おとといSAFの話を書いたが、最後にこうまとめた。
バイオマスが油脂として入手できるなら水素化して燃料にして、
糖に分解できるならアルコールにして、そこから燃料を作り、
どちらでもなければ熱分解してFT法で燃料に出来るというわけである。
バイオマスの構成要素は大きくは たんぱく質・炭水化物・脂質 であると。
バイオマスの利用という観点では炭水化物はアルコールにでき、脂質はそれ自体が燃料になるというわけである。
そしたら、たんぱく質ってもうちょっといい使い道ないのか。
出所がはっきりした たんぱく質 ならば飼料になるのはいいんだけど……
もっと雑多なたんぱく質ですよね。
メタン発酵は雑多な有機物をメタンガス・二酸化炭素・水に変換するものである。
下水汚泥や生ごみの処理に活用できるが、導入施設は限られている。
メタン発酵によりメタンガスが得られ、廃棄物の減量を図ることができる。
発酵後の固形分・液体分はそれぞれ肥料として使うことができるが、
実態としては肥料として使いにくく、固形分は焼却、液体分は下水処理へ回っている。
特に問題なのが液体分で、アンモニア分が多いというのが難点だと。
アンモニア分は肥料として有用だが、濃度が薄すぎて輸送・散布が大変で、
周辺に農地があって、タダでどうぞと言っても全然減らないのだという。
ところがアンモニア分を処理せずに流すとアオコや赤潮の原因となる。
このアンモニア分の処理にコストがかかるのがメタン発酵導入の課題という。
では、アンモニア分はどこから来るのか? これが たんぱく質 である。
下水汚泥や生ごみを直接焼却に回せば、設備はコンパクトだし、
発酵後のアンモニア分の処理を考える必要はない。
ただ、実は窒素分を多く含む汚泥は焼却するとN2O(一酸化二窒素)が発生し、
これが温室効果ガスとして影響が大きいので、削減が求められていると。
高温で焼却すると減らせるので、今後は焼却設備の改良や、石炭と混燃できる固形燃料化での削減を目指す方向らしい。
ここで気づいたのだが、アンモニア分を除去するのが大変と言っているけど、
逆にメタン消化で得られる液体からアンモニア分を濃縮できれば、
肥料としての有用性も高まるし、NOx対策の還元剤、化学原料としても使えるよねと。
確かにそれはその通りで研究されているようだが、なかなか難しいらしい。
もしそれが実現できれば、たんぱく質をメタン発酵させることの価値が高まり、
アンモニア製造のための天然ガスの削減で省資源にもつながるのだけど。
冒頭に書いたが、出所がはっきりした たんぱく質 は飼料として有用だが、
例外があって、それが牛である。BSE対策が必要になったためである。
魚・鶏・豚については、内臓など不要部位ならなんでも集めて、
ここから脂肪分を分離して、フィッシュミール、チキンミール、ポークミールといったものを作る。
これらは牛以外の動物の飼料として使用することが出来る。
一方、牛については、頭部や脊椎などの特定危険部位は焼却処分に回る。
ここだけは絶対に他に流出させてはいけないということであろう。
残りは脂肪分を分離するのは同じだが、牛肉骨粉は用途制限が厳しい。
焼却処分しかなかった時代もあったようだが、現在は肥料か魚用飼料に使える。
ただ、間違えて牛が食べてしまうと大変なので、いろいろ条件が付いている。
というわけで たんぱく質 というのはかなり有効活用されている。
飼料などにならない たんぱく質 がアンモニアになって喜ばれるといいが、
現実にはアンモニアになって困っているというのが悩ましいことである。
なんとかならんものか。