ウエルシアが株式交換でツルハの完全子会社となって、
イオンがツルハの株を50%強まで追加取得して子会社化する話、
公開買付の上限には満たない応募だったものの、一応は子会社化できたよう。
当初予定分に足りない分は市場から取得するとのことだが、50%は一応達成出来たのでよかったのかな。
ツルハにとってのウエルシア子会社化、イオンにとってのツルハ子会社化、
どちらでも会計処理の中で「段階取得に係る差益」が生じるとのこと。
「益」とあるように特別利益に計上される項目なのだが、
特に日本会計基準の場合、利益と言えるかは疑わしいものである。
ツルハは元々ウエルシア株を1.60%保有していた。
ツルハは株式交換を通じ、自社株を対価に残る98.4%のウエルシア株を取得する。
その上でウエルシアの資産・債務の買収時点の価値を連結会計に反映させていく。
このような企業買収の場合、株式取得に要した費用と買収した会社の価値は一致しないことが通常で、
この差額を「のれん」と呼ぶ。ブランド力など資産計上できない価値を表すものである。
日本会計基準では買収時に生じた のれんは20年以内に償却しなければならない。
のれん はいつしか消えるものか
国際会計基準などはこのようなルールはないので定期的な償却は不要だが、
回収見込みがないと認識した時点で減損する必要がある。
イオンもツルハも日本会計基準なので のれん は償却する必要がある。
で、この のれん計算 の基準となるのが子会社化した際の株式購入価格なんですよね。
ツルハにとっては株式交換時点のツルハ株の株価でウエルシア子会社化の のれん を計算することになる。
ところがツルハは元々ウエルシア株を1.60%持っていたわけである。
この分は株式交換時の価格より安く買っていたのである。
のれん計算時の基準とした価格との差をどこかで吸収する必要があり、
これを「段階取得に係る差益」と呼び、子会社化時に計上するわけですね。
段階取得差益が多く計上されると、それだけ のれん が増加することになる。
日本会計基準では のれん は償却しなければならず、後々の利益を削ることになる。
ツルハの2025年度決算では、第4四半期だけウエルシアの売上が加わることになる。
この第4四半期では段階取得差益が106億円計上される一方、
のれんの償却費が55億円計上されることになる。
この四半期に限れば段階取得差益の方が大きいので買収により増益に見えるが、
今後続く のれんの償却費 にはこの段階取得差益分も含まれているわけである。
イオンにとってはより大きな話ではないかと思う。
イオンはウエルシア株を50%強、ツルハ株を27%ほど持っていた。
ツルハ株の一部はオアシスから高値で買っているのだが、
全体的に見れば現在の株価より相当安く買っているわけである。
これと今回の公開買付価格との差が段階取得差益となる。
相当大きな話なんじゃないかと想像するがどうだろう?
なお、一旦子会社化した後に株式を追加取得する場合は、
その分は自己株式取得のような感じで、資本の部の数字が動くだけのよう。
イオンモールの完全子会社化とかはまさにそういうことですね。
段階取得差益が生じるのは子会社ではなかった会社が子会社になった瞬間だけ発生する。
それは のれんが生じるタイミングと同じで、日本会計基準においては償却のスタートでもある。
変な仕組みだなと思ったよね。
調べてみると昔の日本会計基準では取得価格の累計と現在の価値の差を のれん とするルールだったので、
この場合は段階取得差益というのはなかったんですよね。
これが会計基準の国際調和の流れで、のれんの計算ルールが変わり、
それにより段階取得差益が発生するようになったわけである。
一方で日本会計基準の のれんの償却ルールは現在も変わっていない。
これは前に書いたが一長一短ある話で……
巨額の のれん が持続し続けるということは、いつ巨額の減損損失を出すかわからないということ。
それならば日本基準で導入されている のれん の償却というのは理にかなった話ではないかと。
償却費というのはそれ自体は出費ではない。
このため企業買収後、のれんの償却費で利益が押し下げられるのはおかしいという話はある。
一方、収益性が低下したと認識すれば減損しなければならない。
のれんを償却しない場合、突如巨額損失が現れる可能性がある。
日本会計基準では償却により のれん は順次減少していくので、減損リスクはだんだん減っていく。
どちらが実態をよく表すかは正直難しいところである。
ただ、のれん は永遠には存続しないという立場に立つなら、
段階取得差益なんて計上しない方がいいんじゃない? とは思う。どうでしょうか?