読売333はなぜ必要か

こんなニュースが流れてきた。

日本企業への投資を後押し、経済の好循環図る…読売333「等ウェート型」で特定企業の値動きに偏らず (読売新聞)

新しい株価指数として読売株価指数ができるとのこと。

通称「読売333」で、日本の上場企業を333社選定して指数を計算する。

読売新聞のブランドが付いているが、実務は野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングが行うとのこと。


特徴は「等ウェート型」の株式指数であること。

算出開始時点の株価がA社:100円、B社20000円、C社4000円で、このときの指数を300とする。

等ウェートなので300をA社, B社, C社に100ずつ割りあてればよい。

すなわち 指数=A社株価×1+B社株価×0.005+C社株価×0.025 となる。

3ヶ月後の株価がA社:110円、B社19600円、C社5000円になったとする。

このときの指数は 110+98+125=333 となる。

読売333 では3ヶ月ごとにウェート調整を行うとのことだから、

これを3社に再配分すると各社に111ずつ割りあてて、

A社株価×1.01+B社株価×0.0057+C社株価×0.022 となる。


指数を計算するだけなら「経済の『体温計』」というだけにすぎないが、

指数があればそれに連動する投資信託が出てくるだろう。

読売333に連動する投資信託を買った場合には、上で書いたようなことが行われる。

すなわち資金は333社に等分に配分され、3ヶ月ごとにウェート調整される。

株価が大きく上がったC社は株価に掛ける係数が0.025→0.022と下がっているが、

これはC社の株式を売却することに相当する。その分は他の銘柄に再配分される。

あと333社は年1回入れ替えが行われるが、除外される銘柄を売って、新規採用銘柄を買うことになる。


日本の株式指数といえば、TOPIXと日経平均株価(「日経225」とも)が古くからある。

TOPIXは日本の上場企業の時価総額の合計を表す指標といってよい。

元は東京証券取引所第一部に上場する全企業の時価総額(株価×発行済株式数)を表す指数だった。

これ以外の市場だけに上場する企業は計算に入っていないものの、時価総額としてはごく小さい。

このため、TOPIXは日本株全てを表す指標といっても差し支えない。


2005年~2006年に浮動株の時価総額を基準とするようになった。

他の会社や役員・創業家などが固定的に保有する株は指数の計算対象から外すということである。

上場会社同士の株式持ち合いでダブルカウントされているのを除く意味もあるか。

さらに2021年~2025年で時価総額の低い439銘柄が順次除外されていった。

元々2168銘柄で計算していたのが2割ぐらい減ったわけだが、時価総額では99%以上カバーできている。

このため現在においても、TOPIXは日本株全てを表す指標と言える。


日経平均株価は上場企業の中から厳選された225社の株価の平均……というほど単純ではない。

現在は 225社の株価に会社別の換算係数を掛けたものの合計 を表す指標となっている。

この換算係数というのもあまり一貫性のあるものではなくて、

ファーストリテイリングだけで日経平均株価のウェートの10%超にも達することが知られている。

歴史ある指数なのはいいんだけど、投資対象としては考え物である。


TOPIXは日本株全体を代表する指数という点ではよくできているが、

投資対象として考えたとき、必ずしも優良企業ばかりではない点が欠点である。

2025年に2割減ったとは言え構成銘柄数が多すぎるという欠点もある。

日経平均株価は225社に厳選しているとはいえ、その比率はあまりに不規則。

そこで作られたのが JPX日経インデックス400 である。

TOPIXを算出してきたJPX(日本取引所グループ)と、日経平均株価を算出してきた日本経済新聞社がタッグを組んだわけだ。

まず、一定の基準で東京証券取引所に上場する優良企業を400社を選定する。

その400社の浮動株時価総額の合計に応じた指数がJPX日経400である。

この400社は年1回入れ替えが行われている。


話は戻って読売333の話である。

TOPIXの欠点と日経平均株価の欠点を踏まえた指数であることは明確である。

これに対して等ウェートの読売333ってのはどうなんだろうね。

時価総額の大きな会社の株価変動の影響を受けにくいことがまず書かれている。

後で書くのだが、実はJPX日経400もこの点は対策がされている。

もう1つの特徴が定期的なウェート調整でしょうかね。

相対的に株価が上がった銘柄から他の銘柄に配分されるという性質から、

「将来的な成長の余力がある企業の動きを取り込める特徴があり、中長期的に高いパフォーマンスも期待される。」

と言っているのではないかと思う。


JPX日経400にも時価総額の大きな会社の影響が大きいことへの対策が入っていると書いたが、

実は「400社の浮動株時価総額の合計」と書いたのは正しくなくて、

1社で1.5%以上のウェートになってしまう場合はキャップ調整比率を掛けるルールになっている。

このキャップ調整比率は年1回の入れ替え時に調整されるよう。

この結果としてTOPIXでのウェートが3.7%に達するトヨタ自動車も1.5%程度に抑えられている。

この調整が行われているのは400社中15社程度ではないかと思う。


もっともJPX日経400は様々工夫を凝らしてはいるものの、

全体的にはTOPIXの計算方法に似ているので、TOPIXとほぼ同じ値動きとなる。

さすがに厳選している分、若干よいリターンが得られているようだが。

TOPIXより少しよい というのがこの指標の最大の長所なんだろうな。

日本株全体の動きに対して悪い方向に乖離するリスクは低い。


読売333は時価総額が低い企業への投資が相対的に大きくなるのがどうかね。

「まず、売買のしやすさ(流動性)という観点から「売買代金」で絞り込み、その中から「浮動株時価総額」の上位333銘柄を採用する。」

とのことだから、ある程度は時価総額のある企業が選ばれるのだろうが……

TOPIXのウェート(=浮動株時価総額)が大きい順に並べると、

167位(中央値)が0.11%程度、333位は0.04%程度だった。

これらを全て0.3%ずつのウェートで投資するわけだから、

時価総額の大きな企業への投資をぐっと抑えて、広く配分することがよくわかる。

それが「将来的な成長の余力がある企業」への投資なのかはなんとも言えませんが。


本質的なことではないが、読売333の単位は「円」だそう。

とはいえ、この手の株価指数は基準日の数字をいくつと決めて算出を開始するもの。

JPX日経400では2013年8月30日の指数を10000(無単位)と決めている。

これを10000円と呼んでも、100ドルと呼んでも、10000kgと呼んでも、本質的な意味は変わらない。

日本企業の株価なんだから円単位の方が直感的だろうという程度か。

円単位なら小数点を使わないとうまく表せないような数字にはしないかなと。


あと、これこそどうでもいい話だけど「読売333」と聞いて、

読売ジャイアンツの長嶋茂雄終身名誉監督の名前を挙げている人がいた。

長嶋さんの背番号が3(現役時代)あるいは33(監督時代)というわけで、

読売と3と言えば長嶋さんだという話である。

特に関係ないと思うが、ジャイアンツにとって特別な数字であることは確かである。