昨日はオリンピックの男子サッカーで日本vsスペインの試合があって、
U23日本代表は準々決勝敗退と相成ったのだった。
メンバーも揃わない中でさすがにスペイン相手では大変である。
結果自体はそんなもんかという感じだが、いくつか物議を醸した審判の判定があったが、
その1つが かかとオフサイド である。
予め言っておくと、この判定自体はルールに沿ったものではある。
ただ、こんなところまでVARで発見する必要があったのかという話である。
ゴールに背を向いた状態でスペイン選手に囲まれた日本の細谷選手がゴールにキックしてネットイン、
ところが前のキックの時点でかかとがスペイン選手より前に出ていたことがVARで発見された。
相手陣内で守備側チームのゴールから2番目の選手(通常はゴールキーパー以外で最もゴールに近い選手)に対して、
身体のいかなる部分でもその選手より前にあることをオフサイドポジションという。
オフサイドポジションにいる選手がボールを蹴ったり、
ボールを蹴った時点でオフサイドポジションにいる選手がプレーに関与するとオフサイドの反則になる。
この定義には沿っていることは確かである。ただ典型例とはだいぶ異なる。
VARなしならスーパープレイという話で話は済んだのではないか。
この話とは直接関係ないのだが、オフサイドのルール変更が検討されている。
その案の1つとして言われているのがヴェンゲルルールである。
オフサイドに大幅なルール変更の可能性…”ヴェンゲル式”導入を国際サッカー評議会が検討か。どのように変わる? (Goal.com)
身体のいかなる部分でも前にあれば、というのを身体の全体が前にあれば、に変更するという案である。
従来きわどいとされていたものは全てセーフになるのはもちろんで、
イメージ図にあるように、相手よりある程度ならゴール側に出ても許容されるということで、
その分、攻撃的なサッカーになるのではと期待されているルール案らしい。
このルールが検討される背景には現代のサッカーは得点が入りにくいという事情もあるのだろう。
オフサイドで取り消されるゴールの多さを考えれば、
こういうゴールもある程度は有効なものにしたほうがいいのではないか。
従来のオフサイドの考え方を生かしながら緩和できる手段として、
少しでも出ていればというのを、完全に出ていればという方法を考えたと。
大枠で見れば相手選手よりゴール側でボールに関与してはいけないという考えは変わらないのだし。
ところでオフサイドってルールはどこから来たんでしょうね?
オフサイドというルールはフットボールでは共通的に持っている考えである。
日本で多く行われているフットボールには、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどがある。
ラグビーではボールを運ぶ手段は基本的に手で持って走ることである。
フットボールは蹴ることから来た言葉だと思っていたが、足で走って運ぶことから来た言葉という説もある。
サッカーはこの中では手を使うことが厳しく制限されたフットボールだが、
仲間同士でボールをパスして前進するのはどちらかというと邪道で、
走りながらボールをドリブルするほうが正攻法のボールの進め方なんですね。
ラグビーではボールを前に投げたり(スローフォワード)、前に落とす(ノックオン)ことは一律禁止、
キックにしてもキック時点でその選手より後ろにいた選手しか受けられない。
サッカーではパスを回して前進すること自体は禁止されていないが、
相手選手より前に出てボールを受けることはオフサイドということで禁止しているわけだ。
ただ、あまりにこれに厳密ではあまりにチャンスを作りにくいという考えもあると。
とはいえ、これが本当に期待したような効果を得られるかは懐疑的な声もある。
後退して守備を固める戦略をとれば、攻撃の手が薄くなるからである。
ヴェンゲルルールが提案されてしばらく経っているが、
なかなか実現に向けた動きが見えないのは真に期待する効果が得られるか判断が付かないのもあるのだろう。
サッカーが得点しやすくなることの効果はかなり大きいと思われる。
得点しやすくなれば引き分けというのが減ることが期待される。
これにより引き分け狙いの戦いというのは選択されにくくなるだろうと。
トーナメントのように90分引き分けは許容できないという場合は、
延長戦で120分の試合になることがあるが、そうなれば120分の可能性も見据えて選手を温存しなければならない。
120分でも決着しなければPK戦になるが、これはもはやサッカーとは言えない。
本当に攻撃的なサッカーが実現できるとすれば、得られる効果は極めて大きいと思われる。
ただ、そうなる確信は薄いのがヴェンゲルルールの難点なのだろう。
相手選手より前に出ているとは言えないのにオフサイドとなるという問題に対しては効果的である。
今回のかかとオフサイドのようなケースについては完全に回避できると言えるだろう。
ただ、その結果としてより防御的なサッカーを選ばれては楽しくないな。
そういう考えを持つサッカーファンの気持ちも理解できる話である。