夢洲に見える水面の意味

東京港の埋立地の話を書いたが、埋立地といえば気になるのが大阪の夢洲のこと。

ここで万博が行われるとか、統合リゾート(IR)が作られると言われて見せられた航空写真は水面も見えて、

果たしてこの埋立地は完成しているのだろうか? と気になってしまう。

実際のところ、夢洲というのはとても複雑な埋立地である。


夢洲と言われて大阪オリンピック構想が思い浮かぶ人は果たしてどれぐらいいるのか。

2008年のオリンピック招致に大阪市が立候補したとき、舞洲がメイン会場、隣接する夢洲が選手村になるという話だった。

ところがオリンピック招致は失敗してしまった。

とりあえずは舞洲スポーツアイランドの施設はアマチュア中心に活用され、

夢洲の東側はスーパー中枢港湾の指定もあり、大規模なコンテナターミナルとなったのだった。

オリンピック合わせで準備していたインフラのうち、夢咲トンネルはコンテナターミナルとの関連もあり比較的早期に開通した。

道路・鉄道を併設しているが、当初は道路のみの開通である。


そんなこんなでオリンピックが頓挫した夢洲の埋立はのんびりと進められていた。

夢洲は西側1/4ぐらいが廃棄物の埋立地、残りが土砂の埋立地である。

ちなみに舞洲も西側1/5ほどが廃棄物の埋立地で残りが土の埋立地である。

廃棄物の埋立地としての名前は夢洲・舞洲あわせて北港処分地である。

すでに舞洲に相当する北地区は1986年に埋立が完了しているが、

夢洲に相当する南地区の埋立は現在も続いており、埋立進捗は90%(2024年12月)とのこと。

埋立処分実績(北港処分地) (大阪広域環境施設組合)

一方の土の埋立地としての夢洲だが、こちらはほぼ埋立完了である。

万博合わせで埋立を完成させた部分はあるが、元々ほぼ土は入っていたということである。

ただ、制度上未完成の部分も残されていて……というのは後で紹介する。


さて、オリンピックで選手村になると思っていた一帯は埋立を完成させないままだったが、

転機が訪れたのは大阪に統合リゾートを誘致するという話が出てきた2014年頃である。

未利用でまとまった土地が確保できる夢洲はまさに好都合だった。

さらにIRのまちびらきに合わせて国際博覧会を誘致しようということになり、

夢洲は国際観光拠点という役目が明確になったわけである。

これに伴ってオリンピック構想の頃の計画がいろいろ復活してきて、

夢咲トンネルの鉄道部がOsakaMetro中央線として開通したり、夢舞大橋の歩道部が開通したり……

万博合わせのインフラ整備に見えるものも多くは昔からの計画というのが実情である。


さて、夢洲の土地利用だが、すでにコンテナターミナルや倉庫として活用されている一帯を除くと、

中央部の国際観光拠点としての整備は1期・2期・3期と分けて行われ、

1期はすでにIRの整備が決定している。

2期は万博会場の中心となるパビリオンワールドで、万博後の用途について公募が行われたという話があった。

3期は万博会場のウォーターワールドと呼ばれるエリアと思われる。

ウォーターワールドは名前の通り、水面が見えている部分である。

ここは制度上は埋立が未完成になっているが、後で書く通りほぼ完成である。

西側はグリーンテラスゾーンとして整備が行われることになっているが、

先ほど書いたようにここはまだ現役の廃棄物処分場でもある。

暫定利用として2013年から一部に太陽光発電施設が設置されている。

それ以外の一部が万博会場のグリーンワールドとして利用される。

広場や駐車場を中心とした利用で建物は少ないが、一部には建物がある。

そこで工事しているときにメタンガスでの爆発事故があったんですね。


現在も夢洲の航空写真で見える水面にはいくつかのタイプがある。

廃棄物の埋立地で見える水面は埋立が未完の部分と排水処理施設の部分がある。

廃棄物系の埋立地の南端に当たる部分に三角形の池が見えるが、

実はこれは排水処理施設である。ここで埋立地から出る水を排水基準を満たすように処理している。

かつての舞洲でもこのような池を使って排水処理をしていて、

昔の航空写真を見ると、南西の一角(現在は太陽の広場になっているあたり)にもそんなのがあった。

埋立完了後も排水処理が続くうちはこの池は残るとみられる。


次に浚渫土系の埋立地だが、こちらも南東に池がある。

これは沈殿池らしく、土の埋立地から出る雨水と廃棄物の埋立地で排水処理施設を経た水が集まる。

この沈殿池なのだが、鳥のすみかになっているという事情もあり、

将来的にもこのエリアは水辺として残すことが期待されているのではないかと思う。

そこに隣接して水面が続き、万博会場のウォーターワールドが構成されている。

先ほど書いたが、ここは国際観光拠点としての3期にあたり、埋立地としては未完成のエリアである。

というのも、夢洲内の工事をする中でヒ素などを含む土砂が出てきて、処分をどうするか問題となり、

埋立地として未完なのをよいことに、夢洲内の汚染土処理に使うことになったのである。

薬剤などで処理をして置くので安全面では問題ないとのことである。

夢洲内の開発が進む中でどの程度埋まるかはわからないが、

水鳥のすみかとして重要であることは認識されているので、

最終的にも水面が残って完成となるというのが見立てでである。


グリーンテラスエリアは暫定的には太陽光発電で活用されるが、

あくまでも将来的な計画は緑地化である。

ただ埋立地としての役目はまだ続くのでかなり先のことである。

実際のところよくわからないのは舞洲もそうなんだよね。

廃棄物の埋立地部分は舞洲緑道という細長い緑地はあるが、恒久的な施設はその程度。

未利用地は太陽の広場などのイベント広場としての活用されているが、

他もグランピング施設、サーキット、ソフトボール場、太陽光発電、駐車場など、いかにも暫定利用っぽい。


なお、舞洲自体はプロスポーツの拠点として活用されている。

舞洲アリーナはBリーグの大阪エヴェッサが練習・試合に利用するようになり、

オリックスバファローズは2軍本拠地となる球場を新設、屋内練習場なども整備した。

セレッソ大阪は天然芝2面・人工芝1面のフィールドを整備して練習拠点としている。

舞洲スポーツアイランドというのもよくわからないと思われていたが、意外に成功した感がある。


万博はともかく、IRは大阪にとって重要なことである。

大阪にはグランキューブ大阪、インテックス大阪、大阪城ホールなど、

国際会議・展示会・大規模イベントのための施設は一通りあるが、規模や利便性の面で課題がある。

夢洲では国際会議場・展示場・高級ホテルを一体で整備することで、

従来では誘致できなかったような国際会議・展示会などの誘致が可能となる。

エンターテイメントという観点でもいろいろ考えられており、

IRの計画には劇場も含まれているし、万博跡地の2期計画ではアリーナなどの整備が入りそうである。

特にインテックス大阪なんてIR開業後は再整備という話もあるんじゃないかと思うが、

総じて大阪で様々なイベントができるようになり、大阪・関西の国際交流が活発になるはずである。

で、その原資というのは大半がIR内のカジノでの収入ということで、

本当にそんなに儲かるのか? とは疑問に思っているところはあるものの、

これは事業者が約束している内容ので、そこはやってくれるということだろう。

そんなことやるのにちょうどいい島があったってのはラッキーだったって話。