先週末、アメリカでケンタッキーダービーが行われた。
“The Most Exciting Two Minutes in Sports”(スポーツの中で最も偉大な2分間)とも言われるが、
今のアメリカ国内での競馬の地位ってどんなもんよとか、
日本を含む外国での注目度はどんなもんよとか気になるところはある。
アメリカ競馬ではブリーダーズカップよりはるかに注目度が高いことは確かですが。
そんなケンタッキーダービーに日本馬が3頭出走するかもしれなかった。
1頭は補欠からの繰り上がりで、繰り上がりの報から少しあって1頭回避になったので、
最終的には2頭になったのだが、一時的に3頭が出走可能だったことは確か。
どうやって日本から3頭もアメリカ競馬の3歳チャンピオン決定戦に送り込めたのか。
そこにはアメリカ競馬との交流の歴史がある。
まず、デルマソトガケ、日本の2歳ダート王決定戦である全日本2歳優駿の優勝馬である。
これはドバイワールドカップデーに行われるUAEダービーに参戦、優勝したことによる。
このUAEダービー参戦には3歳のこの時期に2勝以上したJRA所属馬にとって国内で走れるレースが乏しいという背景がある。
そんな馬にとって招待レースのサウジダービーとUAEダービーは大きなチャンスである。
UAEダービーは “Road to the Kentucky Derby”の対象レースになっている。
アメリカ国内のご当地ダービーと同じ扱いになっていて、
優勝馬に与えられる100ポイントはケンタッキーダービーの出走権確定となる。
このルートは日本からケンタッキーダービー出走の王道ルートである。
次、コンティノアールだが、残念ながら直前で回避となった。
この馬もUAEダービーからの転戦だが、UAEダービーは3着だった。
ポイント加算されるが、これだけではケンタッキーダービー出走はできない。
なんでそれでアメリカに渡るのかと思ったら、“Japan Road to the Kentucky Derby”により出走権が得られるからだという。
“Japan Road to the Kentucky Derby”ができたきっかけは2016年にUAEダービーをステップにアメリカ三冠完走した ラニ にあるという。
2017年から日本国内のレースだけでケンタッキーダービー出走権が得られる仕組みができた。
ポイント最上位の馬に出走権が与えられ、上位4位以内は繰り上がり可能。
対象レースにカトレア賞(500万下)が条件戦ながらに含まれているのはラニの戦績を参考にしたから?
後にカトレア賞 あらため カトレアステークスはOPクラスとなっている。
コンティノアールはこのカトレアステークスを優勝している。
サウジダービー・UAEダービーに選定され転戦してきた。
“Japan Road to the Kentucky Derby”のポイントにアメリカ(UAEダービーもアメリカ扱い)でのポイントを加算できるルールがあるそうで、
カトレアステークス1着・UAEダービー3着で計40ポイントで3位となった。
だからそれより1~2位の馬が出走しなければ出走可能なのだが、
1位こそが全日本2歳優駿・UAEダービー優勝で計120ポイントのデルマソトガケである。
しかし、デルマソトガケはアメリカでのポイントで出走確定なので、
“Japan Road to the Kentucky Derby”は辞退扱いとなり、コンティノアールの出走がかなったという。
結果的にはドバイからの輸送後に歩様が乱れ、これが回復しないということで直前回避となったが、こんな形で挑戦権を得ていたのである。
補欠で出走がかなったのがマンダリンヒーロー、なんと大井所属である。
これは 特別区競馬組合(TCK)とサンタアニタ競馬場の提携関係による。
TCKは地方競馬としては国際交流に積極的で、特にダート競馬の本場ということでアメリカとの提携に力を入れてきた。
そんな中でサンタアニタ競馬場と協定を結び、交換競走の実施などしてきた。
その協定には大井所属馬にサンタアニタダービーの出走枠が与えられるものがあり、
ハイセイコー記念1着、雲取賞2着などの戦績から出走権が得られることとなり、遠征を決断したという。
出走枠が与えられるだけでなく、輸送費などはTCKの負担というのも大きい。
マンダリンヒーローはここまで南関東ローカルのレースばかり走ってきた。
初めて他地区所属馬と走るのがアメリカのG1というのは珍事である。
果たしてアメリカで通用するのか疑わしいものだが、なんとハナ差の2着という結果。
サンタアニタダービー2着だけの戦績だとケンタッキーダービー出走は怪しいが、
補欠には入れそうだし、ダメでも三冠2戦目のプリークネスステークスには走れるだろうと。
こうしてアメリカで待っていたのだが、だんだん繰り上がって出走がかなったと。
結果はデルマソトガケが6着、マンダリンヒーローが12着だった、
デルマソトガケは日本の2歳ダート王としての挑戦で期待していたのだが、
やはりアメリカの一線級と戦うとなかなかかなわないなという結果。
ケンタッキーダービーの賞金は5着までしか出ないので6着とは悔しい。
とはいえ、名誉ある挑戦ではあったと思う。
来年から大井の3歳ダート三冠がスタートすることで、
JRA所属で2勝するとダートで走るべきレースがない時期はなくなる。
また、東京ダービーをはじめとする三冠レースの評価も高まるだろう。
こうするとケンタッキーダービーへ向かう流れは途絶えるかもしれないが、
特にJRA所属馬がUAEダービーから転戦する流れは続くと思う。
- UAEダービーの賞金は1着58万USドルと高額であること
- 羽田盃・東京ダービーと地方開催の前哨戦は当面はJRA枠が少ないこと
- UAEダービーはアメリカ勢が手薄で日本勢が上位に入りやすいこと
など考えたとき、UAEダービーを走るメリットはあり、
そこで勝てば帰国よりケンタッキーダービーへ向かう方が結局よいと。
将来的には東京ダービーをケンタッキーダービーに並ぶ権威のあるレースにしたいけど、
当面はそれどころではないというのが実情である。
今回のデルマソトガケとマンダリンヒーローを見てもわかるけど、日本のダート競馬はそこそこ強いと思うんですよね。
まだ日本国内のダートレースの国際的な評価は道半ばという感じだが、
もうすでにそれなりの内容には達しているという感じはする。
全体的な賞金水準は日本の方がはるかに高いしね。
今回のケンタッキーダービーに向けた一連の挑戦は将来につながる内容だと思う。