こんなニュースがあったのですが、東京都特有の事情がいろいろある。
私立中学の授業料、年10万円助成へ 東京都、新たな少子化対策 (朝日新聞デジタル)
義務教育は無償ということになっている。(実際にはいろいろ金かかるけどね)
ただ、それは指定された公立学校に通学する場合の話で、私立学校はその限りではない。
そんな中、東京都では私立中学校の授業料を年10万円助成するとのこと。
ただ、無償の公立学校ではなく、あえて私立学校に通う人にこういうのが必要なのかというのは多くの人が思う話だろうと思う。
驚いたのだが東京都の中学生の25%ほどが私立学校に通っているという。
東京都の中でも地域性はあると思うので、特別区域となればさらに高いのでは?
この制度の恩恵を受ける人はそこまで珍しくないということである。
これほどになってくると公立学校の人員・施設にも影響があるとみられる。
教育費の多くは人件費と言われており、公立学校の教員は市区町村立であっても都道府県から雇われるのが基本である。
(指定都市はその限りではないし、それ以外でも市区町村が独自に充実させているケースはある)
なので、東京都は私立中学校の影響で少なからず教育費が浮いていると考えられる。
ただ、義務教育については国の費用負担もある。
都道府県が負担する教員の人件費は都道府県:国=2:1で分担している。
もっとも国が徴収した税金を再配分する地方交付税交付金というのがあり、
公立中学校の生徒数が減れば、おそらく交付金を減らして調整される。
しかし、東京都は地方交付税の不交付団体である。
このため義務教育の人件費が浮いた分の2/3はそのまま手元に残ると考えられる。
その一部を使って私立中学校の授業料を助成することに問題はなさそう。
というわけで東京都特有の事情がいろいろあるわけだ。
おそらく他府県ではこういう話にはならないんじゃないのかなぁ。
ただ、私立中学校の進学を後押しするのは、それはそれで考え物とは思う。
1つは私立学校のビジネスの都合を押しつけるのはどうなのかという話。
中高一貫教育に力を入れる私立学校が増えているという話があり、
従来は高校から入学できた学校も、中学校の段階で入学していないと入れないということも増えていると聞く。
私立学校として付加価値を高めていくの戦略ではあるのだと思う。
以前も書いたが、都立高校の男女比を気にしなければならないほど、東京都で高校年代の私立学校の分担率が高い。
ただ、これは不本意に私立高校に進学する生徒も多いということで、
このような事情もあり、就学支援金の不足分を助成する制度が2020年にできたという。
と、東京都には私立学校をむげに出来ない事情もあるのだが、
本来は公立学校で提供される義務教育を、私立学校の商売道具にされた上に、
その授業料の一部を助成するというのは問題じゃないかなと思う。
もう1つ問題なのは小学校卒業時点で適性に応じた進学先が選べるのかという話。
中学校卒業時点でもそこそこ難しいけど……ってそれは高専に進学したからか。
中学校は義務教育のまとめとして自らの適性も見て進路を決めることは意識されているからよいが。
しかし、小学校の段階ではそこまで決める材料はないはずである。
このことが「お受験」と言われるような背景でもあろうと思う。
すなわち本人の適性以上に親の熱意により決まる部分が多いと。
この結果、適性に合わない進学先を選んでしまう可能性はあるんじゃないか。
時々、自分のことを「高校も大学も出ていない」と言うんだけど、
それは中学校を出て、専攻科含め7年間高専に通って、学士の学位を得たということである。
その後に大学院に進学して修了しているけど「卒業」ではないし……
高専という技術者教育に特化した特異的な学校で長く過ごしたこと、
一般的な高校からの大学受験や研究室暮らしでない大学生活を経ていないこと、
「高校も大学も出ていない」というのはそういうことを表している。
そのようなこともあり、義務教育のまとめとしての中学校の重みは大きくて、
義務教育というのは地域の学校で皆で学ぶものではないかという思いは強い。
もちろん私立中学校も理由があって存在しているのは理解しているが……
この助成制度が私立中学校への進学を後押ししていると取られて、
教育環境の分断が進むとなればそれは問題ではないかなと思う。
本来は中学校出てからでも遅くないと言い切りたいところなんだけど、
最近の私立学校の状況を見るとそうも言えないところが苦しいのかなと。
その背景には苛烈な大学入試があったりするんでしょうけど。
「高校も大学も出ていない」というのはそこを経験してないですからね。