最近、空港の2本目の滑走路のことを話題にしているが、
那覇空港に新設されたB滑走路には特別な意味があるらしい。
那覇空港は忙しい空港である。
県外・県内の航空便が集中すること、航空自衛隊も利用することが要因である。
そんな空港で滑走路閉鎖なんてことになれば大変なことである。
そのため沖合を埋め立てて滑走路が新設されたのだった。
滑走路間を大きく離して同時着陸可能なオープンパラレルで作られたが、
空港南側にある瀬長島を避けた結果、オープンパラレルになったという事情があるらしい。
で、実は他にも目的があったらしい。
それが空港北側からILS進入できるようにするという目的である。
ILSは電波を利用して飛行機を誘導する装置で、悪天候時に役立つ。
日本ではジェット機が発着する空港では少なくとも1方向にILSを設置していることが多い。
松本空港のように地形的に付けられないためILSなしの空港もあるが……
風向きにより滑走路の向きを使い分けるので、風向きによってはILSをフル活用できない。
伊丹空港は稀に南向きに着陸となり、その場合はILSで接近後、滑走路を目視して反対に回るサークリングアプローチを使うが、
これが続くと大混乱になるというのは以前紹介したことがある。(cf. 風向き次第で飛行機が遅れる)
というわけで特に主要な空港では両側からILSを利用できるようにする。
ILSが両側に設置されている空港は 新千歳・成田・羽田・中部・関西・福岡・那覇 といったところだが、
実は那覇空港はB滑走路が新設されるまでは南向きに着陸する場合にはILSがなかった。
これはILSを設置するためのスペースが取れなかったのが原因らしい。
とはいえ代替策はあって、それがGCA(Ground Controlled Approach)という方式だという。
レーダーで地上から着陸機を捕捉して、滑走路近くまで誘導する方式である。
スイカ割りに例えられていたが、濃霧などで先が見えないとしても、
管制官からの細かく誘導されるので、それに従えば滑走路近くまで連れてきてもらえると。
悪天候でILSが利用できなくても、GCAを使えるのでなんとかなると。
GCAは旅客機で使われることは少ないらしいのだけど、軍用機ではけっこう使われているのだという。
飛行機側には特別な機器がなくてもよいので、軍用機には好都合だと。
先ほど書いたように那覇空港は自衛隊も利用する空港である。
こういう空港ではGCAを行う体制があるのでしばしば使われるようだ。
ただ、不慣れな旅客機も多いようで、それに伴うトラブルもあるようだ。
那覇空港 覆う特殊事情 「沖縄の縮図」識者警鐘 (琉球新報)
最近の旅客機は人工衛星を利用するRNP方式も利用できるので、
それで対応できるならRNPが優先だけど、GCAの方が悪天候に強いので、そちらを選ぶとこうなると。
ターミナルビルから見れば既設のA滑走路を横断しなければB滑走路は使えず、
この観点でもA滑走路で離陸、B滑走路に着陸がよいのだけど、
新設のB滑走路は両側にILSを付けられたので、B滑走路を着陸に使うという側面もある。
実際のところ、B滑走路は北側でしか往来できないので、
南向きに着陸すると北側に回り込んでターミナルビルに向かうので時間がかかる。
しかしこの向きこそA滑走路を使うとILSがないのでB滑走路のメリットが大きいのである。
このようなILSの穴は新千歳空港にもあった。
ターミナルビルに近いA滑走路は両側にILSが付いているが、
ターミナルビルから遠いB滑走路は北向きのみILS対応となっていた。
南風のときは風に逆らうように南向きに着陸することになる。
基本的には遠いB滑走路を着陸に使うが、悪天候時はILSが使えないのでそうもいかない。
その場合は離着陸ともA滑走路を使うので遅延が生じることになる。
さらに言えば新千歳空港は冬に滑走路を交互に閉鎖して除雪を行うが、
A滑走路を閉鎖すると着陸自体が困難になってしまうケースがある。
これは問題ということで2016年にB滑走路の南向きにILSが設置された。
AIS JAPANで那覇空港のGCAに関する記載を見るとこんなことが書いてある。
If radio communications with Naha Approach/Arrival/GCA are lost for 1 minute, or 5 seconds on final approach(PAR) …
GCAではアプローチ中は1分、アライバル中は5秒、管制官からの通信が入らなければ通信が失われたとして処置するように書かれている。
5秒に1回、向きを補正するための指示が管制官から入るということである。
そこまでする効果はどんなもんかという話なのだが、
GCAで誘導される場合は高度216ftで滑走路が見えればOKとなっているが、
RNPの410ftよりも粘れるし、ILSの263ftよりも若干低いという。
悪天候に強いという点ではGCAは強いということは確かである。
滑走路増設の効果としてあまり知られていなかった内容かもしれない。
今までもGCAがあったからその向きで悪天候でも着陸はできていたのである。
でも、より一般的な方法で対応できるようになったのはメリットだと。