先月末から関西空港の第1ターミナル(T1)国内線エリアが移転した。
従来はT1 2階の中央付近に出発・到着・ゲートがまとまっていたのだが、
南ウイングの中間付近にゲートが移転し、2階の南側に出発、1階の南側に到着となった。
これにより全体的に従来より移動距離が増して、Webサイトには、
<ご出発のお客様>保安検査場通過後~搭乗ゲートまで: 約 5 ~ 9分
<ご到着のお客様>空港ご到着後~到着口まで : 約 6 ~ 10分
さらに保安検査場・到着口自体が駅から遠くなっているので、だいぶ遠くなったと言われている。
リムジンバス出発は1階だから上下移動なくなったけど。
これは関空T1リノベーション工事の一環として行われているものである。
関西国際空港 T1 リノベーション (pdf) (関西エアポート)
当初、関空の利用者数は国内線1300万人、国際線1200万人という想定だった。
しかし、国内線の需要はPeach就航まで伸びず、PeachはT2を利用している。
一方で国際線の需要は旺盛で、Peachなど一部の航空会社はT2を使うものの、多くにおいてはT1を利用している。
この計画が発表されたのは2019年のことだが、2018年の実績でT1国際線は2060万人、T1国内線は400万人となっている。
すなわちT1国際線は当初想定のキャパシティを超過していたのである。
当時は中国をはじめとする各地からの観光客で賑わっていた関空、
ただ国内線エリアは全体的に閑散としている印象があった。
以前、関空の国際線を利用したとき、ウイングシャトルに乗らず国内線エリアを見下ろしながら歩いて行ったことがあるが、端の方は全然人がいない。
というわけで、関西エアポート社はT1国内線エリアを縮小して、国際線エリアを広げることでキャパシティ増加を図ることとしたのである。
でも、なんで関空の国内線ってそんな需要が見込まれてたんでしょうね?
これはおそらく伊丹空港の全機能を移すことを想定していたからではないかと思う。
伊丹空港の騒音問題を打開することは関西新空港の目的の1つだったと。
ただ、実際には関空開港後も伊丹空港は存続している。
航空機の低騒音化も進み、関空との経営統合も行われ、共存共栄の道は明確になった。
このあたりもT1国内線エリアの縮小に進んだ要因の1つではないかなと。
さて、関空T1リノベーションのポイントとしては、国際線の使えるゲートを増やすこととと国際線出発エリアの床面積を増やすことである。
従来、国際線32スポット・国内線7スポット・共用2スポットだったものを、
国際線35スポット・国内線5スポット・共用4スポットとして、
国際線で利用できるスポット数を34→39と5スポット増加させるわけである。
また、2階国内線エリア、3階一般エリアを国際線出発エリアに転用し、
出国検査後の商業施設・飲食店を配するエリアを+60%拡大できるとのことである。
ただ、スポット数の増加については国内線エリア縮小以外の理由もあって、
全スポット数を足すと、従来41スポットだったものが、44スポットに増えている。
これはいくつかのスポットを小型機2機で分けて使えるようにしたためである。
すでに1番・3番は1L/1R、3L/3Rと分けて使えるように設備が整っている。
あと国内線ゲートの1つも同様の対応をするようだがまだされてないっぽい。
なので国際線で利用できるスポット数が5増えるというのは、
小型機用に分割して+3、共用ゲート増で+2というのが真相である。
従来から2つの共用ゲートはほとんど国際線で使っていたはずで、増加した共用ゲートを国際線で活用することが本質的に重要とみられる。
(もちろん国内線の便数が多い時間帯は国内線で使うのでしょうが)
そんな関空の新しいフロアマップを見て気になったことがあった。
フロアマップ/第1ターミナルビル 2F 国内線出発フロア・国内線ゲートエリア
保安検査場・到着口と商業施設・飲食店のあるエリアとは鶴の首のように長い通路で結ばれている。(ムービングウォークはあるそうだが)
ここから滑走路側に24~27番ゲート、反対側はさらに南に進み38~41番ゲートとなっている。
南端の38番ゲートともなるとかなり遠いようである。
41~40番ゲートの間にはムービングウォークが取り付けられているが、その先はないみたいだし。
で、滑走路側の24~27番が国際線との共用ゲートになっている。
24番は新国際線エリア(元国内線)、27番は国際線南エリアと隣接しているからよいとして、
25番と26番の間に国内線エリアから除外されたエリアがあるが、おそらくこれは25・26番の国際線ゲートラウンジではないかと思う。
共用ゲートを増やすためにこのような珍妙なことをしているようである。
この中途半端に挟まれたエリアはどうなっているのか?
気になるところだが、現在そのエリアに入ることはできないと思う。
なぜかというと現在、国際線では北ウイングしか使っていないからである。
これは工事のためというよりは、国際線の便数が少ないためである。
このエリアはウイングシャトルに乗るのか乗らないのか? よくわからん。
今日の関空T1国内線出発のゲート使用状況を見てみると、
24番:4便、25番:5便、26番:6便、27番:9便、41番:5便、40番:4便、39番:3便、38番:1便となっていて、
国内線エリア中央から離れた39番・38番は使用する便数は少ない。
これはそうだろうと思うのだが、問題は24~27番は国際線との共用ゲートであるということ。
だから、国内線はできるだけ41~38番を使うようにしたいわけである。
でも、国内線エリア中央に近いのは41・25・26番、次いで24・27・40番といったところ。
果たして25番・26番は共用ゲートとしての役目を果たせるのだろうか。
共用ゲートは国内線・国際線の切り替えを行う便で使うのも効果的だが、
T1使う会社でそれをやるのはJetstarぐらいで、それも沖止めの飛行機でやってたような覚えがあるんだよなぁ。
そういうニーズもあまりないんじゃないかなと思う。
これから国際線エリアの工事が本格化するとみられるが、
従来は出国審査を抜けると3階に出て、ここに免税店などが並んでおり、
ここからウイングシャトルに乗って、駅に着いたら2階に降りてゲートラウンジとなっていた。
国内線と国際線の分離、横に長いターミナルの移動など考えられた仕組みである。
ところが新しい国際線エリアというのは、出国審査を抜けると2階に出てくる。
2階に免税店や飲食店などが並ぶことになる。中央付近であればそのまま搭乗できる。
ウイングシャトルは3階だから、一旦上がってシャトルに乗って下ってとは煩わしい気がする。
北ウイング出発はそのまま2階を歩いても(距離はともかく)ゲートへ行けるが、
南ウイングについては国内線エリアがあるので、3階レベルを行かざるを得ない。
関空T1リノベーションの基本的な考えとして、出発手続きを迅速にして、出発エリアでの滞在時間を快適にするという考えがある。
国際線については余裕を持って空港に来る人が多いので、
チェックイン・保安検査・出国審査の迅速化を行って、出発エリアの店舗を充実させるという考えは納得しやすいと思う。
従来に比べると導線が洗練されてないところはあるが、それ以上のメリットはあるかなと。
ただ、国内線については出発エリアの店舗充実というのはあまり響かないのかなと。
今はまだ共用ゲートが国際線で使われることがないのでいいけど、
リノベーションの効果を高めるために共用ゲートはできるだけ国際線で使うとなれば、
39番・38番といった遠いゲートを使う便の割合が増えることとなる。
そうするとなおさら遠くに追いやられたとなるんじゃないのかな。
あと国内線エリアの縮小に伴って、航空会社のラウンジも各社別に設けていたものが共同化された。
主要空港とすれば寂しい体制だが、関空の利用実態を考えればこれでいいのかもしれない。
ラウンジ使えない人には関係ないことだしね。