パスポートのTypeの謎

この4月で勤続10年、今月で東京都に転入してから10年、

ということは転出前に取得したパスポートが期限切れになると。

一方で今月から新デザインのパスポートに切り替わるという話がある。

パスポートのデザイン変更、3月24日申請分から…見る角度によって消える顔写真 (読売新聞オンライン)

ただ、僕が持っているパスポートは3月24日には期限が切れてしまう。

パスポート申請時に有効な日本国旅券を呈示できれば戸籍記載事項証明書の提出は不要なのだが、

期限が切れてしまうと戸籍が必要だし、いろいろ手間が増えてしまう。

なので、現行デザインのもので更新することになる。

偽造防止対策はより強化されるが、機能的には全く変わらないわけだし。


ところでこのパスポートの写真を見て気になったことがあった。

それが顔写真ページの「型/Type」の欄に「PP」と記載されていること。

パスポートのこのページの中でもよくわからない項目の最たるものだが、

従来はパスポートは全てPであるという説明になっていた。

これがPPになるんだけど、それってどういう意味?


パスポートは全部Pなら「型/Type」という項目はなぜあるのか?

という疑問への答えとしてはパスポート以外の書類を想定したものだというのがある。

よく言われるのはビザは「V」を使うというものである。

いろいろ調べてみるとこの手の書類はICAO(国際民間航空機関)のMachine Readable Travel Documentsの規格に沿ったものだという。

Doc 9303 Machine Readable Travel Documents (ICAO)

ここで定義されているのは下記の書類である。

  • Machine Readable Passports (MRPs)
  • Machine Readable Official Travel Documents (MROTDs)
  • Machine Readable Visas (MRVs)
  • Emergency Travel Documents (ETDs)

machine readable zone(MRZ)に記載された文字をOCRで読み取れることをMachine Readableと呼んでいるようだ。

当然、日本を含む多くの国ではICチップを埋め込んだパスポートが発行されており、

Machine Readable Travel Documentsではこの部分も規定しているわけだけど。


で、MRPsの必須記載事項の1つとしてDocument Codeが存在する。

このDocument CodeはMRPsではPはじまりで最大2文字と規定されている。

なるほど。PでもPPでもMRPsの要件は満たしてるんですね。

その上でMRZに記載される文字の羅列、1行目の最初にDocument codeを記載することになっている。

確かに見本を見てみると PPJPNGAIMU<<… とPPから始まっていることがわかる。

現在の日本国旅券は P<JPNGAIMU<<… で P< から始まっている。(MRZで < は空白の意味がある)


で、どうもこのDocument codeは従来はPはじまりならなんでもよかったが、

今後は書類の種類によって2文字目を使い分けなさいというルールになるらしい。

PPは National/ordinary passport  ということで国民向けのパスポートである。

PEはEmergency passport、帰国のための渡航書あたりが該当しそうだが、

1枚ペラのETDsの場合はPUを使うようにと書かれている。どっちかですね。

PRは Refugee passport、難民旅行証明書かな……日本ではかなりレアですね。

PAはAlien passport、外国人向けのパスポート?

なんだそれと思うかも知れないが、有効なパスポートを持たない外国人に発行される再入国許可書が該当しそうである。

日本に滞在する朝鮮籍の人が外国に行く場合に発行されるのが典型例である。

韓国のパスポートを取得する要件が揃わない(このケースが多い)か、

持っているパスポートが「朝鮮民主主義人民共和国」発行のものであるか。

調べたら英語版のWikipediaに再入国許可書の見本画像があった。

Japan Re-entry Permit (Wikipedia)

MRZがP<から始まっているので日本発行のパスポートの一種ということがわかる。


MROTDsはカード状の渡航書類で、EU諸国の発行するIDカードなどで使われている。

EUではシェンゲン協定によりそもそも出入国審査がない国境も多いが、

アイルランド(かつてはイギリスも)のように出入国審査があったとしても、

EU加盟国の市民はパスポートではなくIDカードの呈示で通過することができる規定がある。

このための統一的な規格がMROTDsである。

中国の発行する回郷證(香港・マカオ籍の人の大陸渡航用)、台胞證(台湾籍の人の大陸渡航用)がMROTDsに該当しそう。

裏面に3行のMRZが存在して、ICチップを埋め込むことも出来る。

こちらもMRZの最初はDocument Codeからはじまり、A,C,Iはじまりで最大2文字となっている。

EUでは I< とかIDとかを使っている国が多いようだが、必ずしもそうではないらしい。


MRVsはビザで、MRZはVはじまりで最大2文字となっている。

パスポートに貼るサイズなので、だいたいパスポートと同寸法である。

まぁパスポートとかと比べると標準化の必要性は薄そうな気はするけど。


さて、新デザインのパスポート、機能的にあまり差はないと書いたが、

ちょっと使い勝手に差があるところもあって、それがICチップの埋め込み場所である。

従来はパスポートの中央ぐらいにぶ厚いICチップを埋め込んだページがあったが、

新デザインでは顔写真ページがプラスチック製になり、ICチップが埋め込まれる。

パスポートの冊子にICチップ入りのIDカードが綴じ込まれるのに近いな。


このため国立印刷局での製造に一元化され、交付までの日数が若干伸びるという。

ただ、日本国内での発行ならばそこまでの差はないかなという気はする。

どちらかというと在外公館での申請ですよね。

従来は主な在外公館では館内でパスポートを作ることができていた。

ICチップ入りのMRPはどこの在外公館でも発行できるわけではなく、

かつては非MRPのパスポートを発行する館もあったけど、

現在はそのような館では日本でICチップ入りのMRPを発行して送っているそう。

今後は全ての在外公館でその対応になるので、外国でのパスポート発行には相当な時間を要することになる。

それだけ製造するのが難しいということではあるのだが、

外国でパスポート入手に時間を要するのも不便な話だとは思う。