内閣府特命担当大臣と○○担当大臣

なんだこれ? というニュースなのだが……

行政効率化へマスク氏起用 米新組織トップ、歳出削減―トランプ氏 (JIJI.COM)

トランプ新大統領が「政府効率化省」を新設し、その代表としてイーロン・マスク氏とビベク・ラマスワミ氏を任命する予定だという話。

政府効率化省ってなんやねんという話だが、英語表記でDepartment of Government Efficiency、

略してDOGEとなるというのがポイントで、マスク氏とDOGEと言えば、ドージコインである。

他の省庁と同じDepartmentという表記だが、法律の規定のある省庁とは異なる。


日本でも政権の意向で国務大臣のポストが新設されることはある。

議院内閣制の日本では国務大臣は基本的には国会議員だが、

アメリカは大統領制なのでこのあたりの事情が違うのはある。

国務大臣は内閣総理大臣を筆頭に、法務大臣など省庁に対応して大臣が設けられているように見えるが、

それ以外の大臣というのも様々存在する。

その代表格が内閣官房長官である。

内閣官房の責任者に見えるのだが、制度上の責任者は内閣総理大臣であり、

内閣官房長官は「内閣官房の事務を統轄し、所部の職員の服務につき、これを統督する」国務大臣である。


内閣府の組織というのはこのような形で大臣が置かれることが多いよう。

まず、内閣官房長官・デジタル大臣・復興大臣・国家公安委員会委員長がそうで、

これらはすべて 内閣官房・デジタル庁・復興庁・国家公安委員会(警察庁)という内閣府の組織に対応する。

そして内閣府特命担当大臣というのもそうなのだという。

内閣府特命担当大臣(○○担当)という形で任命されるのだが、

内閣府の組織に応じて○○の部分が決まっていて、下記で★を付けた担当は必ず設置しなければならないことになっている。

  • 防災担当★: 中央防災会議
  • 沖縄及び北方対策担当★: 沖縄振興局, 北方対策本部
  • 金融担当★: 金融庁
  • 消費者及び食品安全担当★: 消費者庁
  • こども政策担当・少子化対策担当・若者活躍担当★: こども家庭庁
  • 経済財政政策担当: 経済財政諮問会議
  • 規制改革担当: 規制改革推進会議
  • 地方創生担当: 地方創生推進事務局
  • 知的財産戦略担当・クールジャパン戦略担当: 知的財産戦略推進事務局
  • 科学技術政策担当: 総合科学技術・イノベーション会議
  • 原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当: 原子力損害賠償・廃炉等支援機構
  • 宇宙政策担当: 宇宙開発戦略推進事務局
  • 原子力防災担当: 原子力防災会議
  • 男女共同参画担当: 男女共同参画会議, 男女共同参画局
  • 海洋政策担当: 総合海洋政策推進事務局
  • 経済安全保障担当: 政策統括官(経済安全保障担当)
  • 共生・共助担当: 政策統括官(共生・共助担当)

上記以外にも担当組織はあるかもしれないが代表的なものを書いた。

アイヌ政策担当だけは内閣府の組織に見つからなかった。


わかりやすいのは内閣府特命担当大臣(金融担当)で内閣府傘下の金融庁の担当大臣である。

こども家庭庁についてはこども政策担当・少子化対策担当・若者活躍担当と分けて表記されているが、

実際はこの3つの担当は兼務する形になっている。(内閣府設置法第十一条の三でまとめて定義されているので兼務しか想定されていない?)

その理屈で言えば内閣府傘下のデジタル庁の担当大臣は「内閣府特命担当大臣(デジタル担当)」とかになりそうだが、

これは別の法令の規定でデジタル大臣という役職になっている。

内閣府特命担当大臣のポストはある程度自由に増減できるのだが、

上記のように内閣府の組織と紐付く必要があると考えられているようだ。


で、厄介なことにこれとは別の担当大臣というのも存在する。

内閣法の国務大臣の規定では「行政事務を分担管理しない大臣の存することを妨げるものではない」というのが存在し、

内閣の役割分担の中で省庁に紐付かない大臣を置いてもよいとなっている。

それが「○○担当」という役目を与えられた国務大臣である。

(厳密には内閣官房長官なども行政事務を分担管理しない大臣にあたるが、実態は上で書いたように内閣府の組織に対応している)

これはその時々の状況で新設されたり消えることが頻繁にある。


例えば「国際博覧会担当」というのがそれに該当する。

これは来年の大阪・関西万博に向けた取り組みを担当する大臣で、万博後はなくなる役職である。

これは内閣官房の国際博覧会推進本部に対応している。

総理大臣の意向で新設されたといえば「防災庁設置準備担当」で、

これも内閣官房の防災庁設置準備室に対応している。

内閣官房の中で組織を新設するのがもっとも柔軟性が高いということで、

内閣府特命担当大臣ではない ○○担当大臣 というのは内閣官房の組織に紐付いているようだ。

その理屈で言えばアイヌ政策を担当する組織って 内閣官房アイヌ総合政策室 らしいので、

内閣府特命担当大臣(アイヌ政策担当) というのはちょっと変な気がするのだが、

政治的な事情もあるのかこのようなことになっている。


冒頭に書いたトランプ氏の政府効率化省(DOGE)新設のようなことを、

日本でやるとすれば防災庁設置準備室のように内閣官房に設置するのが手っ取り早く、

その上で担当の国務大臣を設けるということは考えられる。

それは省庁の代表者としての国務大臣とは違うものであると。

もっとも国務大臣には定数があり、最大で19人と規定されている。

このため内閣府特命担当大臣やその他の担当大臣は兼務が多くなっている。

内閣府特命担当大臣(金融担当) は金融庁が財金分離によりできた経緯からか、財務大臣との兼務になることが多い。

内閣府特命担当大臣(経済安全保障)に経済安全保障担当を任命するという、

同じことを2回行っているようにしか見えないものもある。

前者は内閣府の経済安全保障担当で、後者は内閣官房の国家安全保障局に対応するという差があると思われる。


議院内閣制の日本と大統領制のアメリカを比較することはできないが、

自民党のベテラン議員の処遇に困り、大臣の役職を順次与えているような話もあり、

国土交通大臣に公明党の議員の任命が続いている状況への不満もあるとか、そんな話も見た。

限りある国務大臣のポストに、自民党のベテラン議員をパンパンに詰めたい意向は明らかである。

内閣府特命担当大臣(○○担当)は一応内閣府の組織に紐付くものと考えられるが、

それに大臣を任命するかどうかというのは内閣総理大臣の判断によるところもあるし、

それ以外の○○担当大臣に至っては総理大臣の決めるままということではないかと思う。

とはいえ総枠は決まっているので、兼務だらけになるんですけどね。