アメリカの謎の「相互関税」だが、そもそもアメリカは日本から何を輸入しているのか。
自動車と自動車部品ってのは大きいのは確かだけど。
このあたりの統計データは財務省の普通貿易統計を調べるとわかる。
普通貿易統計
概況品というのが大まかな分類を知るのによさそうである。
概況品は1桁、3桁、5桁……と細かく分類すると桁数が増えていく。
3桁である程度想像できるものもあるが701「一般機械」では何かよくわからない。
というわけでそこら辺は5桁で分解してだいたい理解できそうな単位で見てみた。
なお、2024年(暦年)の日本からアメリカへの輸出総額は21.3兆円である。
やはり多いのが70503「自動車」が6.0兆円、70505「自動車の部分品」1.2兆円で、
その次の 70101「原動機」の1.1兆円も車両用(70101032)が0.63兆円で大半。
それ以外の原動機としては船外機などがあるらしい。
70119「建設用・鉱山用機械」というのも0.90兆円と多い。
走る機械という点では自動車とも共通的だが。
巨大なので現地生産も多いが日本メーカーが世界的に強い分野である。
このほか、自動車や走る機械という観点では
- 603「ゴム製品」0.31兆円 (うちタイヤ・チューブが0.21兆円)
- 70127「荷役機械」0.25兆円
- 70325「自動車用等の電気製品」0.21兆円
- 70507「二輪自動車類」0.13兆円
- 70103「農業用機械」0.12兆円
と、ここまで列挙したものを合計すると10.3兆円と輸出全体のほぼ半分。
その次に出てくるのが、このような工場や研究などで使用される機器である。
- 811「精密機器類」0.60兆円 (光学機器など)
- 70131「半導体等製造装置」 0.53兆円
- 70301「重電機器」0.49兆円
- 70327「電気計測機器」0.42兆円
- 70125「ポンプ及び遠心分離機」0.40兆円
- 70303「電気回路等の機器」0.27兆円
- 70107「金属加工機械」0.25兆円
精密機器類には時計、メガネ、カメラのレンズなどもあるが、製造装置や研究関係が大半かと。
事務用機器って名前からはピンとこないがコンピュータのことですね。
3.0兆円ということで、自動車ほどではないが大きなグループである。
製造に不可欠な材料というのも多く見られる。
501「元素及び化合物」0.48兆円、なんのことかよくわからないが、
どうも電池に使われる原料の輸出が多いらしいですね。
70105「事務用機器」0.45兆円、名前からするとピンと来ないがコンピュータで、
日本からの輸出はその部分品が多くを占めているようである。
70319「電池」0.34兆円、リチウムイオン電池でしょうかね。
611「鉄鋼」0.30兆円、615「金属製品」0.30兆円、
このあたりは「トランプ関税」の初期に話題となった鉄鋼の関税の対象だが、
自動車向けを中心に高付加価値の鋼材のニーズがあり、重い鉄をわざわざ輸出しているようだ。
515「プラスチック」0.29兆円、こういうのもアメリカに輸出してるのか。
70323「半導体等電子部品」0.27兆円、昔ほどではないが電子部品もそこそこある。
このような材料類が3.2兆円ぐらいありそうで、けっこう大きいんだな。
このほか特徴的な輸出品としては、
507「医薬品」0.41兆円、どっちかというとアメリカからの輸入が多いが、
日本には世界的な製薬会社もあるので、アメリカへの輸出もそこそこある。
70511「航空機類」0.24兆円、といっても日本から飛行機を輸出しているわけではない。
日本には飛行機の部品を作るメーカーが多数あり、エンジンの部品などその範囲は多岐にわたる。
ある程度の大きさがあるものとしては、ギャレーなどの内装品や、飛行機の主翼などがある。
そう、セントレアにドリームリフターが主翼を運ぶために来てますよね。
ここを見てもわかるのだけど、日本からアメリカへの輸出品というのは、
アメリカでのものづくりを広範囲にわたり支えるものである。
確かに完成車が6.0兆円というのは目立つけれど、それだけではない。
自動車部品にしても日本メーカーに限らず、国内メーカー、その他の外国メーカーと、
日本産の自動車部品は広範囲にわたり使用されていると聞いている。
建設機械などはアメリカでの建設業、鉱業などを広く支えるものだし、
製造装置というのは言うまでも工場を作るために必要なものである。
アメリカ生産の拡大には日本からの輸入品は重要が果たす役割は大きいはずである。
ところで逆にアメリカから日本に輸入されているものって何が多いんでしょうね。
これも同様の方法で調べられる。こちら総額で12.7兆円である。
筆頭は 507「医薬品」で1.1兆円、やっぱり医薬品は輸入が多いですよね。
次いで工業製品として多いのが 70101「原動機」1.1兆円 なのだが、
日本からアメリカへ輸出されるエンジンは多くが自動車用だが、
逆にアメリカから輸入されるエンジンは多くが航空機用である。
70505「航空機類」0.48兆円と合わせれば1.6兆円が航空機関係である。
501「元素及び化合物」0.60兆円、811「精密機器類」0.55兆円、
これは日本からの輸出とどっこいどっこいのようだ。
実はアメリカからの輸入品として多いのが資源である。
305「天然ガス及び製造ガス」1.1兆円に驚いた。
303「石油及び同製品」0.47兆円もそうだが、シェールガス・シェールオイルってやつですね。
日本としては天然ガス・石油調達先の多角化ということでアメリカからも輸入している。
石油製品としては石油化学工業用のナフサを輸入する分もあるでしょうが。
日本では原油で輸入して精製するのが石油製品の主な供給方法だが、
余剰な軽油を輸出して、石油化学工業用のナフサを輸入する構造がある。
515「プラスチック」0.21兆円もガスとの関係が深くて、
天然ガス内に含まれるエチレンを集めてプラスチックを作れるんですよ。
301「石炭、コークス及び練炭」0.36兆円、意外とアメリカからも輸入してるんですね。
このような資源関係で2.6兆円ぐらいはあろうかと思う。
そしてやはり農畜産品ですよね。
009「穀物及び同調製品」0.63兆円、とうもろこし、小麦などが多い。
203「採油用の種・ナット及び核」0.20兆円、名前からするとわかりにくいが大豆である。
アメリカ産品の依存度が高いのが とうもろこし と 大豆 ですね。
003「肉類及び同調整品」0.50兆円で牛肉・豚肉ということで、
消費者にとっても 国産かアメリカ産かオーストラリア産か……と牛肉を買うのに悩むことは多い。
001「果実及び野菜」0.24兆円というのもけっこう多いですよね。
ブロッコリー、加工用のじゃがいも、柑橘類などのようですね。
これらの合計が1.9兆円、全部合わせれば航空関係よりは多いけど。
アメリカからの輸入品として大きい航空関係だが、
さっきも書いたように日本からの輸出品が支えている部分も多い。
というか日本メーカーがボーイングのサプライヤーになる理由って、
日本で多く使われているからという側面も大きいわけだし。
農畜産品だが、とうもろこし と 大豆 は圧倒的にアメリカ産だし、
小麦は用途により産地がだいたい決まっているので代替性は乏しい。
資源は調達先の多角化という観点でアメリカへの期待がある。メインではないかな。
日本がアメリカからの輸入に報復関税を掛けることの無意味さは見てわかる通りで、
金額として大きい品目の大半が代替性がないとか、輸入先の多角化という意図がある。
関税が高くなったから他国から輸入しようとはならんわけですよ。
むしろ恐れるべきは「トランプ関税」によりアメリカでの生産体制が脆弱化することである。
このようなことは石破総理大臣も言っていて、
アメリカによる広範な貿易制限措置は日米両国の経済関係だけではなく世界経済あるいは多角的な貿易体制全体に大きな影響を及ぼすものであり、WTO協定や日米貿易協定との整合性について深刻な懸念を有している
(石破首相 “極めて残念で不本意 企業に万全の支援”相互関税で (NHK))
自由貿易の盟主としてはこう言うしかないというのもあるけど、
日本企業もアメリカで多くの事業を行っているわけですよ。
特に ものづくり の分野では日本企業が果たす役割は大きいわけだが、
そこには日本を含めた外国から円滑に輸入できることは重要なわけですよ。
そこはトランプさんもよく理解してもらわないと困るわけである。