連休明けの今日は博物館など休みが多いので、それならと考えた目的地は青山高原、
ここも公共交通だけで行くのはとてもとても……
というわけでバイク畳んで電車に乗ってやってきたのは西青山駅である。
周辺に民家もなく、すさまじい秘境駅として知られるが、青山高原の最寄り駅である。
とはいえ、ハイキング客にとっての最寄り駅という側面の強い駅である。
西青山駅はほとんどの一般列車は停車するものの、今は昼間帯の一般列車は1時間1本の急行のみ。
西青山駅のホームからバイクを入れた袋を持ってゆっくり降りていく。
駅にはICカード専用の自動改札機が置かれている。便利になったもんだな。
乗車券回収箱の横に何か装置があるので、なんだろうと見ると、クレジットカード読み取り機だった。
近鉄では先月29日から生駒ケーブルと柏原駅を除く全線全駅でクレジットカードのタッチ決済に対応した。
全線全駅というのは西青山駅も含むのである。言われて見れば当たり前か。
駅の出口までなんとか運んだところでバイクを組み立ててスタートである。
駅を出てまず走るのは国道165号線、交通量が多いと怖いなと思ったがそこまででは。
国道も上り坂だが、ここは20km/h付近を保って走行できるのでほどほど。
さっき西青山駅はハイキング客にとっての青山高原の最寄り駅だと書いたが、
東海自然歩道などのハイキングコースは車道のある道路とは別に整備されており、国道を歩くことは基本的にないようだ。
東海自然歩道の歩道橋をまたいで少し行くと青山高原の入口となる交差点がある。
けっこう立派な入口だが、この道路は有料道路事業で整備されたのである。
ただ、早々無料開放されてしまったらしい。料金徴収に見合わないほど利用状況が悪かったらしい。
青山高原道路はカーブは多いが緩やかでつづら折りの道という感じはなく走りやすい。
ただ、勾配がきつい。国道は20km/hを保てていたが、分岐後はだんだん苦しくなってくる。
青山高原へのバイク旅、最大の懸念は標高差である。
西青山駅付近の標高は307m、近鉄に乗ることでけっこう標高を稼いでいる。
ここから上り坂が一段落する三角点駐車場まで8.2kmと距離はそこまでではないのだが、
三角点駐車場の標高はなんと741m、標高差434mをこの距離で駈け上がるのである。
標高差で言えば大月(360m)~富士吉田(771m)よりも大きいのである。こっちも大概だが。
これはヤバいのでは? と思ったのだが、電池1本使い切ってもここまでいければ、あとは大きなアップダウンはない。
とはいえ、連続勾配は電池が苦しくなってくるようで、最後の方は10km/hを切る有様。
交通量が少ないのでマイペースに走れるのはいいけど、やはり厳しい旅である。
無事に三角点駐車場まで来て、人もバイクも一休み。
少し霞んでいてはっきりわからないところはあるが、伊勢湾まで見えているようである。
おそらく津・鈴鹿の市街地は見えていて、もしかすると四日市あたりまで見えてるのかも。
眺めが良い三角点付近は風が強くて寒いが、この風の強さにはいわれがある。
この先に山頂のある笠取山は、風が強くて笠が取れることにちなんだ命名である。
そしてこの風の強さを利用した施設が周辺に広がっていて、それが風力発電所である。
青山高原一帯は少なくとも西日本では最大の風力発電地帯である。全国でも最大かもしれない。
三角点付近からは南東向きを除いてどこを見てもおびただしい数の風車が見える。
風力発電への期待というのは昔からあるが、立地条件が難しく、適地とされても環境面の課題から実現しないケースも多い。
そんな中で青山高原の風力発電というのは1999年から開発が進み、現在は89基にも達する。
年間発電量は34000万kWh、津市の一般家庭の電力の8割を賄える数字だという。
いずれも中部電力のグループ会社のシーテックが関与している。
どうして青山高原一帯にはこれほどに風力発電が行われるようになったのか?
「久居榊原風力発電施設 駐車場」とかかれた古ぼけた看板の先にある駐車場にバイクを停め、
その先にある「さかきばら風の館」というガラス張りのプレハブの建物で紹介されていた。
実は青山高原一帯には風以外にも好条件が揃っていて、1つが送電線が通っていたこと、
そしてもう1つが道路が通じていたこと。ここまで走ってきた道路はずっと2車線なので大型風車の搬入にも適する。
さらに言えば最初に作られた久居榊原風力発電施設は当時の久居市(現:津市)の事業だった。
風力発電で町おこしという思惑もあったのかもしれない。地域の理解もあったということだ。
あとで確認したところ、この建物は元々風車のあった跡地に作られたようで、
1999年から運用していた風車4基は撤去、大出力の風車2基で代替されたとのこと。
風力発電施設一帯は関係者以外立入禁止なので遠巻きに見ることしかできないが、
いくつかは道路沿いにあるのである程度近づいて見ることは出来る。
道路にしても駐車禁止なので、じっくり見るわけにはいきませんが。
さすがに近くでは風切り音が聞こえるが、発電所にしては静かなものである。
導入時期によりいろいろなタイプがあるようだが、近年導入のものは1基で出力2000kW程度という。
そんなのをたくさん並べているのだから、風次第とはいえ相当な発電量になるわけだ。
さて、この一帯はふるさと公園という公園になっているようで、沿線に駐車場が設けられ、そこから公園に出入りできる。
実は青山高原一帯はレストランも何もない。見つけた唯一の供食施設は三角点付近の飲料の自動販売機1つだけ。
寒かったので帰りに温かい飲み物を買って一服してたが。
冒頭に青山高原道路について有料道路事業で整備されたと書いたが、当時はリゾート開発への期待も大きかったようだ。
沿線に別荘地の看板が見えたのもそのためだが、その別荘地は入口が軒並み封鎖されている。
ごく一部がオートキャンプ場として活用されているが、リゾート開発としては頓挫したと言わざるを得ない。
昼食としてあらかじめ買っておいたパンを食べていたが、どうにもわびしい。
木々が生い茂ってしまったからか公園からの展望はあまりよいとは言えない。駐車場付近が一番眺めがよいのが実情か。
すすきの丘 というのにススキがないなと思ったら、赤トンボの丘 にはそこそこススキがあったり、
なんとも不思議な覚えをしながら散策していた。
2車線道路の終わりにあるのが航空自衛隊の笠取山分屯基地、レーダーのための基地だそう。
青山高原では自衛隊車両がそれなりに走ってるが、この基地があるから。
今では風力発電の山という印象が強いが、かつてはレーダーサイトの山と思われていたようだ。
丸いレーダードームが置かれているところこそ笠取山山頂なのだから。
自衛隊基地こそ遠巻きに見るしか無いわけで、ここらで引き返しである。
さて、帰りはほとんど下りなら電池は全く大丈夫だろうと。
時刻表を見て、これでスムーズに下ると西青山駅でだいぶ待ちになるだろう。
そこから青山町駅あたりまで走ってもいいんじゃないかということで、下り始めた。
下りはとにかくスピードが上がりすぎないように注意して走って行く。
カーブは多いが急カーブが続くことはなく、普通に注意して走れば大丈夫である。
国道に合流後もずっと下り坂が続く。時計を見て西青山駅前を通過。
ちなみに西青山駅は国道に面してあるが、一見して駅前とわかりにくいと思ったのか、←西青山駅という看板がある。
まだまだ下り坂は続き、平地に出てくると「上津駅口」というバス停がある。
上津駅も本数は西青山駅と変わらないので、まだ走って行く。
国道は川沿いを走るが、この川こそが木津川である。
西青山駅付近を通過して30分弱、青山町駅、本数は増えるが結局同じ電車になるだけかも。
電池は持った。さすが下りばかりなら大丈夫である。
と、こんな青山高原の旅だった。
思ったより何もないところだったが、風力発電の先進地としては見ておくべきところかもしれない。
帰ってきて調べたのだが、青山高原一帯に89基の風力発電所というが、
このうちウインドパーク笠取は国道163号線(長野峠)周辺にあるため、だいぶ場所は異なる。
さらに北側でも風力発電の開発計画があるようで、かなり広範囲に広がっている。
当初は青山高原道路沿いに少し広げれば風車が設置できたところ、なかなかそうも言えなくなってきているように見える。
それだけ期待の大きい地域だと見るべきなのだろうか。