郵便局のいろいろな送金手段

先日、ゆうちょ銀行では古い送金サービスがまだいろいろあると紹介した。

紙を使う送金手段

とはいえ、昔に比べると絞り込まれているのも事実ではある。

というわけで今はなくなった郵便振替・郵便為替サービスの話。


送り側と受取側、それぞれの手段が現金と口座の組み合わせを並べると、

(1)口座→口座、(2)現金→口座、(3)口座→現金、(4)現金→現金 の4つの組み合わせが考えられる。

(1)は一般的な口座間の銀行振込でネットバンキングで24時間365日できる。

郵便局での払込みと言えば(2)のイメージが強いと思う。

(3)は送られてきた振替払出証書を郵便局で現金に引き換えるやつ。

(4)にあたるものは為替ですね。

ゆうちょ銀行はこの全てのサービスを現在も提供しているんですね。


ただ、昔に比べるとバリエーションが減っていることは事実ではある。

まず、(1)の口座→口座の送金、ゆうちょ銀行では「振替」と呼んでいる。

現在提供されているのは電信振替と呼ばれるサービスのみである。

ゆうちょダイレクトとかATMで手続きすると即座に相手口座に入金される。

ただ、公社時代までは「通常振替」というサービスが存在していた。

手数料はなんと15円、公社時代の電信振替料金は130円だったはず。


ただ、このサービスが使えたのは振替口座同士の送金に限られる。

振替口座は送金を多く扱う団体や個人が使うもので、一般向けではない。

振替口座同士の送金はそもそもニーズに乏しく廃止されたのだった。

「郵便振替払出票」という伝票に自分と相手の口座番号を書いて押印して、

それを窓口に提出するか郵送すると、貯金事務センターで処理されて、

1週間とか経って相手に入金・通知(郵送)されるという仕組みだった。

貯金事務センターでの伝票整理で完結する仕組みなので安かったのかもしれない。


次に(2)の現金→口座、これはゆうちょ銀行では「払込」と呼んでいる。

これは廃止になったサービスはなく「通常払込み」「電信払込み」「本人払込み」と健在である。

通常払込みはよくある払込票で払うやつで、受取側は振替口座が必要である。

入金が反映されるまで数日かかる。昔は郵送でやってたが、現在は画像データのやりとりになっている。

現金→口座とは言うが、口座から出金して払込みをする方法もあり手数料が安い。

今回調べていて初めて知ったのだが、ゆうちょ通帳アプリで払込票の画像データを読み取って処理できる仕組みがあるんですね。

口座間で送金する点では電信振替と同じような結果になりそうだが、

払込票の画像データを送付できる点では昔ながらの通常払込みの特徴も兼ね備えている。


一方の電信払込みはわりとマイナーである。でも一般の人でも使うサービスだ。

通常払込みと比較すると即時に入金される特徴もあるが、受取側が総合口座でもよいという特徴もあり、

窓口から現金で総合口座への送金を行うと電信払込みになる。(ATM非対応)

最後の本人払込み、これは振替口座を持っている人しか使わない。

振替口座には通帳が無いので、一般的な方法で入金することができない。

そこで本人が指定した郵便局で「払込」を行う場合は手数料を無料にする措置があって、

それを本人払込みと呼んでいるそう。手数料無料の電信払込みという位置づけのよう。

ただ、振替口座は送金を受ける目的で使われることが圧倒的に多いので、

本人払込みってどれぐらい使われてるんだろうなという疑問はある。


次に口座→現金、これはゆうちょ銀行では「払出」と呼んでいる。

現在提供されているサービスとしては「通常現金払」「本人払出し」「小切手払」「簡易払」とある。

通常現金払ってのが振替払出証書を郵送するという方法ですね。

受けとった人は振替払出証書を郵便局に持参すると現金に引き換えられる。

そもそも振替口座が必要だが、大口向けに事前申し込みの上でしか発行されない。

ハードルは高いものの住所宛の送金手段としては貴重なものである。

簡易払は配当金領収書などを窓口に持参すると現金に引き換えられる仕組みで、

通常現金払は ゆうちょ銀行が証書を作るのに対して、簡易払は送金主が配当金領収書など作る点が異なる。


本人払出し は振替口座から本人が出金する手段である。

振替口座は通帳が無いので一般的な出金方法が取れないので、

名目上、自分宛に送金する「払出」の一種として扱われるそう。

あらかじめ指定した郵便局に金額を書いて押印した「振替払出書」を提出すると出金できて手数料無料。

予め指定した郵便局には印鑑票があるので、その場で照合できるという理屈。

この方法を即時払といい、これが一般的な使い方だとは思うのだけど、

実は振替払出書を提出して証書を送ってもらい、その証書を郵便局に持参して現金に引き換える方法(証書払)もある。

明らかに面倒な方法なのだが、証書払は指定した郵便局以外でも出金できるんですね。

印鑑の照合などは貯金事務センターでやってOKなら証書を送るからである。


実はこれに似た仕組みが「小切手払」である。

振替口座を持っていて、かつ審査を通った人は小切手帳の発行を受けることができる。

小切手に金額を書いて押印して渡すと、受けとった人は小切手払店(基本的にはゆうちょ銀行直営店)で換金できる。

印鑑の照合をして現金を渡すという点では 本人払出し(即時払) と同じことである。

それ以外の店舗(他行を含む)でも小切手を預入すると、後日入金という形で換金できる。

この場合は印鑑との照合は後日行われるという点で 本人払出し(証書払)と似ている。


そして、昔は「電信現金払」というサービスがあった。2019年まで一部継続していた。

このサービスは振替口座・総合口座から他人に送金する仕組みなのだが、

証書払・居宅払・窓口払の3タイプがあって、2019年まで残ってたのは窓口払である。

証書払は受取人の最寄りの郵便局で払出証書を発行して速達で送る方法。

遠方でも即日届くのはよいが、換金に郵便局に行く必要があるのは中途半端。

そこで最寄りの郵便局で現金にして速達で送る 居宅払 という方法があって、

それだと即時に家で現金を受け取れると。住所宛の送金として速くて手間が少ない。

最後まで残った窓口払は指定した郵便局の窓口に出頭した人が現金を受け取れる仕組みである。

本人払出し(即時払) は 同じ郵便局で本人が受け取る 電信現金払(窓口払) という言い方もできる。

だから、最後まで残ったのかもしれない。ただ、一般的な送金のイメージとはかなり違うが。


最後に現金→現金、このサービスをゆうちょ銀行では「為替」と呼んでいる。

現在提供されているのは通常為替・定額小為替の2つのサービスで、

いずれも現金と手数料を払って為替を受け取ったら、

これを相手に送って、受取人は為替を郵便局に持参すると現金に換金できると。

ただ、為替の手数料も昔に比べるとだいぶ高いので、現金書留の方が安いケースが増えている。

為替で届くよりも現金で届いた方が換金の手間がかからないのはよい。

ただ、それでも事務処理の都合か、戸籍証明書の請求などは為替(定額小為替)で手数料を送るようにと書いてあることが多い。


これも昔は「電信為替」というのが存在した。

さっきの電信現金払と同じで受取方法のバリエーションで証書払・居宅払・窓口払とあった。

窓口で現金と手数料を添えて申し込むと、証書が送られたり、現金が届いたり、

あるいは受取人が窓口に出頭すると現金が受け取れたりしたわけである。

居宅払のニーズはわからんこともないが、他はどうにも微妙である。


貯金商品のサービス見直しおよび料金の改定・新設等のお知らせ (ゆうちょ銀行)

来年5月末をもって小切手帳・通常現金払の新規利用申し込みを終了し、

継続して利用できるとしても小切手帳・通常現金払・簡易払の手数料が引き上げられる。

これは他の銀行と同じく小切手・手形の廃止の方針によるものである。

先ほど書いた、口座→現金の「払出」のうち本人払出しはともかく、

他の3つのサービスのうち小切手払・通常現金払の将来的な廃止は確実か。

簡易払は新規申込みの停止は書かれていないが、これもどうでしょうね。

普通に考えれば同様だろうが、配当金領収書は完全に代替出来ないとみているのかどうか。

実質的に払出というものがなくなる日は来るのかも知れない。