相応のお代を頂きたい博物館

今年4月から国立博物館の平常展の観覧料が値上げされるそうだ。

東京国立博物館等の観覧料金の改定について (東京国立博物館)

九州国立博物館はまだ未定だそうだが、一般料金では東博が620円から1000円へ、奈良博・京博は520円から700円となる。

あと国立博物館という名前ではないが奈良文化財研究所(同じ国立文化財機構)の展示施設、飛鳥資料館の料金も変更される。

特別展については展覧会に応じて決定だが、基本的な価格帯は従来通り(東博では1600~1700円)とのこと。


値上げの理由としては、現在の観覧料では展示にかかるランニングコストすら賄うことができないからだという。

博物館の使命として文化財の保存というのがあるのはもちろんで、修理などにお金を投じているわけだが、

そもそも展示するということ自体がお金がかかることで、施設の維持管理や館内案内にかかるコストだけでも相当らしく、

それを入館者数で割ると、520円とか620円では全く足らないらしい。

まして外国からの来館者も増えているような状況。(なんと東博では総合文化展の有料入場者の7割が外国人だという)

多言語での解説充実など、博物館への期待は大きいが、今のままでは現状維持で精一杯ということである。


もちろん、国立文化財機構は国の機関ですから、税金も投じられている。

年度計画を見てみると、国立博物館部門では全収入の74%が交付金・補助金で、展示収入は19%ほどだという。

一方の支出を見てみると、もっとも大きな項目が展覧事業費で25%、次いで人件費が19%、収集保管事業費が16%となっている。

展示にかかる費用が博物館全体の事業を圧迫していて、文化財の保存に投じられる費用は案外少ないことが理解できる。

ここからも観覧料では展示にかかる経費を(人件費は別立てにも関わらず)賄えていないことがわかる。

展示収入が増えれば、展示活動と保存活動の両方の充実が図れるというのは、まさにその通りだろう。


この資料に書いてある博物館の主張で、そういえばそうだよなと思ったのがこの部分。

総合文化展では、常時3000県の文化財が展示されていますが、これを「常設展」と呼ばないのは、年間延べ300回にも及ぶ展示品の入替えを展示室単位で行い、その結果、年間約1万件の文化財を展示することになっていて、決して「常設」ではないからです。

このような頻繁な展示替えが必要なのは、日本や東洋の美術品の多くが素材的に大変脆弱で、温湿度や光などの変化に大きく影響を受けるため、素材の種類に応じて展示期間に制限を設ける必要があるからです。(略)

その結果、総合文化展に来るたびに違う文化財に出会えるのが東博の大きな魅力の一つとなっていますが、担当の研究員が直接行う展示替えの作業に要する時間と労力は、欧米の博物館では考えられないことです。

展示物によるが、展示替えが多いのはその通りで、さらに1~2ヶ月程度で代わる代わる実施される特集展示も充実している。


もっとも、そこまで充実しているのは東博ぐらいかもしれないが。

奈良博は平常展専用の なら仏像館 が彫刻の展示に特化していて、彫刻以外の展示は特別展(準備期間含む)と重ならない範囲でしかできない。

なので彫刻以外の展示物は展示される期間がずいぶん限られているから、必然的に短期間で入れ替わる。

なら仏像館に限られば、あまり展示替えは多くない印象だし、特集展示があってもなくても観覧料金が変わらないのはちょっと……

新館は正倉院展を想定して作ったものなので、正倉院展は不自由なくできるようになったが、正倉院展と他の展示までは両立できないと。

京博は 明治古都館 が改修中のため、特別展の期間は平常展が閉鎖されるというのが惜しい。

奈良博と違って、平常展をやっているときは、間違えなく内容は充実しているので、その点ではよいとは思いますが。

暫定的な措置ではあるが、明治古都館の改修完了の時期は明らかではないので、この状態が長期間続くことになる。


改定後の観覧料金だが、京博の一般700円は気にならないが、東博の一般1000円というのはちょっと一線を越えた感もある。

とはいえ、内容の充実っぷりを考えれば、それぐらい取れるかなという気もする。

特集展示をうまくアピールすれば、値上げしても来るんじゃないの? なんて。

奈良博の一般700円はさっき書いた事情があるので、常時この料金は強気だなという気がする。

おそらくそこは奈良博も気づいていて、アクションプランには新館が使えない期間の来館者増のための方策も書かれている。

一般はこの通りだが、大学生については東博で410円から500円、奈良博・京博では260円から350円になる。

高校生以下・18歳未満と70歳以上の観覧料無料はこれまで通り。

大学生は値上げだが大したことではないし、小中学生や高校生はこれまで通り無料ということで、ここはよいことですね。

ここから徴収する方法もあっただろうけど、若い人にとっては文化財に触れる貴重な機会ですからね。


ちなみに会員制度については、来年4月に見直し予定とのこと。

「国立博物館メンバーズパス」は一般2000円、学生1000円なので、改定後の料金では東博で2回、奈良博・京博で3回で元が取れることになる。

こういうのは来年、値上げされるだろうなというのが容易に想像できる。

すると僕が利用している東博のメンバーズプレミアムパスも値上げされるんだろうなと。(現状は年5000円)

とりあえず今年は従来通りの料金なので、お得でよいが、それが続くわけではないということである。