめて外階段など安全が保たれた避難通路があればよかったのだが、あったとしても効果的に働いたかはわからない。

防火設備に問題はなかったとされているが、そもそも大規模なガソリン火災で効果的に働く防火設備は用意していないのだ。


京都アニメーションは従業員数150人ほどのアニメーション制作会社である。

その中で最大規模の事業所が全焼し、設備や各種資料に壊滅的な被害を出した。

(ただ、幸いにも社屋内にあったデータサーバーは焼損を逃れたとのこと)

人的な被害としても、従業員の半数ほどの70人が死傷というのはただ事ではない。

果たしてこの状況から会社を立て直すことができるのだろうか?

それこそ、大きな被害に耐えきれず、全員解雇という事態が起きても不思議ではないほどだが、

ニュースでの社長の発言を読む限りでは、事業継続に向けて前向きに動いているようである。


人気作を多く手がけてきたアニメーション制作会社とあってか、ファンなどによる支援の動きも広がっている。

自然災害であれば、赤十字社や共同募金会などが義援金を募り、それを一定の基準で分配することが定着している。

ただ、今回は犯罪被害であり、そのような仕組みはそぐわない。

一体どういう仕組みで支援金を届ければよいのか。よくわかっていないのが実情である。

先行したのが同社製品を多く扱う アニメイト が店頭で始めた募金活動で、

それに続いて、日本アニメーター・演出協会、日本動画協会、そして京都アニメーション自身も支援を受け付けるようになった。


公的な制度が及ばないわけではなく、警察庁は犯罪被害給付制度を用意しており、死亡・重傷病・障害について給付を行っている。

おそらく、ファンなどから寄せられた支援金も、亡くなった社員の親族、療養中の社員とその親族への給付、

すなわち個人への給付に宛てる分にはなんら問題ないことだと思う。

ただ、会社の再建に期待して支援を寄せた人も多いことだろう。

でも、これをどうやって会社の再建に充てればよいのだろうか? というと難題だと思う。


自然災害でも、会社への支援というのは、貸付制度がメインである。

地域産業への影響を考慮して補助金が出る場合もあるが、再建には不十分であることが普通で、

貸付制度で借金をして再建を目指したが、返済の負担が重すぎて、結局廃業に至る事例も多い。

中小企業が犯罪により壊滅的な被害を受けるということはとても稀な事例だが、

それだけに公的な支援制度は皆無で、税制上の優遇措置もないんじゃないだろうか。

せっかく差し伸べられた支援金だが、受けとった支援金に課税されてしまっては、結局、会社再建に生きないことになる。

全焼した社屋の除却費用 なら支援金を充てても全く問題にならないと思ったが、それが再建支援に十分とも思えない。

いろいろ考えてはいるんだろうけど、行政も巻き込まないと難しいんじゃないだろうか。


この事件で思ったことはいろいろあるけど、やっぱりガソリン火災は怖いなと。

そもそもガソリンは安全に注意を払って使わないと危険で、意図せずとも容易に事故を起こしてしまう。

それを悪意を持って大量に持ち込まれると、もはや防火設備が無力になるほどの被害を出してしまうわけだ。

自動車への給油以外のガソリン販売はこれまでも事故・事件が繰り返されてきたことから、

金属製の携行缶を使うことや使用目的の確認が行われてきた。今回の事件でもガソリンスタンドは適切な対応をしていたようだ。

草刈機や小型発電機など、自動車以外にガソリンを使う用途はあるので、自動車への給油以外での販売をやめるのは難しい。

一体、どうやって同種の犯罪を防げるのか。これはとても難しい。


中小企業を襲った事件というのもまた問題だなと思った。

犯罪被害が個人だけでなく会社に及ぶこともあり得るが、そもそも公的な支援はほとんどない。

それでも大企業なら自力再建というのはそこまで難しいことではないと思う。

でも、主要事業所が全焼、従業員の半数近くが死傷というのは、事業規模に対して過大すぎる被害である。

各所から支援金が集まっているのは幸いだが、このようなことは一般的には想定されていない。どうしたもんか。

ROMデータの作り直し

工場で使ってる ROMライターの都合で、ROMデータを作り直す必要があって、

いくつかのROMデータをチマチマと作り直している。

実はもともと開発ツールから生成される、ちょっと特殊なデータ形式をそのまま書き込ませていたのだが、

汎用性に欠く方式でいろいろ不都合があったのも実情である。


この問題を回避するためには、汎用的なROMデータに変換すればよい。

同種のものでも、過去に1つだけ汎用的なROMデータを生成して、書き込む方法を取っているものがあった。

その方法に準じて汎用的なROMデータに変換することにした。

ヘッダ・フッタを切り取って、ROMのサイズに満たない分を0xFFでデータを埋めて、とあるルールでバイナリを変換すればよい。

作業自体は慣れれば大したことではないが、従来より手間は増える。


ROMデータの登録が完了すれば、とりあえずの目的は達せられたのだが、

そういえば新しいROMデータの生成方法を残してなかったなと思い、

ROMデータの生成方法を文書化して、文書管理システムに登録する作業をやっていた。

過去の同種の記載を参考に、実態に即して書き換えを進めた。

登録しておけば、後にROMデータの変更が必要になったときに役立つはず。


ROMデータの生成ってけっこういろいろ手順があるんだよね。

しかも、普段はJTAGとかで書き込むから、ROMライター用のデータを作る必要性もない。

一応、職場にもROMライターがあるので、そのROMデータで妥当かどうか確認する手段はあるのだが、

ROMデータ改訂のたびに毎度そういうことをやるかというと、そうとも言えない。

手順通り作れば大丈夫なはずなんだけど、工場でしくじっては面倒だ。

品薄すぎて応募券が売れる

CDにいろいろな応募券が付いていることはあるけど、応募券を使わないこともある。

使わないならそれでよいのだが、オークションで売れることもある。

値段と手間次第だが。


それで調べてみたら、たくさん出品されているのだが、値段を見てびっくりした。

数枚セットの値段かなと思ったのだが、どうも1枚単位の値段らしい。

強気すぎる価格設定の出品もあったのだが、実際の落札の相場を見てみるとそこまでは高くない。

ただ、CD自体の価格を超えようかというほど高い。


どうして、こんなことになってしまったかというと、CD自体が品薄になっているから。

そもそも、このCDは発売日2週間ほど前まで「タイトル未定」の状態だった。(納品書にはタイトル未定のまま書かれているほど)

タイトル未定の状態で予約を受け付ける店は多かったが、その状態で予約する人なんて……と思うよね。

ただ、僕は期間限定Tポイントの使い道に困り、タイトル未定の状態で予約したのだった。

結果的に言えば、買うべきものを予約して、発売当日に入手できたのでよかったのだが、我ながらに無謀である。


さらに2週間前のタイトル発表時に、応募券が付いてくることが発表されたのだが、この応募券のために「積む」ことを企てる人も多かったようだ。

早めに予約してくれれば、店側もそれに応じて仕入れ数を増やせるけど、2週間前じゃ発売日の入荷数を増やすのはなかなか難しいらしい。

さらに、直前に「積む」ことを決意した人も多かったのも、品薄に拍車を掛けた。

そもそも店の入荷数が増やせない状況で、予約優先だと店頭にはほとんど並ばないことになる。

店としてもこのタイミングで追加注文しても、いつ納入されるか読みにくい。


こんな状況なので、手っ取り早く応募券が入手できるオークションへの期待が高まっているようである。

応募券のためだけにCDを買う人のせいで、単にCDが欲しい人の入手が難しくなるのはよくない。

そんなわけで応募券の出品を決意したのだが、さすがにCD自体の価格を上回る価格で売るのは合理性を欠くので、

即決価格はCD自体の価格よりやや安くなる程度に設定、開始価格はそれより1桁以上安い価格にした。

そしたら、2時間後には即決価格で落札されたんだから驚くよね。


メーカーとしても供給を絞っているわけではないが、どこにどれだけ需要があるかわからないんじゃ出荷できない。

「タイトル未定」のまま引っ張り続けて、さらに応募券を付けることも2週間前まで告知しなかったんだから、

あらかじめ予約に応じて出荷することはできないのは当たり前で、そこはメーカーの落ち度である。

ただ、発売日から遅れても出荷する意図はあるでしょうけどね。


このメーカーとは全く別のメーカーの話ではあるが、過去に似たようなケースに遭遇したことがある。

そのときは、品薄解消に時間を要する可能性を考慮して、応募券の申込期間を1週間伸ばす対応が取られた。

品薄が解消されない状態で締め切ってしまっては、転売で手にしたものが勝つということで好ましくないので、こういう決断も必要かも知れない。

もっとも、このときはタイトルはもっと早く発表されていたから、それで早く予約することはできたと思うし、

詳細不明の応募券が付いてくることはあらかじめ告知されていたので、今回に比べればよっぽどマシでしたけどね。


これまでは、応募券のために「積む」人が集中しても、予約であらかじめ需要を把握してうまくやってきていた印象があるだけに、

今回の品薄騒動は何ごとだと思って見ているところである。

背景となる事情はいくつかあって、その複合要因ではあるんだけど、なんだかねぇ。

やっぱり政党名で票を集めないと

今回の参議院議員選挙から比例代表の定数が2増えた。

選挙区の一票の格差是正のための定数増はわかるんだけど、比例代表の定数を増やしても何も起きませんからね。

自民党が比例代表の特定枠で2人擁立することに関連しての増員らしいのだが、

定数を2増やしたからといって、自民党が2議席取れるわけでもないのだから、不可解な話である。

それで実際はどうだったのかと言う話だけど、比例代表で49番目・50番目の議席を取ったのは、

それぞれ公明党と自民党だったので、結果的に自民党は1議席を穴埋めできたんだけどさ。


参議院議員選挙の比例代表では、政党名または個人名で投票できるが、

政党票と個人票の合計で政党ごとの議席数を決めた後に、個人票の順位で当選者を決めるという都合、

政党によって個人票の当落ラインは変化する。

  • 自民党: 13万票(19位)まで当選
  • 立憲民主党: 7.4万票(8位)まで当選
  • 国民民主党:  26万票(3位)まで当選
  • 公明党: 1.5万票(7位)まで当選
  • 共産党: 3.4万票(4位)まで当選
  • 日本維新の会: 5.3万票(5位)まで当選

けっこう違うもんだなと。


そこで政党ごとの総得票数に占める政党名での投票の割合を調べてみた。

政党名での投票の割合が高い順に、共産党(90%), 日本維新の会(86%), 立憲民主党(85%), 自民党(72%), 公明党(66%), 国民民主党(62%)となっている。

政党名での投票の割合が高いほど、当落ラインは低くなる傾向がある。

国民民主党は政党名票が伸び悩んだ結果、個人名での争いがかなり激しくなったということだ。

公明党はちょっとおかしい気がするが、6位までは10万票以上あって、その次の7位から1桁落ちている。

おそらく、公明党としてはあまり期待していなかった候補者まで議席が行き渡ってしまったのだろう。

公明党もまた定数増の恩恵を受けた政党の1つですからね。想定外によかったのだろう。


他の政党と並べるにはふさわしくないので書かなかったが、れいわ新選組の得票は何かと特殊である。

政党票の割合は54%と低く、総得票の43%を代表の山本太郎さんの個人票で稼いでいる。

山本さんの得票は99万票、後で書くけど、これだけの得票で1議席取れるのだが、それでも落選している。

理由は獲得した2議席が全て特定枠の候補者の当選にあてられたため。

そこは特定枠の使い所なのか

「得票結果次第では、団体の政策とかそんなことより代表の知名度で取った得票じゃないかと言われかねない」という懸念を書いたが、どうでしょうね?

政党名で半分以上取ってるとも言えるが、政党名で投票した人が果たしてこの方針に理解して投票したのかはわからないし、

逆に代表の個人名で投票した人も、特定枠2人と代表を国会に送ろうという意志で投票した可能性はありそうだし。

僕は意外と政党票が多いなと思ったが、他の政党に比べれば個人票の割合が高すぎるのも確か。


今回の比例代表は50議席目が自民党の19議席目だったので、177万票/19=93万票で1議席取れたということ。

今回の選挙で、インターネットでやたらと注目されていたのが自民党の山田太郎さんだった。

ネットどぶ板選挙の山田太郎氏が当確「表現の自由守る」 (朝日新聞)

再選とあるけど、自民党所属の議員であったことはない。

2010年の参議院選挙では みんなの党 から比例代表で立候補し、後に繰り上げ当選した。

任期満了後の2016年は新党改革の候補として比例代表に立候補したが、そのときは個人名での最高得票を集めて落選した。

このような経緯のある候補なので、今回は自民党からの立候補となったが、もともと自民党に投票しようとは思っていなかった人からも注目を集めていたように見える。

そして、自民党2位の54万票で当選を果たしたのだった。


確かに54万票も獲得したのはすごいのだけど、それでも比例代表の1議席相当の93万票までは40万票も開きがある。

この40万票というのは、政党票あるいは落選した候補の個人票を譲ってもらったものである。

このような候補者でさえ、政党名票の援護がとても大きいのが実情である。

共産党の3.4万票で当選した候補者なんて、残り90万票ぐらいは政党票と落選候補の個人票ですからね。

政党に寄せられた期待の大きさがよくわかる話だ。


もともと自民党に投票しようと思っていなかった人まで巻き込んだ山田さんだが、

それに対して「自力で90万票以上集められるならともかく、そうでなければ自民党の他の候補の議席を奪うだけでは」と指摘する人もいた。

今回の自民党の得票から54万票減ったとしても(山田さんに投票した有権者が全て棄権したのに相当)、自民党の獲得議席は何ら変わらない。

実際には54万人のうち相当割合はもともと自民党に投じようと思っていた人だと思うので、なおさら自民党の獲得議席への影響は小さいだろう。

その点では的を射た指摘に見えるかも知れないけど、それは違うと思う。

必ず1議席動くためには90万票以上必要だけど、1票の差で1議席が変わる可能性だってありうるので、票の積み重ねはやっぱり重要だ。

あと、政党内の当選順位に有権者が関与していくというのが、参議院の非拘束名簿方式の比例代表制の目的だと思うので、

他の候補者の議席を奪ったのではなく、より当選すべき人が当選できたという見方がよいと思う。


政党名票という点で、割を食ったのが国民民主党なのかなぁ。

国民民主党は組織力の強い候補が多かったのだろう。5位ですら14万票で、立憲民主党の1位の16万票に匹敵する数字である。

ところが国民民主党は政党名票の援護が弱く、3議席獲得に留まり、19万票で4位落選である。

同じくかつての民主党にルーツを持ち、政策面の共通面も多い立憲民主党は政党名票の援護で 7.4万票で8位まで当選だから大きな差がある。

もしも、両党が1つの名簿にしていたら、合計で12議席(1議席多くなる)を獲得して、個人票では8.8万票が当選ラインとなる。

これは立憲民主党の6位相当、国民民主党の6位相当までが当選となる計算だ。

似た考えの2つの政党を束ねて、個人名票を集めた順に当選するというのは妥当な気もするけど、

やっぱり立憲民主党と国民民主党は違うと考える有権者にとっては不本意な話で、それを嫌って他党に流れることもありそうだし、

立候補者にとっても、選挙運動がやりにくいとか、比例代表での得票が政党助成金につながらないとか、統一名簿のデメリットも多いんだよね。

そう考えると、同根の2党で、個人名票の当落ラインが大きく異なるのもやむを得ないことなのかな。

男女同数は実現できるか?

候補者男女均等法 こと 政治分野における男女共同参画推進法 ができて、

政党・団体が擁立する候補者はできる限り均等になることを求められるようになった。

定数が多いからこそ?

地方議会の選挙でも適用されるが、やはり政党の組織化の強い国政選挙でこそ、実効性が高いのではないだろうか。


といっても、政党によって取り組みに差があったのも実情である。

主要な6政党で、立候補者の男女比が離れている順に、

公明党(女性候補者8%)、自民党(同15%)、日本維新の会(同32%)、国民民主党(同36%)、共産党(同55%)、立憲民主党(同45%)

立憲民主党・共産党はほぼ同数と言える範囲、国民民主党と日本維新の会は男性が多いが同数に近づけたように見える。

選挙区で 立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党が合同で立てた無所属候補だが、男性8人、女性11人で女性候補が58%となっている。

これらの無所属候補と立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党各々の候補者を合計すると、女性候補の割合は49%とほぼ同数だね。


総合すると 立憲民主党、共産党 は候補者男女均等法の義務を十分果たしたと言えそう。

国民民主党は男が多い気がするが、選挙区でやや女性が多い無所属候補の擁立に貢献したと考えれば、十分という主張はできるか。

一方で、自民党・公明党は従来の参議院での両党の男女比と同程度なので、これといった取り組みをしていないように見える。

現職議員が多く、男女比を変えていくのが難しいのも背景としてあるらしいのだが……


政党に求められたのは立候補者の男女比をできる限り均等にすることで、それをどう選ぶかは有権者次第である。

  • 自民党 : 男47人, 女10人 (女性比率18%)
  • 公明党 : 男12人, 女2人 (女性比率14%)
  • 立憲民主党 : 男11人, 女6人 (女性比率35%)
  • 国民民主党 : 男5人, 女1人 (女性比率17%)
  • 共産党 : 男4人, 女3人 (女性比率43%)
  • 立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党が擁立した無所属候補 : 男5人, 女4人 (女性比率44%)
  • 日本維新の会 : 男9人, 女1人 (女性比率10%)

主要6党で当選者数も男女同数に近いのは 共産党 が唯一ですかね。


立憲民主党は立候補者で45%だった女性比率が当選者では35%まで下がってしまった。

選挙区での当選者は男5人, 女4人なのでほぼ同数なのだが、比例代表での当選者が男6人. 女2人と大きく開いてしまった。

比例代表は個人名での得票を集めた順に当選するという点ではシビアなもので、そこで勝ち上がれる女性候補は少なかったようだ。

立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党の各党と、これらが擁立した無所属候補の当選者を合計すると、男26人, 女14人で女性比率は35%である。

総じて見れば、男性の割合が増えてしまったが、まだ踏ん張った方とみるべきだろう。

日本維新の会 は立候補者では女性比率32%だったのが、当選者では女性比率10%ととてつもない差がついている。

比例代表で全く女性候補が当選しなかったんだよね。選挙区も大阪府(日本維新の会は2議席獲得)の1人だけだからね。


逆に男女同数に少し近づいたのが、自民党と公明党である。

といっても、男が多すぎるのが、少し間引きされた程度であんまり印象は変わらないが。

自民党・公明党で獲得した議席は71議席で、124議席の半数以上なのだが、女性では12人である。

一方、立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党の各党とこれらが擁立した無所属候補は合計40議席である一方、女性は14人になる。

実は、女性議員の数ではこれら4党の合計の方が多いのだ。男性議員なら自民党・公明党の方が倍以上いるんですけどね。


東京都選挙区は改選数6と多いが、今回の当選者は女性3人・男性3人で男女同数だった。

6議席のうち、早々と当選確実が出た4人は、自民党・共産党・立憲民主党の女性候補と公明党の男性候補だった。

残る2議席を日本維新の会・自民党・立憲民主党の男性候補が争うというのが開票速報での報じられ方だった。

早々と当選確実が出た4人を見てみると、やはりそれだけの実績を積んできた人なんだよね。

東京都選挙区全体で見れば、男性候補が14人、女性候補が6人だったが、

有力候補という観点では、むしろ男1人、女3人だったのが実情で、実力のある候補者が早々と当選確実になったというだけのことだ。


議会を男女同数に近づけるためには、政党が擁立する立候補者の男女比というのも重要かもしれないけど、

やっぱり男女ともに実力のある候補者がいないと、実際に当選するのは難しいということ。

もっとも衆議院議員選挙では、比例代表の名簿順位を男女交互にして、意図的に当選者を男女同数にする方法もあるけどね。

最近の衆議院議員選挙の実績だと、公明党 と 共産党 は名簿順位を厳密に決める傾向があるので、

今回の取り組みも考慮すると、共産党は名簿に男女交互に書く方法を使ってきそうだなと思った。

あと、小選挙区制だと有権者の選択の幅は狭まるので、政党の取り組みで当選者の男女比も変わりうるかね。

今回の立憲民主党の結果を見てもわかるが、選択肢が多い参議院の比例代表では立候補者の男女比と当選者の男女比は変化しやすいが、

選択肢が狭い選挙区では立候補者の男女比は比較的保たれる傾向がある。


選択肢が狭められるのは有権者にとっては不本意かも知れないが、衆議院の方が候補者男女均等法の効果が見えやすいかもしれない。

衆議院全体では女性議員は10%ほどと、現状は参議院よりもはるかに男性議員の割合が高い。

比較的男女同数に近い共産党で25%、立憲民主党で22%という状況だから、衆議院ではどの政党もまだまだ。

一方でこの両党は今回の選挙でほぼ男女同数の擁立を実現していて、

実際の当選者も共産党ではほぼ同数、立憲民主党は男:女=2:1ぐらいで比較的よい。

小選挙区の争いに勝てる実力のある候補を、男女同数揃えられるかは課題かもしれないが、他党に比べれば期待はできる。

本部があるところではめっぽう強い

参議院議員選挙の結果が出て、全体としてはこんなもんかなぁという感じだけど、

選挙区別に見てみると、異様なのが大阪府選挙区。

4議席中、日本維新の会が2議席、公明党と自民党が1議席ということで、

日本維新の会が2議席取ってること自体が驚きだが、それぞれ1位・2位なんだよね。

確かに同じ政党が2議席取っている選挙区は、千葉県と東京都(いずれも自民党)があるけど、いずれも1位と最下位で2議席なんだよね。

1位でも最下位でも1議席には違いないので、こういう作戦が一般的だと思うのだが。


ところで、日本維新の会というのは、現存する国政政党で唯一、東京都に本部を置いていない政党である。

ここでいう国政政党というのは、政党助成金などの対象になる政党のことだ。

(国政に議員を送り出していた政治団体ならば沖縄社会大衆党などもあるが)

日本維新の会の本部は大阪市に置かれている。

日本維新の会とその前身となった政党以外にそのような政党があったかは確かではないが、

国会が東京都に置かれていることを考えると、明らかに異質である。


日本維新の会 のルーツは大阪府の地域政党「大阪維新の会」である。

現在は 日本維新の会の大阪府総支部の別名が大阪維新の会となっている。

このような別名を持つ支部がいくつかあるようだ。(京都府総支部が 京都維新の会 であるなど)

ここに至るまでにはいろいろな紆余曲折があって、前身となった (旧)日本維新の会→維新の党 は既存の国政政党から合流する議員も多かった。

ただ、それゆえに地域政党である大阪維新の会との意見の食い違いも伝わってくるような状況で、

2016年に維新の党は民主党に合流し、民進党に改名した。(後に同党は国民民主党に改名しているが、立憲民主党に加わった議員も多い)

このときに「おおさか維新の会」として独立した国政政党が、現在の日本維新の会である。

実態は「大阪維新の会 国会支部」みたいなものでは? と思ったけど、改名前はまさにそんな名前だった。

その後に全国政党としての体裁を整えていったというのが実情かなと。


都道府県別の比例代表の得票数をいちいち各都道府県の選挙管理委員会のWebサイトから集めたのだが、

これを見ると日本維新の会の得票の歪さがよくわかる。

日本維新の会の得票率は全国平均で9.8%で、比例代表での獲得議席は5議席となっている。

ここで、平均以上の得票率だったのは 大阪府・兵庫県・奈良県・滋賀県・京都府・富山県・和歌山県 の7府県である。

特に大阪府は34%もの得票率で、これは全政党筆頭の得票率である。(自民党が筆頭ではないのは全国で唯一)

近畿地方の6府県と富山県ということで、あからさまに近畿地方に偏っている。

富山県は県内出身の候補者が立候補していて、その個人票で稼いだのが要因のようで、これも地域特有の事情である。

これら7府県で日本維新の会全体の43%の得票を獲得している。

7府県の投票総数は全国の17%に相当するので、それに比べると明らかに多すぎる。


日本維新の会 が強いと言うことは、他の政党に取っては不利ということだろう。

共産党と公明党は全国平均並ということで、そこはあまり食い合うところではないらしい。

国民民主党は全国平均7%ほどの得票率なのに、大阪府では3%台ということで、えらく低い。

国民民主党は地域ごとの得票率のムラが大きいのは確かだが、それにしても低い。

立憲民主党も全国平均15%ほどの得票率に対して、大阪府では8%ほどと低い。


なにより影響が大きかったのは自民党だろう。全国平均で35%ほどもあるのに、大阪府では20%ほど。

大阪府選挙区は改選数4と多いからか、共産党・立憲民主党・国民民主党がそれぞれ候補者を立てていて、

それで分散したのか、自民党の候補は4位当選とはいえ、5位に大差を付けての当選だった。

ヒヤヒヤしただろうというのが兵庫県選挙区(改選数3)で、3位当選した自民党の候補者と、4位で落選した立憲民主党の候補者の差は小さく、

大阪府ほど極端ではないとはいえ、日本維新の会の影響で厳しい戦いになってしまったのかもしれない。

大阪府・兵庫県はそれぞれ公明党の候補者が立候補しているので、自民党は自力で稼ぐしかない。

それでも同様の条件の 埼玉県・東京都・神奈川県・愛知県・福岡県 では自民党候補がトップ当選ですからね。


日本維新の会の支持が近畿地方に偏っているとは言うけど、ある程度は全国的な支持が広がっているのも確か。

近畿地方と富山県で43%の得票を集めているということを裏返せば、他の地域で残り半分以上を稼いでいるということ。

他の地域の選挙区でも東京都・神奈川県で各1人当選者を出している。

大選挙区制の選挙区もある参議院選挙らしいことではあって、

これが小選挙区制の衆議院選挙にも当てはまるかというと、それは難しいんだけどね。