先日バイオマスナフサが、バイオマスディーゼルやバイオジェット燃料の副産物である話を書いた。
植物油に水素を加えて分解したものを蒸留する中で、
実際に欲しい軽油分・灯油分より軽いナフサ分・ガス分が生じるので、
この有効活用策としてナフサクラッカーに投入して、化学製品の製造に使っていると。
ただ、こうして作られるバイオ燃料なのだが、石油精製で得られるものとは多少性状に差がある。
この結果、日本の税制上は灯油扱いになってしまうのだという。
日本では自動車の燃料として使われることが想定されているガソリンと軽油にはそれぞれ揮発油税と軽油引取税がかかる。
それぞれ課税方法に差があるのだが、これは軽油は道路以外で使う場合には免税が認められることが多いため。
ガソリンは自動車以外で使っても化学原料以外はほぼ免税は認められない。
(なのでアウトドア用のホワイトガソリンも揮発油税は課税されているらしい)
ここに該当しない灯油や重油はこれらの税金は課税されない。
ただ、ディーゼルエンジンは灯油や軽油よりやや比重の重いA重油でも動く。
A重油は船や発電機のディーゼルエンジンの燃料として使用されることが多い。
実態はほぼ軽油なのだが、税制上軽油に該当しないので重油の一種となっている。
一方で自動車の燃料として灯油やA重油を使用することは禁止されていると考えられている。
後で書くように軽油引取税を支払えば可能ではあるのだが、手続きが面倒なため通常は行われない。
さて、軽油引取税のルールを簡単に言うとこうなっている。
- 軽油とは比重0.8017~0.8762の炭化水素油である
- 軽油に炭化水素油以外の成分を混ぜたものも軽油である
- 軽油を販売者(通常は特約業者)から引き取るときに課税される
- 軽油以外の炭化水素油を自動車の内燃機関燃料として引き取り・消費すると課税される
- 炭化水素油を混ぜて軽油を作ると、すでに軽油引取税を払った分以外が課税される
- 軽油に混ぜ物して軽油を作る行為は製造と見なして、混ぜ物分に相当する課税する
だいたいこんな感じですね。
自動車用燃料として使う場合は軽油として特約業者から購入し、軽油引取税を払う。
灯油やA重油を自動車以外で使用する場合は、これらを混ぜて軽油相当にしてはいけない。
基本的にはこのルールで運用されている。
ところがバイオディーゼル燃料はあえて軽油から逸脱した成分を使うので、
この脱税対策にあたるいろいろな措置が問題になってくる。
バイオディーゼルに関する国内外の動向について (pdf) (経済産業省)
後半の方にFAME(脂肪酸メチルエステル)とHVO(水素化植物油)の税制上の扱いが書かれている。
冒頭に書いたのは水素化植物油の話である。税制上は灯油扱いになるが、概ね軽油と同成分である。
FAMEは植物油からグリセリンを分離して軽油同様に使えるようにしたもので、
これ自体は炭化水素油ではない。ゆえに軽油とは明確に異なる。
まず、軽油に混ぜ物をして軽油を作ったものは軽油なので、
FAMEでもHVOでも軽油の要件を満たすように混ぜて販売すれば、
それは通常通り軽油引取税の課税対象になる。
現状はこれで対応していることが多い。
ユーグレナ社、HVO51%混合の次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を開発 軽油規格に適合、公道走行可能な混合比率として最高水準を達成 (ユーグレナ)
ただ、混合比率が高くなってくるとそうも言えなくなってくる。
FAMEの場合、これを100%使えば、それは明らかに軽油ではないので課税されない。
これはLPG自動車(タクシーを中心に使われている)と同様である。
ただ、LPGと異なるのは軽油とFAMEは混在して使ってもよいということである。
タンクの中で軽油とFAMEが混ぜたものが、軽油の条件にあたると、
混ざった全体が軽油として無条件に課税されることになる。
FAMEが5L入ったタンクに、軽油(課税済)を45L給油すると、FAME 5Lに課税される。
さっき、自動車以外の用途で灯油・A重油を使う場合に、混ぜて軽油相当にしてはいけないと書いたのはこのため。
軽油とFAMEを混ぜたものが軽油の条件に当てはまらない場合、
自動車以外の用途では問題ないのだが、自動車の用途では全体に課税される。
軽油以外の炭化水素油というのは、炭化水素油に混ぜ物をしたものも含む。
FAME 99%・軽油(炭化水素油)1%でも、全体が炭化水素油になる。
軽油(課税済)が5L入った自動車のタンクに、FAMEを45L給油すると、
この45Lが自動車用の炭化水素油として課税される。散々である。
なのでFAME 100%なら軽油引取税は課税されないというのは、自動車用途では空想に近いものである。
HVOは税制上は灯油にあたるので、自動車用燃料として販売する行為自体が課税対象である。
というわけで自動車用燃料として使う分には課税上はシンプルである。
ただ、軽油ではないものを自動車用燃料として使う行為自体がいろいろ面倒で、
軽油に軽油以外の炭化水素油を混ぜる行為は課税関係とは別に製造として手続きが必要である。
軽油(課税済)が5L入ったタンクに、自動車用HVO(課税済)を45L給油しても、
これによるあらたな課税は生じないが手続き自体は必要である。
自動車以外でHVOを使う場合、それ自体は灯油と同じである。
混ぜても軽油にならなければ免税のまま問題ない。
問題は混ぜた結果として軽油になる場合である。これは軽油の製造にあたる。
手続きもさることながら、先ほどFAMEで書いたのと同様、混ぜた全体が無条件で課税される。
これは免税軽油でも同様で、HVO(課税対象外)に免税軽油を混ぜて、全体が軽油になると、
HVOに対して軽油引取税が課税されることになる。
これは問題だということで、条件を満たす鉄道事業者については、
給油時にHVOと免税軽油を混ぜる行為は製造と扱わないという特例措置がとられている。
免税軽油と課税対象外のバイオ燃料を混ぜる行為はあまり厳しく見る必要は無いだろうが、
課税対象外のバイオディーゼル燃料が流通すると自動車で使えてしまうので、
バイオディーゼル燃料は軽油として流通するのが好ましいという話になるんですよね。
一旦軽油になってしまえば、それを混ぜる行為も何も問題にならない。
さっきのHVO51%燃料というのはまさにこの問題の答えである。
しかしそうするとHVOやFAMEの混合率が上げられないので、
灯油と軽油の線引きを見直すのか、いろいろ考えないといけないのかもねと。