トキの島からの帰り道

今日は天気が悪くなりそうだが午前中は比較的よいらしいので午前になんとか詰め込もう。

というわけで宿から両津に向かって走っていく途中でいくつか寄り道していく。


ところで昨日も書いたが佐渡はけっこうな都市だが、どこが行政の中心なのかというと難しい。

歴史的には金山で栄えた相川なのだろうし、事実上の玄関口で2004年の合併前から市だった両津かもしれない。

今は佐渡市という1つの市になったから覆い隠されているが、意外に難しい話である。

佐渡市は合併後の市役所を市域のほぼ中心という理由で金井に置いた。合理性なんですかね。

途中に佐渡警察署の立派な庁舎があったが、合併後に両津と相川にあった警察署を集約したもので、合併前の真野町にあたる。

離島という事情もあり、運転免許センターも併設している。

途中「――駅前」と書かれた広告があり、佐渡に駅なんてあるんかいなと思ったら、

「畑野駅前」という交差点があり、え!? と思ったらバスの待合所があった。バスの駅ということらしい。

鉄道小荷物の取扱所ということで駅と呼ばれていたらしい。実際に鉄道があったわけではない。


ずんずん走ってたどり着いたのは新穂地区にあるトキの森公園である。

トキの繁殖・放鳥の拠点になっている施設である。

佐渡といえば日本で野生のトキが最後までいたところであり、現在は野生復帰の拠点として知られる。

「トキふれあいプラザ」というギョッとする名前の施設があるが、別に触れられるわけではない。

ガラス越しだが、ここまでトキに近づいて観察できる施設はここぐらいなのだろう。

トキの独特な色合いとか、生まれて間もないヒナに餌を与える様子などがみられた。


展示施設ではトキ絶滅にいたるまでの経緯や、その後の野生復帰の経緯が紹介されている。

昨日、トキ絶滅の背景には農薬があると書いたが、実はその前にも重大な問題があって、

それが燃料源として山林の伐採が進んだことだった。一昔前はハゲ山だらけだったというがそれが問題だった。

これによりトキが越冬できる場所が減ってしまった。そこに圃場整備と農薬という農業の近代化が重なり追い詰められたという。

あと乱獲も問題で、羽根かと思ったら肉目的というのも大きかったらしい。滋養効果があると言われたが、そこまでおいしいものではなかったそう。

ともあれトキが越冬するにも苦労する中で、1968年に幼鳥のトキを1羽捕獲する、結果的に日本最後の野生産トキとなった「キン」である。

1981年に野生トキ5羽の一斉捕獲があり、人工下での繁殖に舵を切るよりだいぶ前に捕獲されていた1羽である。

結果的にはキンを含む日本のトキは子孫を残すことはできなかったのだが、キンのおかげでトキの研究が進んだ側面はある。

人工繁殖するにもトキを知る必要があって、そのためにクロトキなど他のトキの仲間の飼育もしていたという。(外で展示されていたのはその名残)


1981年に中国・陝西省で絶滅したと思われていたトキが発見され、人工繁殖での保護に取り組むとなったとき、

佐渡でのトキの研究成果がもたさらされ、日中間でトキの交換をしてペアリングも行われた。

あと、能登で捕獲されたトキも佐渡に来て繁殖に取り組んだ。

結果的には中国産のトキの子孫が中国・日本・韓国で野生復帰を果たしたわけだけど、

そこには佐渡でトキを守るために尽力した人たちの努力があり、その起点はキンの捕獲なんですね。

トキの保護に国境はないと書かれていたが、現場で尽力した人こそそういう思いは強いんだろうな。

野生復帰にあたってはハゲ山を林業で回復させ、水田を餌場として利用できるように冬季湛水・減農薬などを行っている。

2016年には野生下でのトキの巣立ちがみられ、佐渡には500羽ぐらいのトキがいるらしい。


近くに加茂湖と佐渡空港があるので少し眺めて両津港まで向かうことに。

加茂湖はイカダが多く見られたがカキ養殖が盛んらしい。いかにも汽水湖だが、治水のために開削する前は淡水だったらしい。

佐渡空港は高台にあるなぁぐらいの印象だが、ここから成田までの便が飛ぶ日が来るんだろうか。

拡張計画もあるらしいが、周辺の農地をだいぶ削らないといけないから大変なのかもなぁ。

そんなこんなで走って行くと両津港に到着。立派なフェリーターミナルがある。

ここまで雨に遭わずによかったよかった。

徒歩客も多く、島の玄関口だなと感じる。自動券売機で2等乗船券と手荷物券を買って乗り込む。


バイク担いで船に乗り込むと、ここに置いてと案内された。船内に「輪行袋置場」というのがいくつか設定されているよう。

スーツケースを持っている客も多かったが、車両甲板への階段室付近に並べられていた。

さて、どこに居座るかと中央付近の船内案内を見て、2等室の一部に「禁煙」と書いてあると思って、

そんなの客室禁煙なのは当たり前……と思ってよく見ると「禁酒」と書いてあった。禁酒!?

確かに心当たりはあって、直江津~小木のフェリーでも1区画占有して酒盛りをしているグループ客がいた。

グループの中には騒ぐんじゃないと戒める人もいたけど。

と、こんな具合に船で酒盛りするとうるさくなりがちなので、それなら静かに酒盛りしろと言うのが普通の考えである。

ところがなぜか佐渡汽船は静かに乗りたい人のために「禁酒室」を用意したわけである。禁酒室以外の光景は怖くて見なかったけど。

酒造りが盛んな新潟県、酒豪も多い話は聞くけれど、まさかフェリーまでこんなことになっているとは。


今回乗船したのは おけさ丸、1993年から就航している。わりと年季が入っているのはそのためか。

船内にはゲームコーナー、軽食売場もある。ゲームコーナーってのが時代を感じるけど。

2等はすべてじゅうたん席である。イベントプラザのテーブルに居座る人もいるんだろうけど。

1等には椅子席もあるようで、降りるときに案内所の等級変更の掲示を見たら、1等チェア席は×マークが付いていた。

ちなみに2等が2970円に対して、1等は5030円、椅子で快適に乗れるなら払いますかね。

極端に混んでるわけでもないので、2等室でゴロゴロ寝ている人もいるけど、壁沿いに座ってタブレットPCで読書などしていた。

しかし離島航路というよりは本州~四国~九州のような本土間を結ぶカーフェリーの趣である。


新潟港に到着して、バイクを担いでフェリーターミナルにでる。

ここでバイクを組み立てるが、空模様はどうかと見てみるとパラパラ降っている。

このぐらいで距離も短いのでカッパは上だけでいいかと準備をして出発、ちょうどフェリー接続のバスがでた直後である。

港と新潟駅はちょっと離れている。普通はバスで往来する距離だが、当然のことながら自走である。

おそらくバスと同じルートで行ったんじゃないかな。というかほぼバスの後ろを走ってたので。

どうせバイクなら南口(こちらの方が新幹線に近い)に直行するルートを通ればよかったなと後で思ったけど。

新潟に来たのは2016年以来、このときは万代口バスターミナルはバックで入るバスターミナルだったのを覚えている。

当時、在来線の高架化事業が動いており、2022年に全面高架化、2023年に高架下のバスターミナルができた。

その高架下のバスターミナルを見るように歩道を押し歩き。当たり前だがバスターミナル内は一般車走れないので。

一般車乗降場は南口しかないんですね。そういう点でも南から入るべきでしたね。


上越新幹線は意外と本数が少なく、というか大宮~東京が混みすぎで各方面に割り振れる本数が限られてるんだよな。

乗れたのはフェリーの到着からおよそ1時間後のとき号である。だいぶ余裕あったんだよな。

普通に考えたら大宮まで乗るところだが、熊谷だと1ランク特急料金が下がるので。

それ以外のメリットもある。大宮より熊谷の方が乗換がコンパクトということである。

この頃、関東平野ではひどい雨だったが、到着する頃には小康状態になっているはず。

そんなことを思いながら乗換をして最寄り駅に到着したときには、すでに雨はあがっていた。

バイクを組み立てて、すぐ作れる夕食の食材と明日の朝食を買ってから帰宅。


いろいろ反省点はあるけれど、佐渡という着眼点はそれはそれでよかったんじゃないかな。

広い島なので2泊してもよかったかもしれないが、連休の狭間でいろいろ苦心したところもあるので。

その分を上越泊に置き換えたというのが実際のところですね。上越もそれはそれで行くべきところだったので。