競馬の世界でダービー馬は特別な存在だけど、変なエピソードも多い。
例えば、ダービーと菊花賞の二冠馬はあまりいないとか。
1984年のグレード制導入以来では1頭もいない。
三冠馬はいる。皐月賞と菊花賞の二冠馬もいる。でもこの組み合わせはいない。
そんな不思議の1つとして言われていたのが、ダービー馬が外国のG1を勝ったことがないという話である。
とはいえ、これは今は昔である。2022年に前年の日本ダービー馬、シャフリヤールがドバイシーマクラシックを勝ったからである。
でも、他のクラシック競走の優勝馬に比べると遅い話ではあるんだよな。
日本調教馬が外国のG1を初めて勝ったのは2001年の香港国際競走、
香港ヴァースを勝ったステイゴールド(時間的にはこれが一番早い)、
香港マイルを勝ったエイシンプレストン、香港カップを勝ったアグネスデジタルである。
今の香港国際競走は香港と日本の馬ばかりだが、当時はそうでもなかった。
オークス馬は2005年のアメリカンオークスでシーザリオが、
菊花賞馬は2006年のメルボルンカップでデルタブルースが、
皐月賞馬は2011年のドバイワールドカップ(オールウェザー)でビクトワールピサが、
桜花賞馬(というか牝馬三冠)は2014年にドバイシーマクラシックでジェンティルドンナが勝っている。
ダービー馬だけぽっかり抜けているのである。
その間、オークス馬はシーザリオ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ(ドバイターフ)、ラヴズオンリーユー(BCフィリー&メアターフ他)と勝っているのにねと。
そういう話をすると凱旋門賞の呪いですねと言われるんですけどね。
シャフリヤール以前、ダービー馬で海外G1制覇に最も近かったと思われているのが、
2012年の凱旋門賞、2着惜敗のオルフェーヴルである。
ダービー馬っていうか三冠馬なんですけどね。前哨戦のフォワ賞を勝っての参戦である。
翌年も同様に挑戦し2着に敗れている。
凱旋門賞はずっと2400mの世界チャンピオン決定戦だと思われてきた。
だから日本からもダービー馬などそうそうなるチャンピオンが挑戦してきたが、
日本の競馬場とはだいぶ違うわけでなかなか結果を出せないものも多い。
ダービー馬が外国のG1を勝てなかったのはレース選びの問題じゃないの? という話である。
そうはいっても日本競馬にとって凱旋門賞は特別なレースですよね。
海外馬券発売の制度化も凱旋門賞の馬券を売りたいところからスタートしているわけだし。
当地PMUより、JRAの方が馬券を売るのも恒例である。
シャフリヤールは空飛ぶダービー馬なんて言われたこともあったが、
それはそうとして2017年の大阪杯のG1化の頃から中長距離路線の転戦の仕方が変わっているんだよな。
昔はダービー馬でも3200mの天皇賞(春)に出るのが多かったんですよね。
大阪杯はその前哨戦という位置づけだったが、距離別チャンピオン決定戦の1つに改められ、
大阪杯と天皇賞(秋)で春秋の2000mのチャンピオン決定戦が揃うことになった。
これで大阪杯→宝塚記念のような転戦が流行るかと思ったが……
現実にはより細分化して、2400mのドバイシーマクラシック、1800mのドバイターフと分散していった。
さらに2000mでも香港のクイーンエリザベス2世カップがあり、
レース間隔など考えて大阪杯より香港というのも出てくる有様。
大阪杯の賞金は上がったが、まだこれら3レースの方が高額賞金である。
シャフリヤールは2400mにこだわってドバイシーマクラシックを選び優勝したわけである。
これと同様の経緯で今年にもダノンデサイルがドバイシーマクラシックを勝っている。
この2頭に共通するのはジャパンカップの前哨戦も海外に求めたことである。
天皇賞(秋)では分が悪いと思ったのだろう。
一方、2023年のダービー馬、タスティエーラは2000mに活路を見いだし、
香港に転戦、今年のクイーンエリザベス2世カップを優勝、これがダービー馬3頭目の海外G1ウイナーである。
距離にこだわって転戦するのが強いという近年の傾向そのものだった。
さて、こんな話を書いたのも凱旋門賞だからということで、
今年のダービー馬、クロワデュノールらが日本から挑戦したわけだが、まぁさっぱりという感じ。
クロワデュノールについて言えば、大外枠というのも堪えたのかなと。
なにしろ内枠3頭で1~3着を占めるような状況で、競艇か? という有様。
いろいろな条件がはまらないと勝てないレースではありますが。