大学の教員の区分として「講師」というのがある。
これの英語表記として”Junior Associate Professor”を使っている大学があるが、
あまり一般的な表記ではないのでは? という疑問を言っている人がいた。
そもそも、講師ってのが最近はあまり聞かないような……
常勤教員の階級としては 教授・准教授・助教で収まっているケースも多いようである。
このようなことになった背景としては2007年に助教という区分ができたことがある。
学校教育法の定義を見てみると、
- 教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
- 准教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
- 助教は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
- 助手は、その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。
- 講師は、教授又は准教授に準ずる職務に従事する。
2007年以前は、教授・助教授・助手・講師の4つが定義されていた。
助教授の定義は「助教授は、教授の職務を助ける」だった。
これを上記の定義に改めたわけだが、見てわかる通り 教授・准教授・助教 の定義はほぼ同じである。(下線部分が共通の文言)
さらに言えば、講師は「教授又は准教授に準ずる」なのでこれも同じ。
明確に違うのは「学生を教授し、その研究を指導し」という文言のない助手のみである。
2007年以前は実態としてこのような役割を持つ助手もいたのだが、
助教という役職が定義され、そちらに移行したという経緯がある。
すなわち、2007年以前は助手という階級があんまりだったので、
助教授に準じて教育・研究に従事する人に講師という階級を与える必要があったが、
2007年以降は准教授に準じて教育・研究に従事する人は助教でよいとなったと。
教授・准教授・助教という区分はアメリカの大学を参考にしたようで、英語表記もそれにならって、
教授はProfessor、准教授はAssociate Professor、助教はAssistant Professorとなる。
学校教育法の文言としては教授・准教授・助教・講師の定義はあまり差がないが、
大学設置基準ではそれぞれの職位に求められる資格があり、ここには差がある。
多くの場合は学位が重要だが、それぞれこのように定義されている。
- 教授: 博士の学位をを有し、研究上の業績を有する者
- 准教授: 修士の学位または専門職学位を有するもの
- 助教: 修士の学位、6年制の学士の学位、専門職学位を有するもの
- 講師: 教授または准教授になることができる者
教授は博士の学位が基本的に必須だが、それ以外は修士でもよいと。
なお、教授の条件を満たしていれば准教授以下の条件も満たす。
今どきは助教で採用される人もほぼ博士の学位持ってますけどね。
准教授と助教はあまり差はないが、助教は医学・歯学・獣医学・臨床薬学の6年制の学士でも許容という点では異なる。
これらの専攻分野では修士というのが存在せず、大学院は博士のみである。
ゆえにこれらの専攻分野にとっては准教授・講師も基本的に博士の学位が必要となる。
もっとも助教としての経歴があれば、准教授・講師への任用は可能である。
高専については講師の資格として「教授または准教授になることができる者」の他に、
高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)において教諭の経歴のある者で、かつ、高等専門学校における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者
というのが書かれている。高校の教諭の経歴があれば講師に任用できると。
これは高校年代の学生が在籍する高専に特有の規定かもしれない。
高校の教諭には専修免許状か一種免許状が必要で、それぞれ修士・学士の学位が必要である。
ということは修士の学位を持たない高校教諭は高専では教授・准教授・助教のいずれも満たさない可能性がある。
しかし、この規定があることで講師にはなることができる。
一般教科ではこれで講師に任用されている人がいるかもしれない。
冒頭の話に戻ると、講師というのは常勤教員としてはもはや一般的ではないが、
准教授に準ずる階級として存在することは問題ない。
教授・准教授・助教はアメリカの大学を参考に決めたので英語表記は堅いのだが、
講師の英語表記ってどうするのよ? という問題はけっこうあったらしい。
従来はLecturerという表記をする大学も多かったようである。
ただ、これでは准教授に準じて教育・研究に従事する意義が伝わりにくい。
それなら准教授と同じ Associate Professor でいいじゃないかと。
これが一番シンプルな解決策である。
でも、英語表記では准教授と区別が付かなくなるのは気になるなと、
その結果として ”Junior Associate Professor” という表記を使っている大学もあるという話のようだ。
気になって出身の高専の教員紹介を調べてみた。
パラパラめくっていると、博士と修士ばかりのようである。
一般教科だと学士もいるんじゃないかと思ったけど、なかなかないようだな。
高校教諭としての実績で講師になることはできるものの、
本来、助教や准教授の資格のある修士を優先したいのはそうだろう。
教授なのに学位が修士という人もいて、これは准教授としての実績で任用されているのではないかと。
専門学科の教員とかほとんど博士だと思っていたが、修士もちらほらいるんだな。
とはいえ修士も准教授レベルなら問題ないわけである。
講師という階級自体は存在するようだが、早々に准教授に昇格するようで、
講師として在籍している人の数はごく少ない。確かにそんな記憶があるな。