地表面沈下が怖くてトンネル工事が難航か?

先日こんなニュースを見た。

5号線「二葉山トンネル」工期延長 追加工事費用はJV負担を (NHK)

公共工事にまつわるニュースでは時々みる話だが、

しかしいろいろ調べてみると工期の遅れの要因は住民団体にあるかもしれない。

別に工事を妨害したとかそういう話ではないんですけどね。


そもそも広島高速5号線とはどのような路線かという話だが、

広島駅の北側から広島高速1号線と接続する温品JCTに至る道路である。

広島高速1号線の先には山陽自動車道と接続する広島東JCTがある。

広島といえば広島空港が広島市街からかなり離れた三原市にあるのだが、

都心から空港へのアクセスに使われるルートこそが広島高速1号線~山陽自動車道のルートである。

このルートを都心直結化するためのルートこそが広島高速5号線である。

その広島高速5号線のルートには山があるので、これを抜けるトンネルが必要である。

そのトンネルこそ二葉山トンネルである。


実はこのトンネル、当初は山岳トンネルでは最も無難なNATM工法が想定されていた。

ところが実際には大半の区間でシールド工法が採用された。

シールド工法というと地下鉄や海底トンネルのような軟弱地盤で使われることが多い。

最近は市街地を地下トンネルで通り抜ける都市高速も多いので、都市高速ではそれなりに見る方法ではあるが。(首都高速中央環状線の山手トンネルなど)

それにしても山岳トンネルではあまり聞かんけどね。


どうしてシールド工法が選択されたか? それはトンネル周辺が都市化しているからである。

冒頭に出てきた市民団体はこのトンネルの計画時から行政に働きかけを行っていた。

その1つが地盤沈下への懸念である。

実はさきほど紹介した広島高速1号線の中に福木トンネルというのがあるのだが、

山肌に住宅が立ち並ぶを突き抜けるトンネルなのだが、最大18cmの地表面沈下が起きて、住宅に被害が出ている。

二葉山トンネルも似たような性質があり、何らかの対策が迫られたわけである。


日本ではNATM工法は都市部でもけっこう使われており、ノウハウはある。

このため、NATM工法でも地上に影響を与えず工事できるという主張はある。

ただ、時にこういう大惨事も起こしているわけですが。

NATM工法は期待されていた

七隈線の博多駅周辺の工事で道路が陥没した事故がありましたよね。

固い岩盤があるので駅部分を効率よく作るにはNATM工法が最善と選ばれたが、

実際には岩盤と砂と境目が複雑で、そこに触れて陥没事故を起こしたと。

その後、復旧に努め、工事も立て直し、来年3月に開業予定である。


検討の結果、広島市・広島高速道路公社はシールド工法を選択した。

NATM工法でも一応問題はないが、シールド工法の方がより影響が少ないのは確かで、

これまでの経緯を考えれば、これが最善の選択であろうとの決断だったようだ。

工事費用がかさむのは課題だが、住民の理解なくして工事はできない。

こうしてシールド工法が選択され、2018年に掘削開始、2020年度末の完成予定だった。

建設費はかさんだが無事に完成してくれればよかったのだが、

掘削開始からまもなくシールドマシンが損傷して工事中断となってしまった。

原因は想定より堅い岩盤にあったようだが、未だに効果的な対策ができておらず、

工事は進んでは止まるという状況を繰り返し、当初計画を過ぎた現在でも全体の半分ほどだという。


工期が延びれば工費も増えるということで、これにどう対応するかが問題で、

建設会社は増額を求めているが、合意に至っておらず、建設工事紛争審査会による調停が行われることになっている。

発注者側の事情、あるいはやむを得ない理由での費用増であれば、これは受け入れる必要があるが、

そもそもこの工事は当初の見積もりにも問題があり、200億円で契約した後、契約金額を287億円に増額するという問題を起こしている。

そのような経緯も工費増額に対して合意できない要因になっているとみられる。


シールド工法を選択したことに全ての理由があるとも言えないのだが、

特注のシールドマシンを作って、それでトンネルを掘り上げるシールド工法では地質の変化に対応しにくかったのはあるんじゃないかと思う。

NATM工法はいろいろな補助工法との組み合わせで、難しいトンネルの工事にも広く活用されるようになっている。

都市部のトンネルにも対応できる柔軟性はそういうところにも生きたのではないか。

そこまでのことを当初予期できたかというと、これも難しいのですが。


というわけでこれが冒頭に「工期の遅れの要因は住民団体にあるかも」と書いた経緯である。

住民団体が地表面沈下への懸念を強く示したことを受けて、

このような条件では一般的ではなく高価なシールド工法を選択することとなり、

想定と異なる地質に工事が難航し、工期を大幅オーバー、費用も?という状況である。

とはいえ、シールド工法を最終的に選択したのは広島市・広島高速道路公社であり、

適切な条件を見積もれなかったことに建設会社の非がないわけはないだろう。


果たしてどうなるんでしょうね?

しかもこのトンネルが完成しても暫定2車線、完成にはもう1本トンネルが必要になる。

1本目のトンネルを掘ったときのデータを元に2本目のトンネルの計画を立てるので、

基本的に見積もりの精度はよいと思うのだが、これがどうなるか。

1本目が完成しないとそれどころじゃないですけどね。