住信SBIネット銀行をNTTドコモが買収するという話が出てきた。
三井住友信託銀行は従来通り34.19%保有する株主として残るので、
SBIグループが同銀行から手を引くということになる。
NTTドコモ、住信SBIネット銀行を子会社化 銀行参入 (Internet Watch)
もっともSBI証券との提携関係は今後も続くことになっているし、
NTTはSBIホールディングスの増資を引き受けることで、
同社は兄弟会社というには弱いけど、一定の資本関係が続くことになる。
住信SBIネット銀行は歴史をたどればSBI証券の銀行ではあるが、
NEOBANKとして銀行サービスの外売りにも力を入れている。
この展開先としてはd払いなど擁するNTTドコモが考えられたということではないかと思う。
NEOBANKでの提携先との関係は今後も続けていくわけだし、
当然、その中にはSBI証券も含まれるわけである。(SBI証券NEOBANKってのもあるし)
とはいえ、SBI証券にとってみればグループ内にSBI新生銀行がある。
新生銀行もまたSBI証券との連携サービスを提供し、どちらを優先するかという考えはある。
SBI証券と住信SBIネット銀行の関係は従来より弱くなることは確かで、
そうなれば社内である新生銀行を優先する流れは強まるのではないか。
というところで、もし新生銀行とSBI証券を組み合わせるとどうなるのか調べてみた。
住信SBIネット銀行はSBIハイブリッド預金を提供しており、
新生銀行はSBI新生コネクトというサービスを提供している。
実質的に二者択一である。
SBIハイブリッド預金の残高は証券の買付余力と連動する仕組みになっている。
その余力で株式を買うと、預金残高が押さえられ、数日後に引き落とされ、
逆に配当金が入ると預金に入金されると、こんな仕組みである。
ただしSBIハイブリッド預金はATMで入出金できる普通預金とは分かれている。
なので、SBIハイブリッド預金の残高をATMで出金するには口座間の振替が必要である。入金も同様。
SBIハイブリッド預金はMRF代替という経緯から普通預金より利率がよい。
もっとも今は普通預金が年0.20%、ハイブリッド預金が年0.21%だから大差ないが。
一方のSBI新生コネクトは普通預金とSBI証券の預かり金の間で下記を自動でやってくれる仕組みである。
- 投資信託積立の設定金額を前日21時に銀行から証券へ入金
- 16時に証券の出金可能額-設定した「SBI証券留保額」を銀行に出金
うーん? と思ってしまうが、SBIハイブリッド預金との違いは、投資信託積立以外の入金は手動ということである。
SBIハイブリッド預金では残高40万円で3000円×100株を注文すると、
その時点で30万円が差し押さえられ、数日後に30万円が引き落とされる。
一方でSBI新生コネクト、SBI証券留保額=0円で投資信託積立のない場合を考えるが、
例えば、まずは新生銀行から35万円リアルタイム入金する。
リアルタイムで普通預金の残高が減り、証券の預かり金に入る。
そして同様に3000円×100株注文すると、出金可能額は5万円になる。
この出金可能額は16時に自動的に口座に戻るわけである。
あるいは新生銀行にはリアルタイム出金という操作ができるので、
これをすると16時を待たずに普通預金に戻すことができる。
その普通預金はSBI証券と連携している人は「ダイヤモンド」ステージの優遇で年0.40%の金利が適用される。
一見面倒な仕組みではあるが、SBIハイブリッド預金は銀行内で口座が分かれていることによる不便さがあった。
こちらは銀行は全て普通預金、SBI証券の買付の大半が投資信託積立であれば、
何の手間もかけずに普通預金から買付が行われるわけである。
実は僕とSBI証券の関係はこれに近い。時たま手動で買うときに入金操作が必要であることぐらいである。
それも概算で入金してしまえば余剰分は勝手に普通預金に戻るのである。
ただ、この方法との相性が極めて悪いのが株式積立である。
今ちょうど端数調整のためイオン株を毎週2株ずつ買ってるんですよ。
これは自動入金のスコープ外で、前日に手で入金するか、留保額を設定して預かり金をSBI証券に残しておかないとうまくいかない。
SBIハイブリッド預金だと後日自動的に引きと落とされるのだけど。
他の証券会社でも銀行口座と密結合して使える仕組みはあるが、
GMOクリック証券とGMOあおぞらネット銀行の間は証券コネクト口座という専用口座を使う仕組み。
楽天証券と楽天銀行の間は普通預金との間で自動的に入出金を行う「マネーブリッジ」というサービスがある。
こちらは注文時に概算額が自動入金される仕組みになっている。
注文の仕方によっては多めに入金して、営業時間後に余剰額が戻るので、メカニズムは同じである。
正直なところ、住信SBIネット銀行と新生銀行の差として大きいのは、
SBI証券との連携サービス以外の部分なのかなと思う。
現物株はGMOクリック証券での売買がメインなのだが、
GMOクリック証券への入金は主に住信SBIネット銀行で行っている。みずほ銀行からの入金も使うが。
ところが新生銀行からのリアルタイム入金はできないんですよね。
一旦他の銀行、例えば(今は口座はないが)GMOあおぞらネット銀行に振り込む必要がある。
新生銀行はダイヤモンドだと月10回まで振込無料だからいいのかもしれないけど。
もう1つはJRAの即PATですね。最近は馬券買ってないけど。
即PATの指定金融機関はかなり限られていて、新生銀行は入っていない。
住信SBIネット銀行は 公営競技・スポーツくじ などに強い銀行という印象もあり、
この手の用途は唯一の選択肢ではないが、どの銀行でもよいわけではないので、意外に難しい。
GMOクリック証券のこともそうなのだが、住信SBIネット銀行の提携先の多さはこういうところにもある。
住信SBIネット銀行とSBI証券の連携は今後も変わらず使えるはずなので、
それなら今のままでも困らないんじゃない? というのは確かである。
ただ、SBI証券にとっての軸足は動くんじゃないかなぁと。
そもそも今回のSBIグループとNTTグループ間のやりとりはすべてSBIにお金がもたらされる向きで、
その背景には新生銀行に注入された公的資金返済のことがあるようだ。
新生銀の公的資金返済に充当へ=住信SBI株売却で―北尾氏 (JIJI.COM)
そこまでした新生銀行が儲からないのは困るのである。
その方策にはSBI地銀ホールディングスの出資先の地方銀行との連携はあるだろうけど、
当然、SBI証券の利用者を取り込みたいという考えはあるはずで、
全部売却してしまう住信SBIネット銀行との提携関係は二の次だろう。
住信SBIネット銀行とSBIホールディングスとの関係は一貫して少数株主という立場ではあった。
(上場以前の親会社は住友信託銀行→三井住友信託銀行)
とはいえ、この銀行の価値を高めてきたのがSBI証券であることに疑いはなく、
それに見合った成果がNTTドコモからもたらされるということである。
今後はNTTドコモとその提携先との関係が中心になるのだろう。
それができるのもSBI証券との提携一辺倒ではなくなっていたからこそである。
結局は利用者の選択ということですよね。
NEOBANKだとか言っても、結局はSBI証券との連携が多い銀行、
他の銀行よりお金持ちは多いが、銀行を見る目も厳しいだろう。
新生銀行が便利だと考えればあっさり乗り換えてしまうだろう。
買収するNTTドコモからすれば失いたくはないだろうけど、
SBIからすれば新生銀行への本気度は高いわけですよね。
SBI証券との連携利用が減っても、それ以上に新規の顧客開拓が進めばよいが、
NTTドコモ、より広く捉えてNTTグループとしても、そこまでの力があるのか? そこは疑問である。
通信会社と銀行といえばPayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)があるが、
この銀行は昔からYahoo!オークションの決済を扱ってきた。
PayPayやPayPayカードとの連携など、特に実店舗での決済が強化され、
そこを起点として様々な金融サービスが提供できている。
でも、やはりその起点はやはりヤフオクだし、今もそこを目当てに使ってる人が多いんじゃないか。
NTTドコモにとってみればd払い・dカードなど決済サービスはある。
そこから資金運用につなげたいという思惑でマネックス証券を傘下に入れている。
前から提携してた気になってたが、子会社化は2024年1月のことである。
早々「マネックス証券NEOBANK」みたいなのは出てきそうだな。
(ちなみに新生銀行とマネックス証券も提携関係にある)
とはいえ、ソフトバンクほど強固な基盤があるとは思えないわけで、
結局、当面は買収前からのNEOBANK路線と、SBI証券との提携関係に頼りそうだが、
SBI証券との提携関係が盤石かというと、そこは疑いはあると。
通信会社の銀行といえば auじぶん銀行 というのもあるけど、
これこそ散々で三菱UFJ傘下のアコムと提携してのカードローンが稼ぎ柱と聞いている。
当初思い描いていたことはほとんどできていないのでは?
それに比べればすでに軌道にのった銀行を買収するNTTドコモはよいが、
結局はSBIの金策なんじゃないの? と思うんですよね。
この辺の不気味さはKDDIがローソンの株式の半分を取得したことにも通じるな。
三菱商事の連結財務諸表の見た目を変えたいがために、金余りのKDDIが付き合わされたという説を書きましたが。