千鳥停車の使い道

「千鳥停車」というのが話題になっていた。

来年2月からの阪急神戸線のことらしい。


千鳥停車も明確な定義があるわけではないが……

一般的には複数の種別の列車が運行される場合、

上位の種別が停車する駅は、それより下位の種別も停車することが一般的である。

ところが、種別Aが停車してBが通過する駅、Bが停車してAが通過する駅がともに存在するケースがある。

このような場合、種別Aと種別B、どちらか上位か判然としないわけである。

とはいえ、こういうのは時間帯により使い分けるためであることも多い。

休日・昼間は乗換客の多い駅に停車し、ラッシュ時は通勤客の多い駅に停車する一方で乗換駅を通過するなど。

阪急電車だと京都線の特急と通勤特急がこの関係である。


ただ、路線によっては上記のような関係にある種別を同時に走らせることがある。

このような運行形態を千鳥停車と呼ぶのが一般的である。

千鳥のように種別Aと種別Bで交互に客を拾っていくからだろう。

千鳥停車といえば阪神電車と言われることがある。

確かに阪神電車は終日に渡って千鳥停車が行われている。

特急(直通特急)と快速急行の関係がそうなんですよね。(以下は平日朝以外の停車駅)

  • 特急・直通特急: 梅田・尼崎・甲子園・西宮・芦屋・魚崎・御影・三宮……
  • 快速急行: …… 尼崎・武庫川・甲子園・今津・西宮・魚崎・三宮

これだけ見るとどっちが格上なのかさっぱりわからないけど。

これにはやむを得ない理由があって、芦屋・御影には近鉄の8両編成が停車できないのである。

阪神電車に8両編成がやってくる

平日朝以外の尼崎~西宮では急行の停車駅と同じなので、基本的には急行と同格である。


どちらかというと阪神の千鳥停車としては「区間特急」がよく知られている。

朝ラッシュ時の梅田行きのみの運転だが、端的に言えば変な種別である。

  • 直通特急: ……三宮・御影・魚崎・芦屋・西宮・尼崎・梅田
  • 快速急行: 三宮・魚崎・芦屋・西宮甲子園・尼崎……
  • 区間特急: 御影・魚崎~芦屋~香櫨園の各駅・今津・甲子園・尼崎・野田・梅田

区間特急は魚崎~甲子園で通過するのはわずか2駅でほぼ各停なのだが、

その通過する1駅が特急・快速急行停車駅の中で強調した西宮駅なのである。

西宮駅の利用者は特急が利用できるので区間特急はあえて通過している。

一方でこの時間帯の特急は甲子園を通過する。区間特急はその穴埋めの役割を担っている。

西宮と甲子園で相補的な停車駅になっているわけである。


阪神と並んで千鳥停車で有名なのが西武池袋線らしい。

昼間は快速急行・急行・快速・準急・各停とこれらは整然と順序が決まる。

ところが朝ラッシュ時になると通勤準急と通勤急行という変則的な停車駅の種別が入り、

  • 石神井公園は通勤準急は通過、それ以外の一般列車は停車
  • 大泉学園・保谷は快速・急行は通過、通勤急行・通勤準急・準急は停車
  • ひばりヶ丘は通勤急行は通過、それ以外の一般列車は停車

この4駅は利用者の多い駅が団子になっているので、分散を図ったとみられる。

ただ、地下鉄直通は他の時間帯同様の種別であるなど、どれぐらい効果的なのかという疑問はある。

阪神ほどわかりやすいものではないってことだ。


阪急神戸線で千鳥停車と言われたのは、区間急行あらため快速が塚口通過になることを指している。

2025年2月22日(土)初発より阪急神戸線・宝塚線でダイヤ改正を実施します (阪急電鉄)

そもそも朝に10両編成で走っている通勤特急を8両化することが起点となっている。

8両編成になると新開地発着にできるので、神鉄・山陽からの乗換に便利と。

しかし、単純に減車すると西宮北口~梅田の混雑が大変になってしまう。

そこで朝ラッシュ時は通勤急行あらため快速は通勤特急に抜かれないようにする。

こうすることで快速と通勤特急で分散を図ることができると。

このために通勤特急・準急(今津線直通)が停車する塚口を通過することにしたと。

そもそも通勤急行は急行に利用者の多い武庫之荘を追加したものである。

両方停車するのではなく、塚口と武庫之荘のどちらかに停車するようにしたと。

夕方については特急を準特急という新種別に改め、塚口・六甲停車にする。

塚口と武庫之荘を準特急と快速で分担するという形になる。


千鳥停車は列車の混雑を分散させるという意味もあるが、

列車の停車駅の数を揃えて、追い越しを発生しにくくするという効果もある。

阪神の朝ラッシュ時の特急・快速急行・区間特急は芦屋~尼崎の途中停車駅が1駅・2駅・4駅と差が少ない。

阪急の 通勤特急・準特急・快速も西宮北口~十三で1駅停車という点では共通する。

こうなると追い越ししなくてもよくなるので混雑が分散できると。


わかりにくいのは難点なので、時間帯を絞っての実施になっていることが多いが、

よく考えて見れば時刻表を見て乗るような特急ではわりと一般的ですよね。

山陽新幹線の のぞみ号は姫路・福山・徳山・新山口から1~2駅選んで停車する。

これにより特定の列車が遅いとなることを防ぎながら、東京・名古屋まで直通で利用できるようにしている。

こういうのは選択停車って言われることが多いけど、考え方は同じだな。