かなり驚いたのだが、JR各社で往復乗車券と連続乗車券の発売が終了になる。
もっとも帰りの切符を同時に購入するということ自体は今後も可能とみられ、
その場合は片道乗車券2枚を購入することとなる。
ただ、往復乗車券と片道乗車券2枚はいくつかの差がある。
600km超に適用される往復割引が適用されないことはもっともわかりやすい差異である。
とはいえ、これは600km超乗らなければ関係ないこと。
そうでない場合でも差異があり、それは有効期限である。
往復ともに片道乗車券の倍の有効期限となる。
100km以内あるいは近郊区間完結の乗車券の有効期限は1日(途中下車不可)だが、
往復にすると往復ともに有効期限が2日となる。途中下車不可なのは変わらないが。
このルールはJRに限らず往復乗車券としては一般的なルールなのだが、
これと違うルールを持っている会社があって、それが近鉄である。
近鉄の往復乗車券は往路は1日、復路は2日と決まっている。
近鉄は途中下車制度を廃止していることも考えれば、実用上の差異はないといってもよい。
少なくとも往路は出発日に使い始め、当日中に使い終わるはずだからである。
復路は往路と当日に使うか、翌日に使うかの選択肢がありますよと。
途中下車制度のない近鉄にとってはそれで済む話なのだが、
JRなど途中下車制度のある会社にとってはそうとも言えない話で、
例えば、大阪~倉敷は片道だと有効期限2日の区間だが、
これを往復にすると往復とも4日間有効となる。
金曜に大阪を出て、姫路で1泊、岡山で1泊、日曜朝に倉敷に到着し1泊、月曜中に大阪に戻ってくるというのは、
大阪→倉敷で見れば3日かかるので片道乗車券なら期限が切れるが、
大阪→倉敷→大阪で見れば4日に収まっているので往復乗車券は成立すると。
大阪→倉敷を途中下車して3日もかけることに合理性があるかはさておき。
もう1つ廃止になる連続乗車券についてはこれいらんなとは思う。
典型例の1つが往復でルートが違う場合。
金沢~千葉を往路は長野経由と復路は米原経由とすると、往復乗車券にはならない。
ついでに東京~千葉あたりが往復で重なるから片道乗車券にもならない。
このような場合は往復まとめて連続乗車券とすることもできる。
もう1つが折り返し乗車になる場合。東京→京都→大津は折り返し乗車になるから片道乗車券は出ない。
このような場合は東京→京都→大津の連続乗車券とすることもできる。
でも、どちらも連続乗車券でなければならない理由はないと思う。
特に割引もあるわけではないので、片道乗車券2枚に分ければよい。
東京→京都→大津のような乗り方はごく一般的な使い方だと思うが、
東京都区内→京都市内のきっぷを持って、山科~大津の乗り越し運賃を払っているのではないか。
こちらも有効期限の計算は2つの片道乗車券の合計になる点が異なる。
金沢~千葉は長野経由が4日・米原経由が5日なので全部9日有効、
東京→京都→大津は東京→京都が4日、京都→大津が1日で全部が5日有効となる。
だからどうしたという話だけど。
往復乗車券の制度廃止はこれがチケットレス化の妨げになっているからという指摘があった。
EX予約では新幹線だけで600km超になる区間で往復割引タイプの商品を出しているが、
在来線とあわせて使う場合など、乗車券で往復割引が適用できる範囲とは必ずしも一致しない。
この600kmというのがけっこう微妙なラインなんですよね。
その上、往復乗車券・連続乗車券には有効期限など特殊なルールがあるが、
これを片道乗車券2枚にしても実用上の差異は少ない。
購入時に往復の出発日をそれぞれ指定しないといけないぐらいか。
片道2枚の方が区間変更などの対応もしやすいので、それでいいよねと。
それにしてもJRから往復乗車券がなくなるのは衝撃的だな。
と思ったけど、普通回数券ももはやなくなってしまったからなぁ。
(通信制の通学回数券は残っているが)
これも割引があるがためにチケットレス化の妨げになっていたのは確かだが……
バラ売りなど好ましくない使われ方もされていたわけだし。
一方でICカード非導入区間では有用性はあったと思うところもある。
大半がICカード非導入のJR四国では「6枚回数券」という独自商品は生き残ってるわけだしな。
近鉄の往復乗車券の話を書いたが、近鉄こそ往復きっぷは全然売れてないと思う。
近鉄は券売機で往復は出せないはずで、買えるとすれば窓口だけ。
昔は必ず窓口できっぷを買う駅もあったが、無人駅化で券売機のない駅になってしまった。
JRだと今でも窓口できっぷを買う駅は地域によっては残ってるかな?
そういう駅で「○○まで往復で」なんて買い求める人はいるかもしれない。
あと、JRだと近距離券売機でも往復きっぷが出せるのは案外あるんだよね。
今後も窓口では帰りのきっぷを同時に買うことはできるだろうけど、
近距離券売機ではそうもいかないでしょうから。
でも、そもそも近距離券売機できっぷを買う機会が激減しているというね。