春秋制がよいか秋春制がよいか

あまりサッカーには詳しくないのだけど、最近こんなニュースを見る。

Jリーグが秋春制移行案を初公表!! スケジュールなど概要判明、年内に正式決議へ (ゲキサカ)

Jリーグのシーズンについて、現在は春開幕・秋閉幕(これを春秋制と呼ぶ)であるところ、

AFCチャンピオンズリーグなどの国際的な制度変更も踏まえて、秋開幕・春閉幕(これを秋春制と呼ぶ)に移行するという話らしい。

ただ、過去にも話はあったが実現していないことにはそれなりの理由があるとも。


現在のJリーグは2月中旬に開幕、12月上旬に閉幕となっている。

一方、ヨーロッパでは8月中旬開幕・翌5月中旬閉幕など。

これはサッカーが冬のスポーツであると考えられているということで、

暑い夏は試合を行わず休みにできるということで、秋春制となっているという。


日本こそ夏は暑いのだが、かといって真冬にサッカーをやるのは難しい面もある。

というのも日本は日本海側を中心に雪が大変多いからである。

J1だけ見ても札幌・新潟なんていうのは冬はサッカーどころではない。

(札幌ドーム自体は屋根があるが、サッカー用の芝は平時は屋外にあるし、なにより練習ができない)

これらのチームは2月の開幕時点ではホームで試合をやるのは大変。

また、学校のスケジュールとの相性がよいのも春秋制のメリットという。

学校卒業者がシーズン最初から参加できること。

学校の夏休みに集客できるなど、興行上のメリットもある。


雪の問題は致命的だが、これはウインターブレイクを設ける方法で打開できるといっている。

ヨーロッパのリーグではシーズン中に2~4週間程度、試合のない期間があるという。

これはなにかというとクリスマス休みのことですね。

イギリスのプレミアリーグはクリスマス期間もずっと試合をやっているが、

その代わり2019/2020シーズンから2月頃に2週間の休みが入るようになったそう。


これを雪対策につかうという考えは日本でもWEリーグで取り入れられている。

そう、日本でも女子のプロサッカーリーグは秋春制なんですね。

2020年創設ということで、最初から国際整合を考えたということである。

(ただ、従来から存在する なでしこリーグ は春秋制で現在も続いている)

10月開幕で翌1月上旬まで試合をしてウインターブレイクに入る。

3月上旬に再度開幕し6月中旬閉幕となるという仕組みである。


この方法ならばJリーグも移行はできそうだが、

試合数が違うのでもう少し開幕を早くして8月上旬になるという。

8月上旬だとまだ暑いので暑さ対策という理由は弱いなと思う。

あとは現状でもシーズン始めには雪の影響があるのに、影響が受ける期間が数週間増えることになる。

試合のない期間に暖地でキャンプが必要になるのはどっちも同じだが、

ウインターブレイク開けしばらくもキャンプを続けるとなれば大変かも。


シーズン中に長い休みが入るのが興を削ぐかもという話はあるが、

WEリーグでは皇后杯の試合を1月に入れることで試合が途絶える期間は短くしたという。

ただ、これはなおさら降雪地のチームにとっては厳しい話だと思う。

結局は暖地で試合を多くやるという話にしかならないんだよなぁ。


冒頭に書いた AFCチャンピオンズリーグ(ACL)はちょうどこの前、

浦和レッズ vs アル・ヒラル の決勝が行われ、浦和レッズが1勝1分で勝利してアジア王者となった。

サウジアラビア代表チームはほぼ アル・ヒラル であるというのはよく知られた話で、

これは同国の国際大会での強さにもつながっており、先のワールドカップではグループリーグで後の優勝チーム、アルゼンチンに勝利している。

(他2試合で負けてるのでグループリーグ敗退で終わっているのだけど)


今シーズンのACLは変則日程だったのだが、元々は東アジア側の春秋制を採用していた。

2019シーズンを見ると、2月にプレーオフ、3~5月にグループリーグ6試合、

ここからはトーナメント制でホーム&アウェイで2試合ずつ行い、

ラウンド16が6月に2試合、準々決勝が9月に2試合、準決勝が10月に2試合、そして決勝戦が11月に2試合となっている。

ACLに参加するチームはこれをJリーグの試合と並行して行っている。

週末にJリーグ、週中でACLという日程はかなり過酷である。

かつては賞金も安かったから「罰ゲーム」なんて呼ばれていたそうだが、

現在は賞金は高くなったが、負担が重いことは確かである。


西アジアでは元々ヨーロッパと同じ秋春制だったり、

オーストラリア(2006年からAFC)は春秋制だが、南半球なのでヨーロッパと時期が揃っている。

そんなことを考えればACLは秋春制に移行するのは理由があるなと。

来シーズンから秋春制に移行するACLの日程は、8月プレーオフ、9~12月グループステージ、2~5月決勝トーナメントと。

Jリーグからの参加チームはグループステージ~決勝トーナメントの間でチーム体制が変わることになる。

グループステージで敗退すれば関係ないし、ACLに参加しない大半のチームにとってはそもそも関係がない話である。

ACL自体は秋春制移行の理由としては弱いのはその通りかなと。


むしろ国際試合という点では、FIFAインターナショナルマッチカレンダーがJリーグのシーズンとのかみ合いが悪いのが問題とも。

FIFAインターナショナルマッチカレンダーで定められた期間には、

ナショナルチーム編成のため、メンバーがクラブを離脱することを認めなければならない。

日本ではJ1リーグが当該期間は休みとなる。(J2以下は試合が行われる)

世界共通の日程なので、この期間に国際試合を行うならば、外国のクラブに所属する選手も呼べるわけですね。

これが2025年からは3月に2週間、6月に2週間、9~10月で4週間、11月に2週間となる。

これの何が悪いかというと9~10月はJリーグのシーズン末にあたる時期で、

ここで主力選手が長期間代表チームに取られると大変だということである。


そもそもこのFIFAインターナショナルマッチカレンダーがヨーロッパ中心でるという批判はあるそうだが、

それはそうとしても国際試合がその日程で行われることは変えがたく、

そこに合わせるにはヨーロッパの日程に近づけたほうがよい。

WEリーグでできてるならJリーグでもできるんじゃないの? というのも一理あるし、

降雪地のチームは現状でも不利があるのを自力で埋めているので、

制度変更に合わせて冬季キャンプの費用補助など導入されればむしろ改善かもしれない。


ただ、夏休みの試合数が減り、長いウインターブレイクとか、興行面で気になるところも多い。

日本国内の事情だけ言えば、夏の暑さはともかく、気候や世間のカレンダーとの整合性も高い春秋制を続けたいのはあると思う。

あとはどこまで国際整合を考えるかというところですね。

春秋制でも全く整合できないわけではないし、それで長年やってきたのがJリーグでもある。

そこが悩み所なんでしょうね。