あまり意識していなかったのだが、この夏は東京で世界陸上が行われる。
ことは2021年、1年遅れの東京オリンピック、陸上競技は結局は無観客で行われたが、
その時にワールドアスレチックの会長が2025年に国立競技場で世界陸上をやらないか、
という話になり、これはよいアイデアだとトントン拍子で進んだのだった。
新しい国立競技場は、オリンピックのメインスタジアムとして陸上競技を開催するのは決まっていたが、
その後に陸上競技場としてのニーズが見込めないため、球技専用化ということが考えられていた。
なぜ、陸上競技場としてのニーズが見込めないかというとサブトラックがないからである。
東京都でこの条件を満たしうる施設としては調布市の東京スタジアム(味の素スタジアム)があるが、
ほぼサッカーでしか使用されないため、公認陸上競技場から外された。
このスタジアムのサブトラックとして作られた西競技場(AGFフィールド)は、
第3種公認陸上競技場ということでローカルな大会で使用されている。
それでよしとしているのがオリンピック前の東京の陸上競技場事情である。
そんなわけで危うくトラックが撤去されかねなかったところ、
2025年に世界陸上をやりますと宣言したことで、球技専用化の話は一旦消えた。
その上で、オリンピック後に仮設サブトラックを撤去しても、
国立競技場を第1種公認陸上競技場として残すために日本陸連は規定を変更した。
オリンピック競技大会を開催した陸上競技場は、補助競技場を欠く場合であっても、第1種公認陸上競技場とすることができる
こんな規定を加えたそうである。
これによりサブトラック撤去後も国立競技場は国内外の大規模な陸上競技大会を開催できることとなった。
とはいえ、やはりサブトラックは必要なのである。
オリンピック同様に仮設するのか? と思ったら近所の競技場を活用することで打開するそうである。
東京2025世界陸上競技選手権大会開催基本計画の策定について
開催基本計画の全文に「ウォームアップ会場・練習会場」として4つ書かれている。
まず、代々木公園陸上競技場、ここがメインで3kmほどの距離である。
距離は離れているが、サブトラックとしての機能面ではこれでよい。
次に東京体育館陸上競技場、これは会場隣接地なので近いが、
規模が小さいため、直前の調整に使用されるとみられる。
3つ目が東京大学陸上競技場、これは駒場キャンパス内の運動場だね。
ここは投てき種目のウォームアップで使用される。距離は4kmほど。
4つ目は大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場、これはだいぶ遠いな。
直前というよりももう少し前の練習場所を想定しているのかな。
この体制で世界陸上が成功すれば、今後も国立競技場は国際大会もいける陸上競技場として存続できる可能性が高まる。
そういう思惑を感じるが、果たしてこれがやりやすいのかは疑問はある。
意外な話だが、世界陸上を3回やる国は日本が初めてだそうである。
1991年の東京(このときは国立競技場にサブトラックを仮設した)、
2007年に大阪・長居スタジアム、そして2025年の東京である。
2007年の大阪は酷暑に苦しめられ、夏の日本で大会をやる難しさを感じたが、
今回は9月中旬の開催で少しだけ後ろ倒しになっている。
なので今回こそ夏の東京でマラソンができるはず。十分大変だけど。
オリンピックのときは直前にマラソン・競歩は札幌開催になりましたからね。
正直なところ、世界陸上の後に国立競技場のトラックが撤去される可能性も十分にある話だと思う。
やはりサッカー場としての需要が筆頭なんですよね。
サッカー場としてはイマイチな部分もあり改修して欲しいという声もあるわけですよ。
そのときに陸上トラックを犠牲にするというのは考え得る話だと。
サッカー場としてのターゲットはFIFAワールドカップの誘致である。
このためには今の国立競技場は客席が足らないんですよ。
とはいえ、球技専用化の改修もそれはそれでお金のかかる話。
そういう事情ができるまでは国際大会もできる陸上競技場という地位を留保しておくのかなと思う。
FIFAワールドカップ誘致は国立競技場だけの問題では済まないので。
そういう構想もあるかもしれませんねというだけの話かもしれない。
もしそういうことになれば、他のスタジアムもいろいろ手を入れないといけないし、
複数国での共催という話だって当然ある。
それに比べれば全国レベルの陸上競技の大会を時々やりつつ、
世界陸上なのか他の国際大会なのか手を挙げられる状態にしておく方が現実的には思える。
それにサッカーファンが納得するかは知りませんけど、
それがオリンピックスタジアムのお役目ですよと言えばいいんじゃないですか。