明日から外国の事業所に出張なのだが、特にどことは書かないことにしているが、
ヨーロッパであるということぐらいは書いておいてもよいかと。
そんなヨーロッパへの業務旅行にまつわる話として、付加価値税(VAT)の払戻というのがある。
付加価値税というのは日本で言えば消費税にあたる税金の一般的な言い方である。
付加価値税とよばれるのは、売上-仕入の差額に税率をかけたものを各事業者が納める仕組みによるものだと思う。
アメリカは州ごとに税制が異なることもあって、小売事業者が販売時に課税する売上税だが、
世界的には多段階で課税を行う付加価値税が一般的である。
国境をまたいだ物品の取引を行うと、輸出元の国にとっては免税取引で、
輸入時に輸入側の国で付加価値税が課税される仕組みである。
現在の日本では旅行者(正確には非居住者)が輸出するものは、
店頭で販売する時点で免税販売して、出国時に免税購入記録票を提出すれば良い。
旅行者にとっても販売店にとっても楽な仕組みではあるのだが、
免税販売された物品が実際に輸出されない事例が問題になっている。
世界的に見れば、旅行者の輸出免税は出国後に払い戻す方法が一般的で、
日本の空港でも「VAT Refund」と書かれた窓口があるのはこのため。
ただ、業務出張においてはこちらはあまり関係がなくて、
当地でのサービスに対する付加価値税の還付の方が重要である。
具体的には宿泊費・飲食費・交通費など、今回のケースではほぼ宿泊費ですかね。
一般的な旅行者は滞在中のサービスに対する付加価値税の還付は受けられないが、
外国の事業者が業務上の支出を行った場合は還付が行われる。
なんで? と思うかも知れないけど、
例えば、日本で100万円(以下すべて本体価格)の商品を100個販売するにあたり、
材料費など国内事業者から1000万円の課税仕入れを行い、
外国から1000万円輸入し、外国出張で500万円を費やしたとする。
100万円に対する消費税は10万円、ということは消費税を1000万円受け取る。
国内での仕入れには100万円の消費税を払うし、外国から輸入する部品も輸入時に100万円の消費税を払う。
ゆえにこの差額の800万円を消費税として納税する。
ところが外国出張時の航空券は免税でよいが、現地の滞在費には当地の付加価値税がかかっている。
これは日本の消費税の課税仕入れに当たらないわけである。
このため国際的には外国事業者の業務上の支出は付加価値税を免税にするのが一般的な考えだという。
ただ、日本では外国事業者相手でも国内で完結するサービスには消費税を課税することになっている。
このため外国事業者相手のサービスへの付加価値税免税制度がある国でも、
日本の事業者には認めないという対応も多いようである。
ただ、ヨーロッパと韓国は還付できるらしいんですよね。
なので会社名を記載したインボイスを持ち帰ってきて、代行業者に投げることで、付加価値税が還付されるそうである。
とても複雑な仕組みで自力で還付を受けるのは難しいらしい。
ちなみにヨーロッパでは課税事業者間の物の取引では、売り手側は付加価値税を受け取らないそう。
ヨーロッパでは国ごとに付加価値税の税率が異なる一方、国境での税関手続きがないことが多い。
このあたり煩雑であることから、課税事業者間では付加価値税のやりとりをせず、
買い手側で一括して納めるという対応になっているよう。
結果的にはアメリカの売上税に近い方法になっているのかも。
ちなみに日本でも旅行者向けの免税制度は2026年からは出国後に還付する方式になる。
出国時に輸出したことを確認すると、そのデータが販売店に送信され、
販売店では輸出された分を輸出取引と記録して、消費税の差額を何らかの方法で返金するという流れになる。
具体的な返金手法は規定されていないが、なにしろ外国に出国してしまっているので、
現実的には代行業者を介しての返金という形になるのかなと。
めんどくさいんですよね。だからやりたくなかったんですよね。
でも、百貨店などが輸出免税で多額の追徴課税をされている状況で、
免税販売を行う店舗にとっても受け入れざるを得なかったと。