乗継割引ではチケットレスにならない

新幹線・在来線特急の乗継割引が来年春から廃止になるとのこと。

北陸新幹線(敦賀接続)と西九州新幹線については別制度なので、

こちらは今後も新幹線・在来線特急の料金優遇は残るのだが……


廃止される乗継割引というのは、在来線特急側を半額とする制度で、

もともとは長距離の在来線特急が新幹線に接続する特急に変更されたことに対応する措置だった。

例えば、かつては 大阪~米子 を直通する特急が設定されていたが、

山陽新幹線が岡山に到達してからは、岡山で新幹線と やくも号 を乗り継ぐ形となった。

こうすると特急料金の負担が増えるので、在来線側を半額にすると。

ただ、この在来線側を半額というのがいかにも雑な話であって、

京都~米原~富山(新幹線開通前)のように米原で新幹線としらさぎ号を乗り換えると、

京都~富山でサンダーバードを使うより安かった。京都~米原の新幹線を自由席で使えば割安だから。


長距離の在来線特急がなくなってもうだいぶ長いし、

特別な事情のある西九州新幹線と北陸新幹線を手当てできればOKというのは理解できる面もある。

一方で料金的に不利な区間を埋める割引きっぷの重要性は高くなる。

新潟自由席往復きっぷ (JRおでかけネット)

例えばこういうやつ。これは前日購入という条件はあるが。


JR東海は代替手段として「EX旅先予約」という名前を書いている。

2023年10月1日、「エクスプレス予約」で新たな新サービスを開始します! (EX予約)

この西日本の資料を見ると、EX予約をしてからe5489で「乗継チケットレス特急券」やフリーきっぷが買えるというような記載がある。

JR東海は具体的なことを言っていないのだが、同社は在来線特急の予約サービスはe5489を利用している。

東海道・山陽新幹線はEX予約で購入し、西日本・東海管内の接続列車はe5489で買うという形になるのかな。

ただ、西日本管内は特急運行区間でのICOCA導入やチケットレス特急券導入が進んでいるが、

東海管内はそういう話は聞かないのでどうなのかなと気になるところはある。


乗継割引を廃止する背景には各社のインターネット予約サービスで対応できていなかったからではという話もあった。

あれ? e5489って新幹線・在来線をセットで買えたようなと思ったんだけど、

これは制度上の乗継割引ではなく「eきっぷ(乗継用)」という独自商品で実現されていたもので、

紙のきっぷなら乗継割引になる区間でも買えないことは多かった。

そのJR西日本にとっても紙のきっぷの発券が必要なeきっぷだけの対応でチケットレス化はできていなかった。

今後は新幹線・在来線双方でチケットレスを利用するのが合理的になるようにしていくのではないか。

結果として従来より割高になるケースも増えるのだろうが。


ただ、乗り継ぎがある上に割高では利用者は寄りつかないですからね。

というのが北陸新幹線の敦賀乗り継ぎの料金設定を見て思ったんだけど。

北陸新幹線の特急料金の認可申請について (pdf) (JR西日本)

北陸新幹線は来年3月に金沢~敦賀で開業する。

これにより京都・大阪~福井・金沢・富山は敦賀乗り継ぎとなる。

敦賀~大阪のルート決定に時間を要したなどの事情もあり、現在の計画では2046年までこの状態が続くことになる。

関西~北陸など敦賀経由での移動をする人には困った話ではあるのだが、

新幹線の効果を早期に得られる部分は得た方がよいという判断でこうなっている。

新幹線側は福井が時間短縮効果がほぼないのにだいぶ高いとか、

在来線側は京都と大阪の料金差が大きく、京都発着と大阪発着でだいぶ印象が変わる。

敦賀からの料金表に引きずられているのだと思うのだが。


他の交通機関との関係もあるので、実勢価格はそこそこになるとは思うのだが、

新幹線・在来線特急の乗継割引廃止も含めて手当てするべきところは多いのかなと。

特に西日本管内は新幹線・在来線の乗り継ぎがあれこれとあるので、

そのあたりをEX予約とe5489の連携でなんとかしたいのかなとは思う。

座席の使用を条件としない特急券

繁忙期の のぞみ号を全席指定化する話で立席特急券という言葉が出てきた。

全席指定だが自由席特急券で立席可

全席指定の のぞみ号 に立席乗車するのに使うのは自由席特急券なので念のため。

しかし、世の中には立席特急券というものが存在することは確かである。


特急券についての規定を見てみると「座席の使用を条件としないで」という言葉がいくつか出てくる。

旅客営業規則/第2編 旅客営業 -第2章 乗車券類の発売 -第7節 急行券の発売 (JR東日本)

この文言が出てくるのは立席特急券・自由席特急券・特定特急券である。

基本的に特急は座席に座って乗車するものだが、座れなくても特急券を売る場合がありますよということだね。

それぞれ乗車できる列車・車両や購入時に指定する内容が異なる。

  • 立席特急券: 別に定める列車の普通車、寝台使用区間以外のB寝台車に乗車する場合、列車・乗車区間を指定して発売(列車を指定しない場合もある)
  • 自由席特急券: 別に定める列車の普通車自由席、寝台使用区間以外のB寝台車自由席(?)に乗車する場合、小児が大人の使用する寝台を一緒に利用する場合、乗車区間を指定して発売(列車を指定する場合もある)
  • 特定特急券: 新幹線の隣駅同士など定められた区間で 普通車自由席(自由席がない場合は指定席)、寝台使用区間以外のB寝台車自由席(?)に乗車する場合、乗車できる列車と区間を指定して発売
    (東北新幹線の郡山~福島に限っては座席指定で発売することも可能)

なんと寝台車の話が出てくる。


1つの寝台を大人と小児で使用する場合の自由席特急券は、

現存する唯一の寝台特急、サンライズ瀬戸・出雲でも発生しうるが……

それ以外のケースはすでに対象列車が存在しない。

サンライズ瀬戸・出雲は寝台車が全て個室なので。

寝台特急も深夜・早朝の特急列車として地域内の移動に使える場合があった。

最後まで適用されたのが あけぼの号(上野~鶴岡~青森)で、羽後本荘~青森が対象区間だった。

夜の青森→羽後本荘はB寝台車に指定席が設定された。

逆に朝の羽後本荘→青森ではB寝台車で立席特急券で空席が利用できた。

夜は通しで乗車する乗客との錯綜を避けたいから指定席にしているが、

朝は降りていく一方なので、座席の使用は前提としないが空席に座ってとしていると。

自由席特急券・特定特急券にB寝台車で自由席という規定があるが、

夜は指定席特急券、朝は立席特急券という扱いに統一される前に存在したらしいが詳細は不明。


あと、ちょっと文言が違うから書かなかったのだが、

関東地方では全車指定の特急で座席未指定特急券というのがある。

これは指定席特急券の一種なのだが、規定上はこう書かれている。

旅客が別表第1号の2に定める列車群に含まれるいずれかの特別急行列車の特別車両及びコンパートメント個室以外の座席車に乗車する場合で、乗車列車、旅客車及び座席を指定しないことを希望するときは、使用開始後に満席等により一部又は全部の区間で座席を使用できない場合であっても、特別急行料金の払いもどしを請求しないことを条件として、未指定特急券を発売することがある。

別表第1号の2 で規定されているのは ひたち・ときわ・あかぎ・あずさ・かいじ・はちおうじ・おうめ・富士回遊・踊り子・湘南・成田エクスプレス だね。

これらの列車には座席未指定特急券が満席でも発売される。

空席があれば座ってもよいが、座れる保証はない。

これは「座席の使用を条件としないで」という条件そのものである。


特定特急券なのだが、自由席だけ特別に安い料金設定をする名目で、

特に新幹線ではいろいろな設定区間がある。

  • 隣接駅間(途中駅を挟む区間も一部あり、一部は隣接駅でも除外あり)
  • のぞみ号・みずほ号を利用する場合
  • 小倉~九州新幹線各駅、久留米・新鳥栖~東海道・山陽新幹線各駅
  • 七戸十和田~北海道新幹線各駅、奥津軽いまべつ~東北新幹線各駅
  • 盛岡~新函館北斗の各駅相互

とはいえ、最初のケース以外はそこまで特別感はない。

のぞみ号・みずほ号は指定席には加算料金が設定されている。

原則によれば加算料金は自由席にも適用するべきだが、自由席で ひかり号他と区別するのは実務的にも困難である。

そこで、のぞみ号・みずほ号の自由席を使う場合はひかり号他の料金に合わせ、

ひかり号他の自由席特急券と、のぞみ号・みずほ号の特定特急券を兼ねるという売り方をされている。

小倉・久留米・新鳥栖は境界駅の博多駅までが隣接駅他の特定特急券の対象なので、

境界駅までの特定料金と自由席料金を足し合わせるよという内容なのだが、

他の特急料金もこの額に各種加算をしているので、自由席が特別安いというわけでもないという。

七戸十和田・奥津軽いまべつ も新青森までが特定料金だから。


そして、最後の盛岡~新函館北斗の各駅相互というケース。

料金は立席特急券の金額となっているからそこまで特別感はない。

ただ、この区間は隣接駅の特定料金絡みの区間も含めて、

指定席の空席を利用することが求められる区間でもある。

指定席を「座席の使用を条件としないで」利用するのは特別ということである。

よく考えれば全席指定の のぞみ号 にしても、特定特急券の規定が適用されるから、

特定特急券の規定で指定席を「座席の使用を条件としないで」利用するという解釈になるのだろう。

こちらは座席を使ってはいけないという扱いになるのだが。


通常は立席特急券は全席指定で自由席が満席の場合に発売されるが、

規定上は満席のときに売るということは書かれていない。

全席指定でも立席特急券を発売しない列車というのはある。

座席未指定特急券の対象列車は立席特急券の対象外である。

寝台列車の末端区間を朝に利用する場合は満席とは無関係に立席特急券だが、

はやぶさ・こまち・つばさ の末端区間は特定特急券として、指定席に座席の使用を前提としないで乗車できる特急券が売られている。

真の意味で立席特急券として残るのは満席時だけなのかもしれない。


そういえばこれを書いていて思いだしたけど、

その昔、角館→北上という立席特急券を買ったことあるんだよね。

足に不便して頭を悩ませる

角館~盛岡は特定特急券(立席)の対象で、盛岡~北上は自由席利用、

なおかつ当時はこの区間は通しで買うかどうかで料金差があった。

こういうきっぷが売れるという直接的な規定は見あたらなかったのだがやってくれた。

ただし、現在はこのようなきっぷを買う必要はなくなった。

自由席の場合は盛岡で区切っても料金が同じになったからである。

なので今は盛岡で分けて買ってねと言われそう。


さっき特定特急券で「東北新幹線の郡山~福島に限っては座席指定で発売することも可能」と書いたが、

これは つばさ号 の郡山~山形方面の利用者への配慮で設けられたもので、

やっていることは小倉~九州新幹線各駅などと同じで、福島駅を挟んで自由席特急料金同士を足し合わせて、指定料金を1回加算するという内容。

ただ、それを実現する方法が新幹線同士とは少し異なるのでこういう規定になった。

この副産物で福島~郡山だけを指定席で利用する場合も割安な料金になった。


座ってもよい立席特急券と、座ってはいけない立席特急券があるのは不思議だが、

立席特急券を発売する根拠に依存する問題ではある。

今だと座ってもよい立席特急券は はやぶさ・こまち・つばさ の末端区間の特定特急券だけのような気はするけど、

昔は寝台特急絡みでも存在したということである。

全席指定だが自由席特急券で立席可

最繁忙期ののぞみ号が全車指定席になるとのこと。

この冬、年末年始は「のぞみ」号を全席指定席として運行します ― 3大ピーク期に「のぞみ」号の指定席を増やし、ご予約いただきやすくします ― (pdf) (JR東海)

全車指定の特急というのは数あれども、この のぞみ号の全車指定化はとてもユニークな方法である。


何がユニークかというと 自由席特急券 で のぞみ号 に乗車できるということ。

歴史をたどれば のぞみ号 は全車指定だった時代がある。

2003年に大増発が行われて以降、あわせて自由席の設定がなされるようになった。

のぞみ号の本数が多くなったからこそ、列車を指定せずにすぐ乗れることに意味があると考えたのだと思う。

確かに指定席だと指定された列車が来るまで待ちぼうけとなるので、

あまりに本数の多い東海道新幹線だからこそ自由席のメリットはあるなと。


全席指定の新幹線と言えば東北新幹線・北海道新幹線の はやぶさ・こまち・つばさ、北陸新幹線の かがやき がある。

これらの列車には基本的には指定席特急券を購入して乗車する。

ただし、例外がいくつかある。

はやぶさ・こまち・つばさ の末端区間を利用する場合は特定特急券で空席が利用できる。

特定特急券は制度上は列車を指定しない立席特急券で、自由席料金相当だ。

末端区間のため空席はあるだろうこと、指定席・自由席の料金差が比較的大きいので短距離利用への配慮といったところが理由だろう。

指定席が満席の場合には列車・乗車位置を指定した立席特急券が発売される。

(○号車 と指定されれば、○号車のデッキに乗車しなければならない)

料金は指定席特急料金-指定席差額なのだが、はやぶさ・こまち は加算料金があるので、他の自由席料金とは同額にならない場合がある。

これは着席すると指定席料金との差額が徴収されるので、本当の立席である。


あともう1つ、仙台~盛岡で停車駅のある はやぶさ号 で、

仙台~盛岡に限っては自由席特急券で指定席の空席を利用できる。

この区間は やまびこ号に乗車するための自由席特急券を購入できる。

(末端区間の特定特急券の発売区間は普段は自由席が設定されていない)

このタイプの はやぶさ号 は やまびこ号を置き換える形で設定されたので、

各停区間の利用は やまびこ号同様に利用できるようにしたと。

実は全席指定の のぞみ号 はこのルールに近い考えが適用される。


まず、のぞみ号が全車指定になっても ひかり・こだま の自由席は従来通り。

このため自由席特急券の発売は最繁忙期でも通常通り行われる。

ひかり号も最繁忙期はかなり混雑すると思われるが、

各停区間もあり こだま号 同様にローカルな移動への配慮もあるとみられる。

ただ、こうすると ひかり号自由席の混雑がひどいことになりそうだなと。

そこで自由席特急券で のぞみ号の普通車デッキに立席で乗車できるようにする。

これを認めることで全車指定にしても混乱を避けられると考えたようである。


自由席特急券では自由席車に着席・立席で乗車するのが基本である。

ただ、繁忙期には普通車指定席のデッキに立ってもよいという指示が出ることがある。

また自由席の客室内に立つことも可能だが、実態としてはデッキに立つことが多い。

このため、全車指定の のぞみ号普通車デッキに立つということは、

現状の最繁忙期の自由席特急券での立席利用の実態に近いと言える。

のぞみ号に自由席特急券で乗る限りは絶対に座れないというのが唯一の差異である。

その代わり絶対に座れる指定席特急券を買いやすくなる。


指定席特急券を購入して乗車したいというニーズが手堅いのが前提で、

もし買えなかった場合に立席乗車する場合は従来とほぼ同様に使える。

立席特急券と比べると列車・乗車位置の指定を行わない点が異なるが、

のぞみ号の本数が多いため、列車を指定しない方がスムーズに乗降できると見たのでは無いか。

列車の本数が限られている場合、立席で乗り切れない危険があるが、

東海道・山陽新幹線は本数が多く、むしろ乗車列車に柔軟性がある方がよい。

それは のぞみ号同士での自由度が高いということもあるけど、

自由席のある ひかり号・こだま号 と のぞみ号立席 を自由に選べることもある。


最繁忙期の利用実態を考えれば、そこまで変わらないなと思った。

指定席が取れなければ、ひかり号に乗るか、のぞみ号に立席だと。

そういう覚悟を持って利用してもらうのはよいことだと思う。

もっとも自由席に比べると指定席の方が高いことは事実である。

一般的には530円差だが、最繁忙期は930円まで広がり、のぞみには加算料金もある。

例えば、東京~京都では1250円差となる。

ただ、運賃料金全体で13320円から+1250円なので1割増程度である。

これなら指定席の座れるメリットの方が勝るというのは一般的な評価だと思う。


しかし、そういうレベルではない価格差が生じるケースもある。

それが6歳未満の幼児を連れたグループである。

大人または小児1人あたり幼児2人までは無賃で乗車できるのが基本である。

ところが大人に連れられた幼児であっても、指定席を1席利用する場合は、

6~11歳同様に こども の乗車券・特急券がともに必要になる。

例えば、東京~京都を 大人2人・幼児3人で最繁忙期に利用する場合を考える。

このグループが自由席で移動する場合の運賃・料金は26640円となる。

この5人が自由席でどのように座ったり立っても運賃・料金は変わらない。

一方で最繁忙期に指定席で移動する場合を考える。

大人だけ指定席を取ればよいが、現実問題として幼児3人を膝の上に乗せるのは難しい。

2人は膝の上に乗せて、1人は座席を取ろうというのが最小限と思うが、

この場合は14570×2人+7580円×1人=36420円となり、自由席の1.4倍となる。

さらに体格を考えればあと1人も膝の上に乗せるのは難しいとすれば、

14570×2人+7580円×2人=44300円となり、自由席の1.7倍となる。


よく幼い子どもを連れて長時間自由席を待ったりして、

どうして指定席を取らないのだ、かわいそうではないかという話を見る。

僕もそう思うのだが、上記の事情を考えると確かにと思うところはある。

最繁忙期の のぞみ号全席指定化後も ひかり号 は従来通り自由席があるが、

圧倒的に多い のぞみ号 の自由席がなくなると自由席の総量は大きく減る。

そんな中で長時間待ってでも自由席に座りたいと考える人が残るとすれば、

それはこのような層なのではないかと思う。

大人ならサクッとのぞみ号に立席で乗ればよい。


というわけで最繁忙期の東海道新幹線の利用実態を考えれば、

混乱を最小限に抑えながら、事前の指定席購入を推奨できる仕組みと言える。

はやぶさ号他の立席特急券は満席時の救済策にはなるが、

それをのぞみ号の立席に適用するのは確かにあまり筋がよくないと思った。

ひかり号自由席の代用として のぞみ号に立席乗車できるという解釈だが、

すでに最繁忙期の実態はそれに近いと言えるので、納得感はある。


なお、期間中であってもトラブル時には全車自由席の のぞみ号 を設定することもあると書かれている。

このような対応が可能なのも自由席特急券の発売をしているからこそと言える。

東北新幹線のアプローチでこれをやるのは難しい。

末端区間の特定特急券は普段から発売していて、これは自由席特急券の代用として使える。

しかし、例えば大宮~八戸の自由席特急券相当のものは普通は購入できない。

なのでこの区間で全車自由席の臨時列車を走らせても対応が困難となる。

(窓口では特別な操作で自由席特急券を出せるはずだけどね)

事情はほとんど異なるので比べるものではないけどね。

横浜市内までの乗車券だと足りない

昨日、蒲郡を出て、豊橋で新幹線に乗り換える時に、

品川までのe特急券を券売機で引き取って、ここまで使っていた乗車券とそれを自動改札機に入れると通らない。

よくわからなかったので駅員に見せると、品川までのきっぷないですねと。

ああ、確かに横浜市内までの切符だからなと、あらかじめ買っておいた川崎→渋谷のきっぷを出した。

おかしいと思ったのか黙々と時刻表の路線図のページを確認して、

3枚のきっぷに全てスタンプを押して返してくれたのだが……


JRの運賃は距離が長くなると20km刻みになるので、少し短くするとすごく安くなることがある。

京都→津→名古屋→東京 もそうで、少し短くして横浜までにすると、

横浜からのきっぷを別付けしても安くなる。

さらにこの距離だと京都市内→横浜市内というきっぷになるので、横浜市内の端の駅からのきっぷでよい。

小田原~品川は新横浜駅の存在により新幹線と在来線が別ルート扱いだが、

在来線側できっぷがつながっていれば新幹線で乗車してもよい。

この場合、横浜市内の端の駅でもっとも有利なのは川崎駅となる。

ん? 川崎駅って横浜市内なの? 僕も間違いかけたのだが、それで正しい。

なぜかというと、南武線の矢向駅が横浜市内にあるから。

この都合で鶴見~矢向の間にある川崎駅・尻手駅も運賃計算上は横浜市内と扱う。

おそらく豊橋駅の駅員が時刻表を見ていたのはここが疑問だったからだと思う。


新幹線の自動改札機は特急券に相当する区間の乗車券が揃わないと通れないらしい。

明らかに新幹線に乗れない乗車券(例えば豊橋→二川)は弾かれるだろうが、

横浜市内までの乗車券があれば新横浜までは乗れるので問題ないと思っていた。

しかし、同時に品川までの特急券を投入したので、乗車券が不足になったと。

不足分は車掌に言って乗り越しでよいと思っていたが、基本的にNGなんですね。

今回は事前に用意していたので問題はなかったけど。


このあたりはなるほどなぁという話なのだが、

どうにもおかしいと思ったのが3枚全てにスタンプを押してきたこと。

これまでも乗車時の改札で複数枚のきっぷを出したことはあるが、

今回で言えば川崎→渋谷のような先の区間のきっぷを渡しても「これは降りるときに一緒に改札に渡して」とそのまま返されることが普通だった。

川崎→渋谷のきっぷは川崎駅を出るまでは未使用状態でなければならない。

(新幹線だと川崎は通過しないが小田原~品川の間にある扱いとなる)

このきっぷを豊橋駅の改札でチェックすることは正しいが、スタンプを押すのは正しくないのではないかということである。


このあたりはJR東海の悪癖ではないかという指摘があった。

そういえばと思い出したのが、名古屋→金山のきっぷが足りない話だった。

その昔、多治見→東京方面のきっぷで名古屋駅から乗ろうとしたことがある。

中央本線と東海道本線の接続駅は金山駅なので、名古屋駅を通っていない。

それで名古屋→金山のきっぷが不足した状態になっていたのだ。

それで駅員の指示に従って券売機で名古屋→金山の乗車券を買って在来線改札を通過、

新幹線改札で特急券・金山までの乗車券・多治見からの乗車券を渡すと、

金山までのきっぷを回収され「発駅入鋏代」というスタンプを押された。

ここで金山までのきっぷ回収しちゃうんだと驚いた覚えはある。


これも好ましくない扱いだったのではないかと思う。

もし改札通過後に新幹線が止まってしまったら、名古屋→金山のきっぷを含めて払戻対象になると思う。

しかし、それが名古屋駅を出る前なのに回収されてしまったのである。

この後に中央本線→東海道本線でぐるっと回る環状乗車券を使ったとき、

金山→名古屋のきっぷを別に用意して、金山駅で途中下車したことにして名古屋駅で降りている。(cf. 中央本線をひたすら進む)

再開時も名古屋駅で新幹線に乗っているので、名古屋→金山の乗車券が必要だったが、

このときは確か金山までのきっぷは回収されず、品川までは持ってたはず。


結論から言えば、今回は3枚のきっぷを自動改札機に投入すればそれで済んだ話である。

新幹線の自動改札機は乗車券・特急券あわせて4枚まで投入できるとか。

品川までの特急券+横浜市内までの乗車券+ 川崎→渋谷の乗車券 が揃えば、

自動改札機は特急券と乗車券の対応関係が正しいと確認できる。

これできっぷは回収されるが、川崎→渋谷のきっぷにはパンチも開かないはず。

JR乗車券(きっぷ)の分割で、新幹線の自動改札を通れるのか?! (ぷにたび。Z)

岡山~大阪の乗車券が金券ショップで購入した3枚の回数券で、これと岡山~相生の特急券を組み合わせて新幹線に乗ったケース。

岡山~熊山の回数券 + 熊山~神戸の回数券 + 岡山~相生の特急券で、岡山駅の新幹線改札を通過したが、

この時点では熊山~神戸の回数券にはパンチが開いていない。

そして相生駅の乗換改札で上記3枚を通すと、特急券と岡山~熊山の回数券は回収、

熊山~神戸の回数券にはパンチが開き、新幹線出場の印字がなされると。

駅員が対応してもこれと同等の扱いにならないとおかしいんですけどね。


というわけでちょっと気になってしまった話だった。

実用上はそこまで問題はないんですけどね。

新幹線改札の通過条件が特急券の区間の乗車券があることとは知らなかったので、今後は注意しようと思う。

電車専用道路とモノレール専用道

昨日、芳賀・宇都宮LRTの「電車専用道路」の話を書いた。

路面電車の名前と制度あれこれ

書いた後で、鬼怒川橋りょう区間を含めて40km/h規制を受ける根本的な理由ではないなとは気づいたものの、

調べてみるとこの特殊街路による軌道整備は意外な活用をされているようだ。


そもそも、軌道法という法律の話。

軌道法は一般には路面電車のための法律と考えられている。

この法律では事業の許可を「特許」と呼んでいる。特別に許可すると。

特許を受けると特別に道路上に軌道を敷設する許可が得られるわけである。

ただ、実際には軌道特許を受けるには、事業者負担で道路を拡幅するとか条件が付くわけですよね。

昔は路面電車が資金を出して道路拡幅というのもけっこうあったらしい。


時代を経て、道路を利用する車も多くなり、道路上空にモノレールを建設する話が出てきた。

普通鉄道ほどの輸送力はないが、道路上にコンパクトに敷設できると。

道路に支柱を立てるモノレールは軌道法を適用するべきで、

軌道法を適用するということは支柱や軌道(インフラ部と呼ぶ)は道路として建設できる。

と、こういう話になり、道路上に建設されるモノレールは軌道法を適用し、

インフラ部は行政で整備し、これを事業者が利用するという形で採算を取りやすくした。

道路上に建設されるAGT(いわゆる新交通システム)にも同様の考えが適用されている。

詳しいことは後で書くけど、道路扱いだと補助率がすごくよい。


ちょっと脱線するけど、地下鉄も道路の地下を利用するので軌道法を適用するべきという説があったらしい。

OsakaMetro(旧 大阪市交通局)はこの考えで軌道法を適用してきたが、他の地下鉄は鉄道事業法による。

地下鉄には事業費の35%を国が補助する制度がある。

地方でも国と同額補助して計70%、残りは事業者で借金して賄ってねと。

大阪市もこの制度で地下鉄建設していたので、国の補助という点でのメリットはなかったと思う。


行政がモノレールなどのインフラ部を整備する名目が「特殊街路」である。

都市計画道路の中で、一般の自動車が利用する以外のものをそう呼ぶ。

多くは歩行者道で、駅で線路の両側を結ぶ通路が特殊街路として整備されていることはあまりに多い。

都市計画道路には通常は「9・6・1」のような番号が付いているのだが、

それぞれ、区分・幅・区分ごとの番号 を表している。

で、この最初の数字が「8」だと特殊街路の歩行者道・自転車道、「9」だとモノレール道等、「10」だと路面電車道とのことである。

「9」「10」から始まる都市計画道路を見つければ、行政が軌道を敷設した、あるいはその計画があるということになる。


で、いろいろ調べたんだが、多くはモノレール・AGTだった。

千葉都市モノレール、ゆりかもめ※、日暮里・舎人ライナー、多摩都市モノレール、シーサイドライン、リニモ、ニュートラム※、大阪モノレール、ポートライナー※、六甲ライナー※、アストラムライン※、スカイレール、北九州モノレール、ゆいレール

(※は臨港道路区間や地下鉄区間が対象外)

臨港道路は港湾施設なので、臨港道路上に敷設するのは軌道法の対象外と。

これらの路線の建設当時は道路は建設省、港は運輸省と役所は分かれていたのだが、両者協調して同様の補助をしていたそう。


路面電車道というのは思った以上に少なかった。

  • 芳賀・宇都宮LRT(全区間)
  • 富山地方鉄道 富山港線(旧富山ライトレール) 富山駅~奥田小学校前
  • 富山地方鉄道 市内電車 丸の内~西町、安野屋~富山大学前
  • 岡山電気軌道 岡山駅前~駅前広場(建設中)、大雲寺前~西大寺町(計画路線)
  • 広島電鉄 駅前大橋線(建設中)

これらはいずれも近年の新設・改良区間である。具体的に動き出していない計画路線もある。

富山港線はJR高架化に合わせて富山駅付近で路面走行を導入するためのもの。

丸の内~西町は環状線のため、安野屋~富山大学は道路拡幅に合わせた複線化のため。

歴史的には路面電車は事業者側で必要な道路整備をして敷設するものだったので、

行政が道路事業で路面電車を整備するというのは新しい考え方らしい。


そしてこんなのも「モノレール道等」の特殊街路として存在した。

  • ゆとりーとライン(ガイドウェイバス) 大曽根~小幡緑地
  • かしてつバス専用道 石岡駅~四箇村駅 のうち石岡市内
  • 北大阪急行電鉄 箕面船場阪大前~箕面萱野 (建設中)

ゆとりーとライン は走っているのはバスだが、この区間は軌道法準拠なので。

ただ、この先例があったからなのか、旧鹿島鉄道の跡地の一部を利用したバス専用道も「モノレール道等」の特殊街路として規定されていた。

この区間は道路交通法でバス専用道として規制しているだけの道路そのもの。

代替バスが国道6号線との交差部で渋滞にはまるのを回避するために、

廃線後にバス専用道を行政が道路として整備するために特殊街路に指定したらしい。

行政が道路としてバス専用道を整備するのは後にひたちBRT(日立電鉄跡地)でも行われたが、こちらは都市計画上の位置づけはないらしい。

ただ、一般の自動車用ではない道路を行政が整備するという点では共通的である。


そして、最後に書いた北大阪急行の箕面市内区間、来年春開業である。

実は千里中央~箕面萱野の延伸事業は画期的な仕組みで国から高率の補助を引き出している。

道路扱いだと補助率がよいと書いたが、社会資本整備総合交付金 という制度は国が最大50%を補助する制度で、様々な社会資本に使える。

しかし、陸上交通関係は昨年度までは道路が唯一の用途だった。

モノレール・AGTを道路扱いにすると、この補助金が使えて国の補助が最大50%付くと。

これは地下鉄の国35%などと他の鉄道の補助制度よりとてもよい。


そこで箕面市はこの制度を使うためにこんな口実を考えたようである。

  1. 箕面船場~萱野で新御堂筋上を走る軌道を敷設する
  2. あわせて両駅に交通広場などの道路整備してバスルートの再編を行う
  3. これらの効果を発揮させるためには千里中央~箕面船場の地下鉄を整備して北急と接続して、1.の軌道にも電気設備などを付ける必要がある (関連事業)
  4. 追加で北急の車両を購入することで1~3の効果を高める (効果促進事業)

という口実で1~4の全てに最大50%の国補助を取り付けたわけである。

普通はモノレールなどを整備するための制度だが、北急と接続することで効果を発揮するということで、

地下鉄と同規格の高架鉄道、そして千里中央~箕面船場は明らかな地下鉄を整備する有様。


冒頭に芳賀・宇都宮LRTの専用区間が道路扱いであることは「40km/h規制を受ける根本的な理由ではない」と書いたが、

軌道運転規則では、新設軌道(道路以外に敷設する軌道)または路面以外に敷設する併用軌道は鉄道の規定を適用するとなっている。

道路に敷設する軌道でも高架や地下だけを走行するならば、鉄道の規定が適用できる。

これは特殊街路として整備されたモノレール道でも同様である。

鉄道としての保安装置を備えて、軌道運転規則の40km/h制限によらず制限速度を定めることが出来る。


ただし、路面走行とそれ以外が混在する場合、全体に軌道運転規則を適用できるともなっている。

芳賀・宇都宮LRTの電車専用道路には砕石を敷いた路面走行とは言えない区間もある。

しかし、それでも全体に軌道運転規則を適用しなければならない理由がある。

実は保安装置がないのである。

路面電車は40km/h制限を受ける一方、複線ならば保安装置なしの目視運転が許されている。

現状の芳賀・宇都宮LRTはこの方式にしか対応できないらしい。

速度制限緩和のための条件は今後の役所との調整により決定し、必要ならば保安装置を取り付けるということなのだろう。


特殊街路として路面電車専用道路を整備するのは初の事例と思われるが、

道路上空に モノレール専用道、AGT専用道 というのは多数整備あるし、

箕面市に至っては実質的な高架鉄道を道路として整備しようとしている。

これらは全て鉄道の規則に従って運転を行っている。

路面電車の場合、既存の道路敷地を利用する場合は路面走行になってしまうが、

今回は鬼怒川を電車専用橋で渡る必要があり、電車専用道路が発生した。

ここで鉄道相当を選択することもできた可能性はあるが、全部を路面走行区間と同等に扱うことを選んでいるのが現状である。

路面電車の名前と制度あれこれ

昨日、芳賀・宇都宮LRTが開業した。

路面電車がなかった都市に路面電車が新設されるのは1948年の高岡市内(現:万葉線)以来のことだという。

とても珍しい取り組みだが、これにはそれなりの理由がある。


それはさておき、この路線をどう呼ぶかというのは微妙なところがある。

  • 運行会社: 宇都宮ライトレール
  • 届出上の路線名: 宇都宮芳賀ライトレール線
  • 案内上の路線名: 芳賀・宇都宮LRT

とそれぞれ微妙に違うのである。

宇都宮ライトレールとして報じられることも多かったのだが、それは社名。

当地では「ライトライン」という記載もあるが、これは車両の愛称らしい。

でも、実は「ライトライン」が一番通りがよい名称なのかもしれない。


このような交錯の背景には宇都宮市・芳賀町にまたがる路線というのもあるのだと思う。

芳賀町はこれまで鉄道がなかったので、これが初めての軌道系交通機関である。

宇都宮駅から芳賀へ至る路線と理解するとわかりやすい一方、走行するのは大半が宇都宮市内である。

おそらくこれが現れたのが「芳賀・宇都宮LRT」という名前なのだろう。

一方でこの計画は宇都宮市が主導しており、宇都宮駅より西側の計画もある。

そのような事情から社名は 宇都宮ライトレール(株) となったのだと思う。

なお、同社には芳賀町も出資しているので、宇都宮市だけのものではない。


届出上の「宇都宮芳賀ライトレール線」だが、これは都市計画上の名前である。

路面電車・モノレールは都市計画法で特殊街路として扱われる。

すなわち路面電車の線路やモノレール軌道は道路事業で作ることができる。

現在、東大阪方面への延伸を行っている大阪モノレールもそうで、

支柱・軌道桁(インフラ部)は大阪府が公共事業として建設を行っている。

芳賀・宇都宮LRTも同様で線路は宇都宮市・芳賀町が建設している。

ともかく、都市計画上の名前をそのまま届出したのではないか。

こういうのは他でもあって、大阪モノレールでも彩都線の届出上の路線名は「国際文化公園都市モノレール線」とかいうクソ長い名前だったりする。

いかにも都市計画上の名前ですね。(国際文化公園都市は彩都の計画上の名前)


路面電車は道路事業として整備されることに関連して、こんなものがある。

これは踏切なの? 「宇都宮LRT」道路との交点に遮断機なし 代わりにあるものとは 開業まもなく (乗りものニュース)

芳賀・宇都宮LRTの多くは路面走行区間だが、鬼怒川を渡る前後を中心に道路から離れて走るところがある。

一般的に線路と道路が交差するところは踏切という。

ただ、路面走行区間では電車も道路のルールに従って走るので、一般的には踏切とは呼ばない。

一方で路面電車でも遮断器を設けた踏切は存在する。

軌道法の規定では軌道は原則道路に敷設するが、道路から離れることも認めており、これを「新設軌道」というそう。

都電荒川線、東急世田谷線、嵐電は大半が新設軌道でごく一部が路面走行区間なので、ほぼ普通の鉄道である。

新設軌道では一般の鉄道の規定が適用される部分があり、道路との交差部は踏切となる。

(東急世田谷線は環七通りと交差する通称「若林踏切」を除き、道路との交差は踏切で処理している)


で、芳賀・宇都宮LRTで道路から離れて走る区間の扱いなのだが、

どうも 電車専用道路 という扱いで、新設軌道ではないらしい。

実際、緊急車両の走行を想定して舗装されている区間が多いらしい。

(鬼怒川橋りょう など、砕石を敷いた一般的な鉄道の構造の区間もあるが)

公共事業で線路を建設する方便だとか、踏切の新設が原則認められないことへの対応とかいろいろ言われているが。

デメリットとしては軌道法の規定により40km/hの速度規制を受けること。

(ただし、鬼怒川橋りょうなどで将来的な速度制限緩和の計画はあるそう)

電車専用道路と一般道の交差部は道路同士の交差として扱うことができるので、

一般道に「止まれ」の標識を付ければ交差部の処理としては問題ないと。

とはいえ、さすがにこれだけでは心配と警報器は取り付けられているよう

ただ、それを言うなら電車専用道路に通行止(電車を除く)の標識が必要だと思うのだが……

一応、交差部の路面には「はいらないで」という表示はあるけど。


芳賀・宇都宮LRTが実現したことには工業団地への通勤路線という裏付けがある。

すなわち工業団地の送迎バスからの移転である程度利用が見込めると。

それに加えて沿線のバス利用・自家用車からの転換に期待しているわけである。

多くが路面走行区間ではあるが、電車の走行空間は独立して確保できているのでスムーズな走行が期待できる。

路面電車では珍しい快速運転も予定されており、追い越し設備も用意されている。

芳賀町にとっては町域の端にある工業団地を通過するに留まるが、

芳賀町工業団地管理センター前停留所(長い!)に隣接してトランジットセンター(旧:芳賀バスターミナル)が設けられ、

バス・自転車・自家用車といった町内交通と接続できるようになっている。

道路空間をうまく利用しながら、宇都宮市街の道路交通を削減することが、芳賀・宇都宮LRTの目的ということになろうと思う。

自家用車からの転換がどれぐらい実現するかが課題でしょうか。


当面は運賃収受に時間を要することも考えて余裕を持ったダイヤ設定だが、

利用者が慣れてくることを前提に詰めていく予定である。

そうすると全区間走破して快速で37分、各停で44分という想定らしい。

平均速度24km/h(快速)・20km/h(各停)というのは物足りない気もするけど、それでも従来のバスよりは速くなる想定らしい。

鬼怒川橋りょう などのスピードアップも実現すればさらに効果的になる。

なかなかこういう条件が揃うところは少ないと思うのだが、

道路整備と一体化できることなど、路面電車ならではの特色を生かせれば確かに面白い。

大増発して車庫に収容できない

火曜日、近畿地方を台風が通り過ぎ、周辺では大雨に見舞われ、

特に鳥取県では被害が大きかったものの、広域交通への影響がそこまでではなく、

火曜は一部区間(名古屋~岡山)で終日運休した東海道・山陽新幹線も、

水曜は全線で通常通り運行ということで多くの人が新幹線に押し寄せたのだが……

まさかの新富士~静岡で雨量規制にかかり運休になってしまった。

東海道・山陽新幹線の全区間でこの方面に向かう列車を止めて調整を図った。

運転再開後も混乱は続き、再開後の東京での折り返しに時間を要した。

さらにこの混乱は今日の始発まで尾を引き、「列車の準備が遅れている」という理由で朝にも運休が発生した。


車両繰りで翌朝の列車に影響が残ることはあるかもしれないが、

今朝の新幹線の運休はそれとはだいぶ違う事情である。

昨晩から今朝にかけて「新大阪に到着できない」という現象が起きていた。

例えば昨晩、東京を最後に出た新大阪行きの新幹線、

東京を深夜1:02発に出発というのはさておき、

そこから京都までは概ね通常通り走り、京都には3:24に到着している。

しかし、新大阪に到着したのは6:30と、1区間でおよそ3時間かかっている。

あえて遅く走っていたわけではない。新大阪駅まで列車がぎっしり詰まっていて進めなかったのである。


深夜、新大阪に到着した新幹線は車庫に帰る。

車庫というのは摂津市にある鳥飼車両基地(通称らしい)である。

折り返して車庫に収容するという作業に時間を要したようである。

さらには鳥飼車両基地が埋まってこれ以上車両が入らない状態になったそうで、

この状況を打開するのに朝6時の始発を遅らせる必要があったようだ。


一体どうやって打開したかわからないけど。

新大阪駅のホーム上で折り返しの列車にするというのが素直である。

ただ、特急となると清掃作業が必要である。

東京駅ではホーム上で短時間で清掃作業を行っているが、

新大阪駅では一旦車庫に回送するか、引き上げ線で作業をするという。

あんなに広い新大阪駅だが、案外余裕が少ないためホームに長く留まるのは好ましくない。

短時間で対応するならば、遠方まで回送するという方法も考えられるが、

長距離回送となればそのための乗務員も必要で効率が悪い。

でも、車庫に入れない、だから新大阪駅に入れない、

車庫から新大阪駅にも入れない。(車庫~新大阪駅にも列車が詰まっている)

この状況を打開するにはホーム上で折り返しか、長距離回送ぐらいしかやりようがないとは思う。


新大阪駅というのは東京方面・九州方面とも始発・終着列車がある。

両方向からまとまった本数折り返し運転できる駅というのはなかなかなく、

東海道新幹線側で支障があっても、新大阪発着で山陽新幹線方面の運行は維持できる。

昨日の静岡県内の大雨でも、新大阪折り返しで山陽新幹線側の運行は可能な限り維持していた。

しかし、両側から全部折り返すととても間に合わない駅でもある。

このため新大阪を貫通して東海道新幹線~山陽新幹線の直通も重要である。


ただ、深夜に新大阪に到着して山陽新幹線に直通するわけにもいかない。

車庫に行くしかないのだが、その車庫が詰まってしまう状況。

そもそも新大阪駅が詰まるほどの本数を東京から出したのがダメなのでは?

と思ったかも知れないけど、東京側の車庫にも限りがある。

あえて日が変わってから遠く離れた新大阪に向けて走らせたのも、

そうしないと東京側で大変なことになってしまうからではないか。


ここまでの事態に陥ったのは昨日、大増発を行ったこともあろう。

近年、台風のために事前に運休を予告することはよく行われるが、

特に東海道新幹線では前後に増発を行い、予定のシフトを促している。

もともとこの時期は最繁忙期で臨時列車を多く設定しているのだが、

台風のこともあるのでなおさら、最大限の本数を確保した。

しかし、それが急に静岡県内の大雨で寸断されれば、それはもう大変である。

この状態を収束させるには一晩では足りないのだった。


その後、東海道新幹線は朝8時半ごろに全線で運転再開、

昼頃には東京発の遅れは10分程度まで回復していったという。

新大阪駅を貫通できないことがさまざまな問題を引き起こしていたが、

昨日の列車を片付けていけば、新大阪駅には今日の列車がやってくる。

そうすれば新大阪駅を貫通する列車も出てきて、新大阪駅に到着できない問題は打開されるわけである。


東海道新幹線の本数の多さが引き起こした問題ということになるが、

そうしなければならない理由というのはあったと思う。

半端ではない本数のため、新大阪駅を除いて折り返し運転への切替も難しく、

出発する列車を止めて、すでにいる列車は同区間の再開を待つのはやむを得ない。

新大阪駅すらも全部車庫に収容となれば一晩経っても終わらなかった。

大変だなぁと思いますね。


ちなみに火曜の東海道新幹線は東京~名古屋で運行を維持したが、

名古屋での折り返しはこだま号がやっているように可能だが、

本数はさばけないので、こだま号の半分を東京~浜松での運行にして、

これで名古屋での折り返しを1時間あたり5本(のぞみ4本・こだま1本)に抑えたようだ。

どうしても必要なのかはよくわからないが、浜松行きというのは珍しい気がする。

風向き次第で飛行機が遅れる

6日・7日と連日、伊丹空港で門限に間に合わず離陸できない事例が起きていたよう。

大阪・伊丹空港で6便が離陸できず引き返しも 2日連続のトラブル (毎日新聞)

伊丹空港の運用時間は21時までで、それを越えて遅れた到着機は関西空港へ向かう。

比較的近くに代替空港があるのは制限が厳しい中でも幸いなことである。

これはよく知られているが、今回は離陸できると思って滑走路に向かった飛行機が離陸できず引き返しというもの。

原因は「通常と異なる風向きとなった」とある。どういうことなのだろうか。


伊丹空港を発着する飛行機はおよそ99%が南から着陸・北に離陸するという。

ILSと目視とGPS

そもそも北風が吹くことが多いこと。(飛行機は向かい風で離着陸する)

北側に山があるという地形の都合で、南側にしかILSが付けられないこと。

騒音面を考えても、離陸機が南側の市街地を低空飛行することを避けられる。

これらの特徴も考え、多少の南風ならば南から着陸・北に離陸にする。

この結果が99%が南から着陸・北に離陸となることに現れている。

それぐらい伊丹空港周辺の気候は安定してるってことなんだよね。


しかし、それでも風の状況によってが北から着陸・南に離陸にしなければならない。

沖縄付近で長く滞留し続けた台風6号の影響により、東からの風が強かったよう。

滑走路が南東~北西向きなので、東風を滑走路の向きにベクトル分解すると、

滑走路の南東側からの風が強いという扱いになる。

なので北西側から着陸し、南東側に離陸するということになると。

単純に南北と書いては理解しにくいが、そういうことらしい。


ただ、伊丹空港は北側からの着陸手段というのが、

南からILSに従って空港に近づき、空港を見ながらぐるりと回るサークリングアプローチしかない。

全体のわずか1%ほどに過ぎないイレギュラーな着陸方法だからか、

あるいはこの方法が使いにくいから可能な限り南からの着陸にしてるのか。

とにかく普段に比べると着陸に時間がかかってしまうわけである。

手間もかかるし、ぐるりと回る分の飛行距離が伸びる。

この南からの着陸がほぼ1日続くと、だんだんと遅れが積み重なり、

最後にギリギリ離陸できるかと滑走路に行くも、門限に阻まれてしまい。

伊丹からの飛行機が遅れたので欠航にしたりというのを含めれば、

影響範囲はもっと大きかったのではないかと思う。(そもそも台風の影響がある)


従来はILSが使えなかった飛行ルートにGPSなど人工衛星による測地を行うRNP進入を導入する流れがある。

伊丹空港でも南から短い方の滑走路(32R)に直行する場合はRNP進入もある。

しかし、伊丹空港の北側は全くそういうものがない。

ILSが片方だけにしかない空港は拠点空港でもなんぼでもあるけど、

未だに風向きによってはサークリングアプローチ頼みというのは珍しい。

それだけ地形の制約が大きいということなんだろうか。

なお、近くの神戸空港も風向き次第でサークリングアプローチだが、

こちらは飛行ルート見直しが実現すれば、RNP進入になるとみられる。

従来より低いところを飛ぶけどね


実際のところ、伊丹空港は計器着陸装置の面では見劣りする面が多いが、

それでも気候が安定しているため、就航率としてはかなりよい空港である。

ILSに合わない風向きで視界不良と重なると欠航やむなしだが、

そのような事例はかなり少ないのが伊丹空港である。

ただ、それをずっと続けて遅延が重なって欠航はやっぱりダメだと思うのだが……

尾久問題と西大井経由の類例

土曜日に保土ケ谷→武蔵小杉→羽沢横浜国大と乗車した話を書いたとき、

「特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例」で認められた乗車方法だと書いた。

実はこれを書く前に確認する以前は「分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例」と混同していた。

この2つは類似点もあるが、特定の分岐区間の特例はより特殊な事情を反映している。

それで 特定の分岐区間の特例の鶴見駅関係の特例を見ていて、

あれ? これって特例でカバーされないの? と思った乗車パターンがあり、

調べてみたところ「尾久問題の類例」という指摘があった。

尾久問題って名前は聞いたことはあるけど、詳しく知らないのでそこを含めて調べた。


というわけでまずは特定の分岐区間の特例のリスト。

特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例 (JRおでかけネット)

特定の分岐区間の特例は11パターン規定されている。

便宜上、上から順番にNo.1~No.11と書くこととする。

分岐駅通過の特例と特定の分岐区間の特例の違いは2つあるようである。

分岐駅や折り返し区間の駅へ行く場合も折り返し乗車ができる場合があること、

分岐駅を通過する列車に乗るかは問わない場合もあること。


例えば、分岐駅通過の特例に 山科~京都 がある。

山科は東海道本線と湖西線の分岐駅だが、東海道新幹線とサンダーバードは停車しない。

これらを利用する人で両路線にまたがる場合は、山科駅で乗り換えることになっているきっぷでも、京都駅まで行ってもよい。

ただし京都駅での途中下車は禁止である。(新幹線絡みでは認められることもある)

しかし、この特例は山科駅で降りる人には適用されない。

京都市内発着のきっぷなら京都市内での折り返しは認められるのだが、

それ以外の場合では京都駅できっぷを切らないといけない。

また、山科で両路線で停車する列車に乗る場合は対象外。

山科は特急以外なら全停車なので、特急に乗らない人には関係ない。


何らかこれでは対応できないケースに 特定の分岐区間の特例 が設定されている。

一番多いのは運賃計算上の隣の駅に停車する列車がない場合。

  • No.1 仙石東北ラインの高城町~塩釜は運賃計算上は松島で東北本線に合流しているが、実際は松島駅近くを通過するのみだから
    • 仙石線と東北本線(一ノ関方面) の間は松島乗換のきっぷで塩釜まで折り返してよい
    • 仙石線と松島の間のきっぷでも塩釜で折り返してよい
  • No.3 尾久~上野の宇都宮線は日暮里・鶯谷に停車できないから
    • 尾久と西日暮里~大宮・池袋方面、常磐線 の間は日暮里乗換のきっぷで上野まで折り返してよい
    • 尾久と日暮里・鶯谷の間のきっぷでも上野で折り返してよい
  • No.5~6 武蔵小杉~羽沢横浜国大の相鉄直通列車は新川崎・鶴見に停車できないから
    • 東海道本線(横浜~小田原方面)・根岸線 と 羽沢横浜国大 の間は鶴見乗換のきっぷで武蔵小杉まで折り返してよい (No.5)
    • 新川崎と羽沢横浜国大の間のきっぷでも武蔵小杉まで折り返してよい (No.6)
  • No.7 上記に加え、武蔵小杉に停車する列車は鶴見・新子安・東神奈川にも停車できないから
    • 鶴見・新子安・東神奈川・横浜線・鶴見線・東海道本線(川崎~蒲田方面)・南武線(川崎のりかえ) と 羽沢横浜国大 の間は鶴見乗換のきっぷで、横浜・武蔵小杉と2回折り返してよい
  • No.8 新川崎~横浜で横須賀線の列車は鶴見・新子安・東神奈川に停車できないから
    • 東海道本線(川崎~蒲田方面)・鶴見線・南武線(川崎乗換) と 新川崎~西大井・南武線(武蔵小杉乗換) の間は鶴見乗換のきっぷで横浜まで折り返してよい
    • 鶴見・新子安・東神奈川・横浜線 と 新川崎~西大井・南武線(武蔵小杉乗換) の間のきっぷでも横浜まで折り返してよい
  • No.9 大川発着の鶴見線支線は本線との分岐駅、武蔵白石に停車できないから
    • 大川 と 鶴見線(浜川崎~扇町)・南武線 の間は武蔵白石乗換のきっぷで安善まで折り返してよい
    • 大川と武蔵白石の間のきっぷでも安善まで折り返してよい
  • No.11 瀬戸大橋線を走るマリンライナーは児島~坂出で運賃計算上は宇多津駅を通過しているが、実際は離れた地点を通過するだけだから
    • 特急ならば宇多津駅に停車するが、普通列車は現在はマリンライナーのみ (昔は宇多津停車の普通もあったが本数は極少)
    • 岡山県内 と 予讃線(丸亀~松山方面) の間は宇多津乗換のきっぷで坂出まで折り返してよい
    • 岡山県内 と 宇多津 の間のきっぷでも坂出まで折り返してもよい

No.11は特急なら児島~宇多津の隣駅同士の移動もできるが、特急以外になければそれは移動手段が存在しないのと同じだろうとこちらに入れた。


ほとんどは上記のケースだが、No.2,4,10は本来の接続駅で乗換できなくもないケース。

  • No.2 東北本線(西日暮里~大宮方面) と 常磐線(三河島~水戸方面)は日暮里乗換のきっぷで上野・東京まで折り返してよい
    • 日暮里・上野に停車する列車同士でも、上野・東京まで折り返してよい
  • No.4 湘南新宿ライン(西大井~横浜方面) と 東海道本線(品川~東京方面)は品川乗換のきっぷで大崎駅で乗り換えてもよい
    • 湘南新宿ラインは運賃計算上は品川駅を通過する扱いなので、大崎で乗り換えると品川を2回通ることになる
  • No.10 大阪環状線(今宮~西九条方面)とJR難波の間は今宮乗換のきっぷで新今宮まで折り返してよい
    • 環状線・大和路線の双方が今宮停車の列車でもよい
    • 明確な理由はわからないが今宮での乗換が不便だから?

かつては 福北ゆたか線(東水巻~直方方面)と鹿児島本線(折尾~博多方面)でも黒崎までの折り返しを認めていた。

これは折尾駅で福北ゆたか線が使う短絡線ホームが他と離れていたから。

折尾駅を停車する列車同士でもこれでは面倒なので特例があったと。

立体化に伴い移設され、短絡線も同じ駅舎に入るようになって廃止された。

No.2で上野までの折り返しはともかく、東京までの折り返しを認めている理由はよくわからない。

No.10は今宮駅の環状線ホーム設置が1997年と後発なのも関係があるかも。

ただ、JR難波~新今宮~今宮という乗車ができる理由は謎である。


さて、長々と書いてきたのだが、冒頭に書いた「尾久問題」というのは、

赤羽~上野で尾久経由の宇都宮線を使って、日暮里で他に乗り換える体で日暮里~上野を折り返し乗車できるかという話である。

もしも日暮里~上野で分岐駅通過の特例があれば当然可能である。

でも、日暮里駅周辺で使えるのは特定の分岐区間の特例 No.2,3 のみである。


No.2の図には尾久経由で日暮里~赤羽を結ぶ線はないが、暗黙的に存在するというのが現在の定説である。

日暮里~赤羽を通過する場合は、経路特定区間と呼ばれるルールがある。

田端経由の本線(新幹線含む)も尾久経由も区別せず短い方のきっぷを売って、どちらか自由に選べる。

大宮方面から尾久経由の宇都宮線に乗っても、田端経由と同一視されてNo.2の特例が適用できる。

これはほぼ確かでこのようなケースでは上野・東京まで折り返し乗車できる。

ただし、本線と尾久経由の両方にまたがるきっぷは区別が必要になる。

例えば、池袋~田端~赤羽~尾久~(日暮里)~常磐線 というケースである。

それでも「西日暮里以遠の各駅」に尾久経由で行く赤羽が含まれるとすればNo.2の特例が適用でき、上野・東京までの折り返しが認められる。

これはやや議論が分かれるところだが、まだ成り立ちそうな気がする。


昔はNo.2の特例が大宮駅より遠くから来る場合に限られていたらしい。

新幹線開通前に東京発着の東北本線・常磐線の優等列車があった時代である。東京駅までの折り返し乗車を認めていたのはその時代の名残とみられる。

(新幹線工事のために上野発着に一本化され、近年に上野東京ラインとして再建された)

そのような事情からNo.3の特例を尾久を通過する場合にも適用できないのはおかしいという主張もあったようである。

現在の規定ではNo.2とNo.3の特例は常磐線方面で上野までの折り返しならば差はない。

しかし、No.3の特例は鶯谷~日暮里~大宮・池袋方面と尾久の間も対象で、

これが認められると例えば 大宮~尾久~(日暮里)~駒込 も上野まで折り返してよいことになる。

今となっては無理がありそうだが、そういう解釈もある。

尾久問題の説明はこんなところで、だいたい3つの説がある。


「尾久問題の類例」があると書いたのはNo.8の特例のことである。

鶴見乗換のきっぷで横浜まで折り返してのりかえできるのは、

「新川崎、西大井または武蔵小杉以遠(武蔵中原または向河原方面)」発着に限られている。

これは 品川~武蔵小杉~(鶴見)~川崎 のようなきっぷがあっても、

横浜までの折り返し乗車が認められないので、鶴見での乗換が成立しない可能性を示している。

なお、横浜線への乗換については東神奈川~横浜に分岐駅通過の特例があるため、

品川~武蔵小杉~(東神奈川)~横浜~東神奈川~新横浜 は東神奈川乗換のきっぷで問題ない。


西大井~新川崎を通過する場合に特例が適用できないのが、No.3の特例の尾久と似ていると。

この区間にも経路特定区間があり、品川~鶴見は川崎経由と武蔵小杉経由を区別しない。

品川~鶴見を貫通するなら京浜東北線を選んで乗れるはずだから、横浜までの折り返しを認める必要はないと。

確かにそれはそうかもしれないが……


ただ、それならこの特例のもう一方「鶴見、新子安、東神奈川または川崎以遠(蒲田または尻手方面)、国道以遠(鶴見小野方面)もしくは大口以遠(菊名方面)の各駅」もどうなんだと。

川崎以遠(蒲田方面)には品川やそれより先の駅も含まれる。

品川~(鶴見)~新川崎 というきっぷを買って横浜まで折り返すというのは、

最初から横須賀線の電車に乗って品川~武蔵小杉~新川崎と直行すればいいじゃないかと。

でも、こちらは現在のルール上はOKである。


むしろ、湘南新宿ラインの列車が走る武蔵小杉経由の方が折り返しの合理性を主張しやすいように思える。

湘南新宿ラインは運賃計算上は品川駅を経由するが停車できない。

埼玉県方面から湘南新宿ラインで大崎まで来て、品川~横浜の京浜東北線停車駅に行く場合、

そのまま乗り続けて新川崎を過ぎると鶴見~東神奈川の各駅には戻れない。

(分岐駅通過の特例が認められる横浜線への乗換を除く)

なので、大崎~品川の1区間を山手線に乗り、京浜東北線に乗り換えるしか無い。

でも、本当にそこまでしないといけないの? 西大井と大崎でそんなに違う?


尾久問題は解釈が分かれるところはあるのだが、

宇都宮線~常磐線であればNo.2の特例で対応できる考えが一般的で、

現在はこれでほとんどのケースは救済されているので実用上の問題は少ない。

一方で、西大井~新川崎を貫通する場合の問題はほぼどうにもならない。

西大井~新川崎を通過する場合もNo.8の特例が適用できると主張するならともかく。

そもそも京浜東北線を選択しろというのはわからなくもないが、

他と比べて、あえて封じるほど変な乗車方法ではない気もするのだけど。

金城ふ頭へはあおなみ線しかない

昨日、Twitterを見てたら「あおなみ線」がトレンドに入っていた。

どうも名古屋駅で改札止めをしていたらしい。

往路の時点で改札止めとかそれ大変だなと思ったのだが、

夜になって金城ふ頭駅の混雑の話が入り、1時間半も混雑が続いたという。


あおなみ線は名古屋駅~金城ふ頭を結ぶ路線である。

沿線住民以外だと 金城ふ頭 にある ポートメッセなごや、リニア・鉄道館、レゴランドへ向かう人が利用するのがほとんどだと思う。

特にポートメッセは長年にわたり愛知県周辺ではもっとも規模の大きな展示場だった。

今は常滑市セントレアにあるAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)の方が規模が大きいが。

あおなみ線の開通により名古屋駅と電車1本で結ばれ、大変便利になった。

これが一般的な理解だと思うのだが、大規模イベントでは混雑が問題だという。


それにしてもここまでひどいのかと思ったのだ。

金城ふ頭での大規模イベント時にどうしてここまで混雑するのか。

原因は大きく2つ、1つはあおなみ線が4両編成であること、もう1つはこれ以外の公共交通でのアクセス手段がほぼないこと。

あおなみ線は平時の利用者数はそこまで多い路線ではない。

基本的に愛知県というのは公共交通の利用者が少ないところである。

JR・名鉄・近鉄いずれも2両編成で名古屋駅にやってくる列車があるほど。

愛知県においては4両編成だって立派な方というのが実情である。


もう1つのこれ以外のアクセス手段がないということ。これは本当にない。

そもそも金城ふ頭駅は行き止まりなので両方向に分散はあり得ない。

あおなみ線開通以前は名古屋港駅からのバスがあったが廃止されている。

バスなしではとても歩ける距離ではない。

あれば名古屋港水族館などガーデンふ頭の施設との往来などに有用そうだし、

名古屋港駅から名港線・名城線で金山・栄に直行できるなどのメリットもありそうだが。

(一応、名古屋港駅からの幹築地1系統が金城橋まで来ているので、橋を渡れば金城ふ頭の各施設へ行くことは出来るが、便数は限られる)


ここまで分散手段がない大規模会場はなかなか珍しいと思われる。

そもそも公共交通が貧弱すぎる宮城県利府町のグランディ21にはかないませんが。

過酷な利府の思い出

ここまで来るとツアーバスしかないと開き直れますけどね。

特に帰りはツアーバスが頼りだが、ツアーバスずらりと並んだ姿は壮観だった。

同じく愛知県のAichi Sky Expoも事実上、名鉄以外しかないというのはある。

セントレア隣接地なので空港へのアクセス手段はなんでも使えますが、

リムジンバスの本数は淘汰された結果、どれもこれも少なくアテにならない。

ただし、名鉄の増発・増結対応が可能なため、まだマシとは言われている。


一方でこの会場は自家用車でのアクセスが有用なケースがある。

金城ふ頭は名古屋港のさきっぽだが、伊勢湾岸自動車道(名港トリトン)が通っている。

高速道路と公共駐車場が直結しており、駐車場も5000台駐車可能。

確かに駐車場にも限りはあるし、出口の混雑など問題もあるのだが、

高速道路を使う前提ならばそれなりに利便性は高いようである。

これで名港トリトンなかったら道路も大変でしたけどね。


結局のところ、あおなみ線がここまでひどいのは来場者が際立って多いこと、

その中でも遠方から鉄道で来場する人の割合が高いということが要因である。

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-2 5 TO SP@RKLE!!

アイドルマスター関連のイベントは遠征が多いですからね。

これに連動して「でらます×アイドルマスター ミリオンライブ!」という観光キャンペーンも行われており、

昼間は名古屋市内を回遊して時間が近づいたら金城ふ頭へ向かう流れもあったのだと思う。

金城ふ頭に早く行っても大したものはない。となれば直前移動がよい。

大規模イベントでも往路から改札止めレベルの混雑になるのは相当だが、

それだけ市内での回遊を楽しんでというのはあったのかもしれない。

それならなおさらガーデンふ頭からの直行手段がないのが辛いですが。

(一応、観光船はあるので、それを使う人もいたようだが)


帰りは終演から1時間半も引かないのは確かに過酷である。

この間に運行された電車は11本、4両編成の定員が580人ほど。

乗車率150%で9600人ほど運ぶ計算となり、ほぼ会場の規模と一致する。

分散手段がないのと4両編成がほぼ全てだなというのがよくわかりますね。

増発して1時間7本程度になってるならそこそこじゃないでしょうか。

所有している車両数も限られるし、貨物列車との兼ね合いもあるらしい。

(あおなみ線は名古屋貨物ターミナル駅への貨物線を一部利用して作られた)


この先、ポートメッセでは、ラブライブ!スーパースター!!のLiella、ウマ娘 のライブイベントが予定されている。

これらも遠征の人が多いとは思うのだが、この状況を見て戦々恐々としているところ。

確かに昔からポートメッセでの大規模イベントのときは大変だと言われていたけど、

実際どこまでひどいんだというのはあまり可視化されてなかったのはある。

ただ、公共交通を使うことを選んだ時点でほぼ選択肢はないんですよね。

遠方から自家用車で行くのはそれはそれで大変な話でもある。