ICOCAは導入しやすい?

調べごとをしていたら三岐鉄道北勢線がICOCAを導入したことを知る。

そこまで驚くことではない気もしたが、三重県だと当然のようにICOCAなんだなと。

いや、別にそういうわけでもないのかもしれない。


というのもICOCAは北海道のバス会社までも導入しているのである。

北海道ボールパーク(エスコンフィールドHOKKAIDO)へのバスを運行する北海道バス他が導入している。

この北海道バスという会社は東大阪市に本社を置く大阪バスの関連会社で、

大阪バスは東大阪周辺の路線バス用にコミュニティバス用に開発されたICOCA端末を搭載している。

IC改札機 (JR西日本テクシア)

当初は現金(北広島駅発着以外はきっぷの購入が必要)かクレジットカードのタッチ決済のみで混乱が多かったが、

大阪バスで使ってるの持ってくればいいのでは? と共同運行各社とともに導入したという。

市営地下鉄のSAPICAは使えないが、KitacaやSuicaでも問題なく使える。

システム上は大阪バス扱いなので北海道なのに大阪バスの乗車と記録されるがそれはそれ。


鉄道でも小規模事業者にとって導入しやすいシステムがあるようで、

  • 四日市あすなろう鉄道 (2021年)
  • 富山地方鉄道(市内電車) (2021年, 車載器のみ)
  • 伊賀鉄道 (2024年)
  • えちぜん鉄道・福井鉄道 (2024年, 車載器併用)
  • 万葉線 (2024年, 車載器のみ)
  • 伊予鉄道 (2024年:市内電車:車載器のみ, 2025年:郊外電車)

車載器で導入している鉄道会社も多いんですね。

JR西日本は境線(米子~境港)を皮切りに車載器でのICカード導入をしている。

バス用のシステムとは違って、駅の改札機で入って車載器で出るとか、その逆もできる。

えちぜん鉄道・福井鉄道はそれをフル活用しているわけですね。

富山地鉄と伊予鉄の市内電車は均一制だから出口だけ置いている。


三重県って基本的にJR東海管内だけど、ICOCAなのかと気になった人もいるかもしれないが、

四日市あすなろう鉄道(内部・八王子線)と伊賀鉄道(伊賀線)も三岐鉄道北勢線も元近鉄の路線である。

県内外との移動は近鉄が主であり、それに接続する支線として使われるのが大半。

近鉄はPiTaPa加盟社で、定期券をICOCAで売るため、ICOCAは近鉄の駅で買える。

残高で乗るならTOICAもICOCAも関係ないが、定期券用に必要なのがICOCAなのは大抵の利用者には好都合である。

伊予鉄道については、愛媛県内のJRはICカード未導入だが、JR四国は香川県内ではICOCAを導入している。

ちなみに伊予鉄は元々あったICい~カードの置き換えでICOCAを導入する。


そんなICOCAだが、JR西日本管内に限らないということでこういう話がある。

モバイル ICOCA が進化!~TOICA・SUGOCA のモバイル IC サービス開始~ (pdf) (JR西日本)

モバイルICOCAでJR東海・JR九州エリアのIC定期券が買えるようになるというころである。

現在はJR東海の駅で定期券を買う場合はTOICA、JR九州の駅で定期券を買う場合はSUGOCAが必要だが、

モバイルで購入する場合はいずれもモバイルICOCAにするということである。

残高での乗車はICOCAで両社とも対応できるので定期券だけの問題である。


駅窓口の集約が進む中で定期券をモバイルで買えるようにようにしたいが、

そのためのシステムを自社で構築するのは大変負担が重い。

モバイルSuicaに次ぐシステムは出てこないのではないかと言われている中で、

モバイルPASMOとモバイルICOCAが登場したことは大変驚かれたものである。

このシステムに東海・九州も相乗りすると言うことである。

ちなみに四国は香川県内の主要駅のみにICOCAを導入していることもあり、IC定期券の制度自体がない。

ICOCAで定期券を発売する私鉄・公営各社も相乗りするかもしれない。


一方で小規模事業者の定期券については定期券情報をカードに書き込まず、

Webで購入を可能とする iCONPASS というシステムが導入されていくようだ。

これの初導入となったのが北勢線で、三岐鉄道は北勢線利用者に定期券の移行を促している。

北勢線は三岐鉄道への移管後に各駅に自動改札機を導入してきた。

システム更新のタイミングでICカード専用機に置き換えたいようだ。

ICカード専用で簡素だが、扉の付いた改札機が導入されたのはそのためだろう。

おそらくこのシステムはすでに導入している各社にも展開されるのではないか。


Suicaも地域連携ICカードとして各地のバス会社(芳賀・宇都宮LRT含む)とタイアップしたカードを出しているが、

これはこれでけっこう重たいシステムだなとは思う。

北海道バスのようにちょこっと導入したいというニーズにはICOCAの方が適した方法があるのかもしれない。

ちなみに広島電鉄(電車・バス)もPASPY廃止後はコミュニティバス用の車載器を電車・バスに搭載する。

PASPYの代替は同社の提唱するMOBIRY DAYSが本線ではあるものの、

現実問題としてICOCA他を利用したいニーズは多いだろうと導入するそうだ。

均一制ならそこそこ使えるとは思うのだが、アホらしいとは言われていた。

なお、広電以外の大半のPASPY導入社(アストラムラインなど)はICOCAを主に導入することになる。


SuicaとICOCAの戦略はけっこう違うんですよね。

JR西日本は特急をICOCAとチケットレス特急券で利用できることを1つのターゲットとしていて、

この観点でエリアを大きく広げているし、切れ目なく利用できる仕組みになっている。

次いでそれらの路線に接続する鉄道・バス各社にもICOCA導入を促していて、

ゆっくりではあるが、その輪は広がっているように見える。

一方のSuicaは県庁所在地クラスの都市の鉄道・バスをカバーするのを優先しており、

盛岡などは鉄道・バス揃ってSuica導入というストーリーである。

どっちがよいという話でもないとは思うのだが、

やはり主要駅だけでもICカードがやってくることは大きくて、

それが呼び水になってだんだん拡大しているのは見てもわかる通り。