昨日、日本ダービーの話を書いたとき「ダービーに収得賞金順で出るには重賞を勝つか、3勝するか、2勝+重賞2着ぐらいの戦績が必要」と書いた。
実は先日、桜花賞のときに気になって調べたのである。
JRAでは「収得賞金」というものを使ってクラス分けをする。
収得賞金は単位は「万円」だが、実際の賞金とはほとんど異なる。
加算されるのは1着か重賞の2着のときで、加算される数字は
- 新馬・未勝利の1着 : 400万円
- 1勝クラス・ひまわり賞(九州産馬限定)の1着 : 500万円
- 2勝クラス(3歳6月以降に出走可能)の1着 : 600万円
- 重賞以外のオープンクラスの1着
- 2歳限定:600万円・800万円(リステッド)
- 3歳限定: 1200万円(芝の3歳OPは全てリステッド)
- 重賞の1着
- 2~3歳限定GIII・2歳限定GII:1600~2000万円
- 3歳限定GII: 2600~2700万円, 2歳限定GI: 3250~3500万円
- 重賞の2着
- 2~3歳限定GIII・2歳限定GII:600~800万円
- 3歳限定GII: 1050~1100万円, 2歳限定GI: 1300~1400万円
3歳限定GIにとって重要ではない数値は省いているが。
基本的には新馬・未勝利を勝ってから、上級クラスで賞金加算するので、
ベースとして400万円はあって、そこにいくら加算するかというのが問題。
2・3歳のGIレースでは優先出走権を持たない馬は収得賞金が高い順に出走し、
収得賞金が同額の場合は抽選で出走馬を決めることとなる。
いくらで出走できるかは年によって増減はあるが、目安というのはある。
2014年以降の2週前登録時点で出走確定あるいは抽選で出走となるラインを調べた。
(実際にはその後に回避で繰り上げになるケースもあるが)
まずは過去9年の中央値を見てみると、こんな感じ。
- 桜花賞: 1150万円(1100万円で抽選)
- 皐月賞: 900万円(400万円で抽選)
- NHKマイルカップ: 1050万円(900万円で抽選)
- オークス: 1000万円(900万円で抽選)
- ダービー: 1650万円
- 秋華賞: 1450万円(900万円で抽選)
- 菊花賞: 1400万円(1150万円で抽選)
これをさっきの収得賞金の目安に当てはめてみる。
新馬・未勝利の400万円はほぼ全頭持っていて、そこからいくら積むか。
1勝クラスを勝って+500万円加算した900万円だと、
皐月賞はこれで出走できることが多く、NHKマイル・オークスは抽選で出走できることもあるという感じ。
秋華賞・菊花賞は4歳以上馬と混ざって走って賞金加算もできて、
この場合は1勝・2勝クラスを勝って1500万円だとだいたい出走できそうと。
もっとも最近の秋華賞は1500万円は抽選になることが多く、
抽選に漏れた馬が同日の3勝クラスに回って勝つというのが3年続いている。
一方の桜花賞・ダービーは1勝クラス勝ちだと抽選にもならないことが多い。
桜花賞の場合、新馬・未勝利+750万円あれば出走できることが多いが、
1戦で加算するには 重賞かリステッドを勝つぐらいは必要。
場合によっては重賞2着でもいける場合があるが、GI 2着以外は微妙なところ。
1勝クラスを勝って、重賞2着・2歳オープン勝ちなども可能だが。
ダービーの場合は、新馬・未勝利+1250万円あれば出走できることが多いが、
1戦で加算できるとすれば重賞勝ちか2歳GIの2着ぐらい。
1勝クラスを勝っておけばそこから+750万円、リステッド勝ち、3歳GIIの2着でもいけそう。
このことを「重賞を勝つか、3勝するか、2勝+重賞2着ぐらい」と書いた。
桜花賞は時期も早いので、むやみにレースを走れるわけでもない。
そんな中で重賞以外のOPクラスというのは、出走頭数が重賞よりは少なくなりがちで、
1勝クラスからの挑戦もしやすく、勝てば桜花賞・オークスにはだいたい出走できる。
そんなところを狙って出走する馬が集まる傾向にある。
ただ、今年はその作戦がうまくいかなかったのである。
なんと今年の桜花賞のボーダーは当初1750万円、後に回避が出て1700万円。
これによりエルフィンステークス優勝のユリーシャ、紅梅ステークス優勝のダルエスサラームが出走できないことに。
ダルエスサラームについてはチューリップ賞での優先出走権獲得を狙ったが失敗。
ユリーシャは目標を切り替えてNHKマイルカップ前哨戦のアーリントンカップへ。
これは11着だったのだが、賞金順でNHKマイルカップに出て14着と。
しかし、エルフィンステークスといえば、2020年にデアリングタクトが勝ったレースで、
デアリングタクトも収得賞金1600万円で桜花賞へ向かったんだよね。
無事出走を果たし、そこから牝馬三冠を達成したわけである。
なんで今年はこんなことになっちゃったのか? という話だが、
優先出走権が得られる3レースで賞金上位馬が総崩れだったから。
すでに実績のある馬が前哨戦でも順当に上位になれば、賞金順から抜けるわけである。
ところが今年は収得賞金900万円以下の馬が全優先出走権を持っていった。
それもこれも桜花賞1番人気で優勝したリバティアイランドが年末の阪神ジュベナイルフィリーズ優勝から直行だったのはある。
こういうのは昔は優先出走権が得られるトライアルレースを経て桜花賞へ向かうのが普通だったんだけど、
最近は3歳初戦が桜花賞とか皐月賞ということも増えているし、それで結果を出すものは多い。
特に牝馬は間隔を開けた方が結果が出やすいのか、2018年のアーモンドアイ以来、トライアルレースをスキップした馬が桜花賞を勝っている。
アーモンドアイは1月のシンザン記念優勝からの桜花賞からの直行だが。
というわけで年によるのだが、桜花賞は特に難しいと思う。
ダービーの場合は皐月賞上位と重賞優勝馬がずらりというので、
ダービーまでに走れる重賞も多く、これはこれでわかりやすい。
今年は皐月賞上位5頭のうち4頭が重賞勝ちか3勝ということで、
ダービーではこれらが賞金順から抜けて、1600万円(新馬・未勝利勝ち+リステッド勝ち)でも出走できた。
結果的には桜花賞より賞金順の出走ハードルは低かったという。
トライアルレースの上位馬は賞金によらず優先出走権が得られる。
特に桜花賞とダービーのトライアルレースの重要性は高いと。
ただ、ダービーについては青葉賞・プリンシパルステークスともダービー優勝馬を輩出できていない。
そこそこ好走する馬もいるので無意味ではないんだけど。
なお、来年から3歳春の芝GIは、優先出走権以外は芝の1勝クラス以上の収得賞金順で決めることになる。
これは大井のダート三冠が始まることも踏まえたものだと。
新馬・未勝利は芝・ダートどちらで勝っても収得賞金0として計算される。
芝GIを目指す場合は1勝クラス以上は芝を走るべきということになる。
現状もほとんどそうだけど、制度上はダートの収得賞金でも可能。
今後、ダートで1勝クラス以上を勝ってから皐月賞・ダービーなど出たい場合は、トライアルレースで優先出走権を得るなどしなければならない。
(トライアルレースの出走順は従来の収得賞金順なのでダートの実績でも可)