給与扱いされないストックオプション?

「株式報酬で税負担増も、税率最大55%に 国税庁が見解」というニュースが流れていて、

詳細は読めていないのだが「信託型ストックオプション」と呼ばれる物に関連しているらしい。

というので、ストックオプションと税金の話。


ストックオプションは一定の価格で株式を買える権利、日本語で言えば新株予約権ですね。

役員・従業員の報酬として使われることがあり、特にベンチャー企業で効果が大きいという。

これはストックオプション自体はお金がかかるものではないこと、

役員・従業員が会社の価値を高めるよう努力するインセンティブが働くこと。

裏返せば株価が上がらなければなんの価値も生まないものなんですけどね。


役員・従業員がストックオプションを付与された場合、

ストックオプションを行使したとき、行使価格と株価の差が給与として扱われる。

株価が大きく上昇した場合、このタイミングで多額の所得が発生し、

累進課税のシステムと相まって高額の税負担になることがある。

しかし、ストックオプションを行使しただけだと手元にあるのは株式、

株式を売却しなければ納税に窮することになるが、インサイダー取引との兼ね合いもあり売却が容易でないこともある。


このような事情からストックオプションには典型的な使われ方がある。

1つ目は税制適格ストックオプションというもの。

これはいくつの条件を満たせば行使時に給与としての課税を行わず、

売却時の課税となり、分離課税(所得税・住民税あわせて約20%)の対象になる。

ストックオプション行使時に納税に窮する問題と、行使した年に多額の課税をされる問題が回避できる。

満たすべき条件はいろいろあるが、最も大きな制約が年間の権利行使価格の上限が1200万円となっていることらしい。

あまりに株価が上がってしまうと、この枠内でストックオプションが消化しきれなくなる。

総合課税に比べて有利な分離課税が適用される都合、このような制約が設けられているのだと思うが。


2つ目は株式報酬型ストックオプション、あるいは1円ストックオプションとも。

条件を満たせば典型的に1株1円で買える権利を与えるもので、

これは条件を満たせば株式をもらえるということにほぼ等しい。

これは役員の退職金として使われることが多いそう。

なぜならばストックオプションは行使時に課税されるため。

退職時に行使できるストックオプションは退職所得として扱われるのだ。

そうすると税額は給与に比べて少なくとも半額には圧縮される。


3つ目が有償ストックオプションと呼ばれるもの。

これはストックオプションを有償で買うということを表している。

給与ではなく純粋な金融商品としての課税が行われる。

欠点はストックオプションを買うためのお金が必要なこと。

発行時点の株価で株が買える権利というのもタダではないんですよね。

ただ、行使できる条件を制限するとストックオプションの価格は安くなる。

こうして買いやすい価格にした上で、行使条件を満たすように、会社の価値を高めるように努力すると報われますよということである。


冒頭に書いた「信託型ストックオプション」は有償ストックオプションの一種ということになるのかな。

ただ、ストックオプションを買うのは従業員ではない。

信託型ストックオプションの典型例はこんな形らしい。

  1. 委託者(オーナー経営者など)が信託の受託者に資金を拠出する
    (この時点では受益者が決まっていないことがポイント)
  2. 受託者は会社からストックオプションを購入する
  3. 信託終了時(上場時など)に会社が決定した受益者(役員・従業員など)にストックオプションを与える

信託というのもいろいろあって、受益者を後から決める信託というのがある。

例えば、まだ生まれていない孫を受益者とする信託などが一例である。


ストックオプションを信託するメリットの1つが信託した時点の行使条件が保たれること。

ストックオプションは付与するタイミングの株価で行使価格を決めるのが一般的、

通常は早く会社に加わった人ほど有利なストックオプションが得られる。

それが成果に見合っていればよいが、早く会社に加わっただけで貢献度に見合わないほど大きな利益を得てしまうケースもある。

ストックオプションを報酬として使うのはこのような不公平さもある。

そこで信託終了時点で関わった役員・従業員の貢献度を評価して、

その評価に応じてストックオプションを分配することで、この不公平を解消しようとしたわけである。


ただ、この方式にはそれだけではないメリットがあるとされていた。

それが給与としての課税を逃れられるという点である。

信託からストックオプションが割りあてられ、これを行使したら、

給与としての課税が発生しそうに見えるのだがそうはならないという。

受益者がまだいない信託に適用される法人課税信託という仕組みによるらしい。

信託というのは受益者に課税されるのが原則だが、

受益者がまだいない場合は信託に法人税が課税されるという規定がある。

この時点で課税されているので受益者が決まった後の課税はないということらしい。

ただし、受益者が委託者の親族である場合は、贈与税または相続税とすでに支払った法人税の差額が課税される。


このため、ストックオプションを行使するときに給与としての課税はなく、

株式売却時に行使価格と売却価格の差が分離課税の対象になる。

ここには年1200万円の上限もないという主張がなされていたらしい。

しかし、国税庁としてはそうではないという見解を出すということである。

形式上はともかく、実態は会社が従業員にストックオプションを付与しているだけで、

これは給与として扱うストックオプションと何も変わらないじゃないかと。


確かにこれが給与として扱われないのは正義に反すると思う。

税制適格ストックオプションという制度がすでに存在する中で、

この枠から逃れることを大きな目的としている点もよくない。

貢献度に応じて後から付与できるというのは確かにあるかもしれないが、

それって結局は信託終了のタイミングでボーナスを計算しているだけだし。

全てにおいて、目をくらませるためだけに信託を使ってるだけなんだよな。


すでにかなりの企業に普及しているため、裁判になるのはほぼ確実だろう。

やはりそれなりの理論武装があって導入された仕組みではあるので。

ただ、国税庁の言うように給与として課税するべきという判決が出てしまうと、

それで損害を被るのは最終的な受益者となる役員・従業員である。

となれば、信託終了前に なかったことにするのが現実的なんだろうなぁ。

制度間のバランスを考えれば明らかにおかしいわけですから。


というわけで一部においては相当に衝撃的なニュースだったようである。

ストックオプションもメリットあるケースはあるけど、現実にはなかなか難しく、

困った挙げ句に信託なんて持ち出したけど……って話かね。

サミットで平和公園に勢揃い

広島でのG7サミットで平和公園への遠足はあるんだろうと言われていたが、

G7メンバー揃って原爆資料館を視察、慰霊碑に献花というのは、なかなか驚くべき光景だった。

G7広島サミット 各国首脳ら原爆資料館を訪問 そろっては初めて (NHK)

あと首脳らの記帳内容、大したこと言っていないなという人もいるけど、

アメリカのバイデン大統領とか、イギリスのスナク首相あたりは核保有国の首脳がここまで言えるだなと驚くばかり。

G7サミット 各国首脳らが原爆資料館で記帳した内容を公表 (NHK)


やはりどうしても比べてしまうのが2016年のオバマ大統領の訪問である。

このときもG7サミット合わせだったんですね。

現職のアメリカ大統領が原爆資料館を視察するというのは大きな話だが、

アメリカ国内の目もあり、なかなか言えることも少なかったのが実情。

さらに言えばオバマ大統領は任期満了が迫っていましたから。

本人としては核兵器廃絶に向けて動きたい思いはあったと言われているが、

立場的に難しかったことが読み取れる。


いくら広島開催のG7サミットとはいえ、実現は容易ではなかったという。

G7首脳 バイデン大統領ら広島原爆資料館へ 難航した水面下交渉 (NHK)

ただ、ウクライナの惨状を見てきたことも後押しになったようである。

核兵器が実用されたところなんて、広島か長崎ぐらいしかないのだし。


僕もこの資料館は2017年に広島訪問したときに見ているのだけど。

原爆と船と温泉

もちろん大惨事ではあるのだが……

現在の広島が瀬戸内最大の都市であるように、広島を壊滅に至らしめるほどのものではなかった。

医療資材の不足などの問題はあったが、医療機関もごまかしながら動いていたし、

放射能障害にしても寿命をまっとうする被爆者はいくらでもいる状況。

当時の核兵器というのはその程度のものだったとも言える。


だから、これを見て核兵器も大したことないと思われては困るなと。

現代の核兵器はよりコンパクトで高い破壊能力を持つとされているし、

だからこそ脅威であるわけだけど。

あと、通常兵器ならよいという話でもないですからね。

それはG7メンバーがウクライナ訪問時に知ったと信じたいところですが。


この訪問も踏まえたか「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が示されたが、

この内容には案外非難も多いところである。

元広島市長「岸田首相、ヒロシマを利用するな」 核抑止力維持に憤り (朝日新聞デジタル)

「ロシアによる核兵器の使用の威嚇」への非難というのはよいとして、

核兵器廃絶に向けたアプローチとしてこう書いたことが問題だという。

我々は、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを通じて達成される、核兵器のない世界という究極の目標に向けた我々のコミットメントを再確認する。

安全が損なわれない範囲でしか核兵器削減はしないと言っていると。

これは実質的に核兵器の正当性を認めたということになるんではないかと。


ただ、G7メンバーの岸田総理大臣が平和公園に招き、

特にアメリカ・イギリスあたりの首脳があれだけのメッセージを残し、

それで核兵器を使うようなことがあれば、岸田首相の顔に泥を塗ることになる。

それはできる限り避けるように動くだろうと言うのは期待できるんじゃないか。

やはり各国国内の事情を考えれば言えることと言えないことがあるが、

冒頭で示したような行動に表れた部分は評価してよいのでは?とも思う。


ところで今回G7サミットには招待国の首脳も来ていた。

これら招待国の首脳も別のタイミングで原爆資料館を訪問したという。

そこで気になったのがインドのモディ首相である。

というのもインドというのは核保有国だからである。

さらに現在もロシアとそれなりに深い関係を維持しているとされている。

G7の連帯と一線を引き、核兵器を使いうる立場にある人である。

そもそも訪問したの? と思ったのだがTwitterで展示を見る様子が投稿されるなど案外積極的である。


あと、韓国の大統領が訪問したというのも大きな話でしたね。

被爆者の中には韓国人もいる。当時は朝鮮も日本国内だったからね。

現在も日本に住む人もいるが、韓国に住む人もいて在外被爆者の最たるものである。

尹大統領が慰霊碑献花、韓国人被爆者ら感謝「長生きしたらいいことがあるんだ」 (読売新聞)

韓国もガッツリ当事者だったのだが、なかなか機会もなかったのである。

こういうこともあると。


岸田総理大臣が広島県選出という背景は大いにあるのだけど、

それにしてもここまでとはというのが正直なところ。

これで世界平和に近づくのかといえばそう単純とは思わない。

なにしろ相手がよくわからない理由で「特別軍事作戦」を始め出すロシアだから。

どうすれば打開できるのかもわからないというのが実情である。

まさかロシアに肩入れするわけにはいかないしね。

やむにやまれず核兵器を使うことだって考えないといけない。

ただ、そうならないように最善は尽くそうということだと思う。

G7の仲間とG7が仲間にしたい国々

広島でG7サミットが行われていますが、

G7サミットにはG7構成国の首脳だけが集まるのではない。

まず、欧州理事会議長・欧州委員会委員長は必ず参加する。

G7に直接参加しないEU加盟国も構成国に準ずる扱いと考えられる。

そして招待国としてG7を構成しない国の首脳も呼ばれるのも通例で、

今回はオーストラリア、ブラジル、韓国、ベトナムと、G20議長としてのインド、ASEAN議長としてのインドネシア、アフリカ連合議長としてのコモロ、太平洋諸島フォーラム議長としてのクック諸島が呼ばれている。

さらに今日、ウクライナのゼレンスキー大統領が追加でやってきた。


G7の招待国というのは拡大会合への参加のために呼ばれているようだ。

あわせてG7各国との会合をこなすことになる。

G7と招待国の顔ぶれを見るとG20サミットと被るところが多い気がする。

G7拡大会合は食料・保健・気候変動・エネルギーなどG7各国ではいかんともしがたい問題を中心に扱うという。

経済におけるカバレッジを重視したG20とは意図が異なる部分もあるが、

真に世界共通の課題というのはG7では扱いきれないのは同じかもしれない。


G7の構成国の共通点についてIMFはこんなことを言っていたそうである。

最も裕福な自由民主主義国であり、グループは多元主義と代議制政府という共通の価値観に基づいて公式に組織されている

(主要国首脳会議 (Wikipedia))

かつてロシアを加えてG8だったがロシアとは価値観が合わない部分も散見された。

そのロシアが抜けたG7を見てみると、ヨーロッパと北アメリカの大西洋両岸がほとんどで、

日本だけぽつんと1ヶ国アジアにある形になっている。


これがG20になるとだいぶ様相が変わる。

G20は19ヶ国とEUのことなので、G7に12ヶ国加えたものと言える。

ヨーロッパはG8から叩き出されたロシア(アジアにもまたがる)が加わり、

北アメリカはメキシコが加わった程度である。

アジアでは韓国・中国・インドネシア・インド・サウジアラビア・トルコ、

南アメリカではブラジル・アルゼンチン、そして南アフリカ・オーストラリアと。

日本にとって見れば韓国・中国・インドネシア・オーストラリアあたりが加わるとぽつんと1ヶ国という感じはほとんどなくなる。


そういえば韓国とオーストラリアって先進国だよねと。

G7の特徴に当てはまる部分も多く、拡大構想もあったという。

ただ、ほとんどの構成国は拡大に消極的なので実現することはなかったが。

このあたりは連帯できそうな部分も多そうなんですけどね。


ここ最近、急に聞くようになった言葉に「グローバルサウス」がある。

ウクライナ・対中国、連携は 「核なき世界」へ成果なるか G7議長国、問われる手腕 広島サミット (朝日新聞デジタル)

かつては先進国と発展途上国という構図で、先進国を束ねるG7の力は大きかった。

これを大きく変えることになったのが中国を中心とした東アジアの発展なのだと思う。

中国自体は都市と農村の格差もあり発展途上国としての性質もあるが、

香港・マカオの特別行政区は先進国のリストに記載されているぐらいである。

韓国・台湾(中華民国)・シンガポールは先進国に列せられていたり、

マレーシアも先進国には至らないも裕福な国である。

この背景に中国の発展は無関係ではないだろう。日本との関係もありますが。

これらの国々はG7の価値観と合わない部分も散見されるところである。

この他、東ヨーロッパの発展というのも大きな要素だが、

こちらについてはすでにEUを介してG7の連帯に加わっている部分も多い。


で、グローバルサウスというのは、上で書いた経済発展から取り残された、あるいは遅れた国々のことである。

概ね赤道付近より南に集中していることからこのような呼び名がある。

G20の構成国ではインド・ブラジル・南アフリカ・インドネシア・トルコ・アルゼンチン・メキシコ・サウジアラビアなどが該当するかと書かれている。

トルコとかメキシコあたりは先進国にあたらないもそれに近いという認識で、

それならグローバルサウスではないように思うが、含まれると書かれた資料が多い。

まぁあまり明確な定義はないのですが。


最も経済発展から取り残された地域がアフリカですよね。

その中では南アフリカは発展の早かったこともありG20に参加している。

が、国内の経済格差はすさまじく、貧困や感染症など他のアフリカ諸国と共通の問題は多い。

アジアは発展の早い国があった一方、発展が遅れた国もあり、

微妙なところはあるが、インドとインドネシアは遅れたグループになるのだろう。

確かにこの両国、とにかく人口が多く、国単位の経済規模は相当なものだが、

インフラ整備の遅れや経済格差など課題は多いところである。

こういう課題を抱えた国がまだまだアジアには多いということである。

南アメリカも経済規模は大きいが、経済格差がとにかく大きい。

西アジアは紛争が頻発し、民主主義が根付かない国が多く、

G7構成国にとっては苦慮するところが多い地域かもしれない。


アジアで唯一のG7構成国である日本だが、近国に目を向けると、

  1. 民主主義が根付いて裕福な 韓国・オーストラリアなど
  2. それとは異なる価値観で経済発展を遂げた 中国・シンガポール・マレーシアなど
  3. 経済発展するも未熟な点が多い インドネシア・フィリピンなど
  4. 小さな島国ゆえに大国に依存せざるを得ない太平洋諸島の国々

と言った具合に価値観や成熟度という点でも多様性がある。

(オーストラリアは言うほど近所ではない気もするけど)


1.に着目すれば近所にもG7に近しい国はあると言える。

2.に着目すればG7のカバレッジの低さが気になってしまう。

今回の広島でのG7の招待国というのは、3.の国々とG7が連帯していきたいとか、

歴史的にアメリカやオーストラリアと強い結びつきを持って来た4.の国々との関係を中国に奪わせまいという意図がありそう。

そのために日本と1.に挙げた国々がこの地域で存在感を発揮していきたいと。

決してG7はヨーロッパ・北アメリカだけのものではないと。

そういうことなんだろうと思う。


グローバルサウスという言葉も早々死語になりそうな感じはある。

結局、最後まで取り残されるのはアフリカじゃないかということである。

ただ、今はアジアの一部と南アメリカも同じような問題を抱えていて、

なのでこれらの国々の課題も含めて打開していこうということなんでしょう。

関空経由神戸行きの大型貨物機

神戸空港にエアバスの巨大貨物機ベルーガSTが飛来した。

神戸にエアバス「ベルーガ」到着 シロイルカ2度目の大型ヘリ輸送 (Aviation Wire)

目的はヘリコプターの輸送のため。この中にヘリコプターが2機入っている。

神戸空港にやってきたのは エアバスヘリコプターズ の事業所があるため。

このため大型貨物機はしばしば神戸空港に飛来しているという。

地方管理空港である神戸空港の意外な一面である。


ただ、この飛行機、神戸に来る前に関西空港に一旦立ち寄っているのだ。

わずかな距離を飛び直して神戸に到着するという面倒なことをしている。

なぜこんなことになっているのか?

おそらくは通関のためだろうと言われている。

神戸空港は国際線が乗り入れる想定がない空港ですから。


輸出入ということについて言えば、日本の港は開港と不開港に分けられる。

開港には京浜港・阪神港などが列挙されている。

空港については開港ではなく税関空港という呼び方をするが意味は同じ。

近畿圏では関西空港が唯一の税関空港である。

外国貿易船は開港に入出港するのが原則である。外国貿易機も税関空港を離着陸するのが原則である。

しかし、不開港出入許可を取れば外国貿易船(機)が入出港(離着陸)することはできる。


ただ、直接不開港に向かうと、出入国・検疫・税関といったものが揃わない。

このような事情もあり、不開港で荷扱いをする船は開港に寄って手続きするのが一般的だという。

船の場合は開港にしばらく停泊して海上で手続きをしてしまえばよい話。

ただ、飛行機は一度着陸が必要なのが難点である。

外国と往来する飛行機が不開港の空港を絶対に使えないのかというと、

そんなことはなくて神戸空港にもプライベート機が飛来することはある。

事前に関係機関との調整が必要だが、出張対応も可能である。

ただ、簡易な手続きで済む手荷物の通関とは事情も違うのだろう。


神戸空港は空港としては不開港だが、海港としては開港である阪神港神戸区の一部である。

なので神戸空港に外国貿易船が発着することは可能で、

実際、液体水素国際輸送の実験が神戸空港島で行われているという。

水素サプライチェーン構築実証事業(海外から液体にした水素を船で運ぶ実証) (神戸市)

なのに外国貿易機の発着は通常認められていないのが神戸空港である。

空港内に保税蔵置場を設けて、そこで通関手続きをすればできそうな気もするけど、

ヘリコプターの輸送なんてそこまで頻度はないんだし、関空で飛行機に乗せた状態で通関手続きをする方が楽なのかも。

(船に乗せた状態で通関手続きを行うことを「本船扱い」といい、ばら積み船や巨大貨物などで活用されているという)


ところでなんで神戸空港にエアバスヘリコプターの事業所があるんでしょうね?

そもそも神戸空港は神戸市の手で土地造成・空港整備が行われた空港である。

空港の整備費は土地の売却で賄うという話だった。

ただ、開港時にはレンタカー店の土地が売れた程度だった。

全体としてだだ余りの神戸空港の土地だが、そこに目を付けたのがユーロコプターだった。

ユーロコプターは後に社名変更してエアバスヘリコプターズとなっている。

空港なのでヘリコプターの離着陸に適しているのは言うまでもないし、

元々伊丹空港に拠点があったので近隣での移転・拡張なのもよかったのだろう。

(川崎重工業と提携関係にあるのもこの立地の背景かもしれない)

日本の民間・官公庁向けヘリコプターの半分以上はエアバスヘリコプターが占めているという。

神戸空港はまさに日本のヘリコプターの整備・修理・訓練の重要拠点である。


なお、神戸空港は新しいターミナルビルの整備計画が動き始めていて、

その中では国際線対応の設備を整備する予定である。

関西・伊丹・神戸の3空港の経営は関西エアポートグループに統合されている。

3空港の分業を考える中で神戸空港への国際線就航という話が出てきたようだ。

どのような国際線が就航するのか? まだ見通せない部分もあるけど。

しかし、こうして国際定期便が就航すれば税関空港になる可能性が高い。

そうするとヘリコプターを積んだ大型貨物機が神戸空港に直行する日も来るのかも知れない。

無印良品は大麻を売っている

昼休みにTwitterを見ていたらこんな広告があった。

袖を通せば、さらっと涼やかな肌触りの麻。洗うほど繊維がやわらかくなるため、着るほどに肌になじみます。 無印良品では、定番の「リネン」に加え、「ヘンプ」を使用したアイテム数を拡大します。 生長が早く、少ない水で育つ植物から取れるリネンやヘンプは、環境への影響が少ない自然素材です。

(無印良品(Twitter))

なんと無印良品では大麻を売っているらしい。


そうなんですよね。ヘンプって大麻のことなんですよね。

もちろん嗜好品としての大麻ではなく、繊維としての大麻ですが。

日本で麻の繊維と言えば、ほとんどは亜麻で、これはリネンとも呼ばれる。

実は日本の法令では本来のアサである大麻の繊維は「麻」とは書けない。

普段生活する中でも大麻の繊維製品を見ることはあまりない。

日本においては法規制の問題が大きいと思われる。


日本においては麻の取扱には大麻取締法の制約を受ける。

大麻取締法では成熟した茎と種子、その製品は除外されている。

この部分には麻薬成分が含まれないからである。

なので、茎から作られる繊維はもはや大麻取締法の規制対象外である。

ただ、麻を栽培することへの規制はかなり厳しい。

それは麻薬成分の含有量が低い品種でも例外では無い。

このため伝統的に神事に使われてきた麻製品の確保にも苦慮するほどという。


繊維の状態で輸入すれば何ら問題はないのだが、国内で栽培するとなればなにかと難しいというのが実情である。

麻薬成分の含有量が低ければよいような気もするのだが、

全く含まないことは不可能で、そうすると法の穴をかいくぐろうとするのが出てくるのは予想される。

そういうことがないような厳格な栽培・活用体制が求められているが、

なかなかそのような体制が整う地域・生産者は限られるようである。

USMHになれない店

いなげや がUSMH入りという話を書いたのだが、

これでもイオングループの関東圏の食品スーパーが一元化されたわけではない。

いなげや と同じように筆頭株主だが独立性の高い会社として ベルク があるという。

埼玉県を中心に展開しているチェーンで2006年からイオンと提携しているそう。

ベルクがUSMHに加わらないのは同社の方針ということでよいと思う。

一方、イオンの子会社ながらUSMHに統合されていない会社がある。

それがダイエーとイオンマーケット(ピーコックストア)である。


ダイエーは2007年からイオンが経営再建に携わるようになったが、

2013年に子会社化、2014年に株式交換でイオンの完全子会社となった。

ダイエーの関東・関西以外の店舗はイオングループ他社に移管されている。

また関東・関西でもGMS形態についてはイオンリテールに移管されている。

結果として残ったのは関東・関西の食品スーパーである。

ダイエー・グルメシティのブランドはイオンフードスタイルに改められるという話はあったが、この話はなくなっている。


そんなダイエーには2019~2020年にかけて大阪府・京都府・奈良県・和歌山県と兵庫県阪神地域の食品スーパー事業が統合された。

結局は地場スーパーの集合体

マックスバリュは前身となった会社の都合で役割分担が複雑になっている。

近畿圏でも兵庫県播磨・但馬・淡路はマックスバリュ西日本の管轄、滋賀県はマックスバリュ東海の管轄である。

この2社に挟まれた地域はダイエーに統合するという方向で進められたが、

実際にはダイエーの子会社となった光洋がマックスバリュ・KOHYOを運営するということになった。

なお、光洋の経営するマックスバリュには、2016年に移管されたピーコックストアを含む。

いずれにせよダイエーはこれらの地域の食品スーパーの統括会社となっている。

これらと同時期にダイエーはCoDeliという小型スーパーの展開を始めている。

まいばすけっと の関西版なんて書き方がされていた。


ただ、ダイエーという会社には関西圏の食品スーパー統括会社という役目とともに、

関東圏におけるダイエー・グルメシティの経営という役割もある。

また、関西ではマックスバリュ化されたピーコックストアも関東圏ではこれらと別会社として存在している。

さらに言えば、関東圏で小型店を経営する まいばすけっと も別会社だし、

ディスカウントストアという扱いだが、Big-Aとアコレを経営する ビック・エー も別会社である。

(ちなみにBig-Aは元ダイエー傘下、アコレはイオンリテールからの分社化と、元は別系統の会社だった)


なぜこれらがUSMHに統合されていないのか?

これはUSMH自体が上場会社だからということだと思う。

ダイエーもピーコックストアも経営難の会社を救済する形で傘下に入れた。

このため現在も採算性の悪い店舗が残されていると思われる。

関西ではダイエーも光洋もイオンの完全子会社になっていた。

(光洋については創業家からイオンが株式を取得したことで子会社にしている)

なので会社再編の柔軟性も高かったのだと思う。


食品スーパーを地域別に再編するというイオンの取り組みからすると、

関東圏のUSMHへの一元化というのは目指すべき目標なんだと思う。

関連会社に留まり、なおかつ上場会社である いなげや と ベルク については、各社の判断を尊重するという立場であろうと思う。

これに対してすでにイオンの子会社が経営する ダイエー(関東圏)・ピーコックストア をなぜUSMHに統合できないのかは疑問に思っていた。

現時点ではとてもUSMHに押しつけられるような店舗ではないと言われれば納得である。


ところで2018年に紹介したイオングループの食品スーパー再編だが、

四国と広島県・山口県に展開するフジが2019年にイオン傘下に入ったことで事情が変わり、

マルナカ・山陽マルナカと合併したマックスバリュ西日本がフジの傘下に入るという形で、

フジが中国・四国と兵庫県播磨・但馬・淡路の食品スーパーの統括会社になった。

ブランドの雑多さは気になるが、イオンは瀬戸内に巨大な店舗網を構築することができた。

なお、フジ自体はフジグランなどの店名でGMSの経営もしている。

こういう事情もあるのでブランドの雑多さは続きそうである。

いなげや はイオンの子会社になる

こんなニュースがあったのですが。

イオン、いなげや子会社化 首都圏強化、PB拡大 (JIJI.COM)

いなげや は南関東のローカルスーパーだが、本社が立川市にあることもあり、多摩地域で特に目立つ印象である。

いなげや の筆頭株主はイオンで、トップバリュ製品も並んでいる。

でもWAONは使えないし、三井住友カードと提携してing・fanVカードというクレジットカードを発行している。

イオンと深い関係にあることは間違いは無いが、イオングループではないらしい。

そんな いなげや が関東圏のスーパーマーケット事業を統括するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)の傘下に入るという。


なぜ いなげや はこれまでイオンと付かず離れずの距離感だったのか。

それは いなげや の筆頭株主がイオンになった経緯とも関係がありそう。

イオンが地場スーパーを傘下に入れる経緯もいろいろあるが、

いなげや については秀和という不動産会社から売却されたことによる。

既存の大株主が業界ガリバーのイオンに株式を売却するのはわりとみられるが、

この秀和という会社は いなげや と 忠実屋 の株を買い占め、経営統合して大手に対抗できるスーパーチェーンを作ろうとした。

が、これは結局実現せず、忠実屋はダイエーとの提携を選んだことで秀和の保有していた忠実屋の株式はダイエーに渡った。

一部はダイエー、グルメシティ、イオンフードスタイルの店舗として残っているという。

(奇しくもこちらも現在はイオングループである)

一方の いなげや も秀和の経営難もあってか、2002年にイオンに売却されてしまった。

その後、秀和という会社はなくなり、建物名にその痕跡を残すのみである。


このような経緯もあり、いなげや は独立が保たれることを求めた。

秀和からの取得時には持株比率26%であったところ、いなげや自身が一部を買い取って、持株比率を17%に下げた。

これにより2004年に いなげや と イオン の提携関係が成立、現在に至る。

2015年のUSMH設立時に関東圏の食品スーパーでありながら加わらなかったのも、

いなげや の独立を保てなくなるからだったんだと思う。


しかし、いなげや にはこのままでは競争力は低下するばかりという危機感もあったのだろう。

一方のUSMHはオンラインデリバリー、Scan&Goなど、店舗のデジタル化を進めていた。

Scan&GoはUSMH以外のイオングループの店舗でも活用されている。

このような取り組みは いなげや にとっても魅力的に映ったのだろう。

USMHに加わったとしても いなげや の屋号は変わらないし、店舗網もとりあえずは変わらない。

その中でイオングループ、USMHとのリソース統合が進んでいくことになる。


2015年にUSMHとして経営統合された3社のうち、

マックスバリュ関東はイオンから分社からされたイオン直系の会社。

カスミは茨城県の地場スーパーだが、2003年に創業家がイオンに株式を売却したことでイオン傘下に入った。

これもわりとよくあるパターンですね。

マルエツは元々ダイエーと提携関係にあったが、一部が丸紅に譲渡された。

その後ダイエーがイオンの支援の元で再建を進める中、2007年にダイエーの保有株がイオンに譲渡されたという。

以後、イオンとの提携関係は持ちつつも独立を保っていたという。


USMH設立直前のマルエツの持株比率はイオン32%・丸紅29%だった。

カスミもイオンの持株比率は32%だった。いずれも半数に満たない。

この3社のイオンと丸紅の持分をイオンマーケットインベストメントに集めて、

それから株式移転により設立された持株会社こそがUSMHである。

イオンマーケットインベストメント社はイオン7割・丸紅3割程度の出資比率で、この会社がUSMHの54%の株式を所有している。

従来はカスミもマルエツもイオンの子会社ではなかった。

しかし、一連のイオンは大したお金をかけずに両社を子会社にできたという。


いなげや をUSMHに傘下に入れる具体的な手順は明らかになっていないが、

おそらく公開買付によってイオンは いなげや の持株比率を5割強にして、

株式交換で いなげや はUSMH傘下に入り、いなげやの株主はUSMHの株主になる。


いなげや の特色としてウェルパークというドラッグストアを抱えていることがあるという。

USMH各社の中でも特異な構造で、ここが1つポイントかもしれない。

イオンは傘下にウエルシアを抱えているし、イオン店内にイオン薬局などドラッグストア機能を持たせていることもある。

もしかすると食品スーパーの いなげや とは別の道に行くこともあるのかもしれない。

すでにハピコムというイオン主導のドラッグストアの系列には加わっているが、

さらに踏み込んでウエルシアとの協業が進むなどが考えられる。

わかりませんけどね。でも可能性は十分あるんじゃないかな。

党派名は自己申告でもないけど

職場の人が「市議会議員選挙に政治家女子48党とNHK党の候補者がともにいるんだけど」と言っていて、

「自己申告なんですよ」とか言ってみたけど、本当に自己申告なわけではない。

ただ、立候補者一覧に書かれる「党派」というのはそこまで厳格なものではない。

特に地方選挙はなおさらのことである。


党派欄に政党・政治団体の名前を記載するには「所属党派証明書」を提出する必要がある。

もしも提出しなければ「無所属」と記載されることになる。

ただ、政党に所属していても、あえて提出しないことも可能である。

所属政党の公認が得られないために証明書が出ず無所属となる例もある。

そのような場合でも当選後に所属政党の会派に所属していることは珍しくない。


問題は所属党派証明書を誰が発行するかということである。

政党助成金の対象になる「政党」は法人登記が必要だからそれはよいとして、

それ以外の「政治団体」は届出は必要だがそれだけである。

調べてみると同じ名前の政治団体はたくさん存在している。

これらの団体の代表者の所属党派証明書を出せば党派名が記載されるが、

「政党」はともかく「政治団体」はわりと何でもありというのがわかると思う。


さて、冒頭に書いた 政治家女子48党 は政党助成金の対象となる政党である。

今年3月まではNHK党という名前であったものが改名している。

となればNHK党というのは現存しないと考えるのが普通である。

ところがどうもNHK党という政治団体が世の中には存在しているらしい。

政治家女子48党の改名前まで党首だった立花氏が代表者らしいがあくまでも別団体。

というわけで政治家女子48党の所属党派証明書を持参した人と、

これとは別に設立されたNHK党の所属党派証明書を持参した人がいたということ。


立候補の届出は立候補者本人か本人から同意を得た推薦者が行うのが基本だが、

比例代表では政党・政治団体が届出を行うことになっている。

そして、衆議院の選挙区でも政党要件を満たす政党・政治団体も立候補の届出ができる。

政党が選挙区の立候補の届出を行うと、比例代表との重複立候補を行うことができる。

この方法で立候補された場合は、確かにその政党の所属であると明確になる。

ただ、衆議院議員の選挙区でも所属党派証明書を提出して立候補することは可能で、

政党以外の政治団体の名前が党派欄に記載されることはまぁある。


所属党派証明書が正当に発行されたものかどうか、印鑑証明書を添付しろとか、

そういうルールもないので、正当な証明書か確認する手段は乏しい。

そもそも政党・政治団体の届出状況との照合を行っているかも疑わしい。

自己申告は言い過ぎにしても、党派欄の記載はその程度のものである。


政党名がころころ変わる 政治家女子48党 だが、

国会に議席を持ち政党要件を満たす以前から、地方議会に議員を送り込んでいた。

この点では草の根政党という側面はけっこうあったんですよね。

とはいえこれはワンマン政党のごとく党名がコロコロ変わることと相性が悪い。

このあたり新設の政治団体「NHK党」を選んだ候補者の多さにもつながっているのかなと。


政党要件を満たさない政治団体を所属にして立候補する人は多いが、

国政選挙で当選するものはそうそういないのが実情である。

あるいは当選した選挙で政党要件を満たすか。

沖縄県選出の参議院議員、高良鉄美氏は沖縄社会大衆党(アメリカ統治下から存在する地域政党)の代表なのだが、無所属として立候補している。

あえて所属党派証明書を出さなかったパターンですね。


地方選挙だと政党要件を満たさずとも一定の存在感を持つ地域政党もある?

と調べてみたのだが、都道府県議会でまとまった人数が当選してるのは チームしが(滋賀県)・新政みえ(三重県)・都民ファーストの会(東京都) ぐらい。

院内会派としての チームしが と 新政みえ はいずれも立憲民主党・国民民主党所属として当選した議員も含む。

この点では全国政党の別働隊という見方もあるかも。

チームしが の代表の嘉田由紀子氏は無所属で参議院議員に当選しているが、

国民民主党などの推薦あってのことで、現に国民民主党の会派に所属している。

よく考えて見れば「大阪維新の会」というのもそうだった。

同党が全国化した 日本維新の会(政党要件を満たす) の支部でもあるが、

大阪府内の地方選挙では 大阪維新の会 所属として立候補している。

そしたら残るのは 都民ファーストの会 ぐらいですか。

それは全日空便ではないと思うが

この前の土曜日の首相動静にこんな記載がある。

午前8時25分、羽田空港着。午前9時6分、全日空3821便で同空港発。

同42分、関西空港着。同2時25分、全日空3824便で同空港発。

(首相動静(4月15日) (JIJI.COM))

全日空3821便、3824便とあるが、これは一般的にはANA便と言わないのでは。


関西空港のWebサイトでNH3821と調べてみるとMQ21(NH3824)という記載がある。

同様にNH3824はMQ24(NH3824)と記載されている。

実はこれはスターフライヤー運航便である。

(スターフライヤーの航空会社コードは本来7Gだが、国内ではMQの表記も見られる)

コードシェア便としてANA(NH)便名も付いているのだが、

果たして岸田総理大臣がスターフライヤーの黒い飛行機に乗り込むのを見て「全日空3821便」と書けるものだろうか?


自民党関係者はANAを好んで使う傾向があるという話がある。

もちろん目的地によっては他社も使うのだが、ANAのコードシェア便がある場合はそちらで表記されている。

午前7時7分、公邸発。同31分、羽田空港着。同55分、全日空2471便で同空港発。同9時27分、鹿児島空港着。

(首相動静(10月10日) (JIJI.COM))

NH2471とはソラシドエア運航の6J71便と同じ飛行機である。

九州方面を中心にソラシドエア便の利用はけっこうあるみたいだが、一貫して全日空便として表記されている。

実際にANA経由で手配しているのではないか。


この首相動静というのは総理番の記者が書いているわけだが、

さらに言うと時事通信社・共同通信社の代表者が総理大臣一行に加わっているという。

「首相動静」何のために (NHK)

そうして誰と面会したかとか記録して、報道各社に共有しているわけである。

おそらくはこうして同行する記者の航空券も同時に手配しているのだろうし、

あと「総理の日程は前日に公表される」ということで、搭乗予定の飛行機・列車などの情報は記載されているのだろう。

そこに従った結果がスターフライヤーなのに全日空便という表記だったのかも。


前日ぐらいに昼まで和歌山で演説して、夕方には浦安で演説というので、

その間を埋めるのはスターフライヤーの羽田~関西便しかないねとは言われていた。

なかなかの強行軍だが、定期便で移動できてしまうと。

羽田~関西は早朝深夜は伊丹空港の門限の都合で大手2社の便があるが、

昼間についてはスターフライヤーがほとんどである。

このため和歌山~東京周辺を昼間に移動するならスターフライヤーが最適だったのである。


さて、冒頭で紹介した首相動静だが、飛行機での移動の間に挟まれたところにはこういう記載がある。

午前11時17分、和歌山市の雑賀崎漁港着。地元漁業関係者と意見交換。爆発物が投げ込まれ、街頭演説を中止。

昔は爆発物が絡む事件というのはけっこう多かったのだが、

法規制の強化もあり、最近ではなかなか起こらなくなっていたところである。

結果的には目立った被害はなかったのだが、危険なのは言うまでもない。

選挙期間中は狙いやすいというのは確からしい。

奈良県政に日本維新の会

全国的にも話題となっていましたが。

奈良県知事選挙 山下真氏 初当選 維新公認知事は大阪以外で初 (NHK)

日本維新の会公認の山下氏が奈良県知事選挙に当選したという話。


日本維新の会は大阪府の地域政党である大阪維新の会が全国化したもの。

大阪府では府レベル・市町村レベル・国政レベルの選挙でも猛威を振るい、

特に衆議院の選挙区選出の議員は 日本維新の会 と 公明党 しかいないという。

大阪府に隣接する兵庫県阪神地域でもそれに近い傾向があり、選挙区選出の国会議員も出している。

県全体となるとまた傾向は違うが、現在の兵庫県知事の斎藤氏は日本維新の会推薦で当選している。

それならば、同じく大阪府と結びつきの強い奈良県でも……

と思うのだが、今までなかなかそうもいかなかった。


今回、山下氏が当選したのは自民党分裂の漁夫の利を得たと言われているが、

分裂してなくても勝ってたような気もするし、勝てないから分裂したとも言える。

自民党分裂というのは、自民党組織としては平木氏を推す一方で、

一部の県議会議員が現職の荒井氏を推し、どちらも立候補したことによる。

全県での得票を見ると、山下氏 26.6万票(44%)に対して、平木氏19.7万票(33%)・荒井氏9.7万票(16%)なので、

平木・荒井両氏の得票を合計すれば山下氏に勝てた計算ではある。

そうはいっても5ポイント差、足した得票が得られたとは思えないし、山下氏の当選は順当な結果ではないか。


全県での結果はともかくとして、気になったのは地域性である。

市町村別の得票を見て、下記の5グループに分類してみた。

  1. 山下票>平木票+荒井票
    生駒市・平群町・河合町・上牧町・王寺町・奈良市・斑鳩町・三郷町
  2. 山下票>平木票>荒井票 かつ (平木票+荒井票)-山下票<10point
    大和高田市・大和郡山市・桜井市・香芝市・橿原市・広陵町・田原本町
  3. 山下票>平木票>荒井票 かつ (平木票+荒井票)-山下票>10point
    御所市・三宅町・大淀町・安堵町・宇陀市・葛城市・川西町
  4. 平木票>山下票
    野迫川村・上北山村・山添村・十津川村・下北山村・川上村・天川村・御杖村・五條市・曽爾村・下市町・黒滝村・明日香村・高取町・天理市・吉野町
  5. 荒井票>山下票
    東吉野村

奈良県の地理に詳しい人なら明確な地域性が読み取れると思いますが。


1.のグループ、山下氏圧勝の地域は奈良市・生駒市と西和地域(安堵町除く)である。

山下氏は元生駒市長という経歴から生駒市での得票は圧倒的。

奈良県でも最も大阪府との行き来が活発な地域である。

ということでこのあたりは日本維新の会推薦というのも効いてそう。


2のグループは平木・荒井を束ねられれば山下氏と接戦に持ち込めた? という地域、

奈良県中部の多くと大和郡山市で構成されている。

このあたりも大阪府との行き来は活発で、特に香芝市・広陵町は1.の地域と同じぐらい活発である。

だけどちょっと傾向が違うんですね。平木氏が香芝市出身なのもあるのかな?

それ以外の地域は1.よりも大阪より距離があるという感じなのかな。


3のグループは平木・荒井を束ねれば山下氏に勝てた可能性が高い地域で、

葛城市・御所市は奈良盆地では南寄りの地域、宇陀市・大淀町は奈良盆地以外では宅地開発が進んだ地域。

2.と4.の中間的な地域ということなんだろうかね。

この辺も一般的な感覚で言えば大阪の郊外としての色が濃い。


4.のグループはすでに平木氏が最多得票の地域、天理市と南部の大半。

南部のうち大淀町はさっき書いた通り3.にあたり、東吉野村はなんと荒井氏が最多得票という特異的な地域である。

市町村の数で言えば多いのだが、天理市と五條市を除けば人口は少ない。

それにしても天理市がこの中にあるのは驚くべきことだと思う。

一般的には奈良市などと同じ北部に分類される地域なのだが、

平木氏の得票率は47%とかなり高く、周辺からすると特異的である。


これらのグループごとの人口を見てみると、

1.が60万人、2.が46万人、3.が12万人、4.が12万人といった具合。

人口で見れば山下氏圧勝の地域が県全体の半分近くになるんですね。

ただ、地域性としては県の北西部の一角に限られる形である。

1.と2.の地域合わせれば県人口の8割を占め、感覚的にはほとんどという感じだと思う。

面積的にも奈良盆地の多くを占める形にはなる。


奈良県在住の旧友が分裂っていうけど、荒井氏は実質的に無視されているのでは? という感想を言っていたが、

そうはいっても一定の得票は入っているのが実情である。

そもそも、今回の自民党の分裂の背景には「荒井では勝てない」という判断があったという。

高市早苗大臣 帰りたくても帰れない 奈良県知事選挙のお家事情 (NHK)

この判断はおそらく間違えていなかったのだが、

一方で平木氏を擁立するというところにも納得感がなかったようである。

「候補者一本化調整に時間がかかってしまい」と準備不足もあるのかもしれないが。

だから荒井氏を支持する県議会議員も残って、それを見て荒井氏は立候補したというわけである。


こういう状況でも自民党が公式に推薦する候補が勝つことはあるけど、

やはり元生駒市長という経歴もあって山下氏への期待は大きかったんだと思う。

ちなみに冒頭に貼ったNHKの記事には「日本維新の会の支持層のほか無党派層や立憲民主党などからも幅広く支持を集め」とあるが、

立憲民主党が公式に支持を表明していたのは平木氏だったりする。

ついでに国民民主党は荒井氏を推薦していて、2つの民主党も分裂している。

でもやっぱり納得感は無かったらしい。


荒井知事時代の奈良県政といえば印象的なのが関西広域連合への加入問題である。

2010年、関西広域機構を発展させる形で関西広域連合が設立された。

複数の都道府県の広域連合としては全国初、現在も唯一の存在である。

このとき関西広域機構のメンバーでありながら、奈良県は設立メンバーに入らなかった。

このときの荒井知事が不参加の根拠として、現在の奈良県が大阪府の一部だった時代(1876~1887年)のことを出していて、時代錯誤にすぎるのでは? と。

奈良県民の間でも近隣府県との連携強化から参加すべきではという意見も根強く、

結局は2015年に関西広域連合に参加しているのだが、現在も奈良県は資格試験や職員研修の広域化には参加していない。

このほかにも近隣府県との協調より奈良県としての独自色を打ち出すことは多かった。

でも、それらの施策を県民が支持していたかとなると疑問は多い。


同時に行われた県議会議員選挙でも日本維新の会は14議席(改選前3議席)に伸ばした。

政党別では自民党が17議席(改選前23議席)、無所属1名も自民党系かな。

自民党が引き続き最大会派……と思ったけど、今の奈良県議会は自民党系の会派が3つあるらしい。

このあたりもどうなるんかね。


大阪府に加え、兵庫県・奈良県と多数派になりつつある日本維新の会、

他地域でも都市政党としての存在感は示しつつあるが……

でもやはり本質的には大阪府の地域政党ですかね。

兵庫県・奈良県も大阪府の隣接地域だからというだけのことだし。

今回も自民党の自滅じゃないかという見方はあるんだけど、

正直、奈良県はもっと早く陥落してても不思議はなかったかな。