沖縄鉄軌道は費用対効果が悪い?

現在、沖縄県を走っている鉄道は沖縄都市モノレール、ゆいレールに限られている。

那覇空港と浦添市の てだこ浦西駅を結ぶ路線である。

2019年に首里~てだこ浦西が延伸されたが、高速バスとの接続やP&Rを意図しての延伸らしい。

那覇周辺の交通機関としてはそれなりに活用され、営業損益は黒字化している。


ただ、あくまでも那覇周辺に限られ、都市間移動に活用できるものではない。

それでどうも沖縄鉄軌道という那覇~名護の鉄道構想があるらしい。

しかし、費用対効果を計算すると1以上にならないのだという。

那覇-名護間の鉄軌道計画、玉城知事が部分開業を示唆 「収益性高い地域で先行整備も」 (産経新聞)

というわけでなかなか難しいのだが……という話らしい。


では、どれぐらいギャップがあるのかという話なのだが……

沖縄政策/鉄軌道等導入課題詳細調査(令和6年度) (内閣府)

50年間で生じる便益と事業費でB/Cを計算すると、もっとも基本的なパターンで0.49とある。

確かにB/Cが1を切っているがこういうのは見覚えがありますね。


それは北陸新幹線の大阪~敦賀間ですね。

現在計画されている小浜・京都・学研都市経由でのB/Cは0.5程度である。

新幹線の費用対効果

建設費が高額のため、現在の計算手法でB/Cを1以上にするのは難しいが、

便益を現在価値に換算するのに使う社会的割引率4%が高すぎるとか、

強風による運休・遅延の減少や、交流人口の増加など貨幣価値に換算できていない便益が多そうであることから、

計算手法の見直しでB/Cを1以上にできないかと考えていると。


沖縄鉄軌道のB/Cが低いのはやはり建設費も要因のようだ。

基本パターンではおよそ80kmで事業費が10320億円となっている。

1kmあたりの事業費は130億円と出てくる。

北陸新幹線(金沢~敦賀)が125kmで1兆6779億円で134億円/kmだから、

那覇~名護に鉄道を引くのは新幹線並みに単価の高い事業なんですね。

なぜ建設費がかさむかというと、地下区間とトンネルが多いんですね。

中南部は市街地化したところを走るので半分ぐらいは地下鉄になってしまう。

恩納~名護はアメリカ軍基地との兼ね合いもあり険しい区間を走る。

大都市圏の地下鉄に比べれば安いかなとは思いますが。


建設費は軽減したいのだが、高速性も必要である。

最高速度100km/hで運行できれば那覇~名護を1時間程度で結べるのでこれが目標。

このためモノレールや現在のAGTは遅いので選択肢に入らない。

そこで考えられているのが1つがミニ地下鉄のアプローチである。

リニアメトロや小型車両の活用で低コスト化しようということである。

トンネル断面積が減ればコストが下がるのは立証されている。

「スマート・リニアメトロ」というのが出てくるが、

100km/hで走行できて、12mの車両で走るリニアメトロらしい。

現在のリニアメトロは急カーブの続くトンネルで速度が出ないため、

国内での実績としては最高速度70~80km/h程度である。

条件さえ良ければ現在のリニアメトロでも100km/hは出そうだが。


もう1つのアプローチがHSSTや高速AGTの活用である。

HSSTといえばリニモだが、急勾配に対応でき高速走行できる。

ただし、このシステムは高架鉄道向けなので、できるだけ高架走行にしたい。

でも、やはり地下・山岳トンネルは避けられないですからね。

イマイチな方法かなという気はする。


これらの手法を活用するとB/Cは0.7程度にはなるが、その程度である。

貨幣換算できていない便益が相当あるだろうからそこまで悪くはないのかもしれないが、

事業費の捻出などの課題も多いわけでそう簡単ではない。

せめてB/Cが1以上あることを立証できればよいのだが。


輸送力を増強できる余地を考えれば、HSSTやAGTはあまりよくないだろう。

普通鉄道が輸送力・スピードの両面からよいとは思うが、事業費がかさむだろう。

リニアメトロは通常の地下鉄より狭いので輸送力は劣る部分はある。

東京の大江戸線はそれで大混雑で大変なんですけど。

ただ、6両編成だとあれぐらいは運べるのでそれでもよいとは言える。

少なくともHSSTやAGTよりは拡張余地は多そうである。

事業費縮減効果と天秤にかけてどうなるかというところか。


B/Cが1を超えたところで事業費の捻出方法は課題である。

整備新幹線事業と類似したスキームを採用できないかという話があり、

貸付料(このケースではほとんど見込めなさそうだが)を差し引き、

2/3を国、1/3を地方(主に都道府県)で賄う仕組みである。

沖縄県に新幹線は整備されないだろうと考えればアリかもしれない。

ただ、こういう手法を適用するにも便益が大きいことを立証しないといけないわけである。


ゆいレールができる以前、沖縄県には鉄道がない期間が長かったが、

実はかつて「ケービン」と通称された軽便鉄道が那覇~嘉手納などに存在した。

この那覇駅跡地に那覇バスターミナルが整備されている。

そのバスターミナルに隣接してゆいレールの旭橋駅が存在している。

この軽便鉄道と沖縄鉄軌道の構想は全く違うものだが、

那覇の拠点となる場所は旭橋駅で考えられているようである。