球団が選手の保有権を持つということ

ちょっと気になった話なんだけど……

海外FA権は保有しておらず、球団はポスティングによる移籍は認めない方針。不可欠な戦力として全力で慰留するが、再び夢を追うことを望めば、自由契約になることが現実的だ。

(ソフトバンク・有原航平、流出も メジャー再挑戦の意思 海外FA権なく球団ポスティング認めない方針…自由契約の可能性 (スポーツ報知))

ソフトバンクホークスの有原選手がMLBへの移籍を考えているが、球団は容認していないが、

このまま交渉決裂すると自由契約になって結局はMLBに移籍されてしまう? という話が書かれている。


先日、誰それが戦力外通告という話がニュースで様々報じられた。

戦力外通告というのは制度的にはやや複雑なものである。

各球団は12月頭に保留選手名簿というものを提出する。

来季も契約を継続する意思がある選手を記載するのだが、ここに記載された選手は他球団との契約交渉が禁止される。

現在、支配下契約にある選手のうち、保留選手名簿に記載しない選手には事前に通知をすることが求められている。

これが戦力外通告……と単純に言えないのが難しいところである。


というのも契約を継続する意思があっても、保留選手名簿に書けない選手がいるんですね。

それは大幅減俸を予定している場合。

一定以上の減俸を行う場合は自由契約にしなければならないルールがあり、

保留選手名簿に書けないので、事前の通知が求められている。

それをきっかけに他球団との交渉を行う選手もいるが、減俸を受け入れて契約を継続する選手もいる。

(減俸合意が得られれば保留選手名簿に書くのかもしれないが)


保留選手名簿に書かれた選手は球団に保有権があるという扱いで、

国内外を問わず他の球団に移籍することはできない。

この保有権というのは任意引退した選手も3年間(かつては永久に)存続する。

万が一、引退選手が現役復帰することがあれば、元の球団に戻るか、

元の球団の了承を得て自由契約になる必要があるという意味なのだが……

本当に引退であればどうでもよさそうだが、そうでもないのである。

アマチュア野球の選手・指導者に転身するには自由契約にならないといけないというルールがあるから。

このため最近は引退選手は自由契約にすることが多いようである。


冒頭に書かれたように本人に継続する意志がない場合でも、

球団が保留選手名簿に書けば、他球団との交渉はできない状態が続く。

その場合でも野球界以外に転身する自由はあるため、職業選択の自由はあるとは言えるが……

とはいえ、現実的にこういう状況が続くことは考えにくいように思う。

そもそもなぜ戦力外通告が行われるのか? というところに立ち返ると支配下契約できる人数が限られているからである。

球団が契約の意志があると表明し続ける限り、その分の支配下契約枠は空けておかないといけない。

現実的に契約できないと判明した時点で、その選手を自由契約にしてその枠を他の選手との契約に回すのが合理的である。

なお、保留選手名簿に書いた後で自由契約にすることを「契約保留権放棄」という。


有原選手は現在ホークスに所属しているが、元は日本ハムファイターズにいた。

2020年のオフ、球団の了承を得てポスティング制度でMLBに移籍したが、

うまくいかず自由契約、日本に出戻りすることになった。

この際、ファイターズは再契約のオファーを出したそうである。

ただ、それより好条件を出したホークスに所属することとなったという。

このことを「有原式FA」という人もいて、制度上の欠陥と言う人もいる。


NPB球団間の移籍にフリーエージェント制度を使う場合、

年俸が高い重要度の高い選手が移籍すると、移籍先の球団から移籍元の球団に補償金の支払いが必要で、

さらに人的補償として移籍先の球団から選手を引き抜くこともできる。

人的補償による移籍を拒否すると資格停止処分となり試合に出場できなくなる。

引退するなら関係ないので、これが時に問題になることはあるが。


一方、MLBなど外国への移籍について、フリーエージェント制度を使うと一切補償がない。

この点でポスティング制度は移籍金の支払いがあるという点で移籍元球団には有利である。

このためフリーエージェントで移籍される前にポスティングでの移籍を認めて金にするという戦略がある。

ただし、お金持ちのチームにとっては移籍金もはした金である。

そう、ソフトバンクホークスはお金持ちなのでポスティング制度の移籍金なんていらないのである。


日本人のMLB球団移籍というのは近年では珍しくもないが、

1995年にMLBに移籍した野茂英雄さんは近鉄バファローズといろいろ揉めた末、

バファローズを任意引退して、MLBに移籍するということをやっていた。

当時はルールが未整備のため、NPB球団の保有権は外国まで及ばないということでこうしたらしい。

すなわち日本に出戻りする場合はバファローズと再契約するか、了承を得て自由契約になるかだと。

現在はこういうことはできない。保有権は外国に及ぶし、外国球団に移籍すると保有権は失う。


裏返せば保有権を主張し続ければ、選手の意図によらずMLB移籍は封じられる。

任意引退であれば契約がなくなっても3年間は保有権は継続するが、

任意引退は本人の意志によるものなので球団側から押しつけることはできない。

(円満引退であってもアマチュア転身の意向があれば自由契約にせざるを得ない)

保留選手名簿に記載し続ければよいが、支配下契約枠には限りがある。

このためどこかで自由契約を認めざるを得ない。

ひとたび自由契約を認めればMLBはもちろん、他のNPB球団との契約も自由であり、

ポスティング制度や国内のフリーエージェント制度のような補償制度はない。


選手を過度に縛るのも考え物だが、球団同士の秩序というのもある。

「有原式FA」なんてまさにそうだけど特殊なケースではどうもうまくいかないと。

冒頭で書いた話も、通常のルールでは想定されない話ではあるが、

果たしてそういうこともあるのだろうか?

そもそも契約更改かポスティング制度でのMLB移籍か、通常考えられる選択肢でお互い折り合えればよいのですが。