廃棄物の埋立地ってこんなの

今年3月28日に海の森公園がオープンする。

海の森というと2021年の東京オリンピックで馬術競技(総合馬術クロスカントリー)の舞台となったのが印象的である。

昔から海の森とは言われていたけど、ここが正式に海の森という町名になったのは2020年、

中央防波堤埋立地一帯の境界争いが決着してからのことである。

ちなみに大田区に属することになった一角は令和島という町名が付いている。


埋立地にもいろいろなタイプがある。

埋立地ってゴミを埋めてるんじゃないの? と思うかも知れないが、

実のところ、割合として多いのは浚渫土の埋立地である。

東京港の埋立地というと、13号地(台場・青海・東八潮)や10号地(有明)がよく知られているが、

あれは全部浚渫土を中心とした土の埋立地なんですね。

埋まっているのは土なので、その後は多様な使い方ができて、

オフィス・住宅・倉庫・港湾施設といった建物が多く建ち並んでいる。


中央防波堤一帯の埋立地でさえ、西半分は浚渫土を中心とした埋立地で、

廃棄物主体の埋立地というのは東半分に限られている状況である。

このうちすでに埋立が完了した中央防波堤内側埋立地の東に作られた公園が海の森公園で、

一般向けの開園前にオリンピック会場として使われたという経緯がある。

西側の江東区海の森1~2丁目と大田区令和島の区域は港湾施設や倉庫として利用されている。


廃棄物の埋立地というのはその後の用途が相当限られてしまう。

中央防波堤一帯の前に使っていた廃棄物の埋立地は15号地(若洲)である。

ここも西半分は浚渫土系で、東半分が廃棄物系となっている。

ここは若洲海浜公園として大半がゴルフ場になっている。

そのさらにその前に使われていた埋立地が14号地のうち夢の島の区域である。

夢の島という名前は聞いたことがあったのだが、実は14号地にはもう1つ町名があって、

それが新木場である。文字通り貯木場を中心とした木材業者の町である。

14号地の浚渫土系の埋立地は新木場、廃棄物系の埋立地が夢の島となっているわけである。

夢の島は埋立後に夢の島公園として整備され、当初は交通の便もあまりよくなかったが、

後に新木場駅(有楽町線・京葉線)が開業し、駅至近の公園となっている。


では、そのさらに前の埋立地は? というと、8号地(潮見)の一角である。

あれ? でもここって埋立地跡らしい公園もないよなぁ。

そこには廃棄物処分の在り方が移り変わってきたことがある。

限りある処分場(ごみ埋立ての歴史)(東京都)

潮見一帯で埋立を行っていた1955年頃までは、ゴミを積んでは火を付ける野焼きが行われていた。

なかなか信じられないことだが、そんな処分方法が存在したのである。

ところがこれは煙や粉じんなど周辺への影響が大きく取りやめになった。

とはいえ、このような方式だったので、跡地は比較的普通に使えたらしく、

当時の埋立地とみられるあたりにオフィスなどが建ち並んでいる。


続いて夢の島一帯での埋立だが、これは生ごみ含めてそのまま積んでいた。

減容できないことも問題だったが、ハエやネズミが大量発生し大変な問題となった。

地図を見てもわかるが既存の市街地にもわりと近いので大きな問題だったと。

これではどうにもならないと重油を撒いて火を付ける「焦土作戦」が行われたり……

減容もできないので短命で1957~1967年と10年ほどで埋立が終わってしまったという。

仕方ない事情はあったにせよ、散々な埋立地である。

その代替の埋立地が若洲一帯で、当初は新夢の島と呼ばれていたらしい。

ここもかなり短命で1965年~1974年の10年ほどで終わってしまった。


実のところ、その次の埋立地である中央防波堤内側埋立地、

現在の海の森公園の埋立の頃もまだそんな状況が続いていたらしい。

ただ、焼却施設の整備もだんだん進んでいき、生ごみを直接埋めることは減っていった。

現在の中央防波堤外側埋立地・新海面処分場は焼却灰中心の埋立地になり、

今後50年ぐらいは使えるんじゃないかと言われている。


埋立地を長く使うための工夫だと思うが、海の森公園は山のようになっている。

海の森リーフレット (pdf) (東京都)

海風を和らげるように斜面に植樹し、その中に昆虫・鳥など多様な生き物が暮らせるようにと考えられている。

当然、人のレクリエーションの場としても有用である。

この一帯の埋立終了は1987年、しばらくはメタンガスが発生したり安定しないが、

将来的な公園化に向けて、建設発生土や堆肥などを積み上げて、

2007~2015年に植樹が行われ、オリンピックにも振り回された感はあるが、

やっと都市公園としてオープンするに至ったという状況のようである。


ところで海の森一帯へ向かう道路には、歩行者・軽車両・一般原付通行止めの規制がかかっている。

そもそも海の森公園は開園していないので公園に行くというニーズはないが、

港湾施設や倉庫へ行くというニーズはないとは言えない。

現在は自動車でなければいけないが、東京テレポート駅からのバスは存在する。

ただ、実は有明との間にある海の森トンネル、若洲との間にある東京ゲートブリッジには歩道が存在する。

すでに東京ゲートブリッジの歩道部は見学施設として昼間に限り開放されていて、

若洲側から出て若洲側に戻ることだけはできるようになっている。


海の森公園のオープン後はこれらのルートも開放されるのでは? と思うけど、まだ定かでない部分が多い。

東京都港湾局の資料を見ると、自転車走行環境整備の計画がある区間にはなっている。

港湾局自転車通行空間整備計画 (東京都)

なんとなくトンネル・長大橋区間は押し歩きになりそうな気はしますね。

ただ、一般原付まで押し歩きなのか? というとここはよくわからなくて、

一般原付の本線通行止めの規制が外れるということもありうる話である。

まだいろいろ時間はかかりそうですけど、将来的には有明-海の森-若洲-夢の島と公園同士を結ぶ回遊ルートに発展するんじゃないかと。