伏せ字にするまでもなく人権侵害ではない

昨日、DLsiteで一部語句の伏せ字化とタグの用語置き換えが検討されていることが話題となった。

どうもクレジットカードの取引条件と関係があるらしい。

確かに他のプラットフォームでも伏せ字だらけということで話題になっていた。


ただ、伏せ字にしても本質的に取扱品目が変わるわけではない。

例えば、今回用語置き換えが考えられているワードとして「奴隷」というのがあり、

このタグを「下僕」に置き換えられないかと考えられているという。

確かに本当に奴隷をどうこうして作った作品なら問題なのだが……

実際には普通の役者が設定上「奴隷」としてあれこれする程度のこと。

ゆえに用語の置き換えで「奴隷」とは無関係になるという理屈である。

もっとも手が入るのはタイトルやタグ程度で、中身はそのままなんだろうが。

そもそも、DLsiteの主力は漫画・イラスト・ゲーム・音声といったもの。

実際に身体を使ってどうこうという作品は皆無なんじゃないかなぁ。


少し前にアダルトコンテンツの決済代行業者がクレジットカードからほぼ締め出しを食らったという話を聞いた。

どのような判断があったか定かではないところはあるのだが、

けっこう怪しげなコンテンツを扱っている業者が影響を受けた印象はある。

昨今の状況を考えると、確かに実写のアダルトコンテンツは難しいところがある。


昨年施行された「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」がある。

長い名前だが、これは性行為映像制作物(一般的にはアダルトビデオと呼ばれる)について、

ひとたび撮影されると出演者が要請しても販売停止など応じてもらえない問題があり、

法律の言葉で言えば「出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずる」ということは起きていた。

そこで契約の締結や出演の撤回というところに特則を設けたわけである。

ただ、そもそもの問題として映像の撮影とはいえ、性行為に対価が生じており、

それって売春防止法で防止すべきとなっている売春なのでは? という話がある。

いきなり禁止すると影響が大きいということでこのような法律になったものの、

性行為映像制作物の制作自体を禁止する形に発展することもあり得る状況である。


売春防止法の売春と、性行為映像制作物は必ずしも紐付くとは限らないが、

アダルトコンテンツの制作という観点で考えるべき法律はそれだけでもない。

これも昨年改正された 不同意わいせつ罪・不同意性交等罪 である。

ここでは、不同意の類型として、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」がある。

アダルトコンテンツの制作というのは金銭的あるいは社会的な要因で不同意を表明しがたいケースが多々考えられる。

もちろん真に同意していてやっていることに疑いのないケースもあるだろうが、

本当にそうなのか疑わしいコンテンツも存在するのは実情なのだと思う。

そこが明確にならない業者の排除が進むのもやむを得ないように思う。


とはいえこれらは実写ものの話である。

先ほど書いたようにDLsiteは漫画・イラスト・ゲーム・音声といったところで、

制作に当たって実際にそのような行為をする必要は全くない。

そのため制作によって人権侵害が生じるということはまずもって考えられない。

そもそも冒頭に書いたような伏せ字や置き換えが効果的ではないって話。


また、日本には わいせつ物頒布罪 が存在する。

そもそも「わいせつ物」であれば販売などが許されないわけである。

これは日本国内のまっとうなプラットフォームでは意識されているものである。

この「わいせつ物」の定義はあいまいな部分はあるが慣例というのは存在する。

うちの販売物には「わいせつ物」は存在してないと断言するのは容易である。


このあたりの事情を考えて伏せ字と用語の置き換えで乗り切れると見てるんだと思うが。

根本的に人権侵害の疑念がぬぐえないものは撤去など考えざるを得ないが、

そういう性質のものではないし、商品自体は変えなくてもよいと考えているか。

確かにそんな気はするのだが、そもそも決済業者の指摘は何なの? という話にもなる。


DLsiteは特に音声コンテンツについては業界ガリバーであって、

全年齢向けの商品も多くあり、ジャンル上「同人」だが大手出版社の商品もあって……

【CV:高橋李依】わたし、二番目の彼女でいいから。ASMR【ヤンデレジェラシー/イタズラ掃除用具箱/耳元文学/添い寝】 (DLsite 同人)

発売元は「電撃G’s Magazine」ってKADOKAWAってことだよね。

そういうプラットフォームでもあるので決済手段が制約されるのはあまりよくないのだが、

一方でプラットフォーム全体としてはアダルトコンテンツの比率が高いわけで、

伏せ字でも用語置き換えでもなんとか今のプラットフォームを継続したいと考えているのではないか。

人権侵害の懸念もなく、公正な慣例によりわいせつ物を除去しているなら、何も問題ないと思うんですけどね。