著作権があって撮影できる作品

のそのそと東京・上野公園へ。

東京国立博物館に興福寺北円堂の仏像が来ているというので、

観に行くかということでやってきたわけである。

東京での展示は修理完了に合わせたものなのだが、

修理自体は興福寺のすぐ隣というか元境内の奈良国立博物館内の修理所で行われたよう。

というか修理後は1回寺に帰っていたらしい。そこを改めて東京に運んできたと。

興福寺北円堂の国宝「弥勒如来坐像」修理終え寺に戻る (NHK)

当然のように全て国宝である。それだけ素晴らしいということだが。


それで東博を出て、まだ少し時間があるかとふらっと国立西洋美術館にやってきた。

OKパスポート見せれば平常展は見られるし……ぐらいのノリである。

額の保存という特集があって、額も保存に値するものは保存するという話だが、

輸送に適さない額の場合、貸出時にはトラベリング額に付け替えるという話があり、

ゆえに美術品の貸出には準備期間が相当かかりますよという話だった。

一般的に絵画の文化財としての価値は額や表装を変えても保たれるが、

額・表装の特徴によってはそれも合わせて価値を持つという話で、いろいろ考えているようだ。


そんなこんなで見ていると、最後の方の展示物の一部に「SNS」に斜線が引かれた表示があった。

カメラに斜線が引かれた撮影禁止というのとは違うらしい。

寄託作品の一部は所有者の意向で撮影禁止になっていることがある。

国立西洋美術館ではあまりないが、寺社が所有だとほぼ禁止ですね。

うーん、一体なんだろうと。存命の作家の作品というわけでもないし……

と没年をいくつか見てわかった。そうか、没後70年経過していない作家の作品、

すなわち著作権の保護期間が続いている作品に付いていたようだ。


著作権の中には複製権・公衆送信権といったものがあるが、

すなわち作品を写真撮影により複製したり、それをインターネットなどで送信する権利は著作権者だけが持っている。

もっともこの件については美術館などの展示物には若干の例外規定もあるのだが。

とはいえ、展示されている作品を撮影する行為も本来は著作権者の許諾を得なければならない。


じゃあ、著作権が存続している作品は撮影させてはいけないのでは? と思ったかも知れないが、

著作権法では私的利用を目的とした複製を認めている。

このため美術館が認めていれば撮影して、個人的に振り返るような使い方は著作権者の許諾なしにできる。

とはいえ、私的複製の範囲を超える使い方はできなくて、

その典型例がインターネットでの送信である。だからSNSに斜線が引かれていたと。


著作権法では展示される美術品についていくつかの例外を設けている。

1つは公衆に開放された屋外や外壁などに設置された美術品については基本的に自由に利用できる。

彫刻を彫刻として、建築を建築として複製する場合や、販売を目的として複製する場合は著作権が及ぶが、

彫刻・建築物を写真に撮影することで複製する行為には著作権が及ばない。

もう1つは展示物を図録に掲載するために複製する行為も認められている。


確かに作品の写真撮影について私的複製の範囲なら、というのはどこかで見たような覚えがあるんだよな。

ただ、そもそも著作権が存続していない場合はそれすら問わなくてよくて、

国立西洋美術館では著作権が存続していない作品が多く、なおかつ写真撮影可能な作品が多いので、

私的複製の範囲に限り撮影可能という作品が特異的に見えるということですね。


これはまた違う話なのだが、図書館で借りた本を、図書館の外で自分でコピーする行為も私的複製の範囲で可能なんですよね。

それを想定して短時間貸し出す制度が大学の図書館にあったんだったか。

図書館内での複製は図書館のルールに従って行わなければならない。

職員が複製するのか、利用者がコピー機を操作するかは館のルールによるが、

図書館での複製ルールによって行うのでいろいろな制約がある。

借りられない本だとそれが唯一の方法なわけで、国立国会図書館なんてその典型ですが。

でも館外に出るとそれは関係なくなるんですね。

それぐらい私的複製というルールは強力なんですね。その代わり用途は限定されますが。