子の氏の規定と夫婦別姓

夫婦別姓が実現したら子供の氏ってどうなるの?

という話を言っている人がいて、まだ決まった話があるわけではないが、

もしかしたらこうなのかもなと思った話。


民法では子の氏についてこう規定している。

第七百九十条 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2 嫡出でない子は、母の氏を称する。

両親が結婚している場合は父母の氏、結婚していない場合は母の氏となる。

実はこの規定には穴があって、それが母外国人・父日本人のケースで、

父が胎児認知している場合は出生届を提出するときに本籍地と氏を決めなければならない。

(子の氏は日本人父の氏でなければならない決まりはない)

いつ本籍地を指定するか


夫婦別姓が実現すると「嫡出である子は、父母の氏を称する」とは言えなくなる。

1つ言われているのは婚姻届の提出時にどちらか決めておくというのは考えられて、

折しも戸籍には筆頭人というのを決めなければならない。

結婚後の氏として夫の氏を選べば夫が筆頭人、妻の氏を選べば妻が筆頭人になる。

夫婦の氏は従来通りとしても、どちらか筆頭人と選ぶ必要はあるのだから、

子の氏は筆頭人の方になりますよと。これは理にかなった話である。


ただ、思ったのだけど、上の規定は特殊なケースを除けば子の氏は母の氏なんですよね。

特殊なケースというのは父日本人・母外国人で結婚している場合と、離婚後に嫡出推定が働いた場合である。

ということは父母の氏を1つに決めた場合はそちらを採用し、

そうでない場合は母の氏を採用しますよという規定の方がすっきりしそうである。


ところで上記のルールで母の氏に決まった場合でも、裁判所の許可を得て父の氏を称することはできる。

第七百九十一条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

このルールは両親の離婚後に適用されることが多いように思う。

離婚により夫婦の氏は元に戻るが、子の氏はそのまま変わらない。

しかし、それだと実態に合わないケースがあるので、その場合は裁判所の許可を得て変更できると。

ただ、そもそも両親が未婚の場合でも、裁判所の許可を得て父の氏にすることもできる。

第2項は両親の結婚前に生まれた子は届出だけで夫婦の氏に出来るということですね。

このとき提出する届を入籍届という。わかりにくい名前の届だ。


夫婦別姓の場合は常に「子が父又は母と氏を異にする場合」にあたる。

だから両親が結婚中でも適用されるようになるかもしれない。

裁判所の許可が必要なのでそれなりの理由がないとできないだろうが。

ただ、それは好ましくないと制限がかかる可能性はある。


子の氏の扱いによっては夫婦別姓なんて使い物にならんという話にもなりかねない話ではある。

僕はずっと夫婦別姓には懐疑的で、夫婦のどちらも氏を変えられないとは思えなくて、

夫が氏を変えるケースがもっとたくさんあっても不思議はないんじゃないかと。

夫に名字を変えさせたと妻がパッシングを受けるのを恐れているだけでは?

とはいえ、夫婦で氏を揃えられないがために、結婚による恩恵が受けられないのもそれはそれで考え物。

その点ではあってもいいのかもしれない。

でも、結局選ばれないんじゃないの? とは思うんですよね。

子の氏の扱いによってはなおさらそういう懸念はある。