地元馬を囲い込みたい凱旋門賞

以前、凱旋門賞の日本からの遠征馬最大2頭に輸送費補助が導入される話を紹介した。

凱旋門賞が日本馬を招致したい理由

JRA馬券発売の分配金目当てなのかもしれないし、2400mの世界チャンピオン決定戦を死守するためかもしれない。


さらに前哨戦の優勝馬に登録料免除・優先出走権が与えられるそうである。

フランスギャロが新発表!凱旋門賞の現地前哨戦を勝った馬は“高額の追加登録料が不要”に! (JRA-VAN for World)

この前哨戦っていうのはニエル賞、フォワ賞、ヴェルメイユ賞のことだと思っていた。

凱旋門賞直前のこれらのレースで頭角を現したとしても、

事前に凱旋門賞への登録がされていなければ、高額の追加登録料が必要になる。

もちろん追加登録する馬も多かったが、やはりハードルが高い。

なので、登録されていない馬でも追加登録料を免除しましょう。

タイトルからすると、そういう趣旨だと思ったのである。


でも、それだけじゃないんですよ。

上記に加え、登録料免除・優先出走権の特典が与えられるレースには、

仏ダービー(ジョッケクルブ賞)、仏オークス(ディアヌ賞)、サンクルー大賞、パリ大賞、ジャンロマネ賞がある。

サンクルー大賞は上半期総決算のレースに位置づけられる。

パリ大賞は7月に行われる2400mの3歳限定戦である。

昔は3100mのロワイヤルオーク賞が3歳限定戦でセントレジャー相当だったのだが、

1979年から4歳以上でも出走できるようになっている。

その頃にはパリ大賞が三冠最終戦という位置づけになっていたようである。

凱旋門賞と同じコースで行われるので、この点でも先につながるレースと考えられている。

時期や距離は違うけど、日本で言うところ菊花賞みたいなもんだね。

ジャンロマネ賞は8月に行われる2000mのレースで、

去年までは4歳以上の条件だったが、今年から3歳でも出走可能になるそう。


というわけで日本に例えるなら、

ダービー・オークス・宝塚記念・菊花賞・秋華賞・天皇賞(秋)の優勝馬に、

ジャパンカップの優先出走権と登録料免除が与えられると言っているようなものである。

ジャパンカップは2週間前に登録して30万円払うだけだし、

直近のG1で勝ってるような馬が除外されるのはまずないですけど。

ただ、凱旋門賞は5月に登録するのを忘れると、高額の追加登録料が必要なので、この特典の恩恵は結構大きい。

で、実は登録料免除というのは追加登録に限った話ではなく、

事前に登録していた場合でも、前哨戦を勝つと登録料が返還される。

それいる? という気もするけど、本来通り登録した人が不利にならないようにでしょうね。


目的は地元勢の囲い込みでしょうね。

本来は事前に凱旋門賞登録してダービーだの出走して欲しいけど、

それをしなかった場合でも追加登録なしで凱旋門賞に出られますよと。

このようにすることで凱旋門賞の出走馬が充実することに期待していると。

日本馬の遠征補助に比べればずいぶん堅実な話じゃないかと思った。


さっきも書いたが日本では3歳馬5大特別競走登録(クラシック登録)以外は、

G1でも2週間前の登録でよく、登録料はせいぜい30万円である。

クラシック5競走にしても、200万円払えば追加登録ができる。

秋に行われる菊花賞は追加登録での出走も目立つレースである。

凱旋門賞の追加登録が12万ウロ(約1960万円)と高額なのを考えれば安いですよね。

菊花賞は10着でも出走奨励金(賞金)が400万円出ますからね。

ちょっと自信があれば200万円払って出ますよね。


指定競走優勝馬に登録料免除を与える仕組みは、

アメリカのブリーダーズカップのBCチャレンジでも見られる。

日本では安田記念がBCマイルの指定競走で、2023年にはこの権利を使ってソングラインが参戦している。

他にも日本にはBCチャレンジの指定競走はあるけど、なかなか見合ってないかな。

もっともBCチャレンジの優勝馬は出走登録料は免除になるが、

現役馬登録料は免除にならないので、ここが障壁になることがある。

北アメリカ産以外であれば、父親の種牡馬登録があれば産駒登録は免除されるが、

北アメリカ産で当歳時に産駒登録していない場合、あるいはそもそも父親の種牡馬登録がない場合、高額の現役馬登録料が必要になる。


日本では登録料免除というのは響かない施策ではあるが、

奨励金などの形で地元の実績馬を集めようというのはある。

有馬記念・宝塚記念のファン投票上位馬の特別出走奨励金ですね。

あと、本来は外国の実績馬を集めるための制度ではあるが、

ジャパンオータムインターナショナルの指定外国競走優勝馬の褒賞金は、

例えば、ドバイシーマクラシックを優勝した日本馬がジャパンカップの出走する場合にも適用される。

2022年のシャフリヤール、2023年のイクイノックスがこの転戦をしていて、

結果として日本の実績馬の囲い込みに役立っていることもある。

今年はダノンデサイルがこの権利を持っていますが、果たしてどうでしょうか。


さて、凱旋門賞といえば、日本からレガレイラは行くだろうという話だが、

日本ダービーを優勝したクロワデュノールも登録している。

日本では三冠の権利を持っていれば、よっぽどでなければ菊花賞へ向かうだろうが、

クロワデュノールは皐月賞で2着惜敗し、三冠の権利を持っていない。

まだどうするという話もないのだが、果たしてどうなんでしょうね。

そりゃ日本のダービー馬が凱旋門賞に来ると言えば、フランスギャロは喜ぶでしょうけど。

そうはいっても順当に言えば菊花賞だろうという気もする。