以前、そごう徳島店の閉店により、徳島県から百貨店が消える話を紹介した。
徳島県が日本で唯一の百貨店ゼロ県になるかと思われたが、
その前に山形市の大沼という百貨店がなくなったことで、山形県が先行した。
しかしながら、仙台の藤崎という百貨店は、以前から山形と庄内にサテライトショップを持っている。
なので、山形県内は百貨店へのアプローチは現在も残っていると解するべきである。
それに対して徳島県については、閉店時点では代替策はなかったとみられる。
そごう徳島店は店舗外の売上が4割ほどあったなど、百貨店特有のニーズをつかんでいた面はあった。
対岸の神戸に そごう があったはず、と思った人もいるかもしれないが、
そごう・西武 は そごう神戸店・西武高槻店 を阪急百貨店に譲渡し、その他も閉店したので近畿圏から撤退となった。
(そごう・西武 にとって西日本の店舗は そごう広島店 が唯一となっている)
このことから、県内の他百貨店でも、近隣の系列店でも徳島県内をカバーできなくなったのだった。
そごう徳島店 の入っていたビルは アミコ といい、徳島市が出資する徳島都市開発という会社が所有している。
そごう以外のテナントは現存しており、ビルが巨大だけに持て余し気味ではあるが、そこそこ店舗は残ってるらしい。
これは そごう時代 に百貨店の専門店として入居していた店舗(無印良品など)が残っていることもある。
徳島都市開発 ではそごう撤退後に百貨店のサテライトショップを入れることを考えて交渉していたが、
この交渉に応じたのは、お隣、香川県の 高松三越 だった。
三越伊勢丹出店、アミコ(徳島市)2、5階で協議 オンライン接客検討 (徳島新聞)
すでに、高松三越 はアミコ内に年末に向けてギフトセンターを開設しており、徳島のニーズをつかもうとしている。
対岸の神戸の百貨店ではなく、三越なのかと思ったが、
ここで三越が出てきたのは、単に陸つながりであるだけでなく、三越伊勢丹の特有の事情がありそうだ。
というのも、三越伊勢丹 という百貨店チェーンを俯瞰してみると、小規模店やサテライトショップがとても多いからだ。
すなわち、徳島のような都市で商売することを得意にしていきたいということである。
百貨店チェーンもいろいろありますが……皆さんにとっての百貨店は何でしょうか?
百貨店というのは珍しくも店舗別売上が全国的に集計されている。
ただし、通信販売・訪問販売の売上が本店に一括計上されたり、支店・サテライトショップの売上が統括店に計上されたり、
数字の読み方には注意が必要な面はあるが、傾向を知る上ではよいと思う。
これで上位30位(2019年度の数字らしい)までに列挙されている百貨店をチェーン別に並べると、
- 高島屋 : 名古屋(4位), 大阪(5位), 日本橋(7位), 横浜(8位), 京都(14位), 新宿(24位)
- 伊勢丹 : 新宿(1位), 岩田屋本店(福岡・2005年以来伊勢丹傘下: 22位), 京都(28位)
- 三越 : 日本橋本店(6位), 銀座(17位), 名古屋栄(25位)
- 松坂屋 : 名古屋(10位)
- 大丸 : 心斎橋(16位), 神戸(21位), 京都(26位), 札幌(27位), 梅田(29位)
- 西武百貨店 : 池袋本店(3位)
- そごう : 横浜(11位), 千葉(22位)
- 阪急百貨店 : うめだ本店(2位)
- その他 : 東武池袋本店(12位), 東急百貨店渋谷本店(13位), 小田急百貨店新宿店(15位), 京王百貨店新宿店(19位), 松屋銀座(20位), 井筒屋本店(北九州: 30位)
これを見てみると高島屋は圧倒的ですよね。名古屋・横浜・京都では地域筆頭ですからね。
大阪・東京(日本橋)というのは、都市内にさらに売っている店はあるが、存在感はとても大きい。
(名古屋はJR東海高島屋の運営で、同社はJR東海の子会社で高島屋は少数株主だが、高島屋であることに違いはない)
一方で、百貨店業界では最大勢力である 三越伊勢丹 は、大型店舗ということで言うと広がりは少ない。
伊勢丹新宿店と日本橋三越本店の東京の2店舗は大きいが、それに次ぐのも同じく東京の銀座三越である。
20位台には、福岡の岩田屋(ブランドは伊勢丹ではないが)、名古屋栄三越、JR京都伊勢丹 とある。
福岡では地域筆頭ですけどね。運営会社は岩田屋三越、福岡では天神地区で岩田屋本店と福岡三越の2店舗体制でやっている。
でも、三越伊勢丹が百貨店業界筆頭なのは、ローカルな店舗やサテライトショップが多いことなんだろうと思う。
出かけた先で三越や伊勢丹の看板を見ることはけっこうある。確かに高松にもあるなと思っていた。
以前、水戸に梅を観に行ったとき、千波公園から水戸駅に歩いていたら、三越の看板の立った小さな店があった。
これこそがサテライトショップですよね。(もっとも水戸からは今年に撤退したそうだ)
三越伊勢丹ではこのような店を増やしており、新設店舗は「エムアイプラザ」という名前を付けている。
実は徳島への出店もこの流れによるものだったんですね。
このようなサテライトショップは、店舗面積が少ないながらに、衣料品・雑貨・食品など置いているようだ。
ただ、当然のことながら、これは品揃えとしては最小限の物と言える。
メインはギフト商品の受注と、そして 日本橋三越本店・伊勢丹新宿店 への取次である。
テレビ会議システムを使って、基幹店舗の専門スタッフが対応できる仕組みがサテライトショップ、
あるいは松山三越など百貨店としては小規模な店舗で導入されているよう。
こうしてローカルな店舗でも、百貨店らしいニーズに応えていこうというのが、三越伊勢丹の考えのようだ。
三越伊勢丹がこういうところに活路を見いだしているのは、このニュースをきっかけに調べて知ったんだけどね。
専門店や通信販売が発展していく中で、百貨店のようなワンストップストアはかつてほど好まれなくなってきた。
それなら専門店化だというアプローチを取ったのが高島屋だと理解している。
東京・日本橋店のリニューアルにあたって、新館を専門店ビルにして、百貨店との2本立てにする一方で、
高島屋自身も時計専門店として「タカシマヤウオッチメゾン」を路面店として出店している。
(タカシマヤウオッチメゾンの名前は、大阪店の増床時に時計売場をスイスホテル5階にくくりだしたときに登場している)
もっともこういう発想は伊勢丹でもあって「ISETAN MIRROR」の名前で ルミネ新宿内などに化粧品専門店を出してたりするんですけどね。(cf. 百貨店っぽい駅ビル)
一方で、ワンストップストアとしての百貨店のニーズもやっぱりあって、それは全国に遍在している。
ところがそれだけの品揃えをして、専門スタッフを揃えて対応できる店が成り立つ都市は全国的にも限られている。
それなら、それができている店(三越伊勢丹にとっては東京の2店舗)が全国に向けて売ればいいじゃないと。
そうすると地域ごとにあれこれ在庫を抱えなくてもいいわけですよね。店員もそこそこで運営できるわけですよね。
この辺は基幹店舗に自信があるからこそできることだなと思う。
というわけで、そごう が去った徳島に期待する百貨店もいたという話ですね。
神戸・大阪までそう遠くないということで、徳島での買い物にこだわる客はそう多くないが、
一方で そごう だった頃から、店舗外売上が4割に達していたなど、ワンストップストアとしての期待度も見て取れる。
三越伊勢丹はこういうニーズを取りこぼさずやっていくことに自信があるということですね。
そごう が撤退してからの方が買い物が充実してよいと思わせるほどになればいいですね。
もっとも、百貨店のサテライトショップが入って アミコ が賑わうようなこともなかなか想像できず。
県庁所在地やそれに準ずるような都市もいろいろ行ったけど、
その中でも徳島と甲府はかつて栄えていたのがわかるだけに、現在の中心市街地の干からびようは痛々しいことこの上ない。
それでも徳島から アミコ すらなくなったら、中心市街地に核となるべきものはなにもないという状況になりかねないわけで、
なんとか百貨店へのアプローチは残しておきたかったのはわかるけどね。