広島でのG7サミットで平和公園への遠足はあるんだろうと言われていたが、
G7メンバー揃って原爆資料館を視察、慰霊碑に献花というのは、なかなか驚くべき光景だった。
G7広島サミット 各国首脳ら原爆資料館を訪問 そろっては初めて (NHK)
あと首脳らの記帳内容、大したこと言っていないなという人もいるけど、
アメリカのバイデン大統領とか、イギリスのスナク首相あたりは核保有国の首脳がここまで言えるだなと驚くばかり。
G7サミット 各国首脳らが原爆資料館で記帳した内容を公表 (NHK)
やはりどうしても比べてしまうのが2016年のオバマ大統領の訪問である。
このときもG7サミット合わせだったんですね。
現職のアメリカ大統領が原爆資料館を視察するというのは大きな話だが、
アメリカ国内の目もあり、なかなか言えることも少なかったのが実情。
さらに言えばオバマ大統領は任期満了が迫っていましたから。
本人としては核兵器廃絶に向けて動きたい思いはあったと言われているが、
立場的に難しかったことが読み取れる。
いくら広島開催のG7サミットとはいえ、実現は容易ではなかったという。
G7首脳 バイデン大統領ら広島原爆資料館へ 難航した水面下交渉 (NHK)
ただ、ウクライナの惨状を見てきたことも後押しになったようである。
核兵器が実用されたところなんて、広島か長崎ぐらいしかないのだし。
僕もこの資料館は2017年に広島訪問したときに見ているのだけど。
もちろん大惨事ではあるのだが……
現在の広島が瀬戸内最大の都市であるように、広島を壊滅に至らしめるほどのものではなかった。
医療資材の不足などの問題はあったが、医療機関もごまかしながら動いていたし、
放射能障害にしても寿命をまっとうする被爆者はいくらでもいる状況。
当時の核兵器というのはその程度のものだったとも言える。
だから、これを見て核兵器も大したことないと思われては困るなと。
現代の核兵器はよりコンパクトで高い破壊能力を持つとされているし、
だからこそ脅威であるわけだけど。
あと、通常兵器ならよいという話でもないですからね。
それはG7メンバーがウクライナ訪問時に知ったと信じたいところですが。
この訪問も踏まえたか「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が示されたが、
この内容には案外非難も多いところである。
元広島市長「岸田首相、ヒロシマを利用するな」 核抑止力維持に憤り (朝日新聞デジタル)
「ロシアによる核兵器の使用の威嚇」への非難というのはよいとして、
核兵器廃絶に向けたアプローチとしてこう書いたことが問題だという。
我々は、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを通じて達成される、核兵器のない世界という究極の目標に向けた我々のコミットメントを再確認する。
安全が損なわれない範囲でしか核兵器削減はしないと言っていると。
これは実質的に核兵器の正当性を認めたということになるんではないかと。
ただ、G7メンバーの岸田総理大臣が平和公園に招き、
特にアメリカ・イギリスあたりの首脳があれだけのメッセージを残し、
それで核兵器を使うようなことがあれば、岸田首相の顔に泥を塗ることになる。
それはできる限り避けるように動くだろうと言うのは期待できるんじゃないか。
やはり各国国内の事情を考えれば言えることと言えないことがあるが、
冒頭で示したような行動に表れた部分は評価してよいのでは?とも思う。
ところで今回G7サミットには招待国の首脳も来ていた。
これら招待国の首脳も別のタイミングで原爆資料館を訪問したという。
そこで気になったのがインドのモディ首相である。
というのもインドというのは核保有国だからである。
さらに現在もロシアとそれなりに深い関係を維持しているとされている。
G7の連帯と一線を引き、核兵器を使いうる立場にある人である。
そもそも訪問したの? と思ったのだがTwitterで展示を見る様子が投稿されるなど案外積極的である。
あと、韓国の大統領が訪問したというのも大きな話でしたね。
被爆者の中には韓国人もいる。当時は朝鮮も日本国内だったからね。
現在も日本に住む人もいるが、韓国に住む人もいて在外被爆者の最たるものである。
尹大統領が慰霊碑献花、韓国人被爆者ら感謝「長生きしたらいいことがあるんだ」 (読売新聞)
韓国もガッツリ当事者だったのだが、なかなか機会もなかったのである。
こういうこともあると。
岸田総理大臣が広島県選出という背景は大いにあるのだけど、
それにしてもここまでとはというのが正直なところ。
これで世界平和に近づくのかといえばそう単純とは思わない。
なにしろ相手がよくわからない理由で「特別軍事作戦」を始め出すロシアだから。
どうすれば打開できるのかもわからないというのが実情である。
まさかロシアに肩入れするわけにはいかないしね。
やむにやまれず核兵器を使うことだって考えないといけない。
ただ、そうならないように最善は尽くそうということだと思う。