昨日、アイドルマスターシンデレラガールズのインターネットラジオ番組「CINDERELLA PARTY」で下記の発表があった。
- シンデレラガールズの楽曲の定額配信はゲームサイズを基本とする
- ただし ST@TER BESTの収録曲についてはフルサイズで定額配信する
- ゲームのイベント楽曲についてはゲーム開始とほぼ同時にダウンロード販売を開始する
- CDについては従来通り、新曲・カバー曲など含めて制作する
そもそもなんでこういう話が出てきたのかというと、アイドルマスターシリーズとして楽曲を定額配信に入れることが発表されたことによる。
この件についてのシンデレラガールズの対応について、日本コロムビアから発表したものである。
定額配信の対象をゲームサイズを基本とする背景としては、
定額配信の対象とする場合、再生数を稼ぐことを考えれば1曲が短くならざるを得ないことと、予算の問題があるとのことである。
現在の制作体制はCDでの販売を基本にダウンロード販売を加えたものを基本としている。
定額配信を基本とする場合は、制作体制を改める必要があるが、
これはシンデレラガールズにはそぐわないのではないかとのことである。
これについては一応合理性はあるので、ここでは一旦受け入れることにする。
ただ、3.に示したイベント楽曲のダウンロード販売の方針が、
CDでの販売を基本とした体制の妥当性に一石を投じる内容である。
「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」(デレステ)のゲームが始まって以来、
イベント楽曲1曲に新曲あるいはカバー曲1~2曲を加えてCDを出している。
デレステのイベントとCD発売の間には一定のタイムラグがある。
これはやむを得ないのだが、一時期このギャップが1年以上になったこともあった。
このギャップを埋めるため、早期のダウンロード販売が導入されたのだが……
その後CDの発売ペースを上げることでギャップはせいぜい4ヶ月程度になったが、
その頃にはCD発売と同時にダウンロード販売を開始するという体制になっている。
このようにCD販売を強く意識した体制になっているが、
しかしデレステで話題になっている内に売れた方がよいだろうということで、
ダウンロード販売の開始時期を再び早める決断をしたわけである。
ただ、一方でCD販売は引き続き重視しているようで、新曲などあるのでCDも買ってねとアピールしていた。
定額配信やダウンロード販売の充実を発表しに来たつもりだったのだが、
CDの販売を基本とした伝統的なモデルにすがりついていると告白しにきたようにしか聞こえなかった。
常時更新されるゲームに対して、CD販売を基本としたサイクルが長すぎるんですよね。
楽曲がゲームで登場してからCD発売まで1年以上に達したのはその極端な例で、
現在はそこまで伸びる前に手を入れているが、放っておくとどんどん伸びていくのは今も変わっていない。
そういう状況を考えたとき、現状の体制の小修正ぐらいでやるのが正しいのかなという疑問はある。
ところで定額配信サービスというと、僕はAWAに加入していますが。
年9800円、キャンペーンで購入したGoogle Playカードで払ってるから正味はもう少し安いけど。
それを制作者に分配するのだから大変に薄利と言われている。
CD販売を基本とした伝統的なモデルに比べると全然稼げないと。
ただ、下記のような場合はメリットがあると言われている。
持ち歌が多い人たちは(略)有利な状況で、旧譜によって累積でいっぱい曲数を聴かれる
サブスクとかでいっぱい聴いてもらって知名度を上げてライブをして、そこで物販を売ったりとか、チケット代だったりとかで収益を得る。
すなわち音源を売る以外で儲ける手段がある場合は定額配信は効果的だと。
また、定番曲を配信して多く聞いてもらえば、わずかでも収益になる。
逆にたいへん不利なのが 作曲家・作詞家であって分配率が低い上に、他の手段で収益を得ることが難しい。
アイドルマスターシリーズの楽曲はゲーム用に作ることが多く、そのゲームというのは十分に稼げるものである。
あるいはライブイベントも盛大に行っており、それによる収益もある。
なので極めて薄利な定額配信でも知名度を高められればメリットがありそうだが……
これは全体的に見れば正しいと思われるが、日本コロムビアの立場では異なる。
アイドルマスターシリーズの音楽ソフトの発売元は、無印とシンデレラガールズが日本コロムビアで、ミリオンライブ・SideM・シャイニーカラーズがランティス(バンダイナムコミュージックライブ)である。
そもそもアイドルマスターはナムコ製品で、ナムコのゲーム音楽のCDの発売元はいろいろだったそうである。
アイドルマスターでは日本コロムビアが発売元となり、音楽制作にも関与していた。
この流れよりシンデレラガールズも同様にやっていた。
一方でナムコはバンダイと経営統合し、バンダイと関係の深かったランティスが同一グループになっていた。
(ランティスはその後の再編でバンダイナムコミュージックライブという社名になっている)
おそらく日本コロムビアのリソースも考慮してのことだと思うが、ミリオンライブ以降の新コンテンツではこちらが発売元となっている。
ゲームもイベントもその利益を得るのはバンダイナムコエンターテインメントである。
音楽ソフトの利益を得るのは日本コロムビアまたはバンダイナムコミュージックライブである。
同一グループならグループ全体の利益を最大化するのだと進められることも、全く他社の日本コロムビアが絡むとそういうわけにもいかない。
さらには日本コロムビア社内でも定額配信するなら再生数を稼がないといけないし、従来のような予算は出ないという話があったのだろう。
そのため従来のモデルの小修正に留めたのではないかという推定である。
とはいえ、シンデレラガールズというコンテンツを支えているのは、
日本コロムビアがこだわって制作した楽曲たちであることは確かなんですよね。
CDリリースの遅さは不満としても、楽曲についてはかなり評価できる。
そうすると、従来通りの音楽制作ができなくなるのはよくないという主張には納得感はある。
シンデレラガールズの世界観を表すためにCDの売上が大きく貢献していると、
そこを説明すればわかってもらえると思って、正直に説明したのだろう。
ただ、いかにも言い訳がましい内容だったことは否めない。
でも、そもそも日本コロムビアの体制がデレステにマッチしてないんじゃないのというのはあるんだよね。
すでにシャイニーカラーズでは最新シリーズの楽曲が定額配信に入っている。
シンデレラガールズとは逆に一番新しいところからスタートするんですね。
これはフェス出演や合同ライブを見据えたものでは? という指摘があった。
このあたりはいかにも話題性重視だなと思う。
これをマネするべきだとは言わないけど、根本的なスピードアップが求められているのではないか。
なお、日本コロムビアが発売元なのはアイドルマスターの無印もそうだが、
こちらは圧倒的に古い楽曲が多いため、定額配信を出し渋る理由は薄いと思う。
累積で聞かれることが定額配信のメリットとなると書いたことがあてはまる。
そもそも日本コロムビアのアイドルマスターシリーズに対する体制というのは家庭用ゲームとかアニメシリーズを想定したものだったのだと思う。
コンテンツのライフサイクルも長く、CD発売のタイムラグも受け入れられた。
ライフサイクルが完結するごとに定額配信に投入するなら、それはそれで効果的な使い方と言えるのではないか。
もしこうなったら、なんでシンデレラガールズだけ……と言われることは請け合いですがな。