新しい気象警報の意味

今回の台風は早々暴風域がなくなったが、かなりの降水量が予想されていて、

これは雨台風ですねということで、洪水・浸水・土砂災害が怖いと。


この6月から気象警報・注意報の仕組みがいろいろ変わった。

警報・注意報にはレベル2~5のレベルが付くことになった。

(レベル1は警報・注意報の可能性を示す早期注意情報のこと)

「レベル2大雨注意報」「レベル3大雨警報」のような言い方になる。

大雨警報はもともと大雨特別警報というのが存在したが、

この特別警報は「レベル5大雨特別警報」に移行している。

そしてこの間を埋める「レベル4大雨危険警報」というのが追加された。

「危険警報」という新たな概念が導入されたわけである。


警報の名前も変わっていて「土砂災害警報」「氾濫警報」というのがある。

もともと洪水警報は河川氾濫のリスクを示す警報なので、氾濫警報は同じ意味であろうと。

一方の土砂災害警報だが、これは従来は大雨警報で扱われていたものである。

以前の大雨警報は土砂災害と浸水害の2つのリスクを示す警報で、

おそらく昔は単純に雨量で警報を決めていたのだと思う。

しかし、土砂災害リスクは土壌雨量指数、浸水害リスクは表面雨量指数という別の指標で測るようになっていた。

気象庁のWebサイトなどではどちらのリスクで出た警報かわかるようになっているが、

一般に大雨警報と報じられるときにはわからなかった。

これが土砂災害リスクを示す警報は明確に分離されたわけである。


今回目立ったのが「レベル4氾濫危険警報」「レベル5氾濫特別警報」である。

氾濫特別警報は和歌山県の古座川で発表され、これは実際に川が溢れたことを表している。

氾濫危険警報は東京都の都市河川で続々発表されたのが目立った。

従来の洪水警報には特別警報がなかったことも考慮すると、

この2つの警報は一見すると全く新しい警報に見えるが、案外そうでもないらしい。


レベル3~5というのはそれぞれ「高齢者等避難」「避難指示」「緊急安全確保」に対応する。

実際に避難指示などを出すのは市町村の判断ではあるのだが、その基準となる情報は昔からあった。

特に河川の氾濫リスクについては、河川ごとに水位の基準がある。

水防団待機水位・氾濫注意水位・避難判断水位・氾濫危険水位である。

そして実際に氾濫が発生したことを示す氾濫発生情報がある。

市町村は避難判断水位を超えると「高齢者等避難」を発表し、

氾濫危険水位を超えると「避難指示」を出し、氾濫が発生するると「緊急安全確保」を出す。

すなわち警報という名前でないだけで、危険警報・特別警報相当のものは昔から存在したのである。


どうしてこれまでは洪水警報とは別立てだったのか? それは根拠となる法令が違ったからだそう。

気象警報は気象業務法、水位ベースの水防警報は水防法による。

水防警報の主体は国土交通省または都道府県となっている。

しかし指定河川洪水予報という重要な河川の予報は気象庁も関与している。

これを気象警報と横並びで見せるようにしたというのが6月からの変化である。

「氾濫危険警報」「氾濫特別警報」は以前から相当する水防警報はあったんですね。

そしてそれを元に避難指示など発表されていたと。


ところで従来の洪水警報は市町村単位で発表されていた。

新たな氾濫警報は河川単位で発表されることになる。

氾濫リスクを示すという意味では河川単位は理にかなってそうだが、

実は従来の洪水警報は水防警報の対象にならない中小河川の氾濫リスクも表していた。

それは知らなかったのだが、実はそうだったらしい。

なので氾濫警報の対象にならない河川は氾濫リスクを表す流域雨量指数を新たな大雨警報に反映することにしたそう。

すなわち新たな大雨警報は、従来の大雨警報・洪水警報から、新たなな氾濫警報・土砂災害警報を引いたものに相当する。


とはいえ、大雨警報(浸水害)と洪水警報の線引きはわかりにくかったんだよね。

どちらも家屋などが浸水するリスクを表しているという点では同じである。

雨水が排出できなくて浸水するリスクを表すのが大雨警報、

川が溢れて浸水するリスクを表すのが洪水警報というほど単純ではなく、

雨水が排水できない原因が川の水位にある場合は洪水警報として扱われていた。

浸水被害がどのようにして起こるかというメカニズムはかなり複雑である。

比較的規模の大きな河川が溢れるリスクは氾濫警報、

それ以外の浸水リスクは小河川の氾濫も含めて大雨警報と整理したわけですね。


レベル4にあたる「危険警報」は新たな概念に思えるが、

氾濫危険警報は水防警報には相当するものが昔からあったし、

土砂災害危険警報も土砂災害危険情報というのが以前からあり、

これが土砂災害警戒区域の避難指示の基準とされてきた。

真に新しい概念は「レベル4大雨危険警報」である。

以前は浸水害のリスクに対して避難指示に相当するリスクレベルはなかった。

実際、どこからどこに避難するかなど考えられているかは疑問だが、避難に相当するリスクレベルは決めたと。


なお、レベル2~5が付加されるのは 氾濫・大雨・土砂災害・高潮 の4つのみで、

台風で発令されることの多い暴風警報・強風注意報はレベルは付加されない。

特別警報があってレベル5まで揃う警報・注意報がレベル付加の対象みたいですね。

慣れるまではいろいろ混乱もありそうだが……

氾濫・土砂災害は従来のリスクレベルがそのまま移行しているだけなので、単純にわかりやすくなったと言えそう。