1セントも1円・5円・50円も作らない

アメリカで1セント硬貨の製造が停止されたが……

トランプ米大統領は2月、「無駄」なペニーの鋳造を停止するように命じる(略)

財務省によると、造幣局はコレクター向けバージョンのペニーについては数量限定で生産を続ける。

(最後の1セント硬貨を鋳造、232年の歴史に終止符 (Reuters))

って完全な製造停止じゃないんですね。

となれば実質的には日本の1円玉と同じような状況なのかも。


ご存じの方もおられるだろうが、1円玉は2011~2013年と2016年以降はコレクター用のセット分しか製造されていない。

貨幣に関するデータ (造幣局)

2014・2015年で消費税率変更対応のため製造数を増やしたのだが、

1円玉についてはアテが外れたということで余剰が続いている。

摩耗する硬貨を補充する必要が生じれば製造される可能性はあるが、

最近の動向を見る限り、当面はそうならないのではないか。


他の硬貨はどうかという話だが、2022年以降は5円・50円も同様である。

こちらも2010~2013年はセット分の製造しか行われていなかった。

ただ、その後はしばらくまとまった量の製造が行われていた。

さっき消費税率変更で1円玉はアテが外れたと書いたのだが、

むしろ10円・50円は想定より需要が多かったようで、製造数を増やしたという。

従来100円刻みで精算していたものが10円単位で精算することが増えたのが理由だとされている。

直近では500円玉が新硬貨への切替で比較的製造量が多い。

ただ、前の500円硬貨切り替え時は年6億枚ペースで製造していたが、

今回は年3.5億枚前後の製造なので当時よりはスローペースである。


製造数という観点で見ればこうだが、流通量という観点ではどうだろうか?

これは日本銀行の通貨流通高のデータをみればわかる。

通貨流通高 (日本銀行)

貨幣の種類ごとに金額ベースで書かれているから額面で割れば枚数がわかる。

紙幣も含めて枚数ベースで見て一番多いのは1円玉なんですね。

直近の数字で363億枚もある。でもそんな使うか? それが余剰ということである。

次いで10円玉が186億枚、100円玉が106億枚、5円玉が101億枚、500円玉が44億枚、50円玉が42億枚である。

紙幣は1万円が109億枚、千円が46億枚、5千円が7.6億枚となっている。


この数字の比率と自分の財布を見比べてどうだろうか?

一番かけ離れているのは1万円札ですね。普段は千円札ばっかりなので。

まぁ1万円札は最高額紙幣ということで特有の用途がありますからね。

硬貨は10円以上はそんなもんかと思うが、1円玉と5円玉の流通量が感覚よりえらく多い。

額面が安いので金融機関に持ち込まれず滞留しているのか、金融機関にはあるが払い出されず滞留しているのか。

実際に決済に使われなければダメになる硬貨も少ないわけですからね。


そうなれば気になるのは流通量の経年変化である。

2004年を基準に各通貨の流通量の変化を調べた。

なぜ2004年を基準にしたのかというと2千円札の流通のピークだったから。

2008年には2004年比29%まで減少し、現在は19%である。

流通量の変化にはいくつかのグループがある。

まずは50円以下、これは2000~2006年でピークを向かえて以後減少している。

2025年は2004年比で1円が89%、5円が81%、10円が90%、50円が92%である。

50円玉は2020年に向けて一時増加したが、また減少に転じている。


一方で硬貨の中でも100円・500円は2021年まで増加傾向が続いていた。

100円玉は2004年比で2021年に110%、2025年に105%、

500円玉は2004年比で2021年に141%、2025年に123%と。

直近の減少はキャッシュレス化なんだろうが、顕著に見えたのはかなり最近のことである。

なんで100円・500円のニーズは近年まで多かったのかというと、

自動販売機でのニーズが多かったから? という話がある。

確かに自動販売機までキャッシュレス化が進んだのは近年かもしれない。


紙幣だが2千円は例外として、千円・5千円は増加を続けている。

2025年に千円札は2004年比134%、5千円札は163%である。

一方の1万円札だが、2023年まで増加を続けて2004年比173%に達したが、

そこから減少に転じ2025年では167%になっている。

これは明確な理由があって金利上昇である。これで預金される現金が増えたからだと言われている。

でも、それは千円・5千円にはあたらないんですね。


少額決済ほど電子マネーへの移行が進んでいることは確かで、

おそらく1円・5円は新規製造しなくてもかなり賄えるのではないか。

ただ、金融機関に預けようとすると手数料が重い話はあるんですけどね。

これが障壁になって還流しなくなると困るんだけどどうでしょうかね。

10円・100円も新規製造せずに済むほどキャッシュレス化が進むかはわからないが、

直近の傾向を見る限り、そうなる可能性もあるのかな。


1セント硬貨の製造費が無駄かというのは単純には言えないが、最近は銅が高いんですよね。

すると大概の硬貨が影響があるわけだが、銅の割合が高い少額硬貨は影響が大きい。

日本だとなんといっても10円玉である。

10円玉は青銅だから銅95%程度だが、おおざっぱに銅4.5gの地金の価格は7.8円である。

5円玉も真鍮なので影響は大きいが、直近は製造していないので、実質10円玉だけの問題である。

もっとも国全体としては500円玉の通貨発行益が大きいわけですけどね。


1セントは亜鉛に銅メッキなので、銅価格の影響自体は小さいが、

この方式になったときより亜鉛の価格も上がっているので、地金だけで1セント近いという状況ではあるらしい。

果たして他の硬貨の製造費など考えても効果的なのかはよくわからないけど