棋士以外の日本将棋連盟会長

日本将棋連盟の新しい会長に清水市代女流七段が就任したという。

日本将棋連盟 新会長に清水市代女流七段 女性の会長は初めて (NHK)

女性の会長は初めてと書かれているが、

「棋士」以外で会長になるのも現在の棋士の制度が確立してからは初めてのことである。


女流棋士が連盟の運営に関与できるようになったのは2011年から。

それ以前は正会員となる条件は棋士であることだった。

ご存じの方もおられるだろうが、女性でも条件を満たして四段に昇段できれば棋士になれる。

しかし、今まで女性で棋士になったものは存在しない実情がある。

2011年というのは日本将棋連盟が公益社団法人に移行した年でもある。

どうも公益性認定のプロセスで女性の正会員がいないことが問題になったようである。

アマチュアや女流棋士など、連盟に属して将棋を指す女性はいるにもかかわらずである。

現実的に女性が連盟の運営に参加できる方法を考える必要があった。


方策としては2つあったんじゃないかなと思う。

1つは棋士以外で連盟に所属している人が代議員を介して参加するという方法。

代議員の集まりを一般社団法人の社員総会として扱う規定はよくみられる。

女性の棋士が現れる時期は見通せないが、女性の代議員は現実的だろう。

もう1つが女流棋士もプロなのだから、棋士同様に正会員にするという方法、

こちらの方法が採用されたのだが、女流棋士全てが正会員に列せられたのではなく、

「女流棋士(日本将棋連盟所属、タイトル獲得者又は女流四段以上)」となっている。


「棋士」は四段以上のことを指し、四段昇段をもってプロ入りとなる。

一方の女流棋士は女流2級でプロ入りとなっている。

棋士(奨励会含む)の段級と、女流棋士の段級は単純比較はできないが、

数字から受ける印象としても女流棋士はずいぶん門戸が広そうである。

実際、プロの中でも女流棋士の実力差はかなり大きいそうである。

なので女流棋士全てを棋士同様として扱うには抵抗があったのだろう。


そこで拠り所にしたのがタイトル戦で、女流タイトルの獲得者は棋士同様に正会員になるとしたわけである。

実際には女流タイトル保持者でも四段の棋士と互角以上に戦うのは難しいようだけど。

女流棋士の昇段規定ではタイトル1期で女流三段とされているから、

タイトル獲得者でなく女流四段以上とは勝数規定での昇段者が対象なのだろう。

あと「日本将棋連盟所属」と書かれているのは、女流棋士には日本女子プロ将棋協会所属のものもいるため。

2007年に一部の女流棋士が独立し、いろいろ対立もあったようだが、

現在は相互に棋戦に参加しているようである。


この条件を満たす女流棋士は2011年時点で9名だったという。

今は女流四段以上の現役女流棋士が15名、引退女流棋士がおそらく5名で、計20名かな。

棋士に比べればだいぶ少ないが、ある程度の参加は進んだと言える。

そんな中で今回会長となった清水女流七段は2017年より理事となった。

会長は理事の中から理事同士で選ぶことになっている。

前任の羽生九段は2021年に理事に就任すると、即座に会長に選ばれた。

羽生九段の会長就任は将棋会館の建替という大きなプロジェクトのためというのが大きく、

一方で本人としては将棋に注力したかったようで1期2年で早々退任した。

その後任として長く理事を務めてきた清水女流七段が選ばれたというのが実情のようだ。


以前は女性が棋士を目指す場合、女流棋士とは両立できない仕組みで、

リスクが高いと見られていたところもあるかもしれないが、

現在は女流棋士でありながら奨励会に所属することも可能で、

女流棋士が棋士になった場合は引き続き女流棋戦に参加できると規定されている。

なので、棋士として振るわなくても、女流棋戦で活躍できる余地はある。

さらに女流棋士のトップに棋士の資格を与えるというアプローチも導入される。

女流最高位「白玲」を通算5期で「クイーン白玲」、棋士の権利も付与…日本将棋連盟が制度変更へ (読売新聞)

女流タイトルで最も格式の高い白玲の価値を高めるための取り組みらしく、

ハードルは高いが、女流棋戦の結果のみで棋士になれるのは新しい仕組みである。


観点は様々だが、本来は将棋というのは老若男女問わない頭脳スポーツなので、

奨励会で四段に上がれなかった人でも様々な道を用意しているということである。

連盟の運営という観点では女流棋士も条件を満たせば参加できるし、

棋戦参加という観点では女流棋士枠、アマチュア枠とある棋戦もあるし、

それを通じて棋士編入の道もあるわけですよね。

そうはいっても大半の将棋指しには遠すぎる話ですけどね。