6日・7日と連日、伊丹空港で門限に間に合わず離陸できない事例が起きていたよう。
大阪・伊丹空港で6便が離陸できず引き返しも 2日連続のトラブル (毎日新聞)
伊丹空港の運用時間は21時までで、それを越えて遅れた到着機は関西空港へ向かう。
比較的近くに代替空港があるのは制限が厳しい中でも幸いなことである。
これはよく知られているが、今回は離陸できると思って滑走路に向かった飛行機が離陸できず引き返しというもの。
原因は「通常と異なる風向きとなった」とある。どういうことなのだろうか。
伊丹空港を発着する飛行機はおよそ99%が南から着陸・北に離陸するという。
そもそも北風が吹くことが多いこと。(飛行機は向かい風で離着陸する)
北側に山があるという地形の都合で、南側にしかILSが付けられないこと。
騒音面を考えても、離陸機が南側の市街地を低空飛行することを避けられる。
これらの特徴も考え、多少の南風ならば南から着陸・北に離陸にする。
この結果が99%が南から着陸・北に離陸となることに現れている。
それぐらい伊丹空港周辺の気候は安定してるってことなんだよね。
しかし、それでも風の状況によってが北から着陸・南に離陸にしなければならない。
沖縄付近で長く滞留し続けた台風6号の影響により、東からの風が強かったよう。
滑走路が南東~北西向きなので、東風を滑走路の向きにベクトル分解すると、
滑走路の南東側からの風が強いという扱いになる。
なので北西側から着陸し、南東側に離陸するということになると。
単純に南北と書いては理解しにくいが、そういうことらしい。
ただ、伊丹空港は北側からの着陸手段というのが、
南からILSに従って空港に近づき、空港を見ながらぐるりと回るサークリングアプローチしかない。
全体のわずか1%ほどに過ぎないイレギュラーな着陸方法だからか、
あるいはこの方法が使いにくいから可能な限り南からの着陸にしてるのか。
とにかく普段に比べると着陸に時間がかかってしまうわけである。
手間もかかるし、ぐるりと回る分の飛行距離が伸びる。
この南からの着陸がほぼ1日続くと、だんだんと遅れが積み重なり、
最後にギリギリ離陸できるかと滑走路に行くも、門限に阻まれてしまい。
伊丹からの飛行機が遅れたので欠航にしたりというのを含めれば、
影響範囲はもっと大きかったのではないかと思う。(そもそも台風の影響がある)
従来はILSが使えなかった飛行ルートにGPSなど人工衛星による測地を行うRNP進入を導入する流れがある。
伊丹空港でも南から短い方の滑走路(32R)に直行する場合はRNP進入もある。
しかし、伊丹空港の北側は全くそういうものがない。
ILSが片方だけにしかない空港は拠点空港でもなんぼでもあるけど、
未だに風向きによってはサークリングアプローチ頼みというのは珍しい。
それだけ地形の制約が大きいということなんだろうか。
なお、近くの神戸空港も風向き次第でサークリングアプローチだが、
こちらは飛行ルート見直しが実現すれば、RNP進入になるとみられる。
実際のところ、伊丹空港は計器着陸装置の面では見劣りする面が多いが、
それでも気候が安定しているため、就航率としてはかなりよい空港である。
ILSに合わない風向きで視界不良と重なると欠航やむなしだが、
そのような事例はかなり少ないのが伊丹空港である。
ただ、それをずっと続けて遅延が重なって欠航はやっぱりダメだと思うのだが……