ILSと目視とGPS

先日、南風で混雑時の羽田空港への着陸ルートのことを書いた。

市街地上空を通って着陸する理由

この中でGPSを使った航行方式を使って騒音軽減に努めていると書いたが、

調べてみると着陸時の飛行機の航行方式って空港によりいろいろあるらしい。


空港ごとの飛行ルートはAIS JAPANというサイトで公開されている。

ユーザー登録は必要だが趣味目的で登録することも想定されているみたい。

空港ごとにいろいろな”Instrument Approach Chart”が登録されているが、

一体どういう使い分けなのか、わかる部分とわからない部分がある。

航空無線をよく聞くなどして研究すると実際の使われ方も見えてくるんだろうけど。

以下で書くのはいろいろな資料からこういう傾向なんじゃないかという話。


一番いいのは、ILSの電波に従って一列に並んで着陸する方法。

滑走路の端からの方角・距離・垂直方向の角度を把握できる電波を飛ばす。

これに従って降りてくると、滑走路が見えなくてもかなりの精度で降下できる。

そして高度200ftとか100ftとか定められた高度で滑走路が見えれば着陸できるというわけ。

成田空港・関西空港・中部空港では常時ILSを使っているとみられるが、

ILSが全ての滑走路の両側に付いている空港は限られるし、できれば直線的な着陸を避けたい空港もある。


日本では、滑走路の片側のみにILSが取り付けられている空港が多い。

コスト面の問題もあるのだが、それ以外の事情もある。

伊丹空港は長短2本の滑走路の南北から着陸できるが、長い方の南側だけにILSが付いている。

伊丹空港の南側だけにILSがあるのは、北側に山がある。

こういう地形の問題でILSが付けられないことはけっこうあるとのこと。

神戸空港もILSは西側だけで、これは地方空港仕様というのもあるけど、

関西・伊丹との関係で神戸空港の出入りは必ず西側になるという事情もある。


このような空港で風向きの都合で反対側から着陸する代表的な方法として、サークリングアプローチという方法がある。

伊丹・神戸とも多少の追い風ならILSのある向きに着陸するのだが、

それができない場合は、まずはILSに従って接近して、滑走路を目視する。

そして、滑走路を見ながら、その横を通ってぐるりと反対側に回って着陸する。

伊丹空港のILS RWY32Lのチャートを見ると、ILSで着陸する場合は高度250ftで滑走路が見えればよいが、

“CIRCLING”の場合は高度559ftまでに滑走路を発見しなければならない。

ある程度はILSを利用できるが、最後は目視に頼る部分が多いので、悪天候に弱いのが難点。

ただ、伊丹・神戸で滑走路の反対に回るにはほぼこの方法しかないみたいね。


天候がよければILSなど使わず、完全に目視で着陸するビジュアルアプローチという方法もある。

設備が整わない空港ではビジュアルアプローチ頼みということもあるけど、

ILSがあるのにあえてビジュアルアプローチを使う空港として、福岡空港・新千歳空港・羽田空港などがあるそう。

福岡・新千歳は海側からやってくる飛行機が、反対側から着陸する場合、

ILSに従うとかなり内陸に入り込んで直線的に着陸しなければならない。

これは遠回りになる上に、騒音の影響範囲が広がるのも不都合。

そこで、天候がよい場合には滑走路の横に誘導して、そこから滑走路を目視してぐるりと回り込んで着陸する方法があると。


羽田空港は海側の南北方向の滑走路に南側から着陸する場合に”HIGHWAY VISUAL”という方法が使われることがある。

海ほたるPAを右に見ながら目視で着陸しなさいという指示をするそう。

ただ、これって滑走路に直線的に着陸するルートで、ILSの着陸ルートとほぼ同じだったりする。

(実際、ILSの電波を参考にして着陸する操縦士もいるらしい)

なぜ「HIGHWAY VISUAL」があるのか【Short】 (Squawk.ID)

ILSは視界が悪くてもある程度までは降下できるが、降下して滑走路が見えなければ着陸をやり直さなければならない。

2本の滑走路にILSで同時着陸するためには、待避ルートも別々に取らないといけない。

この条件を満たすには木更津付近から2本の着陸ルートを真っ直ぐ引くとよい。

これは悪天候時には使われているが、木更津付近の騒音が大きくなるのが問題。

騒音対策には陸側の滑走路へのルートを富津岬の方に曲げたいということで、

海側の滑走路に目視で降りられるなら、陸側の着陸ルートを曲げていると。

目視にしたことでやり直しのルートも操縦士任せにできるというわけ。


少し前まではこれらの方法や、その変種が使われていた。

しかし、現在は地上設備と目視以外にGPSなどの人工衛星を使った測地技術が使える。

これを使った着陸方法を RNP進入 とか RNP AR進入 という。

RNP AR進入は滑走路直前まで曲線を描いて飛行して着陸する方法で、

機材・操縦士の訓練体制などに特別な許可が必要となっている。

しかし、従来では取り得なかったルートが使えると言うことで、

飛行時間の短縮や就航率の向上に役立っているという。


まず、ILSがどうしても付けられない空港の場合。

松本空港は周囲が山なのでILSが付けられず、悪天候にとにかく弱かった。

RNP AR進入では周囲の山を器用に避けながら、着陸するルートが開拓され、

最短距離で空港へ向かい、高度300ftで滑走路が見えれば着陸できるようになり、

就航率の向上・飛行時間の短縮・操縦士の負担軽減とメリットが大きい。

松本空港は地形の都合でどうしてもILSが付けられなかったが、

離島の空港などILSの導入が見送られてきたところでの導入も進んでいる。

東京都でも調布・新島・神津島は従来ILSなどなかったところに導入している。


滑走路の片側しかILSがない空港でも積極的に導入されている。

例えば、北九州空港は北側にILSが付いている。

ILSを使う場合は門司区方面から着陸する。

高度200ftで滑走路が見えればよいので一番確実な方法ではあるが、騒音や遠回りになるのが気になる。

騒音対策の面では東側に誘導してそこから目視で着陸するルートがVOR A, VOR Bとして記載されていて、騒音対策から推奨ルートらしい。

滑走路のどちらにも遠回りせず着陸できるが、高度979ftで滑走路が見えないといけない。

これに対してRNP ARで東側から滑走路の両側に直行できるルートがあって、

高度300~306ftで滑走路が見えれば良く、遠回りもしなくてよい。

ILSよりやや劣るが、ビジュアルアプローチやサークリングアプローチより悪天候に強い。


伊丹空港だと短い滑走路に着陸するルートとしてRNP進入方式が選べるそう。

伊丹空港の長短の滑走路は機材の大小で使い分けているのだが、

ILSを使う場合は、長い方の滑走路に向けて直線的に降下して、

滑走路が見えたら短い方の滑走路に方向転換する方法になる。

これもサークリングアプローチの一種である。

RNP進入だとILSがない短い方の滑走路に直行することもできるので、一部で活用されているらしい。

(なお北側にはRNP進入ルートはないので、サークリングアプローチとなる)


両側にILSの付いた主要空港だとあんまりという感じはあるが、

羽田空港では騒音対策でRNPが活用されていて、

1つが冒頭に書いた南風・混雑時の都心部での高度を少しでも稼ぐ方法で、

こちらは多くの飛行機が利用できるRNP進入方式。

もう1つが深夜に海上を小回りで着陸するルートで、こちらは特別な許可を要するRNP AR進入方式。

許可を受けていない飛行機がいることを考えれば、RNP AR進入の着陸ルートに列を成して着陸させるのは難しそうだが、

深夜にまばらに来る飛行機をさばくなら使えるという話なんでしょうね。


というわけで飛行機の着陸ルートもいろいろあるという話だった。

ILSが最善ではあるけど、RNPもそれなりによいということですね。

目視で対応というのもけっこうよい場合があるのだが、悪天候に弱かったり、管制が難しくなったり欠点もある。

乗り入れる航空会社が限られるならRNP AR進入方式への対応もしやすいので、

まずはそういう空港から導入が進んでいる状況ですね。

市街地上空を通って着陸する理由

今日は新宿で用事を済ませて、渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)でコンサートというので、

時間調整もかねて新宿駅南口から代々木公園まで散歩していた。

新宿駅南口付近は渋谷区に一部かかっており、意外と近いのだ。


散歩する中で気になったことがあった。それは上空を飛ぶ飛行機である。

それなりに高度が下がっていることもあり騒音もなかなかだし、

便数も多く、2機が並んで飛んでいる姿もしばしば見られた。

これは羽田空港で2020年から適用されている新飛行ルートの1つで

南風で夕方の混雑時間帯に使われる着陸ルートに該当する。


羽田空港は井桁状に4本の滑走路がある。南北方向にはA滑走路(陸側)・C滑走路(海側)、東西方向にはB滑走路(陸側)・D滑走路(海側)とある。

羽田空港の南側・東側は海上(住宅利用以外の埋立地を含む)である。

できるだけここを通って離着陸するようにしている。

ただ、全てをそこに収めようとすると便数が限られてしまう。

そこで混雑時間帯に限って、複数の滑走路で同時離陸あるいは同時着陸をする飛行ルートを決めることになった。


飛行機は風に逆らって離着陸するのが基本である。

南風のときに2つの滑走路を同時に使うルートとしては下記の2つが考えられる。

  • 東側からB・D滑走路に着陸、A・C滑走路を南向きに離陸
  • 北側からA・C滑走路に着陸、B滑走路を南西向き、A・C滑走路を南向きに離陸

東側から着陸するのは従来のルートだが、離陸ルートがD滑走路と競合する。

北側から着陸すると、離陸ルートとの交差は最小限になる。

B滑走路を南西向きに離陸したら川崎区の臨港地帯上空で旋回して海に向かうので比較的周辺への影響は抑えられるが、

着陸は直線的に並ぶのが効率がよいので、どうしても市街地上空を通る。


飛行機は昔より静かになったというけど、エンジンが静かになっても着陸時はほとんど変わらない。

従来より飛行機が小型化したことで平均的には静かになったかもしれないが、

羽田空港は国内の他の空港に比べれば中型機以上の割合が多い。

なので取れる対策は可能な範囲で高度を上げるということになる。

そのための対策の1つとして、GPSを活用したRNAVと呼ばれる航行方式がある。

滑走路の端から出ている電波を使うILS方式に比べると柔軟性が高く、

滑走路の少し内側に着地するようにして少しでも市街地での高度を上げたという。

ただし、着陸判断高度の点では不利なので悪天候のときはILSを使うルートになる。


それで渋谷区周辺だと2500~3000ftぐらいのところを飛行する。

国土交通省のデータを見ると、2500ftを飛行して着陸するとき直下の騒音レベルは、737-800で65dB、777-300で72dBなどとなっている。

騒音が気にする人が増えるのは65dB程度からというので、

これが混雑時間帯に断続的に発生するのはけっこう気になるのも当然。

品川区内ではさらに高度が下がり、大井町あたりでは1000ftまで下がる。

こうなると737-800で76dB、777-300で80dBほどになる。

80dBはサイレンを鳴らしながら走る緊急自動車並みの騒音とのこと。

着陸とはいえなかなか大変である。


北風の場合も従来より市街地への影響が拡大している。

午前中にB・D滑走路から同時に北東向きに離陸するルートを使うのだが、

2つの滑走路からの離陸後のルートが干渉しないようにするため、

B滑走路から離陸した飛行機は荒川沿いに北上することになる。

できるだけ海上で高度を上げて、江戸川区・江東区の市街地にかかるあたりでは3000ft以上となる。

離陸時はエンジンを吹かす分うるさいが、新しい飛行機では低騒音化が進んでいる。

3000ft飛行時で737-800が73dB、787-8が69dB、777-300で77dBと。

787はだいぶ静かだなと思うけど、急上昇可能なのでさらに高度も稼げる。

離陸時の騒音対策として最新鋭の飛行機を導入する効果の大きさがわかる。


ところで羽田空港は複数の滑走路から同時離陸・同時着陸するために新飛行ルートを導入したわけだが、

同じようなことをやるかもしれない空港として関西空港がある。

現在の関西空港は2本の滑走路を離陸・着陸で使い分けている。

滑走路の両側が海なので使える向きが制約されないので、これでも悪くないが、

出発が多い場合は2本とも離陸、到着が多い場合は2本とも着陸にできるとよい。

しかし、現在のルートはそれができるようにはなっていない。


関西・神戸の両空港はできるだけ海上に収まるルートを取っている。

このため遠回りを強いられることもあることも課題である。

今後、関西・神戸の両空港は発着枠を増やしていきたいという話があり、

そのためには陸上を通るルートの拡大も考えなければならない。

羽田空港を見てもわかるけど、着陸は飛行ルートの広い範囲で騒音の影響がある。

羽田に比べれば、関西・神戸はある程度は海上に押し込められるのはよいけどね。

広島空港と岩国空港のデュアルアクセスらしい

今月、広島でG7サミットが行われる。

前回は2016年に志摩で開催していて、そこから7年して日本開催と。

G7あるいはG8サミットが日本の大都市で開かれるのはかなり久しぶりで、なんと1993年の東京以来だという。

G20サミットを2019年に大阪で開催しているので、大都市が久しぶりという気はあまりしないけど、G7とG20では違うでしょうしね。


そんな広島でのサミット開催の大きな懸念は道路の通行規制である。

G20が大阪で行われたときは阪神高速を大きく通行止めにしたが、

一般道への影響は比較的抑えられたし、NEXCOの高速道路が阪神高速の迂回路として機能した面もあった。


ところが広島ではこうもいかない。

メイン会場は宇品島だが、メディアセンターや一部要人の宿泊場所は都心部、

さらに言えばで首脳ら訪問予定の平和記念公園も都心部である。

これらの移動は一般道にならざるをえない。

このためサミット期間中は広島市街の一般車の移動は困難が予想される。


高速道路への影響も大きいのだが……

G7広島サミットにおける交通規制について (広島県警察)

広島空港は広島市から東に離れた三原市にあり、山陽自動車道でのアクセスになる。

このため期間中は山陽自動車道で交通規制が行われることになる。

これは大変なことで、例えば福岡~岡山みたいな移動にも影響がある。

山陽自動車道の迂回路としては中国自動車道がある。

ただ、現在は中国道を長距離走り通す想定はあまりなくて、迂回すると休憩に困る可能性があるという。

これは気づいていたのだが、交通規制の対象に広島市街~岩国空港も含まれているという。

どうも岩国から広島に出入りする要人がいるらしい。


地図で見ると広島市街から広島空港より岩国空港の方が近そうに見える。

確かに距離としては岩国の方が近い。

ただ、一般的には広島市街からならば広島空港の方が早いという。

確かに広島空港は広島市街から遠いが、高速道路がよく整備されている。

一方の岩国空港は広島からのアクセスは岩国駅まで電車で、そこからバスという。

この利便性の差は大きく、広島ならば広島空港がよいのが定説。

しかし、広島と岩国の間にある廿日市などは岩国空港との近さが生きるため、

岩国空港自体が広島県内と往来するニーズを期待しているという。


実際のところ、要人の大半は広島空港を選ぶのだと思う。

ただ、あえて岩国を使いたい要人がいても不思議ではない。

なぜならば岩国空港というのはアメリカ海兵隊の岩国航空基地のことだから。

というわけでアメリカ大統領だけ岩国なのかなという想像はできる。

他は無難に広島空港だと思うんですけどね。


広島空港が広島から遠いというのはよく言われるのだが、

広島は平地が限られ、広島空港の移転候補地は瀬戸内海の島か山間部だった。

瀬戸内海の上を飛行機が飛び回ると、騒音問題、漁業関係者との調整、景観問題など多数の問題があるのは明らかだった。

山間部の方が環境への影響が少なく、その中で山陽自動車道沿いの現在地は条件がよかった。

広島市街から遠くなるのは好ましいとは言えないが、

山陽自動車道沿いを東にずれたことで広島県第2の都市、福山には近くなった。

広島都心まで55分、福山まで65分というのはどちらにとっても中途半端だけど、

いろいろな事情がある中ではマシな選択肢がこれだったということである。


なお、岩国基地には1964年まで民間の定期便が運航されていたが、

その後は途絶えて、2012年に改めて共用空港として開港したという経緯がある。

共用空港化には岩国基地の地域対策という面もあるらしい。

アメリカ海兵隊・海上自衛隊と滑走路を共用することもあり制約が多い。

これは要人輸送にも当てはまると思うのだけど。

飛び地路線に他社中古車?

西武多摩川線という路線がある。

JR中央線の武蔵境駅から分岐し、西武の路線としては飛び地になっている。

砂利輸送のために作られた路線で、合併により西武鉄道になった経緯がある。

多摩川での砂利採取自体がとうの昔になくなっており、現在は中央線の支線として通勤・通学・レジャーと活用されている。


多摩川線は西武の路線として飛び地だが、大がかりな車両点検は池袋線の車両基地で行われている。

貨物列車として武蔵境駅~新秋津駅を輸送するという方法を取っている。

西武鉄道多摩川線の車両交換、たぶんほとんどの人が見たことないはず…全線開通100周年で動画大公開! (鉄道ホビタス)

1往復で搬入と搬出をやるという方法なんですね。

この都合、一時的に2編成が離脱する期間が発生する。

(これに加え、池袋線内の牽引車として同型1編成が必要になる)

機関車に付けて運ぶためには連結器の交換も必要になる。

ただ、それでも車両自体を運べるならそれが一番効率がいいんでしょうね。


そんな多摩川線では今も古めかしい車両が走っている。

いや、西武新宿線のような幹線でも同じような車両は見ますけどね。

これらは順次置き換えていくという方針なのだが、このことについて西武グループの中期経営計画に気になる記載があるという話が。

サステナ車両※の導入

※無塗装車体、VVVFインバーター制御車両等の他社からの譲受車両を当社独自の呼称として定義

大手の鉄道会社が他社の中古車を導入するというのはあまりない。

車両老朽化に対して手っ取り早い対策が中古車導入という意図だと思うが。

それだけ西武には古い車両がたくさんいるということなんだろうなと。


具体的な話は明らかにはなっていないが、先ほど書いたように多摩川線の車両は揃って古い。

このため「サステナ車両」の導入というのは大いに考えられるところ。

また、中期経営計画の中でJR東日本との鉄道事業での協業への言及もある。

そんな事情から生まれた憶測として、多摩川線の車両をJR東日本でメンテナンス可能な中古車に置き換えるのでは? というものがある。

西武としては飛び地だが、JRにとっては線路のつながった支線とも言える。

JRの仕様に適合した車両ならば、JRの車両基地と自走で移動可能だろうと。

車両輸送の都合で予備車が多く必要になっている問題も解消できる。


そのような都合の合う車両があるのか? というのは気になるところだが、

実はりんかい線の車両に置き換え計画があるんですよね。

りんかい線は大がかりな車両点検をJR東日本に委託していて、

当時JRで導入していた車両をカスタマイズして導入した経緯がある。

近年に制御機器の更新を行っており、まだ十分使える車両とも言える。

JRでも横須賀線の車両置き換えが進んでいたり、それなりに候補はある。


あくまでも憶測ではあるものの、それはそれでいいのかもねと。

西武にとってみれば飛び地の多摩川線はどうやっても効率が悪い。

とはいえ利用者は少なくないし、やめるわけにはいかない路線でもある。

車両の老朽化、車両輸送を伴う整備の手間といった課題を他社の中古車の導入で解決しようというのは理にかなった話である。


大手の鉄道会社が他社の中古車を導入した比較的最近の例というので、

近鉄の子会社、伊賀鉄道・養老鉄道でそれぞれ東急の中古車を導入したのがある。

といっても沿線市町の負担で購入しており、近鉄が買ったとも言えないけど。

(そもそも分社化した時点で近鉄ではないという話はある)

両路線は近鉄の他路線と仕様が異なる。(南大阪線→養老線の転用は可能だが)

このことから他社中古車に目を向けざるを得なかったというところはある。

西武多摩川線もそこに近いかも知れませんけどね。

どっちもETC専用ではあるけど

帰りも中央道のバスで帰ってきた。

ちょうど昼時をまたいで走るバスということで、途中で昼食を食べたかった。

路線バスの開放休憩は遅れては大変だし、狭い車内で食べては迷惑だし、

事前に買っておいて休憩場所で下車して食べるというのが通常パターン。

今回の開放休憩はどこもほぼ10分だから、それでさえ慌ただしい気がした。

さすがに発車までには間に合いますけど。


今回、中央道を往復する中で気づいたのだが、

稲城IC(新宿方面)と府中スマートIC(八王子方面)の入口がETC専用であることに気づいた。

府中スマートICはその名前の通りETC専用のスマートICとして作られたものだが、

稲城ICは昨年からETC専用の料金所になった。

首都高速・阪神高速では既存出入口をETC専用にする流れは明確だったが、

NEXCO各社でもごく一部でETC専用化をしているようで、それがここだったと。


両ICは調布IC~国立府中ICの間に設けられたハーフICである。

この区間は市街地を走る割にはインターチェンジ間の間隔が長かった。

このためIC新設の要望が強かったらしい。

稲城ICは稲城大橋有料道路(現在は無料)の開通に合わせて1995年に開業。

府中市にあるのに稲城ICという名前なのは稲城大橋とセットだから。

実際、新宿方面入口は稲城大橋としか接続していない。出口は稲城大橋に入らず府中市内に出るルートもあるが。

一方の府中スマートICは府中バスストップに付帯するスマートICとして2015年に新設された。

2つ合わせて1つのICという見方もあるかもしれない。

実際、稲城大橋を渡りきって直進すると府中スマートICにたどり着く。


ただ、スマートICとETC専用ICって明確に違うところがあるんですよね。

それはスマートICは一時停止をしなければならないということ。

通常のETC無線通行は速度を落として通過することができる。

しかし、スマートICは通信設備が簡易化されているか一時停止をして通信する仕組み。

ただ、府中スマートICは利用者が多いこともあり、2レーン用意されており、

果たしてこの構造なリーズナブルなのかというところには疑問が残るところ。


あと、ETCが付いていないのに間違えて進入したときの処理も異なる。

現在のスマートICでは何らかの方法で一般道に脱出できるルートが用意されている。

インターホンで誤進入を申し出ると、脱出ルートを開けてくれると。

府中スマートICの場合は本線に入らず直進して外に出るルートがある。

一般道→高速 と 高速→一般道 の両通路間のゲートを開いて戻る方法が一般的だが、けっこうかさばる構造である。


一方のETC専用ICだが、こちらは脱出路はないので前進するしかない。

「サポート」と書いてあるレーンでインターホンを呼び出して指示を受ける。

後で料金所の事務所に行って払うか、ETCカードの情報を伝えて精算するか。

これは何らかの理由で料金所を冒進してしまったときと同じ扱いである。

ただし、稲城ICに限って言えば、従来使っていた自動精算機が残っているそうで、今はこれを使って精算しているらしい。


稲城IC・府中スマートICは当時は均一区間だったところに新設された。

(2016年からETC車は区間制、現金車は最大料金を徴収する方法に変更)

この区間では両方向とも入口で料金徴収するので、出口は料金所がない。

なので、ETC専用と言いながらも出口は非ETC車でも利用可能である。

高速道路本線にある出口を示す看板を見るとスマートICであることを意識させるものはない。


都市高速ではETC車の区間制導入に伴い、現金車の料金はかなり不利になってきた。

そのような事情を考えれば出入口のETC専用化は妥当なのかなと思う。

NEXCOでも都市高速スタイルの道路では同じだと思う。

ただ、全てが全てそうでもなく、単純に利用者の少なさでETC専用化されたところもある。

NEXCO中日本だと東海環状自動車道の末端がETC専用化されていたり。

末端だから利用者が少ないというのはあるんだろうけど。


ところで調布IC~国立府中ICの間隔が長かったという話を書いたが、

おそらくこの原因はこの区間がもとは区間制だったからだと思う。

均一制は環境対策だった?

かつては料金所というのは渋滞の原因であり、周辺の環境に大きな影響を与えていた。

特に調布ICはここが東京側の起点・終点だった時代に調布市長が先導して調布ICを一時閉鎖に追い込む事件を起こしている。

最終的に三鷹料金所の環境対策として、同区間は均一化されて、東京方面の料金収受を八王子に集約するに至っている。

それ以前は市街地にコンパクトなICを設置するという対応は不可能だったとみられる。

ETCが普及した今となっては……という話ですけどね。

ゆりの噴水前のバス乗り場とは?

東京~名古屋間をバスで移動することは多いが、ほぼJRハイウェイバス。

東京側は東京駅八重洲口のJR高速バスターミナルだったり、バスタ新宿だったり、

場合によっては家から近い中央道の本線バス停だったり。

一方の名古屋側はほとんど名古屋駅太閤通口のJRハイウェイバスのりばである。


もう10年以上前のことになるのだが、JRバスは名古屋ターミナルビル内のバスターミナルを発着していた。

このビルの建替にあたって「仮設」バス停として作られたのが、現在のバスターミナルである。

ただ、この名古屋ターミナルビルがJRゲートタワーとして改築が完了した後もJRバスは戻っていない。

(市バスは改築後JRゲートタワー1階のバスターミナルに戻った)

路上バス停に移転した市バスと異なり、本格的なロータリーも整備したJRバスは戻る理由がなかったのかも。


そんなJRバスの案内にはこんな記載がある。

名古屋駅(新幹線口)の のりばは、JR名古屋駅太閤通口「JRハイウェイバスのりば」となります。
※直接バス停でお待ち下さい。(ゆりの噴水でお待ち頂いてもご利用になれません)

当たり前じゃないかと思うのだけど、ゆりの噴水周辺は確かに人が多い。

あれはJRバス以外のバス待ちの人なのかと知るも、その実像はよくわかってなかった。


ゆりの噴水周辺でのバス待ちというのは主に夜行バスの話である。

人が多いというのも夜にJRバスで到着したときの印象である。

この人たちはバス会社の人に集められてバスが停車している場所に連れられる。

ここで集まる人は通常、名古屋駅西口観光バス乗車場Bバースに停車するバスに乗るという。

調べてみると太閤通口の北側の路上に「高速バス乗り場 22:00-1:00」と書かれたバス停のポールが何本か立っている。

時間帯により観光バスの乗車、高速バスの乗車と使い分けているよう。

直接バス停に来てもらってもよさそうなものだが、歩道が狭く乗車待ちが難しいのだと思う。


ただ、バス停の表示を見てもわかるようにここを使えるのは夜行バスのみ。

名古屋駅の伝統的な高速バス乗り場は JRハイウェイバスのりば と名鉄バスセンター(名鉄バス・三重交通)

名神ハイウェイバスは両系列が運行に関わっているので、系統によっては両方停車する。

これらの会社と共同運行先以外は別の場所に乗降場所を確保する必要がある。

そして観光バス乗車場Bバースは夜発のみ使えると。


というわけで、昼行バスに新規参入した会社はどうしているかという話。

まず、わかりやすいのは太閤通口の対岸、ビックカメラの前にバス停がある。

屋根付きの立派なバス停で、大阪バスとWILLER EXPRESSが同じ場所。

大阪バスはほとんど昼行便だし、WILLERもわりと昼行便が多い。

WILLERは夜行便の一部ではゆりの噴水周辺集合となっている。

それより少し南、愛知県信用保証協会前に日本中央バス・茨城交通のバス停がある。

こちらはちょこんと置かれている。


今度は駅の反対側、桜通口だが、こちらは ミッドランドスクエア前 に あおい交通 他のバス停がある。

あおい交通の運行路線は県営名古屋空港行きだが、

イルカ交通・青木バス・杉原観光バスと観光バスから高速バスに参入した会社がいくつか使っている。

あおい交通 も元々観光バス会社で、小牧市の桃花台ニュータウンの住民の要望で春日井駅とのバスを走らせたことで路線バス参入した経緯がある。

セントレア移転後の名古屋空港との連絡バスというニッチなところに参入し、

名古屋駅前に自社バス停を設け、余力で似たような経緯の他社にバス停を使わせているということではないか。


その桜通口から南にだいぶ下ったところに「名古屋南ささしまライブ」というバス停がある。

名古屋駅からはやや遠く、観光バス乗車場Bバースが使えるならばそちらの方が近いので、

降車場としての利用、あるいは昼行便の乗車に使われているよう。

そうか、太閤通口の近くで乗車できても、降車はそうもいかないのか。


ところで、「ゆりの噴水前」と書いたが、先日この噴水は撤去された。

「ゆりの噴水」撤去始まる/名古屋駅前再開発 (読売新聞)

理由はリニア中央新幹線の開業に向けた駅前広場整備のため。

これによりバス乗車時の目標物がなくなったわけである。

現在のところは「太閤通口広場<旧:ゆりの噴水前>」といった表記でごまかしている。


OCAT(大阪・難波)やバスタ新宿のような公共バスターミナルが使えるといいけど。

少しずつ状況が改善していることは確かなんだけど。

東京駅周辺であれば、バスターミナル東京八重洲が開業した。

ここには京成バスなど周辺の路上バス停を使っていた会社だけでなく、

従来、鍛冶橋駐車場を使っていた路線の一部が乗り入れ、今後拡張が進むと全て集約される見込み。

他地区でも神戸・三宮でも国道事業としてバスターミナルが整備される予定。

条件が揃えばそういう方向にも向かうと思うけどね。

見た目と便名が合わないことはある

昨日、こんなことを書いた。

果たして岸田総理大臣がスターフライヤーの黒い飛行機に乗り込むのを見て「全日空3821便」と書けるものだろうか?

(それは全日空便ではないと思うが)

この件についてはこう思うのだけど、他のケースもある。


飛行機の便名と運航会社が違うケースには、コードシェア、ウェットリース、共同引受 の3ケースが考えられると思う。

コードシェアは同じ飛行機に他社の便名も付くというもの。

他社運航便を自社便として販売できる仕組みですね。

冒頭のケースはスターフライヤー運航便にANAが相乗りしている形であり、

スターフライヤーとしての便名も存在して、特に断りがなければスターフライヤーの便名で呼ばれるのではないか。


ウェットリースは最近は日本の航空会社ではなくなったのかなぁ。

ウェットリースとは飛行機を乗務員付きで借りることを表している。

(飛行機だけを借りて、乗務員は借主が用意するものをドライリースと呼ぶ)

かつては JALウェイズ と JAL の間で見られた。

JALウェイズはJALグループでチャーター便とハワイ・グアム・サイパン路線の一部を担当していた。

それ以外にもJAL便名のバンコク線、ハワイ線の運航も担っていて、

これについてはJALがJALウェイズの機材・乗務員をウェットリースで借りている扱いだった。

この逆にJALウェイズ便名のリゾート路線をJALの機材・乗務員で運航するものもあったよう。

JALウェイズはタイ人乗務員を多く採用して、リゾート路線を専門に担当してきたが、

これがなかなか見合わなくなってきたのか2010年にJALに吸収された。


共同引受というのは複数の航空会社で連帯して運送責任を負うもので、

JALグループでは 日本航空、J-AIR、日本エアコミューター、北海道エアシステム、日本トランスオーシャン航空(一部便) の5社、

共同引受対象の便はJAL便名での運航になっている。

ANAグループでは 全日本空輸、ANAウイングスの2社がANA便名になる。

とはいえ、ANAウイングスなんて外見からするとANAと区別は付きにくい。

JALグループの5社についてはそれなりに運航会社の違いは意識するかも。

J-AIRについてはJALの完全子会社でリージョナルジェット専門で全国を飛ぶが、

他3社は奄美・北海道・沖縄の歴史ある航空会社である。


JALが地域航空会社を共同引受に加えた理由はいくつかある。

1つは国際線とこれらの会社の航空券を同時購入できるようにするため。

この目的のためならコードシェアでもいいような気はするが。

JALの販売システムにそのまま乗っかれるという解釈でよいのかも。

もう1つが共同引受の会社同士で機動的に運航会社を変更できるという。

日本トランスオーシャン航空(JTA)の羽田空港発着便がJAL便名になったのはこのためだという。

JTAは737-800のみの保有で繁忙期に大型化するという対応はできない。

そこで繁忙期はJALの運航により大型化するということを考えた。

これで浮いたJTAの機材は沖縄県とは関係ないJAL路線に入ることになる。

なぜ”うちなーの翼”JTAが羽田-小松・岡山を飛ぶのか JALグループで737フル活用 (Aviation Wire)

なお、JTAについては羽田便以外は引き続き自社便名での運航になる。

(このためJTAには共同引受用と自社便名用の2つの運送約款がある)

また、JTAは以前より国際線との同時購入に対応しており、JALの国際線時刻表にも接続便として記載があった。


ウェットリースについてはコードシェアとの合わせ技でない限りは、運航会社の便名は付かない。

共同引受の場合は、代表会社の便名にしか見えない。

JTAのジンベエジェットに乗っても「日本航空971便」と書くしかない。

こういうケースだと運航会社と便名の表記が合わないことは普通だろう。


これとは少し異なるケースで共通事業機として他社機材を借りて運航する場合がある。

常時行われているのがオリエンタルエアブリッジ(ORC)がANAウイングスの機材を借りるもの。

これはORCの自社機材が不足しているのを、ANAウイングスのQ400で穴埋めしているため。

長崎の離島に飛ぶのは何か

借りるのは飛行機だけでORCの乗務員でORC便名での運航である。

ORCは長崎県の航空会社で、長崎県の離島路線の運航が基本だが、

ANAから機材を借りた都合か、長崎県と関係ない路線の運航も担当している。

ORC全便にコードシェアでANA便名が付いていることと相まって、ANA便にしか見えないかも。

なお、ORCは自社のQ200の後継機としてATR42を購入しすでに納入されている。

ATR42導入後は操縦資格の違いもあるため、Q400の借用は終わると思ったが、

ATR42が納入される傍ら、借用するQ400による路線網拡張も続いていてよくわからんなと。


グループ会社内で共通事業機でやりくりするのはそういうものだとして、

それ以外だと天草エアラインの機材整備時に日本エアコミューター(JAC)からの借用が知られている。

天草は1機しか持っていないので、かつては整備時は全便欠航になっていたが、

両社ともATR42を導入したことでこのような対応が可能になった。

元々JACは北海道エアシステムの機材整備時に貸出を行っていた。

(当初はSAAB340の貸出でスタート、現在はATR42の貸出が行われている)

このたびATR42を購入したORCも整備時にはJACから借用するのではないか。


だから、見た目と便名表記が合わないケース自体はけっこうあるんですよね。

共同引受は参加した会社については一蓮托生ということではあるけど、

JTAは自社便名も一部残っているのがどうにも微妙である。

最後の方に書いたANAウイングスの機材を借りて、ORCが運航し、ANAとのコードシェアなんていうのは、

形式上はORCの自主運航便にANAが相乗りする形ではあるけど、

ANAがORCの乗務員を借りているようにしか見えないんだよね。

なぜかよく故障する車両

最近、くろしおの車両故障がしばしば話題になっている

京都・新大阪~白浜・新宮を結ぶ くろしお は以前は複数の名称が混在していて、

その中でオーシャンアローとして使われてきた車両、283系のトラブルが多いという。

きのくに線の顔とも言える車両なのだが……


問題点はいろいろあるが、たびたび深刻な問題を起こしてるのが、坂に弱いということ。

どうしてこいつばっかり弱いんだと言われると困るのだけど、

この車両が作られた1996年ごろのJR西日本の車両はモーターを3両に1両とか集中設置することが多かった。

その上、トップスピード重視の特急形とあってトルクは弱そう。

意外な難所が天王寺駅で、環状線~阪和線の連絡線がかなりの急勾配らしい。

あまりに急で貨物列車は通過できないということで、南海の新車はわざわざ環状線~大和路線~和歌山線のルートで和歌山市駅に送られているほど。

それにしても他の電車はそうそう立ち往生しないのに……と。


くろしお号については2012年頃から車両の置き換えが進んだ。

国鉄時代の最後の生き残りがここ?

国鉄時代から使っていた振り子式車両を一般的な車両に置き換えている。

振り子式は車体を傾けることでカーブを高速通過できる方式だが、

車両性能が上がり、振り子式をやめても大阪市内~新宮で+5分程度の所要時間増に留まると。

新車もあるが、一部は北陸特急のお下がりである。(北陸新幹線の金沢~長野開業と同時期だった)


283系は老朽化の問題はないと考えられ、継続して使われたものの、

他が振り子式をやめてしまったこともあり、現在は振り子機能は停止されたそう。

車体を傾けなくなったので、ホームとの隙間を埋めるドアステップが大型化できた。

大阪駅(うめきたエリア)の地下ホームがカーブしているということで、

その安全対策としてステップの大型化を行ったということらしい。


振り子機能は使わなくなっても、まだ活躍が期待されている車両なのだが、

さすがにトラブルが多すぎるので、今後どうなるだろうかなというのはある。

北陸新幹線の金沢~敦賀が開業すると同区間の在来線特急はなくなる。

こうすると北陸特急の車両がさらに浮くので283系代替分ぐらいは取れるだろう。

他の車両と仕様が統一され、メンテナンスや案内上のメリットもある。


老朽化した車両がよく故障するというのはわからなくもない話だが、

世の中にはどちらかというと新しい車両なのによく故障するものもいるらしい。

それが東武50050系、東武伊勢崎線~半蔵門線の直通運転で使われている。

この車両は2006年頃から使われるようになったもの。

なぜか直通先の東急田園都市線にいるときの故障が多いらしい。

発煙、ドア故障が多いらしい。発煙とは物騒である。


この車両、よく故障の現場になっている田園都市線の事情により作られたという。

東武伊勢崎線の伝統的なターミナルは浅草駅だが、基本的に6両編成までしか入れない狭い駅である。

このため業平橋(現:とうきょうスカイツリー)駅に10両対応ホームを設けていた。

このホームの代替として曳舟~押上の新線を作り、半蔵門線への直通を開始した。

半蔵門線は渋谷からの東急田園都市線となり実質的に一体化されているので、3社直通運転となる。

その後、業平橋駅の10両対応ホームなどあった一帯はスカイツリータウンとなった。


このような経緯もあり、東武伊勢崎線~半蔵門線の直通列車は、

全て10両編成で急行・準急の多くを担うという形になっている。

当初、東武の10両編成というのは6両+4両だった。

東武で10両編成というのは限られた用途でしか使えないのでこうなっていた。

ところが田園都市線は日本一混む路線で連結部の定員が減るのが問題視されたそう。

このため東武は10両固定の車両を作ることを決めて作られたのが50050系である。

この車両は浅草駅に入れないし、南栗橋より日光方面、久喜より群馬方面にも行けない。

ほとんど半蔵門線直通専用である。


そんな車両が直通先で故障しまくるというのは大変である。

一体なにが原因なのかよくわからないけど。

直通運転の都合、南栗橋車庫から離れて走る時間が長いとか、

田園都市線では急加速・急減速が多くて車両への負担が大きいとか。

でも決定的な理由はよくわからない。何か打開策はないものか。


というわけでなぜか故障が多い電車の話だった。

283系はどうなるんだろうかね。見た目としては残ってほしいけどね。

ただ、機能的にはこの車両である意味ももうないのかなと。

天王寺の坂で立ち往生を何度もしているのは大変に心証が悪いと思う。

5系統も86系統も難点あり

おととい、京都市バスの観光系統が休止になっている話を書いた。

観光系統を休止してしまったので

見落としてたのだが、急行100系統は銀閣寺道まで走っていて、

そうするとその区間の代替も必要で、観光シーズンには5系統の増発を出しているそう。

以前は100系統で対応していたが、今は86系統+5系統で対応する傾向があると。

それってどうなんだよと思ってしまうけど。


5系統といえば、京都市バスの中でも特に乗りたくないという思いはある。

京都駅から四条河原町・三条京阪を経て、白川通方面、国際会館駅・岩倉操車場まで向かう。

沿線に平安神宮・南禅寺・銀閣寺などがあるため観光客が集中する上、

白川通沿いの生活路線としての役割も大きいため、とにかく混む。

道路状況もよいとは言えず、混雑も相まって遅れも積み重なりやすい。


そんな5系統だが、四条通(烏丸~河原町)の2車線化・歩道拡幅のときに、

半分は従来通りの 京都駅~四条烏丸~四条河原町~岩倉 での運行、

半分は「五条通5」の表示で 京都駅~烏丸五条~河原町五条~四条河原町~岩倉 となった。

この背景には四条通を走るバスを減らして渋滞緩和を狙ったのもあるけど、

新ルートの沿線にホテルがいくつかあることや、着物のレンタル店があるとか、

観光客のニーズに合っているという考えもあったのだという。


この2ルートを概ね交互に運行しているのだが、

そうすると不等間隔になって不都合はないのか? という疑問はある。

調べてみると時刻表上は京都駅・四条河原町のどちらで見ても等間隔になっている。

すなわち、京都駅~四条河原町は両ルートの所要時間は同じということですね。


当然のことながら、四条烏丸経由の方が遅れやすいのは言うまでもない。

五条通経由が四条通経由に追いつくのは日常的に起きているらしい。

あるいは追い抜くケースもしばしば発生しているよう。

四条烏丸に行かない点で五条通経由を使わない利用者も一定おり、

そのような乗客の偏りも等間隔での運行が出来ない理由だと思われる。


観光シーズンの増発便については、両ルートとも出ているらしいが、

どちらかというと「五条通5」の方が多く設定されているよう。

京都駅・四条河原町に着目すればそっちのほうが効率的なのは違いない。

それでも四条通経由も走らせているのは、そっちの利用も多いということなんだろうね。

このあたりに5系統の難しさが詰まっているような気がする。


あと、100系統の代替手段として書いた86系統だが、往復でルートが違うらしく、

京都駅→五条坂→祇園→東山三条→岡崎公園・動物園前→東山三条→三条京阪→四条河原町→祇園→五条坂→京都駅

というわけで、岡崎公園→祇園は四条河原町経由になっている。

京都駅→東山三条では206系統、岡崎公園→四条河原町では5系統、四条河原町→五条坂では207系統と同じに見えるようにしたということなのかな。

五条坂→四条河原町の向きは207系統に加えて80系統も使えるが、

それがない四条河原町→五条坂は207系統の混雑がひどいと聞いたことがある。

そこを緩和することを目論んだ? と思ったけど真相はわからない。


ところで「五条通5」という表示、そもそもわかりにくいという話はあるが、

京都というのは外国からの観光客も多く、すると漢字というのはなおさら問題である。

北1系統(北大路BT~鷹峯)など観光客の利用が多い系統では「北」にNorthと付ける対策が取られていた。

特に観光客の利用が想定されない洛西方面の「西」の系統はそのままだけど。

ただ「五条通5」はまさに観光客向けの系統なのに、そういうのないんですよね。

四条烏丸経由と五条河原町経由だと宿に帰れるか帰れないかぐらいの差はあるのに。


実はさっき出てきた86系統も観光客対策で付けられた系統番号だった。

もともとこの系統のルーツは「水族館・東山ライン」にある。

水族館というのは梅小路公園の京都水族館のことである。

当初は烏丸七条を通り、京都駅には入らない強気のルート設定だったが、

後に京都駅経由に改められて、このときに86系統と付けられた。

2020年に洛楽東山ラインの表示も「臨」から「86」に改められた。

いずれも漢字表記の系統名を数字に改めるという流れだった。


ただ、実はそこにもほころびがあって、2021年に86系統のルートが岡崎公園経由に改められたことである。

この結果、旧来の洛楽東山ラインのルートが復活したのである。

これらは「臨」の表示で走ることになるので2020年以前に逆戻りである。

というわけで、どうにもわかりやすい表示が定着しないのが実情である。

なんとかならんものなのかね。

観光系統を休止してしまったので

外国からの観光客も増えだしているという話はありますが、

春の京都は国内外からの観光客が集まって、バスの混雑がひどいとか。

そうなるとバスを増発して対応という話もあろうと思うけど、

そこで気になったのが市バス100~111系統が休止されたこと。


京都市バスの100番台の系統は観光客向けの急行バスだった。

これらは全て昨年1月に休止されている。

当時、これらのバスが走ってなくても他の系統で対応可能という判断があった。

この休止というのは運行便数が0になったというだけで、

今後、必要時に増発できるように路線図には残しておくのだと思ったが、

この前、京都に行ったときほとんど跡形もなく消えていたので驚いた。

こうなると臨時バスとしてこれらの系統を走らせることも難しそう。


昨年休止された系統は下記の6系統である。

  • 急行100 : 京都駅~五条坂~平安神宮~銀閣寺前
  • 急行101 : 京都駅~二条城前~北野天満宮前~金閣寺道~北大路バスターミナル
  • 急行102 : 北大路バスターミナル~金閣寺道~銀閣寺道~錦林車庫前
  • 急行105 : 京都駅~稲荷大社前~竹田駅(~中書島~横大路車庫)
  • 急行106 : 京都駅→五条坂→祇園→四条河原町→京都駅 (祇園Express)
  • 急行111 : 京都駅~二条城前~堀川今出川~金閣寺道 (二条城・金閣寺Express)

100・101・102系統はかつて「洛バス」と呼ばれていた時代もあって、

外国人観光客の利用も想定して外国語での案内を充実させていた。

今となっては他の系統も外国語での案内が充実しましたけどね。


もちろん休止することにはそれなりの理由はある。

急行100系統は京都駅~五条坂~平安神宮の区間には86系統が設定されている。

100系統自体が京都駅~東山通方面の206系統の増発便の意味が強かったが、

その中でも利用者が多い区間に86系統が設定されたので、今後はこちらの増発でカバーするということだろう。

急行106系統も京都駅~祇園に着目すれば86系統や206系統で対応可能。


急行101系統は京都駅~北野天満宮では50系統の増発便だった。

急行102系統はそもそもそんなに利用者が多い系統ではなかったが、

金閣寺~銀閣寺を結ぶという点では北大路通経由で204系統、

今出川通のバスという観点では203系統で代替可能である。

急行105系統は南5系統の増発便である。

電車の方が便利な伏見稲荷にあえてバスで行きたい人向けのバスなので……

急行111系統はもともと季節運行の二条城・金閣寺Expressで重要度は低い。

京都駅~二条城は9系統、京都駅~金閣寺は205系統、二条城~金閣寺は12系統で対応できる。


というわけで一見問題なさそうなのだが、101系統だけは気になるのだ。

さっき101系統は50系統の増発便だと書いたのだが、

50系統はかつての路面電車のルートを継承した都合でクネクネ走る。

101系統は50系統のルートを直線的にしたものでより効率がよい。

50系統は立命館大学発着である一方、101系統は金閣寺道を通るため、

通勤・通学の利用も大変多い京都駅~西大路通方面の205系統の混雑緩和に多少なりとも寄与していたはずである。


だから、101系統だけは必要になればいつでも復活できるようにしとくべきだったと思うんですよね。

100系統は86系統で代替可能だし、より効率的な路線だと言える。

(五条坂~銀閣寺道を乗り換え無しで移動する手段は失われたのだが)

102系統はもともと限られたニーズで、ルートは違えど代替手段はある。

あとはあってもなくてもという系統ばかりなので。


京都市としては観光客のニーズにバスだけではなく、地下鉄も含めて対応したいということはあると思う。

そういう意味では観光系統のありかたは変わっていくべきなのかもしれない。

バス1日券が廃止されたぐらいでそんな変わるか? とは思いますが。