冬季オリンピック、日本チームの活躍している種目は多岐にわたるが、
スピードスケートもそんな種目の1つである。
そのチームパシュートを観戦して「先頭交代しなくていいの?」と戸惑っている人がしばしば。
最近流行の戦術で、先頭交代によるタイムロスを減らせるので採用されているのだという。
スピードスケートのチームパシュートは比較的歴史の浅い種目だというが、
この種目は自転車のチームパシュートに着想を得て作られたとされている。
自転車競技は全般的に先頭を走る選手への負担が重い競技である。
ロードレースだと先頭を交代しながら走るのが不文律とされていたり、
競輪では先頭を走る選手がまるで勝負にならないことから、
先頭に順位の付かない選手を置いて途中まで走らせる先頭固定競走が導入された。
トラックレースのケイリンはここに着想を得た種目である。
チームパシュートは4人の選手が接近して走ることで、
先頭選手の負担が重い一方、後ろの選手は空気抵抗が軽減される。
このため4人で先頭を分担することで、全体として速く走れるわけである。
さらに言えば3人ゴールすればよいので、1人は途中で脱落しても良い。
というわけで自転車競技では先頭が順々入れ替わる種目で間違いない。
スピードスケートもごく最近まではこの通りだったのだが、
2020年に自転車とは異なる手段が出てきて、それが後ろの選手が前の選手を押すという方法である。
すなわち、空気抵抗を受ける先頭選手の負担は重いのだが、
その先頭選手の負担を軽減するため後ろの選手が押せば、長く粘れる。
なんならゴールまで粘れてしまう。そういうことができるのだという。
これは自転車ではあり得ませんよね。
実際のところスケートでも危険な技ではあって、選手間の距離を詰める必要があるから。
このため日本の女子チームは前回北京オリンピックでは部分採用に留まった。
すなわち先頭交代はやるのだが、部分的には後ろから押してもらうと。
今回は練度が上がったこともあって、本格採用にいたったとのこと。
この結果、ずっと高木選手が前を引っ張るという形である。
かなり過酷らしいが、そこは後ろに粘り強い選手を置くことでカバーすると。
国際大会でもこの体制で結果を出しており、満を持してのオリンピックとなっている。
ただ、これってどうなのよという意見も当然あるわけですよね。
選手間の分担をどうするかはチームの戦略で自由であるべきだが、
やはりこの先頭の入れ替わりというのが競技の特徴と思われてきたじゃないかと。
それを違う競技というのかは意見も分かれるところだが、
何らか封じるようなルール変更も考え得るところである。
やるとすれば必ず先頭を交代するというルールよりは、
プッシュ作戦を封じるというルールの方がよいように思う。
やはりこの作戦は危険が伴うものであるから。
一方でそれができるチームも国際大会では普通にいるとなれば、
作戦の1つとして認められるべきだという考えもあるだろう。
場合によってはそれが別々の種目として行われることもあり、
バタフライは元々平泳ぎの定義にあたる泳ぎ方だったが、
あまりに違いすぎるという理由で別種目に分けられた経緯がある。
ただ、昨今オリンピック種目は絞り込みが求められているところで、
分けたところでオリンピックでは一方しか出来ないとなれば、
オリンピック種目に選ばれなかった方は細ってしまうのが宿命。
チームパシュートは日本語で「団体追い抜き」と書かれるが、
入れ替わりのために追い抜きがないのにこれいかにいう意見もあるが、これは明確に間違いである。
自転車競技では個人パシュートというのも存在する。
(2008年のロンドンを最後にオリンピック種目としては廃止)
2選手のスタート・ゴールが半周ずつズレていて、
通常は同時にスタートを切って先にゴールをしたほうが勝ち。
実は半周ズレた相手選手を追い抜くとその時点で勝ちになるルールがある。
そう「追い抜き」というのは相手選手を追い抜くと勝ちという意味だったのだ。
これ僕も最近まで知らなかったんだけどね。
このルールは自転車・スケートともにチームパシュートにも存在する。
ただ、トップレベルの国際大会でこのような差が生じることは極めて稀である。
なので、入れ替わりがなくてもやはりチームパシュートである。